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第2章 巫女は聖なる盃を掲げ
お母さんは何羽鶏を絞めたでしょう
しおりを挟む「どうした?ツキ、ずぶ濡れじゃないか」
雨の中、ユージンが歩いて来るのが見えた。
「そっちこそ。……何処に行ってたの?」
ユージンだ。
置いていかれてはなかった。
ほっとして、肩から力が抜けた。
「ニマのお母さんが、昼に鶏を焼いてくれるそうだ。裏の穴へ薪を取りに行ってた」
ユージンの肩には、薪の束が乗っかっていた。
「そうなんだ、早く食べたいな……」
「頭を拭いて、風邪引くぞ」
「うん」
ポンと肩を叩かれた。大きくて温かいユージンの手。それはすぐに離されたけれど温もりだけは暫く余韻のように残った。
なんか顔の筋肉が変だ。多分今凄く変な顔になってる。泣いているのか笑っているのか自分でもわからない、つまり不細工。
私は一時的な不細工が治るまで外にいた。
「美味しい!!」
「そうか、良かった。たくさん食べなさい」
ニマのお爺さんが、私のお皿に鶏肉を追加してくれた。
そういえば、昨日はリンゴひとつしか食べてなかった。空いていた事を思い出したお腹はもう底無しである。
横に長い枕みたいなバカデカスイカも出たんだけど、それがもうめちゃ甘くて美味しくてびっくりして、たくさん食べてしまった。
「皿まで食べそうな勢いだな」
ユージンがククっと笑った。
「どうもお世話になりました」
ユージンはニマのお爺ちゃんとお母さんにきちんとお辞儀をした。
「とんでもない!こちらこそ孫を助けて頂いて感謝しかありませんて」
「ああ、そうだ。これを忘れる所だった」
ニマのお母さんに巾着袋を渡された。
「ランプ、大事なものなんでしょう?巫女様だとか」
「えっ、いいや、それは……ありがとうございます」
ニマ、どういう話しをしたんだ?
私はランプの入った巾着を背中に背負った。
ニマが頷いて満足そうに笑った。
「それから、これも。日差しが強いからね」
頭に薄い布を被せてくれた。お母さんの優しさに胸がほっこりする。
「ニマ、大きくなって困ったことがあったら、ラシトに来い」
「ラシト?」
聞いたことのない地名らしくニマは首を傾げた。私ももちろん知らない。
「西の、海に近い町よ。そこのご出身?」
ニマのお母さんが尋ねた。
私も興味津々で返答を待った。
「出身ではないですが、小さな船を持っています」
「漁師なの?!」
「まぁ、そんな所です」
ユージンはニカッと四角い口で笑ってニマの頭を撫でた。
「わかった、大きくなったら絶対行くよ!俺も漁師になって、魚をたくさん捕るの手伝ってやる!」
相変わらず偉そうだ。
「それまで、お母さんとお爺さんを心配させるようなことはするな、わかったか?」
「うん、わかった!宮廷物には手を出さない!」
おいっ、そういうトコだよ。
そういうトコが心配なの。
「そういえばねぇちゃん、間違ってたぞ」
ニマが真剣な顔で私に視線を向けた。
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