創作短編小説

結城時朗

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希望

孤独

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1人が楽だ。誰かと一緒にいると無理をして笑顔を作っている自分がいる。
もちろん、友達と居る時は楽しいと思うが、ふとした瞬間に疲れたと感じる事が多い。
小学生の時は微塵も感じなかったが、歳を重ねる毎に、いつしか
【疲れた】と感じる事が多くなった。
文字通りの疲れたならまだ良いが、自分が感じている【疲れた】は生きていること。

ある日、上司である眞衣さんに呼ばれた。取引先の前以外は、眞衣呼びを徹底させている。どうも彼女の指導方法らしい。上司と部下という垣根を無くすためだそうだ。

眞衣「剛士、ちょっと来て!」
剛士「なんですか?」

眞衣と一緒に打ち合わせ部屋に入る

眞衣「最近、元気ないみたいだけどなんかあったの?」
剛士「何も無いですよ」
眞衣「無理しなくて良いのよ。あなた最近、うわの空になること多いように思うけど」
剛士「そうですか?」
眞衣「仕事の成績も優秀、ミスもほとんどない。だから気になるのよ」
剛士「・・・」

剛士の話を聞いていく眞衣

剛士「別に死にたいとか、そういうのは無いですよ!  ただ1人でいるのが楽っていうか。  もちろん、みんなといるのは楽しいし、面白いんです。  だけど、なんて言うか、1人になった時に「何してるんだろ?」「何が目標なのかな?」「やりたいことって?」って言う気持ちになって」
眞衣「その気持ち分かるよ!  めっちゃ分かる!」
剛士「えっ?」
眞衣「私もね、そんな時あったのよ!  何?意外って顔してるけど」
剛士「そういうの無縁だと思ってました」
眞衣「失礼しちゃうわね! 私だってそういうことになることぐらいあるわよ!」
剛士「へー」

過去を話始める眞衣。

眞衣「そんな時にね、当時の先輩がね、沢山飲みに連れて行ってくれてね。 悩み相談も、恋話もいろんな事教えてくれたんだけどね」
剛士「その先輩は?」
眞衣「その先輩ね・・・  今、入院してるの」
剛士「入院?」
眞衣「体に鞭打って、無理やり仕事とかしてたみたい。  近くに居たのに全く気づかなくてさ。だからね、自分が上になった時は、後輩の小さな異変にも気づくようにしよう!ってね」
剛士「なんか、ありがとうございます」
眞衣「良いんだけどね、大切な人っていないの?剛士には」
剛士「大切な人? 家族とかですか?」
眞衣「それは、そうなんだけど、彼女とか」
剛士「いません!」
眞衣「実家暮しじゃないでしょ?  一人暮らしでしょ?」
剛士「ええ・・・」
眞衣「それだよ!  1人でいるからだよ! 答えのなかなか出ない自問自答してるから病むの!」

肩を組む眞衣

眞衣「そうだ!今日から家来なよ!」
剛士「はっ?誰のですか?」
眞衣「誰のって、あーしの家」
剛士「はい?  本気で言ってます?」
眞衣「嘘なんか言うわけないじゃん!」
剛士「今日【は】家来なよ!ならわかるんですよ!  今日【から】ですよ!」
眞衣「アンタには人と会話をするっていう事が大事なのよ!  これ以上1人にしてたら、次は必ず死を選ぶよ!そんな事ないって思ってるでしょうけど」
剛士「いや、でも迷惑ですよね?」
眞衣「病んで後戻りできなくなるのが迷惑」
剛士「だって、眞衣さん旦那さんいるんですよね? 同居してますよね?」
眞衣「へっ?  旦那なんかいないよ!」

大声をあげる剛士

眞衣「何をそんなに驚いてるの?」
剛士「みんな、眞衣さんは旦那さんがいるもんだと思ってますよ!」
眞衣「あ~、この指輪のせいじゃない?」

左手の薬指の指輪を見る眞衣

眞衣「あー、これ?  カモフラージュよ!」
剛士「カモフラージュ?」
眞衣「そう!  良いのか悪いのか分からないんだけどね、めちゃくちゃナンパされてた時があって、めんどくさいから結婚のフリしてたの」
剛士「ってことは、独身?」
眞衣「そうよ!  悪い?」

一方、会議室の外では、剛士の同僚である、沙耶香と博が話していた
沙耶香「ねぇ?  眞衣さんと剛士、出てくるの遅くない?」
博「チューしてたりして」
沙耶香「サイテー。 なんでそういうことしか考えられないの?」
博「冗談じゃん!」
沙耶香「冗談でも言っていいことと悪いことあるよ!  だいたい眞衣さん結婚してるし!」
博「そうなの?」
沙耶香「だって、薬指に指輪はめてるじゃん」
博「全然注目してなかったから初めて知った! ってことは?不倫?」
沙耶香「怒るよ!」
博「すみません」

再び会議室
眞衣「どうなの?」
剛士「眞衣さんが良いなら」
眞衣「まぁ、毎日じゃなくて良いけどね」
剛士「なんか、宜しくお願いします・・・」
眞衣「じゃあ、とりあえず、今夜一緒に帰るよ」

こうして、剛士と眞衣は、謎の共同生活を送ることに



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