文化祭劇の脚本が異世界に繋がっちゃって、モブキャラのまんま、イケメン王子の前にブッ飛ばされたんだけど?!

蟻の背中

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第2章 巫女は聖なる盃を掲げ

魔神の名前を言ってみて

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「アスリートって言っただろ」
「えっ?何のこと?」
「ランプの魔神の名前だよ!まったく、嘘つくならちゃんとしなきゃ」
「正しい名前って何よ」
「教えない」
「はっ?気になるじゃん!言いなさいよ!」
「やだ、そういう態度なら教えてやんない!」
「じゃあ、いいわ。もう黙って」
「まるで、姉弟喧嘩だな」

そう言ってユージンは目を細めて笑った。
目尻にシワをつくって。

私達は、近くの街へ向かう荷馬車の荷台に乗せて貰った。いや、馬じゃなくて大きな水牛だから牛車か、のんびりとゆっくりと進んでいく。
雨は止んで雲ひとつない青空が広がっている。
雨上がりだからか、空気がさっぱりして気持ちがいい。

空の青が濃い。
ポスターカラーで塗ったみたいに、ベターっとしたスカイブルーだ。

ユージンは隣で寝転がって空を仰いでいる。

これから、この牛車がどこかの街に着いたら、そうしたら、今度は本当にそこで別れるのかな。

「ユージン、街に着いたら……」
「そうだ、街に着いたら……」

待って、何て言うつもり?

「あのさっ、さっきの話だけど……」

私は慌ててユージンの言葉を遮った。

「さっきの話って?」
「ええと、ほらニマが言ってた」
「魔神の名前か?」
「そうそう、私、本当に間違ってた?」
「さぁ、覚えてないな」
「そっか。でも魔神の名前って誰でも知ってるものなの?」
「ううん、どうかな。魔神なんていないっていうのが昨今だし。遠い昔のおとぎ話みたいなものかな」
「へぇそうなんだ」
「なんだっけなぁ、あの魔神の名前は……」
「あの魔神?」
「いや、おとぎ話に出てくる魔神だよ、火の魔神……水の、だったかな」

こちらの人なら誰でも知っているお話なのかな。桃太郎みたいに。

結局、正しい名前を思い出せないまま牛車は街の前までやってきた。

「ありがとうございました」
「うん、気を付けてな!」

村のおじさんに手を振って、私とユージンは大きな門をくぐり街の中へ入った。

門から真っ直ぐに伸びた大通りは人々で賑わっていた。
両サイドには色んなお店が並んでいて、呼び込みの声に活気を感じる。
ユージンはさっきからキョロキョロしながら歩いている。
何か探しているみたい。

「おっ、あそこが良さそうだ」




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