文化祭劇の脚本が異世界に繋がっちゃって、モブキャラのまんま、イケメン王子の前にブッ飛ばされたんだけど?!

蟻の背中

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第2章 巫女は聖なる盃を掲げ

金なし!家なし!けどイケメン!!

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「やっとお目覚め?起き抜けの所で、悪いんだけど、そろそろ席を譲ってもらえるかな、お代は連れの子にもらったからさ」

待ってましたとばかりに寄ってきたお姉さんが、早口に捲し立てた。

「ああ、悪かったな」

ユージンが席を立ち、私もなんとなくその後に続いて店を出た。

店は大通りに面していたから、他にもたくさんのお店が並んでいる。

「ツキ……」

ユージンは凄く背が高かった。
160センチの私が、だいぶ上を見ている。

「はい」
「金のことだけど、暫く借りていてもいいか?」
「……お金、ないの?」
「まぁ、そんなところだ」
「お金ないのに、そんなに飲んでどうするつもりだったわけ?」
「どうにかなるかな、なんて思ってた」
「思ってた?いい大人がそんなことでいいわけ?」
「あははは、そうだよなー」

ユージンは頭をガシガシかいて苦笑した。
目尻から頬にかけて皺が入る。

「そんなんじゃ、ダメじゃん」
「まぁ、でも、結局……月の女神が現れた。だからなんとかなった」

そう言って私の頭をポンポンって叩くとニカっと笑った。
くすぐったい。なんか全身がこそばゆくなって説教する気が萎えた。

「怪我してる」

ユージンの手に傷が見えた。
右手の肘から手首にかけて擦り傷が出来ている。ほとんどは乾いているようだけど、まだ血が滲んでいるところがあった。

「ん?」

自分でも初めて気付いたみたい。
傷を見てフっと笑った。

「こんなのはほっとけば治る」

ほっとけば治るっ、て?
私なんて指先ちょっと切っただけでも泣くのに。

「ちゃんと洗ったほうが良いよ」

ついでに言うならお風呂にも入ったほうがいい。シャツは砂まみれだし、黒いズボンも砂で白くなっちゃってる。

「ツキ、子供はそろそろ家に帰る時間じゃないのか?」

子供って……ちょっとショックなんですけど。
そりゃ、20歳過ぎのおじさん?からみたら子供かもしれませんけどね。
ユージンて何歳なんだろう?こんな成りだからわからないけど、髭とかちゃんとしたら実は私の想像よりも若いのかな?

「あなたは、これからどこに行くの?」
「街を出る、今夜は街外れの川べりで野宿する」
「野宿って、外で寝るの?」
「そうだ」

家は?そういえば、お金ないって言ってたし、もしや路上生活者なの?
全然頼りにならないじゃん!
とはいえ、この状況でボッチは不安だ。

「一緒に行っていいかな?あの、ええと実は私……行くところがなくて」

あー、良い子はやっちゃダメなのに。
見ず知らずの男(イケメンに限る)に付いていくなんてー。

「家出でもしたのか?」
「ちょっと違うけど……」

だいぶ違う。

「迷子か?」

なるほど。遠からず近からず、だね。

「うん、そう、それに近いかも!」
「うーん」

ユージンは顎に手を当て私をじっと見下ろした。

「ちょっと!」

ユージンが声の方に目をやった。
私も連られてそちらを見る。

「これ、忘れ物!」




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