支配するなにか

結城時朗

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第二章

西野の実験

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ーーーーー西野の家・夜ーーーーー

家に入る麻衣。
麻衣は、西野の考えが分からなかった。
ソファーに案内する西野

西野「ソファーにでも座っといて」
麻衣「ねぇ?  なんでそんなに私に肩入れするの?」
西野「ウチら、仲間やろ?」
麻衣「仲間?」
西野「嬉しいことも、悔しいことも全部乗り越えた仲間やん!  助けんでどないするん?」
麻衣「だけど、私なんかと一緒にいると危ないよ!」
西野「覚悟してるよ!」
麻衣「覚悟してるって言われても」
西野「軽蔑なんかせぇへんし、なんでそうなったんか理由聞くよ!」
麻衣「私だって理由なんか分からない!」
西野「ある日突然?」

西野にあったことを話し始める。

西野「ということは、二重人格ってこと?」
麻衣「そうかもしれない」
西野「何がきっかけで出てくるの?」
麻衣「分からない・・・」
西野「堀ちゃんを手にかけた時も分からなかったの?」
麻衣「手にかけたって・・・  私自身、記憶がないの。  もう1人の人格は、少しずつ私を支配してる」

西野は、キッチンへ向かう
麻衣はそれを目で追う
西野は、キッチンから果物ナイフを取り出す。

西野「例えば、刃物向けられたりとかは?」
麻衣「えっ?」
西野「こうやって」

ナイフを握り、麻衣に駆け寄る
喉元に狙いを定める。

麻衣「なーちゃん?  やめて!  やめて!」
西野「出てこい!もう1人の人格!」

声を低めにして麻衣を襲う西野
麻衣は両手で、必死に抵抗する

麻衣「やめてよ!  なーちゃん!」

何も変わらない麻衣に力を緩める

西野「あかんかー。  ごめん!」

ナイフを降ろす西野

麻衣「急に何?  殺されるかと思った。」
西野「殺した人間がそれ言う?  別人格出てきたら殺すつもりやったけど」
麻衣「それが目的?」

西野は微笑みながら

西野「そんなはずないやん!  だから、別人格やろ?  問題は」
麻衣「何がきっかけで出てくるか分からないのに、そんな危ないことしないで!」
西野「ごめんやで!」
麻衣「もうこれ以上、殺したくないの!」
西野「警察に出頭しなよ!」
麻衣「理由も分かってないのに、警察に行っても信じて貰えない!  頭がおかしいって思われるだけ!」

西野は何も言わなかった。


ーーーーー湾岸署・会議室ーーーーー

〇〇は、何も言わず資料を見返している。
近寄る管理官。

管理官「おい、西田。随分と余裕だな!」
〇〇「バ管理官みたいに、上で命令だけして、靴底減らさないやつよりは忙しいです」

クスクスと笑い声が聞こえる

管理官「いいか!  もし、この事件お前が犯人を捕まえなかったら、最果ての地まで飛ばしてやる!」
〇〇「ご自由に、そっちの方が気が楽だわ!」
管理官「余裕でなにより!」
〇〇「その代わり、俺が捕まえたら、あんたは何してくれんだ?」
管理官「何もするわけないだろ!  お前はバカか!」
〇〇「人に条件付けるだけ、付けてお前は何もしないのか!」
管理官「なんだ?  その言い方は!」
〇〇「まあ、いいさ!このことは、事件解決後、警視総監に報告さしてもらう」
管理官「お前ごときの、下っ端が警視総監に会えるわけがないだろう!」
〇〇「残念!  警視総監は、前の俺の上司。  んで飲み仲間だ!」

携帯を見せる〇〇
画面には、肩を組み合い、お酒を飲む写真が写っていた。

〇〇「じゃあ、聞き込み行ってくるよ!  大バ管理官!」

管理官は、机を思いっきり拳で叩く

ーーーーー西野の家・夜ーーーーー

麻衣の手足を紐で縛っている西野。

麻衣「何してるのなーちゃん!」
西野「寝てる間に、寝首を搔くことされたらたまったもんじゃないから!」
麻衣「やめてよ!」
西野「もう1人の人格は、何するか分からんねんやろ?」
麻衣「そうだけど、酷いよこれ!」
西野「ごめんやけど耐えて!」
麻衣「痛いよ!」
西野「おやすみ!」

別室に行く西野。
ソファには手足を結ばれた麻衣が横になっている
麻衣は抵抗虚しく、そのまま天井を見る
すると激しい頭痛に襲われる麻衣。
意識が遠のいて行く。
目を開けると、別人格であるカイが出てくる
カイは、手足の自由が効かないことに苛立つ

カイ「なんだよ!これ!  誰だよ!  こんなことしてタダで済むと思うなよ!」

扉の隙間からその様子を見ている西野

西野「やっぱり・・・  極限状態にまで追い込まないとアカンねや!」

ジタバタと暴れているカイ
暴れすぎてソファーから落ちる

カイ「痛って~!  解けよ!  まさか、Aとかじゃないだろうな?」
西野「A?  誰やろ?」
カイ「殺してやる!  出てこい!  卑怯なマネしやがって!  出てこいよ!」

暴れているカイに、激しい頭痛が再び襲う

カイ「頭が!  割れる!  頭が・・・」

そのまま、意識を失うカイ

黙ったカイ=麻衣は、そのまま眠り込んでいた。
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