5 / 8
5.上手くいきそう?
しおりを挟む
やがて剣の稽古が終わった頃には、僕たちは顔だけでなく全身、泥だらけになっていた。当初の予定では汗をかくだけだったのに。やりすぎた……。
「どうしよう、お母様に怒られる……」
本当にどうしようかと思っていると、リリウスが提案した。
「……私が洗い物をしますのでフィリル様は湯浴みをなさって下さい。そうすれば誰も気がつきません」
なるほど、リリウスに洗ってもらう手があったか!
「そう、か。そうだな!! もちろんリリウスも入るよな?」
作戦を遂行するためのチャンスがあったのでそう聞けば、リリウスはよどみなく言い切った。
「はい、フィリル様が湯浴みを終えた後に、使用人専用の浴場を借りようかとおもっています」
僕はとっさに「それは許さん」と言葉をさえぎった。
そうされると困るのだ。作戦が失敗してしまう。
リリウスがなぜかと聞くので答えてやった。
「そうすれば泥だらけになったことがバレるだろ?」
意味が通っているように見えてそうではない、超理論による建前だ。
「いえ、私だけな」
大丈夫。だって僕が泥だらけになったのが問題だから、それさえ秘密にできれば自分は関係ない。たぶんそう言おうとしたリリウスの言葉にかぶせる。
「いいからお前も僕と一緒に入ること!! いいな!?」
「…………承知しました」
最後は力任せだったけれど終わりよければ全てよし。
リリウスの返答が遅れたこともあって、僕は思わずにやりとした。
無表情だけど絶対にこまっている。
「はははっ、楽しみだなぁリリウス!」
「……そうですね」
今日はリリウスの珍しいところを見ることができた。普段は無表情で何があっても動じないのに。返答に遅れたり、額から一筋、汗を流していたりしているのだ。これほど嬉しいことはない。
リリウスの手をひきながら、スキップして庭を駆け抜けた。
「フィリル様、泥が床に落ちてしまいます」
「わかった!!」
そろりと誰にも見つからないように僕の部屋にもどる。なかなか家の警備が厳重で、室内だというのに何度見つかりそうになったことか。とにかく、リリウスの手助けのおかげもあって無事だった。そう思っていたが。
「……残念ながら、セバスさんに見つかってしまいましたね」
「え、うそ?」
どうやらそうでもなかったらしい。
まぁ過ぎてしまったものを気にしていても仕方がない。たぶんセバスなら僕の悪いようにはしないだろうし。いまはリリウスの表情を変えることだけに集中しよう。
「どうしよう、お母様に怒られる……」
本当にどうしようかと思っていると、リリウスが提案した。
「……私が洗い物をしますのでフィリル様は湯浴みをなさって下さい。そうすれば誰も気がつきません」
なるほど、リリウスに洗ってもらう手があったか!
「そう、か。そうだな!! もちろんリリウスも入るよな?」
作戦を遂行するためのチャンスがあったのでそう聞けば、リリウスはよどみなく言い切った。
「はい、フィリル様が湯浴みを終えた後に、使用人専用の浴場を借りようかとおもっています」
僕はとっさに「それは許さん」と言葉をさえぎった。
そうされると困るのだ。作戦が失敗してしまう。
リリウスがなぜかと聞くので答えてやった。
「そうすれば泥だらけになったことがバレるだろ?」
意味が通っているように見えてそうではない、超理論による建前だ。
「いえ、私だけな」
大丈夫。だって僕が泥だらけになったのが問題だから、それさえ秘密にできれば自分は関係ない。たぶんそう言おうとしたリリウスの言葉にかぶせる。
「いいからお前も僕と一緒に入ること!! いいな!?」
「…………承知しました」
最後は力任せだったけれど終わりよければ全てよし。
リリウスの返答が遅れたこともあって、僕は思わずにやりとした。
無表情だけど絶対にこまっている。
「はははっ、楽しみだなぁリリウス!」
「……そうですね」
今日はリリウスの珍しいところを見ることができた。普段は無表情で何があっても動じないのに。返答に遅れたり、額から一筋、汗を流していたりしているのだ。これほど嬉しいことはない。
リリウスの手をひきながら、スキップして庭を駆け抜けた。
「フィリル様、泥が床に落ちてしまいます」
「わかった!!」
そろりと誰にも見つからないように僕の部屋にもどる。なかなか家の警備が厳重で、室内だというのに何度見つかりそうになったことか。とにかく、リリウスの手助けのおかげもあって無事だった。そう思っていたが。
「……残念ながら、セバスさんに見つかってしまいましたね」
「え、うそ?」
どうやらそうでもなかったらしい。
まぁ過ぎてしまったものを気にしていても仕方がない。たぶんセバスなら僕の悪いようにはしないだろうし。いまはリリウスの表情を変えることだけに集中しよう。
0
お気に入りに追加
55
あなたにおすすめの小説


つまりは相思相愛
nano ひにゃ
BL
ご主人様にイかないように命令された僕はおもちゃの刺激にただ耐えるばかり。
限界まで耐えさせられた後、抱かれるのだが、それもまたしつこく、僕はもう僕でいられない。
とことん甘やかしたいご主人様は目的達成のために僕を追い詰めるだけの短い話です。
最初からR表現です、ご注意ください。


愛しい人はベッドの下ではぁはぁ言っている
ミクリ21 (新)
BL
魔術師アリエル・サーシャ(23)の同僚で友達のユーリ・ミッチェル(22)は、いつもアリエルのベッドの下ではぁはぁ言っている。
ユーリは、アリエルが嫌がらないのをいいことになんでもやり放題。何故ならアリエル大好きだからだ。
アリエルが何故ユーリを嫌がらないのかというと、アリエルもユーリのことが大好きだからだ。
………もう付き合っちゃえよな二人が、なかなか付き合わなくて周りが焦れている話。


兄弟ってこれで合ってる!?
ててて
BL
母親が再婚した。
新しいお義父さんは、優しそうな人だった。
その人の連れ子で1歳上のお兄さんも優しそう
ずっと一人っ子だったおれは、兄弟に憧れてた。
しょうもないことで喧嘩したり、他愛もない話をしたり、一緒にお菓子を食べたり、ご飯も1人で食べなくていいし。
楽しみだな…
って、思ってたんだけど!!!
確かに仲のいい兄弟に憧れはあったけど!!!
え、兄弟ってこんなに距離近いの?
一緒にお風呂に入ったり、一緒に寝たり??
え、これって普通なの!?
兄弟ってこれで合ってる!?!?

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる