文化祭劇の脚本が異世界に繋がっちゃって、モブキャラのまんま、イケメン王子の前にブッ飛ばされたんだけど?!

蟻の背中

文字の大きさ
上 下
23 / 117
第2章 巫女は聖なる盃を掲げ

指先に触れた硬いもの

しおりを挟む



「あのぉ、すみませんが。私はこの人とは何の関わりも関係もない、まったくのアカの他人ですよ。私がこの人の飲み食いしたお金を、何故払わなくてはいけないのですか?それに、多分私、お金持ってないです(キリッ)」

「はぁ?何ドヤ顔して金がないとか言ってんのさ、ちょっとあんた」

大きなめん玉で鋭く睨まれた。

「食い逃げしようって気じゃないよね?」

「いやー、そうじゃないです。だって、私は食べても飲んでもないですし、そもそも未成年じゃないですか?私、見えません?私は高校生です」

「ちょっと、あんまり舐めた態度とると、子供だって、容赦しないよ!いいから、ポケットのものを全部出すんだよ!」

ポケットの中全部出せって、それはカツアゲとかで使う言葉じゃん??まさか、一生のうちで言われる場面に遭遇するとは。

「おらっ!さっさっと出しな!」

ひーーーー!怖いよーーーーー!
私はお姉さまの迫力にあっさりひるんだ。
そして、自分の身なりを初めて確かめた。
驚いたことに、か、やっぱり、なのか、着ていたのは、侍女①の衣装だった。

「ポケットですね、ちょっと……」

そんなの付いてたかな……?

「!!!」

付いていました。目視しました。黒いベストの両脇にひとつずつ、ちゃんとありました。

問題はそこにお金なんかが入っているはずがないってことなの。
携帯だって入らない大きさで、お財布なんかもっと入るわけがないし、入れた記憶もない、からね。

「あっ、あるかな?あるといいなぁ、2ドラクマ……」

私は恐る恐るポケットに手を入れてみる。
あれ?これは、ひょっとすると、ひょっとするかもよ。指先に何が硬いものが触れているじゃないですか?
その硬いものを取り出してみた。

「なんだ、ちゃんとあるじゃないか、2ドラクマ貰うよ。さっさと、お兄さん店から出して」

お姉さんは私の掌から銀色のやつをふたつ取ると、爽やかな笑みを残し去っていった。
私は掌に残されたそれを見つめた。
銀色のおはじきみたいな形のものが数個ある。念のため反対側のポケットも探ってみた。
そこには、銀色よりも小さな金色の粒が数十個入っていた。

「これって金かな」

だとしたら、私は凄くお金持ちじゃないですか?凄くないですか?!
やぁ、ほんとに都合の良い夢だな。
本物の訳がない、現実ではないんだ。
よく、あるよね。これ、夢だわーって途中から薄々わかってて見てる、夢。きっと、それ。
ふっ、と顔を上げると、店のお姉さんと目があった。
ああ、出ていけって、ことだよね。

この酔いつぶれている見ず知らずの人を連れて。




作業用BGM  ONEUS―VALKYRIE
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

セクスカリバーをヌキました!

ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。 国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。 ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

父が再婚しました

Ruhuna
ファンタジー
母が亡くなって1ヶ月後に 父が再婚しました

完全なる飼育

浅野浩二
恋愛
完全なる飼育です。

ポーションが不味すぎるので、美味しいポーションを作ったら

七鳳
ファンタジー
※毎日8時と18時に更新中! ※いいねやお気に入り登録して頂けると励みになります! 気付いたら異世界に転生していた主人公。 赤ん坊から15歳まで成長する中で、異世界の常識を学んでいくが、その中で気付いたことがひとつ。 「ポーションが不味すぎる」 必需品だが、みんなが嫌な顔をして買っていく姿を見て、「美味しいポーションを作ったらバカ売れするのでは?」 と考え、試行錯誤をしていく…

女神の代わりに異世界漫遊  ~ほのぼの・まったり。時々、ざまぁ?~

大福にゃここ
ファンタジー
目の前に、女神を名乗る女性が立っていた。 麗しい彼女の願いは「自分の代わりに世界を見て欲しい」それだけ。 使命も何もなく、ただ、その世界で楽しく生きていくだけでいいらしい。 厳しい異世界で生き抜く為のスキルも色々と貰い、食いしん坊だけど優しくて可愛い従魔も一緒! 忙しくて自由のない女神の代わりに、異世界を楽しんでこよう♪ 13話目くらいから話が動きますので、気長にお付き合いください! 最初はとっつきにくいかもしれませんが、どうか続きを読んでみてくださいね^^ ※お気に入り登録や感想がとても励みになっています。 ありがとうございます!  (なかなかお返事書けなくてごめんなさい) ※小説家になろう様にも投稿しています

【本編完結済み/後日譚連載中】巻き込まれた事なかれ主義のパシリくんは争いを避けて生きていく ~生産系加護で今度こそ楽しく生きるのさ~

みやま たつむ
ファンタジー
【本編完結しました(812話)/後日譚を書くために連載中にしています。ご承知おきください】 事故死したところを別の世界に連れてかれた陽キャグループと、巻き込まれて事故死した事なかれ主義の静人。 神様から強力な加護をもらって魔物をちぎっては投げ~、ちぎっては投げ~―――なんて事をせずに、勢いで作ってしまったホムンクルスにお店を開かせて面倒な事を押し付けて自由に生きる事にした。 作った魔道具はどんな使われ方をしているのか知らないまま「のんびり気ままに好きなように生きるんだ」と魔物なんてほっといて好き勝手生きていきたい静人の物語。 「まあ、そんな平穏な生活は転移した時点で無理じゃけどな」と最高神は思うのだが―――。 ※「小説家になろう」と「カクヨム」で同時掲載しております。

処刑された令嬢、今世は聖女として幸せを掴みます!

ミズメ
恋愛
侯爵令嬢マリエッタは、聖女を害したとして冤罪で処刑された。 その記憶を持ったまま、マリエッタは伯爵令嬢マリーとして生を受ける。 「このまま穏やかに暮らしたい」田舎の伯爵領で家族に囲まれのびのびと暮らしていたマリーだったが、ある日聖なる力が発現し、聖女として王の所に連れて行かれることになってしまう。 王座にいた冷徹な王は、かつてマリエッタを姉のように慕ってくれていた第二王子ヴィンセントだった。 「聖女として認めるが、必要以上の待遇はしない」 ヴィンセントと城の人々は、なぜか聖女を嫌っていて……? ●他サイトにも掲載しています。

人の身にして精霊王

山外大河
ファンタジー
 正しいと思ったことを見境なく行動に移してしまう高校生、瀬戸栄治は、その行動の最中に謎の少女の襲撃によって異世界へと飛ばされる。その世界は精霊と呼ばれる人間の女性と同じ形状を持つ存在が当たり前のように資源として扱われていて、それが常識となってしまっている歪んだ価値観を持つ世界だった。そんな価値観が間違っていると思った栄治は、出会った精霊を助けるために世界中を敵に回して奮闘を始める。 主人公最強系です。 厳しめでもいいので、感想お待ちしてます。 小説家になろう。カクヨムにも掲載しています。

処理中です...