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第1幕 囚われた偽りの巫女
棘のパティオ
しおりを挟む「あっつ!」
アデルの手からグラスが滑り、絨毯に転がった。
「大丈夫!すぐに冷やさなきゃ!!」
「全然、大丈夫!たいしたことないよ」
「だめよっ!傷でも残ったら……」
ダリアンは血相を変えて、アデルの腕を掴んだ。
「いいんだって」
「よくないの!」
ダリアンはアデルの腕を引っ張り水盤へと引っ張っていった。
「良くないの!あなたに傷をつけちゃいけない!!」
ダリアンは正気を失ったように、同じ言葉を繰り返していた。
「放して!!」
アデルが姉の手を振りほどいた。
「姉さん、僕は大丈夫だよ!ほら、なんともないって……」
アデルは自分の手を姉の目の前にかざしてみせた。
「本当に?」
「うん、大丈夫」
ダリアンは水盤の縁に手をかけたまま、ヨロヨロと地面へ膝を付いた。
「姉さん……あの日、森で何があったの?」
「……」
「だって、あの日から姉さんはリュトンを使わないじゃないか」
「リュトンは特別な時以外に使っちゃいけないの」
ダリアンは弱々しく答え下を向いた。
「おかしいよ、姉さんはしゅっちゅうジンを呼び出してたじゃないか」
「だから、そういうことはもうやめたの」
「……わかった、僕はまだ子供だから信用ならないんだね」
ダリアンは弟を見上げ、首をふった。
「そうじゃないわ……」
「もう、いいよ。どうしても行くってことだね」
「決まったことよ」
「……もし、イルファンが約束を反故にしたら、姉さんがいようと父上はやるべきことをするよ」
「それは当然だわ」
「それで、いいんだね?」
「ええ、覚悟なら出来てるから」
「……わかったよ」
アデルは最後に大きく頷きパティオから去って行った。
その日以来彼はとうとう1度もダリアンの前に現れなかった。
作業用BGM CHUNGHA―GOTTA GO
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