文化祭劇の脚本が異世界に繋がっちゃって、モブキャラのまんま、イケメン王子の前にブッ飛ばされたんだけど?!

蟻の背中

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第2章 巫女は聖なる盃を掲げ

謎の美女にザワつく心

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「アイシャの冗談だ、落ち込むな」

ニコリ。
彼女は紅のついた唇で笑った。

「さぁ、入って。お茶でも飲んでいってよ」

彼女は、酒屋のお姉さんとも、ニマのお母さんとも、その辺を歩いている人とも違う服を着ていて、お化粧もしていて、アクセサリーもたくさん付けていた。
髪も綺麗に結い上げて、とてもいい香りがした。

扉の中は、部屋ではなく高い塀に囲まれた庭だった。
中央に小さな池があって、蓮の花が咲いている。
その前にウッドデッキのような高座敷があった。ちゃんと人工的に作られた庭みたいで、緑や花に囲まれている感が凄い。
扉1枚で、砂っぽく騒がしい外とはこんなにも違う空間があるのに驚いた。

「この子はツキ」
「ツキ、アイシャだ」

ちょっ、省略多すぎない?
アイシャさんて、何者なの?どういう関係?
そこが、チョー気になるトコなんですけどー。

「初めまして、ツキ」
「どうも」
「アイシャ、頼みがあるんだ」
「あら、何かしら?ユージンの頼みならどんな事でも大丈夫よ」

頼み事がオールオーケーな関係とは?!

「この子に似合う服を見繕って欲しいんだ」
「え?服ならこれでいいよ。変なので十分」
「変とは言ってないが……」
「似たような意味だと思うけど?」
「いや、そうじゃなくて……他に似合うものもあるんじゃないかと……」
「はいはい、わかった。ちょうど良さそうなのがあるわよ」

「アイシャは服を仕立てるのが上手いんだ」

ユージンがこっそり教えてくれた。
凄い、デザイナーなのかな。

「あなたはそこにいて。お茶を持ってこさせるから」
「ありがとう」
「ツキはこっちに」

正直不安だった。知らない場所で知らない人(ユージンと凄く親しげな人)と2人になることが。
ちらりとユージンの顔を伺うと、力強く頷いてくるじゃん。
私は仕方なくアイシャさんの後に付いて行った。

「さてと、まずはお風呂かしらね」

お風呂!入りたかったよ凄く!
私はちょっと嬉しくてテンションあがった。
けれど、通された場所は私が想像していたお風呂とは全然違った。

そこは総タイル張りの四角い空間。
天井に丸くくり貫かれた天窓がある。
硝子はなくて青い空が見える。
つまり半分外だ。
隅に釜があって、大きな鍋にはお湯が沸いていた。ドラム缶みたいな大きさの樽に水が流れ込んでいるのか、チョロチョロと音がしている。

「サボンと服はここに置くから」

浴室の角に棚があって、アイシャさんが石鹸と着替えを置いてくれた。

私は浴室を見渡した。
部屋の隅に木製のタライがあったので、それにお湯と水を混ぜて使えってことなんだろうな。

お風呂を済ませ、着替えてから隣の部屋へ行くと、アイシャさんが待ち構えていた。

「着方があっているかどうか……」

私はやたら紐と飾りの多い服の着方がイマイチわからなかった。



作業用BGM  MAMAMOO―Wind Flower
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