文化祭劇の脚本が異世界に繋がっちゃって、モブキャラのまんま、イケメン王子の前にブッ飛ばされたんだけど?!

蟻の背中

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第1幕 囚われた偽りの巫女

聖なる巫女は嘘をつく

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「母上、いきなりそのような。巫女が怒りますよ」

隣の王子がクククっと嘲笑する。

「怒ったから何だと言うのか、ジンを操り我を殺すか?」

国王は頬杖を付き、ダリアンを見下ろした。

「何故、私をご所望に?そのようなことをお望みで?」
「ジンを操る巫女だと?では、早速ジンをここへ呼び出し、我の願いを叶えてみよ」
「……それは、……出来かねます」
「ふっ、はっはっはっ、ではお前はここへ何しに来たのだ?」

国王は心底可笑しそうに声をあげて笑った。

「私は……両国の和平のために参りました」
「そうだ、確かそうだった。で、あるのにジンを呼び出せぬとは、どういうことだ?」
「……リュトンがありません」
「リュトン、それはなんだ?」

隣の王子が玉座から離れ、ダリアンの元へ下りて来た。

「ジンを呼び出す聖杯です。それが彼らとこの世界を繋ぐ鍵なのです」
「何故それを持って来なかった?」

階段に腰を下ろした王子が怪訝そうな顔でダリアンを眺めた。

「リュトンは、我が国バルフが誕生した時からあるものです。翼の生えた獅子、つまりグリフィンを模した金の聖杯です。聖杯は国宝であり、国外に持ち出すことは巫女といえども出来ません」
「グリフィンか、我が王族の紋も両翼のグリフィンだが……」

王子が面白そうに立ち上がり、玉座の下に掲げられた旗を指し示した。

「偶然にもそのようで……」
「たわけ!!」

国王が突然叫んだので、ダリアンはびくりと肩を震わせた。

「そなた我が国を愚弄するか?同じグリフィンならば、そもそもは我が王族の持ち物ではないか、それをバルフが盗んだ。そういうことだろう!」
「!!」

ダリアンは国王のあまりの馬鹿げた言いがかりに驚いて唖然となった。

「ただの小娘の上に巫女を騙り、また我が国の宝を盗んだバルフの罪は重いぞ!」

国王が立ち上がりダリアンを指差した。

衛兵がダリアンの首に剣を突きつけた。

「お待ち下さい、いったい……」
「バルフヘ兵を送る」

王子がダリアンの耳元で囁いた。

「そんな!……お止めください、私の命に免じて!」
「お前の命などに何の価値もないわ。……だが、そうだな。退屈しのぎにはなるか」
「?」
「この娘が連れて来た二人をここへ」

すぐに扉の外で待っていたスラオシャが連れてこられた。

「お前、この娘の変わりに国へ戻り、我が国の宝を取って戻れ。期限は次の満月の晩。まぁ、後4、5日というところか」




作業用BGM   EVERGLOW―PLAYER
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