文化祭劇の脚本が異世界に繋がっちゃって、モブキャラのまんま、イケメン王子の前にブッ飛ばされたんだけど?!

蟻の背中

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第1幕 囚われた偽りの巫女

安い戯れ言を口にした者

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「私のこの鶏みたいな高い声じゃ、すぐに王女様じゃないってわかってしまいますからおいそれと答えることも出来ません、こうやって頭をふって、こんなふうに嫌々ってね、そうやって頭と手をふるのが精一杯でした」
「それで?」
「御膳係もちょっと不思議そうでしたけど、でもなんとかやり過ごしましたって!」
「すごいっ!」

ミーナはしゃべりながら、ベールを外し、レースと刺繍が細かく施された絹の長衣とズボンを次々に脱いでいった。
またダリアンも質素な木綿の長衣とズボンを脱ぎ、ミーナが脱いだ服をさっさと身につけていく。

「凄くなんかないです!もし、こんな事がバレたら大事なんですから!!それに王女様!もっとお早くお戻りになるはずじゃなかったですか!」

お互いの服をすっかり交換しあうと、ミーナはダリアンの長い琥珀色の髪を櫛で丁寧に梳き始めた。それがあらかた終わると、今度は手際よく頭の高い位置でまとめ、ひとつにきっちり結い上げた。

「あら、そんなに遅くなかったはずよ、ほらまだスープだって湯気がたってる、美味しそうね」

ダリアンは食事用の薄い絨毯の上に並べられた
豪勢な料理の前にあぐらをかいた。
「まだ、飾りが付いてないんです!」

ミーナはダリアンを追いかけ、髪に薔薇の花を模した金の髪留めを飾った。

「何から食べようかしら?」

ダリアンからスプーンを取り上げたミーナは、自分の指から外した大きな宝石のついた指輪を彼女の人差し指から順に嵌めていった。
そして再びスプーンを握らせる。

「それで、バザールはいかがでしたか?」
「とても楽しかったの、香屋の主人が私にべっぴんさん、なんて言ったの!」

続いて自分の耳から外した、魚の鱗のような耳飾りをダリアンの耳たぶへ付け直した。

「まぁ、なんて無礼な!よりにもよって王女様に向かって、そんな安っぽい言葉を使うなんて!」

ダリアンの頭に小ぶりなティアラを差しこむと、忘れたものがないかを確認するため、ミーナは最後についっと主君を眺めた。

「今まで自分の容姿について誰かに誉められたことなんてなかったから」
「当たり前です!畏れ多い。今度そんなことを言われそうになったら、私が耳を塞いで差し上げます!」

ダリアンはフフフっと控えめに笑った。

「あなたは、本当におもしろいわ。おかげで嫌なことも忘れられそう」
「嫌なことが?」

(俺のタイプだから助けた)

不意に、あのふざけた男の顔が蘇った。
ダリアンはそれを追い出そうと頭を振った。
(あんな男の戯れ言を気に留めるなんて)

「いいえ、なんでもないの。外のスラオシャを呼んで、一緒に食べましょう」
「あれはどうせ呼んだって来ませんよ」
「知ってるけど、でも声をかけてみて」
「かしこまりました、呼んで参ります」
「ミーナ」

ダリアンは部屋から出かけたミーナを呼び止めた。

「はい?」
「次は……」



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