文化祭劇の脚本が異世界に繋がっちゃって、モブキャラのまんま、イケメン王子の前にブッ飛ばされたんだけど?!

蟻の背中

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第1章 異世界への扉

初めて話した同級生

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そういえば、この予備校には同級生の清水志貴もいたんだった。

シミズに名字呼ばれたの初めてなんだけど。
私の名前、知ってるんだ。
自慢じゃないけど、クラスでは地味女組。
いや、プライベートでも好きな人から見たら、彼女の友達の一人っていう、最強モブキャラだったわ。

笑える。

「いやぁ、ちょっと落ち着くなぁー、ここ。こういう狭いとこって」

「猫かよ」
シミズは呆れたようにそれだけ言って、すぐに去っていった。

同じクラスのシミズはイケメンだけど、話すとなぞの威圧感とオーラがあって、女子はあんまり話しかけないタイプの人だ。


柱の影からそっと掲示板のほうを覗くと、もうハルキ先輩はいなかった。

「なんか変だな」
「へっ?!」

突然、背後から声をかけられ、ぎょっとする。
再びのシミズだった。
彼はわざわざ柱の裏から回り込んで来たようだ。柱に張り付いている私を覗きこんでいる。

「前まで、ストーカーみたいに川名先輩にまとわりついてたのに」
「ナッ、ナニイッテンノ」
思わず日本語がカタコトになった。

まさか、シミズにそんなとこ見られてたのか。
私がハルキ先輩を好きだったこと、バレバレだったのか。

「あっ、そういえば進んでる?」
「?」
「脚本、文化祭の」
「ああ、脚本」
「たっ、大変だよね。このくそ忙しい時期に勉強以外のことやらされて」
「……べつに、息抜きにちょうどいい」

良かった、話題を変えられた。

「シミズ、頭良いもんね。たいしたことじゃないか。私なんて毎度D判定だし、まったく余裕ないよ」
「丸谷は、どこなの?志望校」
「……W大、でも、まぁちょっと無理っぽいっすね。ハハハ」

ただ、ハルキ先輩の後輩になりたかっただけ。
……単純な理由。
だから、もう目指す意味がない。

「シミズは、T大でしょ。もう、なんか棲む世界違うよねー。勉強が楽しいとか思っちゃう人種でしょ?」

「……いや、俺もW大行きたいと思ってる」

「えっ、あっ、そうなんだ。もったいない、シミズならT大余裕……」
そういいかけて、シミズがあんまり真顔で見つめてくるんで、言っちゃいけない話しだったかと、慌てて口をつぐんだ。

「頑張れよ」

「えっ?」

シミズの口からそんな超意外な台詞が出てくるなんて驚いた。
どちらかといえば、あまり人のことなんか関心なさそうなのに。
私が先輩のこと好きだってことも気付いてたり。正直、クラスでもあまり話したことなかったから、こんなふうに声かけられるのもちょっと驚いたけど。


だからシミズの顔、こんなに近くで見たの初めてかも。
切れ長の大きな目が綺麗、透明感のあるダークブラウン。
カラコン?いや、天然ぽいな。

なんか、ちょっと、ヤバい。

―――ドキドキする。

シミズって、いったいどんな人?




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