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第1章 異世界への扉
D―0 文化祭当日
しおりを挟む担任と一緒に教室へ滑り込み、なんとか遅刻はせずにすんだ。大量に流れ出る汗をタオルで拭いていたら、宣伝用のウチワを渡された。
「3―A 不思議の国の千一夜」
というアラビアン調のフォントにキラキラしたイラスト。なかなかお洒落だ。
机を並べ作った舞台の前で、担任が出席を取り、注意事項を伝えた。
「では、最優秀賞を目指して頑張りましょう!」
担任が出ていくと、今度はシミズがあれこれと指示を伝える。
窓の外の校庭には、たくさんのお客さんが並んで待機していた。
うちの学校の文化祭は近隣でも有名だ。
毎年数千人規模の来場者があって、なかでも3年生のみが出来る演劇やミュージカルは、レベルが高く、これ目当てにわざわざ県外からやって来る人もいるくらいなのだ。
各クラス1日、5公演。
座席を確保するには、朝早くから並ぶ必要がある。
前評判が良くて、人気の生徒がいるクラスのチケットは、早くも午前中で売り切れてしまう。
うちのクラスのチケットが完売するかどうか、みんな気になってそわそわと落ち着かない。
そう、お客さんを呼べるかどうかは、キャスト選びも重要なのだ。
主役キャストは容姿最優先なのが暗黙の了解、というか、もうそれは伝統。
その点では、ハナは選ばれるべくして選ばれたヒロインだ。
学年でも、いや学校中でもハナほど綺麗な子はいない。
すでに衣装に着替え、メイクまで終えているハナは、やっぱり華があってかわいい。
プリンセスジャスミン風な衣装に、キラキラと揺れて輝くアクセサリー。少しきつめなメイクもハナにあっている。
シミズの話を聞いているハナの視線が、ふとこっちに向けられた。私は慌てて前を向いて、そしたら今度はシミズと目があった。
昨日のリハでの変更点や、注意事項をスラスラと話しているシミズ、今日はとても頼もしく見えるな。
「大丈夫か?」
話を終え舞台から降りてきたシミズが、私の側にやって来た。
「えっ?」
「目の下にクマ出来てる」
そう言って私の顔に向かってシミズの指が伸びてきた。
デコピンでもされるのかと思って身構えたら、おでこの辺りに触れただけだった。
「スパンコールが」
シミズの指先に赤い星形のスパンコールがのっかっていた。
「やだ、恥ずかしっ」
家からつけたまま電車に乗ってたのか。
「まっ、楽しんでやろうぜ。高校最後の文化祭だし」
シミズが丸めた台本でポンと肩を叩いて言った。
あれ?
なんか変だな。
シミズってこんな優しいキャラだったっけ?
作業用BGM SVT vocalteem 風車
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