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2.天国はどこへ
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もはや涙目になりながら道を進む。
そんな時だった。歩道橋から地上に戻り、横断歩道を探して三千里をしていると、目の前にトラックが突っ込んできた。クラクションが大きく鳴り響く。歩行者が悲鳴を上げながら逃げていくさなか、俺はというと、不思議と逃げる気が起きなかった。就活が嫌になったのもあるし、これから先どうなるのかという人生の不安が頭によぎって。
どちらにせよ、面接に遅刻したことによるネガティブな気持ちが足かせとなった。トラックに接触した瞬間、身体が衝撃で吹っ飛ぶ。人生、死ぬときに死ねばいいのだ。そんな考えとともに俺の人生は幕を下ろした。
……はず。
ここは天国なのか地獄なのか、はたまたそれ以外なのだろうか。
いつの間にか、俺は六面すべてが真っ白な四角い部屋の中にいた。
目の前には書類を片手に微笑む美女がいる。
なんていうかこの状況、知っているぞ?
ピンッときた。
美女さん、というかおそらく女神様が口を開いた。
「こんにちは、椎名騎士さん。……ん? いえ、申し訳ありません。騎士ではなく、ナイトさんでしたか。この度は交通事故によりトラックにひかれて死亡したとのことですが、心中お察しします」
やはり。
「あなたが女神か」
まさかこれは、今ライトノベル界隈で流行りの異世界転生というやつではなかろうか。
トラックにひかれて、真っ白な部屋で目覚めて、目の前には女神様がいる。
……すこし古いというか前時代的だけれども、最初期に流行った物語のテンプレートそのままだ。
きっと、これから先の出来事としては、地獄に行くか天国に行くか異世界に転生するかを選ばされるのだろう。そして異世界転生を選んだ場合、魔王を倒してほしいだとか異世界で技術革新を起こしてほしいと頼まれる。頼まれない場合は生きているだけでいいとか説明されるだろう。その報酬として強大な力をもらうのだ。俗に言うチートである。
「……ええ、その通りです。そして椎名ナイトさんが把握しているとおり、これからあなたには異世界へ転生していただきます」
白く綺麗な顔に、ほほ笑みの表情をうかべる女神様。
だが、ちょっと待ってほしい。
「あれ、おかしいな。異世界転生の一択しかないように聞こえますけれど」
慌てた俺の指摘に、女神様は困ったように眉を曇らす。
「申し訳ありませんが、その選択肢を用意することは私にはできません。人生に疲れてしまったという椎名ナイトさんの思いはお察しします。ですから妥協点として、次の人生を豊かにするためにも、私からひとつ祝福をしたいと考えています」
「祝福?」
「はい。椎名ナイトさんが考えている、チートというものと同じ認識で構いません」
天国か地獄という選択肢が消えて、しかしチートはもらえると。
なんだそれ。
そんな時だった。歩道橋から地上に戻り、横断歩道を探して三千里をしていると、目の前にトラックが突っ込んできた。クラクションが大きく鳴り響く。歩行者が悲鳴を上げながら逃げていくさなか、俺はというと、不思議と逃げる気が起きなかった。就活が嫌になったのもあるし、これから先どうなるのかという人生の不安が頭によぎって。
どちらにせよ、面接に遅刻したことによるネガティブな気持ちが足かせとなった。トラックに接触した瞬間、身体が衝撃で吹っ飛ぶ。人生、死ぬときに死ねばいいのだ。そんな考えとともに俺の人生は幕を下ろした。
……はず。
ここは天国なのか地獄なのか、はたまたそれ以外なのだろうか。
いつの間にか、俺は六面すべてが真っ白な四角い部屋の中にいた。
目の前には書類を片手に微笑む美女がいる。
なんていうかこの状況、知っているぞ?
ピンッときた。
美女さん、というかおそらく女神様が口を開いた。
「こんにちは、椎名騎士さん。……ん? いえ、申し訳ありません。騎士ではなく、ナイトさんでしたか。この度は交通事故によりトラックにひかれて死亡したとのことですが、心中お察しします」
やはり。
「あなたが女神か」
まさかこれは、今ライトノベル界隈で流行りの異世界転生というやつではなかろうか。
トラックにひかれて、真っ白な部屋で目覚めて、目の前には女神様がいる。
……すこし古いというか前時代的だけれども、最初期に流行った物語のテンプレートそのままだ。
きっと、これから先の出来事としては、地獄に行くか天国に行くか異世界に転生するかを選ばされるのだろう。そして異世界転生を選んだ場合、魔王を倒してほしいだとか異世界で技術革新を起こしてほしいと頼まれる。頼まれない場合は生きているだけでいいとか説明されるだろう。その報酬として強大な力をもらうのだ。俗に言うチートである。
「……ええ、その通りです。そして椎名ナイトさんが把握しているとおり、これからあなたには異世界へ転生していただきます」
白く綺麗な顔に、ほほ笑みの表情をうかべる女神様。
だが、ちょっと待ってほしい。
「あれ、おかしいな。異世界転生の一択しかないように聞こえますけれど」
慌てた俺の指摘に、女神様は困ったように眉を曇らす。
「申し訳ありませんが、その選択肢を用意することは私にはできません。人生に疲れてしまったという椎名ナイトさんの思いはお察しします。ですから妥協点として、次の人生を豊かにするためにも、私からひとつ祝福をしたいと考えています」
「祝福?」
「はい。椎名ナイトさんが考えている、チートというものと同じ認識で構いません」
天国か地獄という選択肢が消えて、しかしチートはもらえると。
なんだそれ。
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