文化祭劇の脚本が異世界に繋がっちゃって、モブキャラのまんま、イケメン王子の前にブッ飛ばされたんだけど?!

蟻の背中

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第1章 異世界への扉

受験生に恋だの愛だのはいりません!

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「あげますよ」


見たところ、路上生活者のようだった。
私はコンビニの袋をおじさんの前に差し出した。

カップルなんてクソだ!
友情なんて存在しない!
この世なんて、いっさいがっさい滅びてしまえ!!


「ほんとに?ありがとう……」

おじさんはとても大切な宝物でも手に入れたように、大事そうに袋を受けとった。

私ってどうしようもなく、しょうもない人間だな。自分が惨め過ぎて、今度は落ち込み始めた。

「お嬢さん、このお礼は必ずいつか……」

ヒュッと生暖かい風が吹いて、髪が顔に張り付いた。
髪の毛を顔からはがすと、目の前にいたはずのおじさんが、果たして姿もかたちなく消えていた。

えええ?
まさか、あのおじさんて、

―――幽霊?

……んなわけないか。



その日から夏休みの間、ハナからの連絡は何もなかった。
つまりは、見たまんまで今さら説明も言い訳もいたしません、て、そういうこと?

私から連絡するのもしゃくにさわる。
かといって「ごめんね」って謝られるのは
もっと違う。

結局、私達の友情なんてこんな程度なものだったのか。

いや、私が一方的に親友だと思ってただけだったってことかも。

そして、当たり前に世界は滅びもせず今も続いているし、受験生という日常も変わりはなく、夏期講習も大金払ってるから、やめるわけにもいかず、予備校にも来なけりゃならないわけで。

幸いなのは、ハナが同じ予備校じゃなかった、ってこと。
少なくとも、夏休みが終わるまでは顔を合わさなくてすむ。

予備校で見かけるハルキ先輩は、相変わらずカッコ良くて、自習室でハルキ先輩を探す癖もまだ全然抜けてない。

だから、ふいに目があってしまうこともある。

今みたいに。

エントランスに入ってすぐの掲示板で、ハルキ先輩が模試のポスターを剥がしていた。

短く刈り上げた襟足―――美容室にいったんですね。
ぴっちりとアイロンがけしてある白いシャツ―――きちんとしたお母さんなんですね。

前なら、そんな感じですぐに話しかけてたな。

先輩が振り返り、こちらを見た瞬間、私は歩く軌道を瞬間的に変化させ太い柱の後ろに隠れた。

「丸谷?何してんの?」

振り返ると、柱と壁の間に挟まっている私を、怪訝そうに眺めているシミズがいた。




作業用BGM  赤頬思春期―私だけがダメな恋愛
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