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第2章 巫女は聖なる盃を掲げ
田舎人の「すぐそこ」には気を付けろ
しおりを挟む「ねぇちゃんはこれな」
渡されたのは真っ赤な薔薇の花籠だった。
聞けば少年の家はこのちょっと先の川沿いらしいが、ワサワサと茂る麦の畑の中をもうかなり歩いているのにそれらしき灯りが見えない。
「ねぇ、まだなの?」
「もうすぐだよ」
「さっきからもうすぐって、全然着かないじゃん!」
空の高い所に少し欠けた月がある。
「せめて馬でも連れてくれば良かったんじゃない?」
荷馬車から馬を外して荷物乗せれば、ついでに私も乗せて貰えば楽だったじゃん。
「バカだな、馬なんか連れてたら目立つだろ?何にもわかってないな」
「なんでよ、目印でも付いてるわけ?車のナンバーみたいに、盗難馬ですってわかるわけ?」
「兄貴、トウナンバーってなんのことだ?ねぇちゃんは何言ってんだ?」
ユージンはクスクス笑っている。
「やっぱり……婚約者に逃げられたって本当だったのか……」
「婚約者もいませんし、いたとしても逃げられたりしません!」
「すげぇ自信だな。ちっさい豆みたいな目の癖に」
「はぁ?!まっ、まめ?!」
「そんなんで、良く見えるな、鼻はついてんのか?平た過ぎて見えねぇや」
身体的特徴を躊躇なく攻撃してくるなんて、さすが子供だわ。
ストレート過ぎてハラワタが煮えくり返るの通り越して踊るってんだわっ!!
「私の国ではね、これが美人顔なの。家の前に列が出来るんだから、求婚者が列を連ねて毎朝……」
「母ちゃん!!」
聞いてないってかよ。
少年が走り出した。走り出した先、麦畑が切れた所に赤ん坊を抱えた女の人が立っていた。
その足にもう1人、小さいのがくっついている。
「うちの子を助けて下さってありがとうございました」
少年の家は、なんと天然の岩山に掘られた穴の中だった。こうした穴が幾つもあって、ひとつの村が出来ているみたい。
「もう、遅いのでどうぞ今夜はこちらでお休み下さい、何もないところですみませんが」
文字通りの本当に何もない部屋だった。
くり貫かれた空間に絨毯が敷かれているだけだ。
「いいえ十分です。ありがとうございます」
ユージンが丁寧にお辞儀する。
「人様の物に手を出しちゃいけないって言ってるんですが……夫が亡くなってから、畑の手伝いもろくに出来ず……」
「政治が良くないんです、生きるためにやったことです」
でも、殺されたら本末転倒じゃん。
話している2人の間をぬい、本末転倒少年が部屋へかけ込んで来た。
「俺もここで寝る!」
ゴロリ。
壁にもたれ座っている私の横へ少年が転がってきた。
「水はありますか?」
「手洗い所は裏に、井戸もその近くにありますよ。着替えをお持ちしますね。夫の着ていた粗末な服ですけど」
「ツキも行くか?」
作業用BGM THE BOYZ―NO AIR
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