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1.一生田舎に引きこもってやる!
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「死にたい。いまものすごく、死にたい気分だ」
立体的かつ複雑な巨大迷路を前にして途方に暮れる。
ぐるりと周囲を見渡してみても、みんな確かな足取りで歩いているということは、迷っていないのだろう。むしろ俺に向かって速く歩けとばかりに急かしている節がある。ごめん。
地上の歩行者用道路と、その上にある歩道橋、そして地下の道路。
やっと大阪の地下街、梅田ダンジョンを攻略したかと思いきや、地上の出口はまったく知らない場所で……。あげく地上へ脱出できても、まだ迷路は続いていたという始末である。
まるで街全体がゲームに出てくるようなダンジョンだ。
しかもマップが広大すぎて鬼難易度になっているやつ。
もう地下は嫌だと歩道橋を進めば、なぜかまた駅に着いた件について。
こんなに暑いのに、スマホを忘れた上に地図もない、時計もなけりゃ、ハンカチもない。
財布の中には辛うじて万札があった。水を飲みたければ、貴重な時間をかけて自販機まで行って、買えということだろう。救いはないのか。この行き場のない焦燥感はどうしてくれよう。
道を迷わずに進めそうな、あの四車線道路が憎い。
道路を走る自動車が憎い。
なぜ横断歩道がないのだ。
夏に開催される、ある企業のインターンシップに参加するため田舎を飛び出してきた。まだ面接の段階だから気を張らなければ。そうは思っても、俺は朝が弱かった。寝坊してしまったのが運の尽きだった。
家を出る時間には間に合った。
けれど面接に必要なもの以外、ことごとく忘れ物をしてしまった。
大急ぎで準備をしたのだから当たり前だった。
まず地下街で絶望した。地図を忘れたことに気づいて電光掲示板を確認した。それまでは良かった。しかし何だここは。地下一階と二階の二層構造になっていたり、東西南北がわかりづらい道になっていたり。何十分、いや何時間突破するのにかかったか。
まだスマホがあれば違ったのだろう。位置情報から道を案内してくれる素敵仕様だからだ。しかし忘れてしまった。気づいたのは電車に乗ってからだ。その時は遅刻を気にしすぎて諦めた。全力で家に帰っていれば、まだ可能性はあったかもしれないのに……。
意気消沈しながら地下街をぬけると、件の歩道橋である。
マジでふざけるな。
比較的迷わなさそうな、普通の歩行者用道路から進もうともしたのに、いくら進んでも横断歩道がなくて向かいの道路に渡れないというジレンマ。
じゃあ歩道橋から行けるのではないかと考えて、視界を埋め尽くすほどの他の歩行者たちに揉まれながらも進めば、まさかつながっていないのか地上へ降りる道がみつからない。そして最終地点は駅である。セミの鳴き声が、俺をあざ笑っているかのようだった。
太陽がさんさんと頭上で輝く。
時刻はどう見ても昼だった。
死にたい。
面接に遅刻とか、もう死にたい。
企業は俺のことを遅刻者として記録するんだろう。
もう就活、終わった。
俺の人生、終わった。
都会なんかもう嫌いだ、俺は一生田舎に引きこもってやる!
立体的かつ複雑な巨大迷路を前にして途方に暮れる。
ぐるりと周囲を見渡してみても、みんな確かな足取りで歩いているということは、迷っていないのだろう。むしろ俺に向かって速く歩けとばかりに急かしている節がある。ごめん。
地上の歩行者用道路と、その上にある歩道橋、そして地下の道路。
やっと大阪の地下街、梅田ダンジョンを攻略したかと思いきや、地上の出口はまったく知らない場所で……。あげく地上へ脱出できても、まだ迷路は続いていたという始末である。
まるで街全体がゲームに出てくるようなダンジョンだ。
しかもマップが広大すぎて鬼難易度になっているやつ。
もう地下は嫌だと歩道橋を進めば、なぜかまた駅に着いた件について。
こんなに暑いのに、スマホを忘れた上に地図もない、時計もなけりゃ、ハンカチもない。
財布の中には辛うじて万札があった。水を飲みたければ、貴重な時間をかけて自販機まで行って、買えということだろう。救いはないのか。この行き場のない焦燥感はどうしてくれよう。
道を迷わずに進めそうな、あの四車線道路が憎い。
道路を走る自動車が憎い。
なぜ横断歩道がないのだ。
夏に開催される、ある企業のインターンシップに参加するため田舎を飛び出してきた。まだ面接の段階だから気を張らなければ。そうは思っても、俺は朝が弱かった。寝坊してしまったのが運の尽きだった。
家を出る時間には間に合った。
けれど面接に必要なもの以外、ことごとく忘れ物をしてしまった。
大急ぎで準備をしたのだから当たり前だった。
まず地下街で絶望した。地図を忘れたことに気づいて電光掲示板を確認した。それまでは良かった。しかし何だここは。地下一階と二階の二層構造になっていたり、東西南北がわかりづらい道になっていたり。何十分、いや何時間突破するのにかかったか。
まだスマホがあれば違ったのだろう。位置情報から道を案内してくれる素敵仕様だからだ。しかし忘れてしまった。気づいたのは電車に乗ってからだ。その時は遅刻を気にしすぎて諦めた。全力で家に帰っていれば、まだ可能性はあったかもしれないのに……。
意気消沈しながら地下街をぬけると、件の歩道橋である。
マジでふざけるな。
比較的迷わなさそうな、普通の歩行者用道路から進もうともしたのに、いくら進んでも横断歩道がなくて向かいの道路に渡れないというジレンマ。
じゃあ歩道橋から行けるのではないかと考えて、視界を埋め尽くすほどの他の歩行者たちに揉まれながらも進めば、まさかつながっていないのか地上へ降りる道がみつからない。そして最終地点は駅である。セミの鳴き声が、俺をあざ笑っているかのようだった。
太陽がさんさんと頭上で輝く。
時刻はどう見ても昼だった。
死にたい。
面接に遅刻とか、もう死にたい。
企業は俺のことを遅刻者として記録するんだろう。
もう就活、終わった。
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都会なんかもう嫌いだ、俺は一生田舎に引きこもってやる!
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