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百合に男の娘は挟めない
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鏡に映っているのは絶世の美少女。そしてなにより身に覚えのない顔。詰襟にプリーツスカートを着ている。何かの制服のようだ。
「あーこれ間違いなく異世界転生ですわー。トラックに轢かれっちゃったわー。女神さまの手違いだわー!」
鏡の中の美少女は額に手を当てて空を仰ぐ。銀髪に赤い瞳神秘的な雰囲気を持っているから滑稽なポーズでもとても様になっている。これが俺の今の姿であることが信じられない。
「流行りのTS転生ですか?しかしまじで勿体ないくらいの美少女ないか。いますぐにでもこの子の顔をおかずにオナニーしたいレベル。シコリティ高すぎやろ」
ヒロインに銀髪入れておけばとりあえずこけることはないというのが二次元界の定説である。そこにTS!まさに無敵!と思ったのだが、ふっと股間に違和感があった。
「何このスカートを膨らませている物体…?え?まじかよ…嘘やろ?!」
スカートの中に手を入れると、ばっちりと男性器があった。
「ふぁああああ!?まじかよ!?俺って男の娘なのぉ?!ひえぇ!!」
まさかの男の娘である。そっかこんなにかわいい子が女の子なわけがないよな。まあ俺としても女の子に転生っていうのは何かと不都合も多いので、この方がむしろありがたいのかもしれない。
「しかしマジで美少女だ…。……誰もいないし…いいよね…?」
とりあえず俺は自分の転生後の姿をおかずに滅茶苦茶賢者した。
そしてやってきた賢者タイム。冷静になった俺は今の状況を整理する。
「この状況は異世界転生でいい。問題は昔の俺が思い出せないこと」
だけど異世界に転生するってことはきっとろくでもないやつだったに違いない。よりにもよって銀髪赤目の美少女男の娘である。きっとこの姿は手違いで前世の俺を殺してしまった女神さまに頼んだチート得点の一つなんだろう。そうに決まってる。だからさぞかし業の深いディープオタだったことは想像に難くない。そんな奴の人生は思い出したくもない。
「とりあえずどんな世界か調べますかね」
今俺がいるのはワンルームのマンションの一室のように見える。テレビや冷蔵庫、レンジなどなど家電がきっちりそろっている。
「おいおいおい!かー!これは興覚めですよ!ここ絶対に中世ヨーロッパ風じゃないよ!むしろ現代よりだよ!何この食洗器と自動掃除機!!?こんなもん現代日本のご家庭にもないところが沢山あるんだぞ!!転生前より文明レベル高そうじゃん!」
つまり生産職チートでチーレム無双スローライフは一瞬にしてなしになった。素敵な未来バイバイ。
「現代っぽい世界とか何の夢もねーじゃん。はぁ。他になんかねーかな?」
ポケットやら、近くのテーブルの上やらを漁ってみた。結果出てきたのはこの世界のお金やら教科書やらだった。
「俺は学生らしいな。そして極めつけはこれか。なるほど。はやりははやりでもいわゆるゲーム転生の方だったのね」
俺は学生証を見つけた。今世の俺の顔写真と、日本語と英語の表記で学校名と名前が書いてあった。
-------------------------
学生証
ショーグネイト・アカデミー
Shogunate Academy
ユリシーズ・ルロワ
Ulysses Leroy
左記の者を本学の学生と認める
-------------------------
だそうである。ショーグネイト・アカデミーという何は心当たりがあった。
「やはりこの世界はゲーム!それもエロゲーじゃないか!!!」
エロゲーに転生とは一見すれば夢のある話である。主人公を差し置いてチートで先回りしてヒロインたちを「俺、また何かやっちゃっけど、それってすごくないってほうの意味だよな?」っていいながらパコパコしていく熱い物語が展開されるのである。だがこの世界は…。
「しかしエロゲーはエロゲーでも百合ゲーだったらどうすればいい?」
百合ゲー。女の子同士がイチャコラパコパコするエロゲー。そこに男の娘なんて入り込む余地はない。
「しかもそれがNTRゲーだったらどうすればいい?」
そしてさらにNTRゲーの要素もあったら、ましてや素質のない俺には入り込む余地がさらにない。
「しかもバトルものぉう!!」
そして異能バトルである。ますます俺に出番がなさそう。というか痛いの嫌なんですけど、逃げるのに全振りしてもいい?
「よりによって伝説のNTR百合エロゲー【Null Throne Reincarnation】の世界かよぉ!!!」
積んだ。俺の物語は始まる前から積んでしまった。この世界は激しいバトルとハードなNTR百合エッチが繰り広げられる厳しい世界である。最初このゲームは百合エロRPGとして発表された。様々な異能を駆使してダンジョンを攻略したり、モンスターを退治して女主人公の【ルウェリン・ヒメネス】を育てて世界を救うオーソドックスなRPG。だが蓋を開けると衒学的なシナリオと、必ず発生する負けイベントで必ずNTRてしまうヒロインたち。そしてラストで明かされるこの世界の絶望的な秘密と、その末路…。あまたのプレイヤーの情緒をぐちゃぐちゃにして、脳を破壊しつくた伝説の神ゲー。このゲームによってNTRと百合がNGになってしまったものたちはあまりにもたくさんいたそうである。前世の記憶はないくせにゲーム知識は覚えてるのwhy?まあそれはいいとしてもだ。
「俺の存在自体がどうしようもなく爆弾じゃねぇか…!」
このNTR百合ゲーの世界。処占厨に無駄に配慮しているのか登場人物が全員女なのである。というか男なんて設定レベルで誰一人として存在しないはずなのである。この世界には女しかいないはずなのだ。なのに俺はさっき自分の顔でごしごししちゃうくらいには男の娘である。
「やばいよぅ!処占厨に殺されるぅ!世界の修正力は絶対に処女厨!昨今はヒロインに男兄弟がいた時点でアウトなくらいに厳しい時代だ!!この世界じゃ俺の存在そのものが危ない!」
俺自身は間違いなくゲームの登場人物の中にはいない。ネームドキャラではない。これがモブの女の子キャラなら特に問題はないのだが、男の娘となると話は違くなる。どんな目に合うかわかったもんじゃない!!
「逃げるしかない!だけどどうやって?」
今俺がいるのは物語の中心となる都市、幕都・祷京 である。この街は巨大な壁に囲まれているうえ、外に出てもモンスターの跋扈する荒野が広がるのみである。
「だめじゃん。積んでるじゃん…くそ…転生リセマラしちゃだめ?」
とりあえずトラック探して突っ込む?そしたら女神さまの手違いでまたチート特典選んで今度こそ温い世界にいけない?
「落ち着け。いったん落ち着こう。まず一つ。俺は主人公と同じ学校に通う予定にあるらしい」
ふわっとしてかつ雑な異世界転生のお陰できっとこの世界の学校に通うだけの身分とかはちゃんとあるのだろう。つまり生活には困らない。
「そうだ!!主人公の近くに行かなきゃいいだけじゃないか!!あはは!そしてシナリオが完了するまでのらりくらりと生き延びればいい!はは!超楽勝じゃん!」
あとは女しかいない世界で男の娘だとバレなきゃいいだけだ。なんだ前提条件を考えれば余裕じゃん。楽勝楽勝。
「あーなんだ。悩んで損した。お茶でも入れて一服するか!」
俺がルンルン気分でお茶を入れている時だった。ピンポーンと玄関のベルが鳴った。
「ん?通販でも届いた?覚えがないんだけど」
俺は火を止めて、玄関に向かいドアを開ける。するとそこには金髪碧眼でおっぱいが大きくてすごい美少女が立っていた。俺と同じ制服を着ている。
「本日、隣に越してきたルウェリン・ヒメネスです。これからよろしくお願いいたします」
金髪の女の子は両手で俺に引っ越しそばを差し出してきた。その顔には見覚えがあるし、今はっきりと自己紹介した。よりにもよって主人公さんが俺の隣に住んでやがった!!
「あれ?あのもしかしなくても同じ学校ですよね!私と同じ新入生ですよね!?きゃー!お隣さんが同級生とからっきーだなぁあはは!」
ルウェリンは無邪気に喜んでいるが、俺は気が気じゃなかった。こうして俺のシナリオから逃げる作戦は一瞬にして破綻したのである。
つづく!
「あーこれ間違いなく異世界転生ですわー。トラックに轢かれっちゃったわー。女神さまの手違いだわー!」
鏡の中の美少女は額に手を当てて空を仰ぐ。銀髪に赤い瞳神秘的な雰囲気を持っているから滑稽なポーズでもとても様になっている。これが俺の今の姿であることが信じられない。
「流行りのTS転生ですか?しかしまじで勿体ないくらいの美少女ないか。いますぐにでもこの子の顔をおかずにオナニーしたいレベル。シコリティ高すぎやろ」
ヒロインに銀髪入れておけばとりあえずこけることはないというのが二次元界の定説である。そこにTS!まさに無敵!と思ったのだが、ふっと股間に違和感があった。
「何このスカートを膨らませている物体…?え?まじかよ…嘘やろ?!」
スカートの中に手を入れると、ばっちりと男性器があった。
「ふぁああああ!?まじかよ!?俺って男の娘なのぉ?!ひえぇ!!」
まさかの男の娘である。そっかこんなにかわいい子が女の子なわけがないよな。まあ俺としても女の子に転生っていうのは何かと不都合も多いので、この方がむしろありがたいのかもしれない。
「しかしマジで美少女だ…。……誰もいないし…いいよね…?」
とりあえず俺は自分の転生後の姿をおかずに滅茶苦茶賢者した。
そしてやってきた賢者タイム。冷静になった俺は今の状況を整理する。
「この状況は異世界転生でいい。問題は昔の俺が思い出せないこと」
だけど異世界に転生するってことはきっとろくでもないやつだったに違いない。よりにもよって銀髪赤目の美少女男の娘である。きっとこの姿は手違いで前世の俺を殺してしまった女神さまに頼んだチート得点の一つなんだろう。そうに決まってる。だからさぞかし業の深いディープオタだったことは想像に難くない。そんな奴の人生は思い出したくもない。
「とりあえずどんな世界か調べますかね」
今俺がいるのはワンルームのマンションの一室のように見える。テレビや冷蔵庫、レンジなどなど家電がきっちりそろっている。
「おいおいおい!かー!これは興覚めですよ!ここ絶対に中世ヨーロッパ風じゃないよ!むしろ現代よりだよ!何この食洗器と自動掃除機!!?こんなもん現代日本のご家庭にもないところが沢山あるんだぞ!!転生前より文明レベル高そうじゃん!」
つまり生産職チートでチーレム無双スローライフは一瞬にしてなしになった。素敵な未来バイバイ。
「現代っぽい世界とか何の夢もねーじゃん。はぁ。他になんかねーかな?」
ポケットやら、近くのテーブルの上やらを漁ってみた。結果出てきたのはこの世界のお金やら教科書やらだった。
「俺は学生らしいな。そして極めつけはこれか。なるほど。はやりははやりでもいわゆるゲーム転生の方だったのね」
俺は学生証を見つけた。今世の俺の顔写真と、日本語と英語の表記で学校名と名前が書いてあった。
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学生証
ショーグネイト・アカデミー
Shogunate Academy
ユリシーズ・ルロワ
Ulysses Leroy
左記の者を本学の学生と認める
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だそうである。ショーグネイト・アカデミーという何は心当たりがあった。
「やはりこの世界はゲーム!それもエロゲーじゃないか!!!」
エロゲーに転生とは一見すれば夢のある話である。主人公を差し置いてチートで先回りしてヒロインたちを「俺、また何かやっちゃっけど、それってすごくないってほうの意味だよな?」っていいながらパコパコしていく熱い物語が展開されるのである。だがこの世界は…。
「しかしエロゲーはエロゲーでも百合ゲーだったらどうすればいい?」
百合ゲー。女の子同士がイチャコラパコパコするエロゲー。そこに男の娘なんて入り込む余地はない。
「しかもそれがNTRゲーだったらどうすればいい?」
そしてさらにNTRゲーの要素もあったら、ましてや素質のない俺には入り込む余地がさらにない。
「しかもバトルものぉう!!」
そして異能バトルである。ますます俺に出番がなさそう。というか痛いの嫌なんですけど、逃げるのに全振りしてもいい?
「よりによって伝説のNTR百合エロゲー【Null Throne Reincarnation】の世界かよぉ!!!」
積んだ。俺の物語は始まる前から積んでしまった。この世界は激しいバトルとハードなNTR百合エッチが繰り広げられる厳しい世界である。最初このゲームは百合エロRPGとして発表された。様々な異能を駆使してダンジョンを攻略したり、モンスターを退治して女主人公の【ルウェリン・ヒメネス】を育てて世界を救うオーソドックスなRPG。だが蓋を開けると衒学的なシナリオと、必ず発生する負けイベントで必ずNTRてしまうヒロインたち。そしてラストで明かされるこの世界の絶望的な秘密と、その末路…。あまたのプレイヤーの情緒をぐちゃぐちゃにして、脳を破壊しつくた伝説の神ゲー。このゲームによってNTRと百合がNGになってしまったものたちはあまりにもたくさんいたそうである。前世の記憶はないくせにゲーム知識は覚えてるのwhy?まあそれはいいとしてもだ。
「俺の存在自体がどうしようもなく爆弾じゃねぇか…!」
このNTR百合ゲーの世界。処占厨に無駄に配慮しているのか登場人物が全員女なのである。というか男なんて設定レベルで誰一人として存在しないはずなのである。この世界には女しかいないはずなのだ。なのに俺はさっき自分の顔でごしごししちゃうくらいには男の娘である。
「やばいよぅ!処占厨に殺されるぅ!世界の修正力は絶対に処女厨!昨今はヒロインに男兄弟がいた時点でアウトなくらいに厳しい時代だ!!この世界じゃ俺の存在そのものが危ない!」
俺自身は間違いなくゲームの登場人物の中にはいない。ネームドキャラではない。これがモブの女の子キャラなら特に問題はないのだが、男の娘となると話は違くなる。どんな目に合うかわかったもんじゃない!!
「逃げるしかない!だけどどうやって?」
今俺がいるのは物語の中心となる都市、幕都・祷京 である。この街は巨大な壁に囲まれているうえ、外に出てもモンスターの跋扈する荒野が広がるのみである。
「だめじゃん。積んでるじゃん…くそ…転生リセマラしちゃだめ?」
とりあえずトラック探して突っ込む?そしたら女神さまの手違いでまたチート特典選んで今度こそ温い世界にいけない?
「落ち着け。いったん落ち着こう。まず一つ。俺は主人公と同じ学校に通う予定にあるらしい」
ふわっとしてかつ雑な異世界転生のお陰できっとこの世界の学校に通うだけの身分とかはちゃんとあるのだろう。つまり生活には困らない。
「そうだ!!主人公の近くに行かなきゃいいだけじゃないか!!あはは!そしてシナリオが完了するまでのらりくらりと生き延びればいい!はは!超楽勝じゃん!」
あとは女しかいない世界で男の娘だとバレなきゃいいだけだ。なんだ前提条件を考えれば余裕じゃん。楽勝楽勝。
「あーなんだ。悩んで損した。お茶でも入れて一服するか!」
俺がルンルン気分でお茶を入れている時だった。ピンポーンと玄関のベルが鳴った。
「ん?通販でも届いた?覚えがないんだけど」
俺は火を止めて、玄関に向かいドアを開ける。するとそこには金髪碧眼でおっぱいが大きくてすごい美少女が立っていた。俺と同じ制服を着ている。
「本日、隣に越してきたルウェリン・ヒメネスです。これからよろしくお願いいたします」
金髪の女の子は両手で俺に引っ越しそばを差し出してきた。その顔には見覚えがあるし、今はっきりと自己紹介した。よりにもよって主人公さんが俺の隣に住んでやがった!!
「あれ?あのもしかしなくても同じ学校ですよね!私と同じ新入生ですよね!?きゃー!お隣さんが同級生とからっきーだなぁあはは!」
ルウェリンは無邪気に喜んでいるが、俺は気が気じゃなかった。こうして俺のシナリオから逃げる作戦は一瞬にして破綻したのである。
つづく!
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