文化祭劇の脚本が異世界に繋がっちゃって、モブキャラのまんま、イケメン王子の前にブッ飛ばされたんだけど?!

蟻の背中

文字の大きさ
上 下
5 / 117
第1章 異世界への扉

DAY ―1 気分下がる文化祭前日

しおりを挟む


「まっ、その辺でいいか」

外廊下の壁に長いポスターを張り付け終わると、シミズが仁王立ちでチェックする。

ポスター係の人がほとんど集まらなくて、ほぼ私一人で作った力作ですよ。
文句は言わせませんて。

「シミズー」
教室の中から誰かに呼ばれ、彼はひょいっと部屋の中に入っていった。
まぁ、文句は言われなかったけど、ちょっとくらい感想言ってくれるかとうっすら期待したんだけど。
なかったな……。

「まぁ、なかなかいいじゃん」
誰も褒めてくれんので、自分で言ってみる。

「ツキ、ちょっと来て、衣装合わせたい」
私も教室に呼ばれる。

「これ……は」
「砂漠の国のお姫様……の侍女①」

制服の上から着せられたのは、つるんと光るサテン素材のお衣装だった。
長袖にVネックの丈長上着、それに同色の長ズボン。
色は薄いピンクで、その上に黒ベロアのちっさいベストだ。
袖口全部にゴム入れたら、あれだ、ピエロ?
けど、せっかく一生懸命作ってくれたんだから、何も言わない。
家庭科2の私には、到底作れないしね。

「おっ、サイズぴった。後はスパンとかリボンとか適当につけてよ」
「はい?」
「これっ、色々入ってるから」

渡された透明のジップロックには、スパンコールやら細いリボンやらのキラキラ素材がたっぷりと入っていた。

「自分で?こういうの無理なのに……」
「こっちだって、そこまでやってられないの」
「本番は……」
「明日だけど、何か?」
「そっ、そうだよね、わかってます当然」

じゃあ、もっと早く渡してくれればいいじゃん!
集まってもしゃべったりお菓子食べたりして無駄に時間潰してたの知ってる。
せっぱつまって投げてる感ありすぎるよ、って心の中で悪態つくだけ。

「はーい、キャストの人集まってー、最後のリハするよー」


リハが終わったのが9時で、家に着くと10時をまわってた。
ここから衣装作りか……
部屋の時計はもう10時過ぎてる。
「ええ、やりますとも!」

と誰に言うでもなく、気合いをいれてみる。
チクチク、イタっ!
チクチク、プスっ、イタっ!
指先はすぐに絆創膏だらけになった。

台本をペラペラとめくり、自分の台詞を確認する。
さっきのリハで、テンパり気味の舞台監督(つまりシミズなんだけど)から何度もダメ出しをくらい、たった1行しかない台詞には赤ボールペンで線が引かれている。

「ここは大事な場面で、丸谷の台詞すごい重要だから」

あまりのヘタレ演技に呆れたシミズが、私の台本を奪い取り勝手に引いた線だ。


「ツキ~起きないの?!」
階下から聞こえてくる母の声で飛び起きた。
ほっぺたから、パラパラとスパンコールやビーズの粒が落っこちた。
不覚にも飾り付けをしながら寝落ちしたようだ。

時計を見ると家を出なきゃいけない時間はとっくに過ぎている。

「ヤっバっ!」




作業用BGM  OH MY GIRL ―DOLPHIN
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

セクスカリバーをヌキました!

ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。 国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。 ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

完全なる飼育

浅野浩二
恋愛
完全なる飼育です。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

追放された薬師は騎士と王子に溺愛される 薬を作るしか能がないのに、騎士団の皆さんが離してくれません!

沙寺絃
ファンタジー
唯一の肉親の母と死に別れ、田舎から王都にやってきて2年半。これまで薬師としてパーティーに尽くしてきた16歳の少女リゼットは、ある日突然追放を言い渡される。 「リゼット、お前はクビだ。お前がいるせいで俺たちはSランクパーティーになれないんだ。明日から俺たちに近付くんじゃないぞ、このお荷物が!」 Sランクパーティーを目指す仲間から、薬作りしかできないリゼットは疫病神扱いされ追放されてしまう。 さらにタイミングの悪いことに、下宿先の宿代が値上がりする。節約の為ダンジョンへ採取に出ると、魔物討伐任務中の王国騎士団と出くわした。 毒を受けた騎士団はリゼットの作る解毒薬に助けられる。そして最新の解析装置によると、リゼットは冒険者としてはFランクだが【調合師】としてはSSSランクだったと判明。騎士団はリゼットに感謝して、専属薬師として雇うことに決める。 騎士団で認められ、才能を開花させていくリゼット。一方でリゼットを追放したパーティーでは、クエストが失敗続き。連携も取りにくくなり、雲行きが怪しくなり始めていた――。

《完》わたしの刺繍が必要?無能は要らないって追い出したのは貴方達でしょう?

桐生桜月姫
恋愛
『無能はいらない』 魔力を持っていないという理由で婚約破棄されて従姉妹に婚約者を取られたアイーシャは、実は特別な力を持っていた!? 大好きな刺繍でわたしを愛してくれる国と国民を守ります。 無能はいらないのでしょう?わたしを捨てた貴方達を救う義理はわたしにはございません!! ******************* 毎朝7時更新です。

【完結】公爵家の末っ子娘は嘲笑う

たくみ
ファンタジー
 圧倒的な力を持つ公爵家に生まれたアリスには優秀を通り越して天才といわれる6人の兄と姉、ちやほやされる同い年の腹違いの姉がいた。  アリスは彼らと比べられ、蔑まれていた。しかし、彼女は公爵家にふさわしい美貌、頭脳、魔力を持っていた。  ではなぜ周囲は彼女を蔑むのか?                        それは彼女がそう振る舞っていたからに他ならない。そう…彼女は見る目のない人たちを陰で嘲笑うのが趣味だった。  自国の皇太子に婚約破棄され、隣国の王子に嫁ぐことになったアリス。王妃の息子たちは彼女を拒否した為、側室の息子に嫁ぐことになった。  このあつかいに笑みがこぼれるアリス。彼女の行動、趣味は国が変わろうと何も変わらない。  それにしても……なぜ人は見せかけの行動でこうも勘違いできるのだろう。 ※小説家になろうさんで投稿始めました

都合のいい女は卒業です。

火野村志紀
恋愛
伯爵令嬢サラサは、王太子ライオットと婚約していた。 しかしライオットが神官の娘であるオフィーリアと恋に落ちたことで、事態は急転する。 治癒魔法の使い手で聖女と呼ばれるオフィーリアと、魔力を一切持たない『非保持者』のサラサ。 どちらが王家に必要とされているかは明白だった。 「すまない。オフィーリアに正妃の座を譲ってくれないだろうか」 だから、そう言われてもサラサは大人しく引き下がることにした。 しかし「君は側妃にでもなればいい」と言われた瞬間、何かがプツンと切れる音がした。 この男には今まで散々苦労をかけられてきたし、屈辱も味わってきた。 それでも必死に尽くしてきたのに、どうしてこんな仕打ちを受けなければならないのか。 だからサラサは満面の笑みを浮かべながら、はっきりと告げた。 「ご遠慮しますわ、ライオット殿下」

異世界複利! 【1000万PV突破感謝致します】 ~日利1%で始める追放生活~

蒼き流星ボトムズ
ファンタジー
クラス転移で異世界に飛ばされた遠市厘(といち りん)が入手したスキルは【複利(日利1%)】だった。 中世レベルの文明度しかない異世界ナーロッパ人からはこのスキルの価値が理解されず、また県内屈指の低偏差値校からの転移であることも幸いして級友にもスキルの正体がバレずに済んでしまう。 役立たずとして追放された厘は、この最強スキルを駆使して異世界無双を開始する。

処理中です...