17 / 117
第1幕 囚われた偽りの巫女
棘のパティオ
しおりを挟む「あっつ!」
アデルの手からグラスが滑り、絨毯に転がった。
「大丈夫!すぐに冷やさなきゃ!!」
「全然、大丈夫!たいしたことないよ」
「だめよっ!傷でも残ったら……」
ダリアンは血相を変えて、アデルの腕を掴んだ。
「いいんだって」
「よくないの!」
ダリアンはアデルの腕を引っ張り水盤へと引っ張っていった。
「良くないの!あなたに傷をつけちゃいけない!!」
ダリアンは正気を失ったように、同じ言葉を繰り返していた。
「放して!!」
アデルが姉の手を振りほどいた。
「姉さん、僕は大丈夫だよ!ほら、なんともないって……」
アデルは自分の手を姉の目の前にかざしてみせた。
「本当に?」
「うん、大丈夫」
ダリアンは水盤の縁に手をかけたまま、ヨロヨロと地面へ膝を付いた。
「姉さん……あの日、森で何があったの?」
「……」
「だって、あの日から姉さんはリュトンを使わないじゃないか」
「リュトンは特別な時以外に使っちゃいけないの」
ダリアンは弱々しく答え下を向いた。
「おかしいよ、姉さんはしゅっちゅうジンを呼び出してたじゃないか」
「だから、そういうことはもうやめたの」
「……わかった、僕はまだ子供だから信用ならないんだね」
ダリアンは弟を見上げ、首をふった。
「そうじゃないわ……」
「もう、いいよ。どうしても行くってことだね」
「決まったことよ」
「……もし、イルファンが約束を反故にしたら、姉さんがいようと父上はやるべきことをするよ」
「それは当然だわ」
「それで、いいんだね?」
「ええ、覚悟なら出来てるから」
「……わかったよ」
アデルは最後に大きく頷きパティオから去って行った。
その日以来彼はとうとう1度もダリアンの前に現れなかった。
作業用BGM CHUNGHA―GOTTA GO
0
お気に入りに追加
7
あなたにおすすめの小説
セクスカリバーをヌキました!
桂
ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。
国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。
ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……
異世界複利! 【1000万PV突破感謝致します】 ~日利1%で始める追放生活~
蒼き流星ボトムズ
ファンタジー
クラス転移で異世界に飛ばされた遠市厘(といち りん)が入手したスキルは【複利(日利1%)】だった。
中世レベルの文明度しかない異世界ナーロッパ人からはこのスキルの価値が理解されず、また県内屈指の低偏差値校からの転移であることも幸いして級友にもスキルの正体がバレずに済んでしまう。
役立たずとして追放された厘は、この最強スキルを駆使して異世界無双を開始する。
解体の勇者の成り上がり冒険譚
無謀突撃娘
ファンタジー
旧題:異世界から呼ばれた勇者はパーティから追放される
とあるところに勇者6人のパーティがいました
剛剣の勇者
静寂の勇者
城砦の勇者
火炎の勇者
御門の勇者
解体の勇者
最後の解体の勇者は訳の分からない神様に呼ばれてこの世界へと来た者であり取り立てて特徴らしき特徴などありません。ただひたすら倒したモンスターを解体するだけしかしません。料理などをするのも彼だけです。
ある日パーティ全員からパーティへの永久追放を受けてしまい勇者の称号も失い一人ギルドに戻り最初からの出直しをします
本人はまったく気づいていませんでしたが他の勇者などちょっとばかり煽てられている頭馬鹿なだけの非常に残念な類なだけでした
そして彼を追い出したことがいかに愚かであるのかを後になって気が付くことになります
そしてユウキと呼ばれるこの人物はまったく自覚がありませんが様々な方面の超重要人物が自らが頭を下げてまでも、いくら大金を支払っても、いくらでも高待遇を約束してまでも傍におきたいと断言するほどの人物なのです。
そうして彼は自分の力で前を歩きだす。
祝!書籍化!
感無量です。今後とも応援よろしくお願いします。
アルカディア・クロニクル ゲーム世界にようこそ!
織部
ファンタジー
記憶を失った少年アキラ、目覚めたのはゲームの世界だった!
ナビゲーターの案内で進む彼は、意思を持ったキャラクターたちや理性を持つ魔物と対峙しながら物語を進める。
新たなキャラクターは、ガチャによって、仲間になっていく。
しかし、そのガチャは、仕組まれたものだった。
ナビゲーターの女は、誰なのか? どこに存在しているのか。
一方、妹・山吹は兄の失踪の秘密に迫る。
異世界と現実が交錯し、運命が動き出す――群像劇が今、始まる!
小説家になろう様でも連載しております
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/light_novel.png?id=7e51c3283133586a6f12)
立花家へようこそ!
由奈(YUNA)
ライト文芸
私が出会ったのは立花家の7人家族でした・・・――――
これは、内気な私が成長していく物語。
親の仕事の都合でお世話になる事になった立花家は、楽しくて、暖かくて、とっても優しい人達が暮らす家でした。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
【本編完結済み/後日譚連載中】巻き込まれた事なかれ主義のパシリくんは争いを避けて生きていく ~生産系加護で今度こそ楽しく生きるのさ~
みやま たつむ
ファンタジー
【本編完結しました(812話)/後日譚を書くために連載中にしています。ご承知おきください】
事故死したところを別の世界に連れてかれた陽キャグループと、巻き込まれて事故死した事なかれ主義の静人。
神様から強力な加護をもらって魔物をちぎっては投げ~、ちぎっては投げ~―――なんて事をせずに、勢いで作ってしまったホムンクルスにお店を開かせて面倒な事を押し付けて自由に生きる事にした。
作った魔道具はどんな使われ方をしているのか知らないまま「のんびり気ままに好きなように生きるんだ」と魔物なんてほっといて好き勝手生きていきたい静人の物語。
「まあ、そんな平穏な生活は転移した時点で無理じゃけどな」と最高神は思うのだが―――。
※「小説家になろう」と「カクヨム」で同時掲載しております。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
惣菜パン無双 〜固いパンしかない異世界で美味しいパンを作りたい〜
甲殻類パエリア
ファンタジー
どこにでもいる普通のサラリーマンだった深海玲司は仕事帰りに雷に打たれて命を落とし、異世界に転生してしまう。
秀でた能力もなく前世と同じ平凡な男、「レイ」としてのんびり生きるつもりが、彼には一つだけ我慢ならないことがあった。
——パンである。
異世界のパンは固くて味気のない、スープに浸さなければ食べられないものばかりで、それを主食として食べなければならない生活にうんざりしていた。
というのも、レイの前世は平凡ながら無類のパン好きだったのである。パン好きと言っても高級なパンを買って食べるわけではなく、さまざまな「菓子パン」や「惣菜パン」を自ら作り上げ、一人ひっそりとそれを食べることが至上の喜びだったのである。
そんな前世を持つレイが固くて味気ないパンしかない世界に耐えられるはずもなく、美味しいパンを求めて生まれ育った村から旅立つことに——。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる