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3.なんてこった
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納得できない。
俺をその辺の物語の主人公と同じにするなよ。
チートもらって順風満帆な異世界生活を夢見るお年頃じゃないのだ。
だって何一つ俺の問題は解決していないのだから。
「すみませんが、馬鹿にしないでください。もう俺は人付き合いに悩む人生は送りたくないです」
人付き合いチートがもらえるなら、とすこし考えた。
けれどそれをもらったところで変わらないだろう。その悩みがなくなったとしても、第二第三の悩みが出てくるに決まっている。道に迷って面接に遅れたこともそうだ。
「人生そのものが苦痛の原因です」
終始この一言に尽きる。
今回は百パーセント自分が悪いとはいえ。たとえば自分に原因のない不意の事故にあったりして、面接に遅れたとしたらどうだろう。他の人たちがいる前で面接所の扉を開くのだ。いくら人付き合いを良くしてもそんなことが続けば、俺の心臓は持たない。途中入室の気まずさに絶対にたえられない。
しかも世の中には冤罪というものもある。いくら人付き合いが上手になったとしても、万人に好かれるわけではない。その結果、恨みを買ってしまうのだ。というか、もし万人に好かれるとなったら悪人にも好かれるということじゃないか。あり得ない。怖すぎる。
「……困りました。椎名ナイトさんの望みに沿う形となりますと、人外への転生でしょうか」
まって、人生ってそういう意味じゃない。
確かに虫に転生すれば虫生になるし社会性を持たない動物だっているだろう。
でも、そもそも“生きることが疲れた”って言っているじゃないか。
「あの、異世界転生した俺に何をさせたいのですか?」
「“生きていてもらうだけ”で結構です」
相容れねぇ!!
「……じゃあ最終手段です。先ほど天国に行く選択肢を私には用意できない、ということを言っていましたよね」
女神様をじっと見つめながら話す。
つまり、あなたでなければ良いと言うことですよね、と。
「申し訳ありませんが、転生を終えるまで担当者が変わることはありません」
心なしか女神様の声が冷たくなったような気がする。
でも俺は恐れずに言い放った。
「なら、他の担当者は確かに存在していて、天国自体も存在しているのですよね?」
「その点については心配ありません。椎名ナイトさんの望み通り、次の人生で死亡が確認された場合には、他の担当者が天国か地獄へ案内をいたします。椎名ナイトさんであれば、地獄へ落ちてしまうこともないでしょう」
「であれば問題ないです。転生します」
凍えるような視線がすごく痛いが、背に腹はかえられない。
女神様のため息に知らんぷりを決め込む。
「……仕方ありません。あなたに祝福と呪いを与えます」
「へ、呪い?」
女神様の言葉の後、目の前にポップ画面のようなものが表示された。
(『祝福:容姿端麗』『神呪:自殺禁止』を獲得しました)
「来世では、椎名ナイトさんは優れた容姿に生まれます。生活習慣などの要因があったとしても、それは維持されます。周囲の人々は、あなたの困った姿をみれば助けずにはいられなくなり、あなたの悲しんだ姿をみれば、涙を流さずにはいられなくなるでしょう。あなたの望みであった人付き合いについて、大幅な改善が見込まれることでしょう」
女神様は「そして」と続けた。
「来世では、椎名ナイトさんが『自殺』と認識するすべての事象において呪いが働き、あらゆる手段が尽くされ、死亡しなくなります。高所からの落下により身体が損壊しましても、神呪による生命維持が行なわれ、蘇生されることでしょう」
「か、考えてたことがバレてる……」
転生して、すぐに死ねば担当者が変わって天国へ行けるという算段が取れなくなった。
なんてこった。
「では、異世界転生へのご了承もいただけたことですので、転生を行ないます」
女神様はとても良い笑みをうかべていた。
かわいい。……じゃなくて。
「まって、了承してない!!」
「先ほど『であれば問題ないです。転生します』とおっしゃいましたね」
ギクリとして動けないでいると、女神様が近づいてくる。
そして吐息がかかるくらいの至近距離までくると。
「行ってらっしゃいませ」
つんと胸を押されて、俺は意識を失った。
俺をその辺の物語の主人公と同じにするなよ。
チートもらって順風満帆な異世界生活を夢見るお年頃じゃないのだ。
だって何一つ俺の問題は解決していないのだから。
「すみませんが、馬鹿にしないでください。もう俺は人付き合いに悩む人生は送りたくないです」
人付き合いチートがもらえるなら、とすこし考えた。
けれどそれをもらったところで変わらないだろう。その悩みがなくなったとしても、第二第三の悩みが出てくるに決まっている。道に迷って面接に遅れたこともそうだ。
「人生そのものが苦痛の原因です」
終始この一言に尽きる。
今回は百パーセント自分が悪いとはいえ。たとえば自分に原因のない不意の事故にあったりして、面接に遅れたとしたらどうだろう。他の人たちがいる前で面接所の扉を開くのだ。いくら人付き合いを良くしてもそんなことが続けば、俺の心臓は持たない。途中入室の気まずさに絶対にたえられない。
しかも世の中には冤罪というものもある。いくら人付き合いが上手になったとしても、万人に好かれるわけではない。その結果、恨みを買ってしまうのだ。というか、もし万人に好かれるとなったら悪人にも好かれるということじゃないか。あり得ない。怖すぎる。
「……困りました。椎名ナイトさんの望みに沿う形となりますと、人外への転生でしょうか」
まって、人生ってそういう意味じゃない。
確かに虫に転生すれば虫生になるし社会性を持たない動物だっているだろう。
でも、そもそも“生きることが疲れた”って言っているじゃないか。
「あの、異世界転生した俺に何をさせたいのですか?」
「“生きていてもらうだけ”で結構です」
相容れねぇ!!
「……じゃあ最終手段です。先ほど天国に行く選択肢を私には用意できない、ということを言っていましたよね」
女神様をじっと見つめながら話す。
つまり、あなたでなければ良いと言うことですよね、と。
「申し訳ありませんが、転生を終えるまで担当者が変わることはありません」
心なしか女神様の声が冷たくなったような気がする。
でも俺は恐れずに言い放った。
「なら、他の担当者は確かに存在していて、天国自体も存在しているのですよね?」
「その点については心配ありません。椎名ナイトさんの望み通り、次の人生で死亡が確認された場合には、他の担当者が天国か地獄へ案内をいたします。椎名ナイトさんであれば、地獄へ落ちてしまうこともないでしょう」
「であれば問題ないです。転生します」
凍えるような視線がすごく痛いが、背に腹はかえられない。
女神様のため息に知らんぷりを決め込む。
「……仕方ありません。あなたに祝福と呪いを与えます」
「へ、呪い?」
女神様の言葉の後、目の前にポップ画面のようなものが表示された。
(『祝福:容姿端麗』『神呪:自殺禁止』を獲得しました)
「来世では、椎名ナイトさんは優れた容姿に生まれます。生活習慣などの要因があったとしても、それは維持されます。周囲の人々は、あなたの困った姿をみれば助けずにはいられなくなり、あなたの悲しんだ姿をみれば、涙を流さずにはいられなくなるでしょう。あなたの望みであった人付き合いについて、大幅な改善が見込まれることでしょう」
女神様は「そして」と続けた。
「来世では、椎名ナイトさんが『自殺』と認識するすべての事象において呪いが働き、あらゆる手段が尽くされ、死亡しなくなります。高所からの落下により身体が損壊しましても、神呪による生命維持が行なわれ、蘇生されることでしょう」
「か、考えてたことがバレてる……」
転生して、すぐに死ねば担当者が変わって天国へ行けるという算段が取れなくなった。
なんてこった。
「では、異世界転生へのご了承もいただけたことですので、転生を行ないます」
女神様はとても良い笑みをうかべていた。
かわいい。……じゃなくて。
「まって、了承してない!!」
「先ほど『であれば問題ないです。転生します』とおっしゃいましたね」
ギクリとして動けないでいると、女神様が近づいてくる。
そして吐息がかかるくらいの至近距離までくると。
「行ってらっしゃいませ」
つんと胸を押されて、俺は意識を失った。
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