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番外編
学校にて
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わたしの母校の高校では、夏休み開始直後に文化祭が開かれる。
一年生が模擬店関連、二年生が劇や音楽など本格的なもの、三年生は希望のクラスや有志により、小さなものから大きなものまで様々と趣向を凝らしてその日を楽しむのだ。
家族や友人、地域住民のみならず、来年度入学を考えている中学生などの姿もよく見られ、それぞれもまたそれぞれの目的を持って楽しむ。
アキちゃんには散々「来いよ、絶対来いよ」と脅されていたが、あやふやに返事をしてごまかした。実はこっそり行く予定なのだ。
なぜなら職場の同期の小百合ちゃんが、本当に毎日しつこいくらい「彼氏見せろ彼氏見せろ、なっちゃんを満たして潤わせまくってる手腕の高校生とやらを見せてくれ」と呪文のように唱えてくるからだ。
アキちゃんとの関係がひと段落着いた頃に、小百合ちゃんには岡田君のこともあったから、かいつまんで話をしたのだが好奇心が止まらないらしい。
ちなみに、当時中学生ということもあって、彼氏とはキスしかしてないと嘘をついているのだが、まるで意に介さずなのはどうしてだ?
なので、こっそりアキちゃんにバレないように、小百合ちゃんに見せるだけ見せてササッと帰ってやろうという魂胆だった。
校門付近で学生から案内用の校内地図を貰い、アキちゃんが在籍している一年B組を見る。どうやら教室で模擬店……コスプレ喫茶? をやっているようだ。
わたしの時代にはコスプレなんてなんだかこそばゆくてエントリーにすら上がらなかったのに。数年で学生文化とは素早く変わるものだ……。
ということは、アキちゃんも何かコスプレしてるのかな? わたしだったら間違いなく女装させてただろうけど、さすがに近頃のアキちゃんには女装が不釣合いになってきた、いろんな意味で。
「いーなー学園祭かあ、私の学校こんなにオープンにやってなかったんだよねー」
小百合ちゃんはキョロキョロと楽しそうに見渡している。
「そうなんだ。学校によってやっぱ違うんだね」
校内に入って、懐かしいばかりの廊下を歩く。
ああ、青春だ……。あの頃のわたしは、恋に恋してキャピキャピこの廊下をはずんで歩いてたなあ。
そう思いに耽っていたら、だんだん現実世界でのキャピキャピ感がすごくなってきた。女の子の人口が明らかに増えてきているこの一帯。ていうか目の前の1-Bの教室付近にだけ、とりわけ中学生の、もっというならわたしとアキちゃんの母校の制服姿が多い。
「なんだこのおなご達の興奮状態は……」
横で小百合ちゃんが呆気に取られているが、母校の制服姿を見てピンときた、あの台風の目はアキちゃんだな、と。
「ちょ、ちょっと、一旦退却しよっかっ!」と小百合ちゃんの腕を引っ張るが、
「えーーこん中に彼氏いるんでしょ? 見る見る見るーーう!」と梃子でも動かない。
そんな押し問答を廊下でやっていたら、ざわつきや悲鳴が大きくなった。
でた! 大魔王様!!……あれ? 大魔王……様?
中学生や高校生の人並みがサーーと割れてそこから現れたのは、ヴァンパイヤになった大魔王……いや、ややこしい、ヴァンパイヤのコスプレした花咲晶だった。
い、意外!! 意外いがーーい!! アキちゃんがヴァンパイヤ?! なにこのピッタリフィット感!! なにひとつ違和感ない邪悪なオーラ!! 誰? これ企画したの?! すごーーーーいっ!!
思わず惚けて小百合ちゃんの腕を引っ張ったまま立ち尽くしていたら、吸血鬼様が悠然と黒マントを翻しながらカツカツとブーツ音をたてて目前に迫ってきた。
ずいぶん身長が伸び、もう見上げるほどになったその顔をアホの子のように見上げていると、カラコンなのか瞳の色がワインレッドなのだ。……もうっ誰? 誰がここまで徹底したの? 天才!!
「ナツミ……」
しばし、ボーーーーッ。
「な、なっちゃん!」
いつの間にかわたしの腕に絡まるようにしがみついていた小百合ちゃんが、腕を揺らしてくる。
「はっ! あ、ごめんボーっとしてた!」
「ナツミ、来てくれたんだ」
「う……うん」
と答えるやいなやフワアと視界が黒く染まり、美しい吸血鬼の腕の中に捕らえられていた。
横で「おおうっ」とわたしの腕を瞬座に離す小百合ちゃん。どうか気を利かせないでくれ、こ、これ今すごい怖い状態。
明らかに回りで小さな悲鳴や、「誰?」「なにアイツ」と棘が飛んできている。
「ナツミ、俺に会いたくて来てくれたの? すげえ嬉しい……」
空気をまったく読まない男、それが花咲晶《だいまおうさま》である。
「あ、あのアキちゃんっ……ちょっと離してくれないかな」
「あ、ごめん。これじゃあ可愛いナツミが拝めないね」
ニコッと笑う口元から小さな牙が……完璧じゃね? ほんと誰これ企画したのっ。
「なっちゃんなっちゃんっ」
まるで山盛りのビーフジャーキーを目の前に置かれて「待て」状態のワンコにしかみえない、ちぎれるほど尻尾を振っているようには見える小百合ちゃんの「ほれっ早くっ紹介しろっ」な連続目くばせに気付き、アキちゃんを体から引き離そうとするが、完全に腰を腕でホールドされビクともしない。
もう、こういう場合何言おうが抵抗しようが無駄だと悟ってるので、さっさと紹介してさっさとこの場を去ろうと決断する。
「えっと、この子がその、現在お付き合いしている花咲君……。で、この人は会社の同僚で仲良くしてくれてる伊藤小百合ちゃん……です」
お互い紹介された者同士は、対面したまま上から下、下から上と観察しまくりほぼ同時に「よろしく」「よろしくです」とニコリと作った笑顔を向けあった。
……なんか似たもの同士な気がしたのは、気のせいだろうか?
「えっと、じゃあ、わたしたちはこれで用が済んだので……ね?」
「えーーーー、せっかくだからこの喫茶店入ろうよー」
……小百合ちゃーーん、この場外の雰囲気察してーーっ。
「そうだな……ナツミはもういない方がいいな」
め、めずらしい! アキちゃんと意見が一致するなんて!
思わず真上を見上げると意味ありげな、不敵なくせに美しい笑みをこぼした。
「俺が送るよ。てことで、小百合さんはぜひこのまま楽しんでいってください。店ん中、他にも中世騎士やサムライとか、より取り見取りですよ?」
「え? マジ? やーーん行ってきまーーす!」
「え? あ? 小百合ちゃーーんっ!」
わたしの宙を掴む手も虚しく、有事の際にはアキちゃんと唯一戦えるだろうと思っていた戦力があっけなく脱落した……。しまった、小百合ちゃんは生粋のオタクっ子なのだ。
「じゃ、ナツミ、こっちおいで」
腕を取られズルズルとその場から剝がされる。剥がされるのはいい、女の子達の好奇心と敵意の眼差しが怖すぎるから。だが、なぜ小百合ちゃんと引き離されて帰らなければならないのか。
そしてどんどん人影がなくなっていく。
この先は教務員室や校長室など、文化祭ではまったく用がない方面だ……この悪寒は……。
ズルズルと引きずられようやく足が止まったのは、用具室の前だった。
「……あの、わたし帰るんだよね?」
「うん、そうだよ」
「……玄関から真反対の場所だよねここ」
「ああ、そうだね」
ガラリとドアが開けられた。……なぜ鍵がかかってないっ!! おいっ誰だここの鍵当番の先生はっ!
ズリズリと引きずり込まれる。ついに魔界への扉が開いてしまった……。
「アキちゃんアキちゃん! ま、まさかとは思うけど、よ、よからぬ事考えて、ないよねっ?」
「……よからぬ事? したいの?」
ブンブンとメジャーリーガーも驚くほどのスイングで首を横に振った。
「ま、まさか! だってここは学校だよ? はやまっちゃダメだよっ」
「……はやまらせてんのはナツミじゃん」
「……はい?」
「そんな男を誘惑するような恰好で、こんな野郎と野獣と獣しかいないとこに飛び込んできて……」
……野郎と野獣と獣って、まとめれば同じ意味じゃ……ていうかまるでアキちゃんのことじゃ……ていうか。
「ど、どこが誘惑してるの? 普通だよ? いつもの恰好じゃん!」
「俺がいないところでもこんな格好してんの? ムカツク……」
吸血鬼がむくれている。意味がわからん。
「え? だって、ほら、これキュロットだよ? スカートじゃないよ? 上だって普通に袖があるしっ」
じーーーーと嘗め回すようにアキちゃんの視線が全身を這う。
「おっぱいの形がわかりやすすぎ、生足を膝上から見せるなんて言語道断! ナツミのエロッ!」
「ちがーーう!! それはアキちゃんがそういう目でみ……きゃあ!」
急に体を反転させられ背中から抱き付かれると、目の前に置かれていた机に手をつかされる。早急に両手が服の中に滑り込み、すぐさまブラが押し上げられ直接胸を揉みしだかれる。
「だ、だめだって! ここじゃだめっ!」
「無理……我慢できない」
ベロリと首筋をなめられてカプリと噛み付かれる。ゴムで出来ているのであろう吸血鬼の付け歯がくすぐったい。
「や、やだってっ」
「女よ、光栄に思え。この私がお前の生き血を啜り、純潔を散らしてくれよう」
……なりきっとるっ!!
「その代わりにお前の中にたくさんのエキスをたっぷり注ぎ込んでやる……喜び悶えるがいい」
……今のは完全なるアキちゃんオリジナルだ……。
やわやわと揉みしだいていた手は指先を使って先端を弄りだした。
「ぅはぁ……あっ! だめっほんとだめっ!」
カチッとキュロットのホックが弾かれストンと足元に落ちる。人差し指1本だけで下着をスルリと膝あたりにまで下げられる。
「ナツミはエッチで濡れやすいから……すぐに脱がしてないと、ね?」
……ね?……じゃねーーしっ(泣)
「ううう、もーーいやだーー学校でなんていやーーっ」
「学校ではしたことないってこと? それともしたことあるからもうしたくないってこと?」
「……」
どちらに転んでもロクなことにならないのは、もう何度も経験済みなので無視。
クチュクチュと音をたてはじめた。指が何度も割れ目と芽を往復して、ズキズキと刺激を送ってくる。
「ふぁあ!! ああっ」
お尻にギュウギュウとアキちゃんのモノが押し付けられている。
「ねえ……ナツミさっき俺に、見とれてた?」
「あああっ!」
「この恰好気に入った?」
「ううう……あっダメっ」
ぐちゅぐちゅぐちゅ。
指が出入りをしはじめる。
「ナツミが喜ぶなら、俺これ毎日着てセックスしよっと」
「ばっ……ばかっ! あああっ!」
一気にスピードが上がり、ぐちょぐちょと卑猥な音を立て、胸の先端はグリグリと強くつねられ、立っていられなくなり目の前の机に臥せってしまった。
するとさっと身をはなした後方からカチャカチャ音がする。そして先端がにゅりにゅりと割れ目にこすりつけられぬめりをまとわせている。
ふと耳元で「ちゃんとゴムつけたからね。本当はつけずにもやってみたいけど、それはまた今度ゆっくり……」
ぐにゅっと先端が突き刺さり、両胸の先端がグリグリと潰される。そしてグググと中に一気に押し込まれて、思わず体がのけぞった。
「はあ……ナツミのバックも最高……ほら、いつもと違うとこ……わかる?」
ゆったりとナカを堪能するようなストロークに、ビリビリとあちこちに電気が走る。
「はぁはぁはぁ……ふうううう」
「ダメだよナツミ、快感のがしちゃ……ほら、もっと味わって吸血鬼とセックスしてるよ?」
「やあっ!! もっ……」
「イきそう?」
「ふぁっ!! あっ……い、いき、そう……」
「俺もうちょっと味わいたいのにー」
「ああっく、くるっ!! はあ!!」
ぐちゅりぐちゅりぐちゅりぐちゅり。
アキちゃんが焦らして、わざとゆっくりしているのがわかる。わかるのだが、身体が耐えられない。思わず自分の腰を動かしてしまった。
それに気づいたのか、アキちゃんは体を起こし、たぶん、いやきっと、じっと接合部を見ている、自分は動かずに。
「ナツミにはほんと参る……はあー気持ちいいね……ほら、もっと好きに動いていいよ」
「あっあっ……おねがいっ……」
「……ナツミはほんとエッチだなあ……だから外ひとりで歩かせれない……俺、気が気でないんだけど」
「ううう……アキちゃん……」
「くっ……動いてほしいの?」
「はうっ……う、うん」
「ナツミ約束だよ? 誰にもここ入れさせちゃダメだよ一生」
「う、うん」
「俺のだけで満足してくれる?」
「うん……」
後ろからぎゅうっと抱きしめられた。耳たぶをカプリと食べられる。
「ナツミいい子……これからもいっぱいエッチなことしようね」
再び腰を掴まれて、グイーと一旦出口付近まで引き抜くと、一気にジュボッと奥まで貫かれた。
「ああああああっ」
じゅうーーーー、と引き抜きかけて、また一気に貫かれる。
「あっいっちゃう!! ああ!!」
そこからずっと奥を狙って腰をバンバン打ち付け、そのたびに目の前の机がギギギと床と擦れる。
「あっあっあっ!! いくっ……ああああ」
「くうっ!!……はあ……気持ちよすぎっ!」
先にナツミが意識を手放し、しばらくのちアキラも覆いかぶさった。
衣装係に頼んだのだろう。文化祭が終わって、ヴァンパイヤの衣装をご機嫌で持ち帰ってきたアキラを見て、慌てて十字架のネックレスを探しに部屋に逃げ込んだナツミであった。
一年生が模擬店関連、二年生が劇や音楽など本格的なもの、三年生は希望のクラスや有志により、小さなものから大きなものまで様々と趣向を凝らしてその日を楽しむのだ。
家族や友人、地域住民のみならず、来年度入学を考えている中学生などの姿もよく見られ、それぞれもまたそれぞれの目的を持って楽しむ。
アキちゃんには散々「来いよ、絶対来いよ」と脅されていたが、あやふやに返事をしてごまかした。実はこっそり行く予定なのだ。
なぜなら職場の同期の小百合ちゃんが、本当に毎日しつこいくらい「彼氏見せろ彼氏見せろ、なっちゃんを満たして潤わせまくってる手腕の高校生とやらを見せてくれ」と呪文のように唱えてくるからだ。
アキちゃんとの関係がひと段落着いた頃に、小百合ちゃんには岡田君のこともあったから、かいつまんで話をしたのだが好奇心が止まらないらしい。
ちなみに、当時中学生ということもあって、彼氏とはキスしかしてないと嘘をついているのだが、まるで意に介さずなのはどうしてだ?
なので、こっそりアキちゃんにバレないように、小百合ちゃんに見せるだけ見せてササッと帰ってやろうという魂胆だった。
校門付近で学生から案内用の校内地図を貰い、アキちゃんが在籍している一年B組を見る。どうやら教室で模擬店……コスプレ喫茶? をやっているようだ。
わたしの時代にはコスプレなんてなんだかこそばゆくてエントリーにすら上がらなかったのに。数年で学生文化とは素早く変わるものだ……。
ということは、アキちゃんも何かコスプレしてるのかな? わたしだったら間違いなく女装させてただろうけど、さすがに近頃のアキちゃんには女装が不釣合いになってきた、いろんな意味で。
「いーなー学園祭かあ、私の学校こんなにオープンにやってなかったんだよねー」
小百合ちゃんはキョロキョロと楽しそうに見渡している。
「そうなんだ。学校によってやっぱ違うんだね」
校内に入って、懐かしいばかりの廊下を歩く。
ああ、青春だ……。あの頃のわたしは、恋に恋してキャピキャピこの廊下をはずんで歩いてたなあ。
そう思いに耽っていたら、だんだん現実世界でのキャピキャピ感がすごくなってきた。女の子の人口が明らかに増えてきているこの一帯。ていうか目の前の1-Bの教室付近にだけ、とりわけ中学生の、もっというならわたしとアキちゃんの母校の制服姿が多い。
「なんだこのおなご達の興奮状態は……」
横で小百合ちゃんが呆気に取られているが、母校の制服姿を見てピンときた、あの台風の目はアキちゃんだな、と。
「ちょ、ちょっと、一旦退却しよっかっ!」と小百合ちゃんの腕を引っ張るが、
「えーーこん中に彼氏いるんでしょ? 見る見る見るーーう!」と梃子でも動かない。
そんな押し問答を廊下でやっていたら、ざわつきや悲鳴が大きくなった。
でた! 大魔王様!!……あれ? 大魔王……様?
中学生や高校生の人並みがサーーと割れてそこから現れたのは、ヴァンパイヤになった大魔王……いや、ややこしい、ヴァンパイヤのコスプレした花咲晶だった。
い、意外!! 意外いがーーい!! アキちゃんがヴァンパイヤ?! なにこのピッタリフィット感!! なにひとつ違和感ない邪悪なオーラ!! 誰? これ企画したの?! すごーーーーいっ!!
思わず惚けて小百合ちゃんの腕を引っ張ったまま立ち尽くしていたら、吸血鬼様が悠然と黒マントを翻しながらカツカツとブーツ音をたてて目前に迫ってきた。
ずいぶん身長が伸び、もう見上げるほどになったその顔をアホの子のように見上げていると、カラコンなのか瞳の色がワインレッドなのだ。……もうっ誰? 誰がここまで徹底したの? 天才!!
「ナツミ……」
しばし、ボーーーーッ。
「な、なっちゃん!」
いつの間にかわたしの腕に絡まるようにしがみついていた小百合ちゃんが、腕を揺らしてくる。
「はっ! あ、ごめんボーっとしてた!」
「ナツミ、来てくれたんだ」
「う……うん」
と答えるやいなやフワアと視界が黒く染まり、美しい吸血鬼の腕の中に捕らえられていた。
横で「おおうっ」とわたしの腕を瞬座に離す小百合ちゃん。どうか気を利かせないでくれ、こ、これ今すごい怖い状態。
明らかに回りで小さな悲鳴や、「誰?」「なにアイツ」と棘が飛んできている。
「ナツミ、俺に会いたくて来てくれたの? すげえ嬉しい……」
空気をまったく読まない男、それが花咲晶《だいまおうさま》である。
「あ、あのアキちゃんっ……ちょっと離してくれないかな」
「あ、ごめん。これじゃあ可愛いナツミが拝めないね」
ニコッと笑う口元から小さな牙が……完璧じゃね? ほんと誰これ企画したのっ。
「なっちゃんなっちゃんっ」
まるで山盛りのビーフジャーキーを目の前に置かれて「待て」状態のワンコにしかみえない、ちぎれるほど尻尾を振っているようには見える小百合ちゃんの「ほれっ早くっ紹介しろっ」な連続目くばせに気付き、アキちゃんを体から引き離そうとするが、完全に腰を腕でホールドされビクともしない。
もう、こういう場合何言おうが抵抗しようが無駄だと悟ってるので、さっさと紹介してさっさとこの場を去ろうと決断する。
「えっと、この子がその、現在お付き合いしている花咲君……。で、この人は会社の同僚で仲良くしてくれてる伊藤小百合ちゃん……です」
お互い紹介された者同士は、対面したまま上から下、下から上と観察しまくりほぼ同時に「よろしく」「よろしくです」とニコリと作った笑顔を向けあった。
……なんか似たもの同士な気がしたのは、気のせいだろうか?
「えっと、じゃあ、わたしたちはこれで用が済んだので……ね?」
「えーーーー、せっかくだからこの喫茶店入ろうよー」
……小百合ちゃーーん、この場外の雰囲気察してーーっ。
「そうだな……ナツミはもういない方がいいな」
め、めずらしい! アキちゃんと意見が一致するなんて!
思わず真上を見上げると意味ありげな、不敵なくせに美しい笑みをこぼした。
「俺が送るよ。てことで、小百合さんはぜひこのまま楽しんでいってください。店ん中、他にも中世騎士やサムライとか、より取り見取りですよ?」
「え? マジ? やーーん行ってきまーーす!」
「え? あ? 小百合ちゃーーんっ!」
わたしの宙を掴む手も虚しく、有事の際にはアキちゃんと唯一戦えるだろうと思っていた戦力があっけなく脱落した……。しまった、小百合ちゃんは生粋のオタクっ子なのだ。
「じゃ、ナツミ、こっちおいで」
腕を取られズルズルとその場から剝がされる。剥がされるのはいい、女の子達の好奇心と敵意の眼差しが怖すぎるから。だが、なぜ小百合ちゃんと引き離されて帰らなければならないのか。
そしてどんどん人影がなくなっていく。
この先は教務員室や校長室など、文化祭ではまったく用がない方面だ……この悪寒は……。
ズルズルと引きずられようやく足が止まったのは、用具室の前だった。
「……あの、わたし帰るんだよね?」
「うん、そうだよ」
「……玄関から真反対の場所だよねここ」
「ああ、そうだね」
ガラリとドアが開けられた。……なぜ鍵がかかってないっ!! おいっ誰だここの鍵当番の先生はっ!
ズリズリと引きずり込まれる。ついに魔界への扉が開いてしまった……。
「アキちゃんアキちゃん! ま、まさかとは思うけど、よ、よからぬ事考えて、ないよねっ?」
「……よからぬ事? したいの?」
ブンブンとメジャーリーガーも驚くほどのスイングで首を横に振った。
「ま、まさか! だってここは学校だよ? はやまっちゃダメだよっ」
「……はやまらせてんのはナツミじゃん」
「……はい?」
「そんな男を誘惑するような恰好で、こんな野郎と野獣と獣しかいないとこに飛び込んできて……」
……野郎と野獣と獣って、まとめれば同じ意味じゃ……ていうかまるでアキちゃんのことじゃ……ていうか。
「ど、どこが誘惑してるの? 普通だよ? いつもの恰好じゃん!」
「俺がいないところでもこんな格好してんの? ムカツク……」
吸血鬼がむくれている。意味がわからん。
「え? だって、ほら、これキュロットだよ? スカートじゃないよ? 上だって普通に袖があるしっ」
じーーーーと嘗め回すようにアキちゃんの視線が全身を這う。
「おっぱいの形がわかりやすすぎ、生足を膝上から見せるなんて言語道断! ナツミのエロッ!」
「ちがーーう!! それはアキちゃんがそういう目でみ……きゃあ!」
急に体を反転させられ背中から抱き付かれると、目の前に置かれていた机に手をつかされる。早急に両手が服の中に滑り込み、すぐさまブラが押し上げられ直接胸を揉みしだかれる。
「だ、だめだって! ここじゃだめっ!」
「無理……我慢できない」
ベロリと首筋をなめられてカプリと噛み付かれる。ゴムで出来ているのであろう吸血鬼の付け歯がくすぐったい。
「や、やだってっ」
「女よ、光栄に思え。この私がお前の生き血を啜り、純潔を散らしてくれよう」
……なりきっとるっ!!
「その代わりにお前の中にたくさんのエキスをたっぷり注ぎ込んでやる……喜び悶えるがいい」
……今のは完全なるアキちゃんオリジナルだ……。
やわやわと揉みしだいていた手は指先を使って先端を弄りだした。
「ぅはぁ……あっ! だめっほんとだめっ!」
カチッとキュロットのホックが弾かれストンと足元に落ちる。人差し指1本だけで下着をスルリと膝あたりにまで下げられる。
「ナツミはエッチで濡れやすいから……すぐに脱がしてないと、ね?」
……ね?……じゃねーーしっ(泣)
「ううう、もーーいやだーー学校でなんていやーーっ」
「学校ではしたことないってこと? それともしたことあるからもうしたくないってこと?」
「……」
どちらに転んでもロクなことにならないのは、もう何度も経験済みなので無視。
クチュクチュと音をたてはじめた。指が何度も割れ目と芽を往復して、ズキズキと刺激を送ってくる。
「ふぁあ!! ああっ」
お尻にギュウギュウとアキちゃんのモノが押し付けられている。
「ねえ……ナツミさっき俺に、見とれてた?」
「あああっ!」
「この恰好気に入った?」
「ううう……あっダメっ」
ぐちゅぐちゅぐちゅ。
指が出入りをしはじめる。
「ナツミが喜ぶなら、俺これ毎日着てセックスしよっと」
「ばっ……ばかっ! あああっ!」
一気にスピードが上がり、ぐちょぐちょと卑猥な音を立て、胸の先端はグリグリと強くつねられ、立っていられなくなり目の前の机に臥せってしまった。
するとさっと身をはなした後方からカチャカチャ音がする。そして先端がにゅりにゅりと割れ目にこすりつけられぬめりをまとわせている。
ふと耳元で「ちゃんとゴムつけたからね。本当はつけずにもやってみたいけど、それはまた今度ゆっくり……」
ぐにゅっと先端が突き刺さり、両胸の先端がグリグリと潰される。そしてグググと中に一気に押し込まれて、思わず体がのけぞった。
「はあ……ナツミのバックも最高……ほら、いつもと違うとこ……わかる?」
ゆったりとナカを堪能するようなストロークに、ビリビリとあちこちに電気が走る。
「はぁはぁはぁ……ふうううう」
「ダメだよナツミ、快感のがしちゃ……ほら、もっと味わって吸血鬼とセックスしてるよ?」
「やあっ!! もっ……」
「イきそう?」
「ふぁっ!! あっ……い、いき、そう……」
「俺もうちょっと味わいたいのにー」
「ああっく、くるっ!! はあ!!」
ぐちゅりぐちゅりぐちゅりぐちゅり。
アキちゃんが焦らして、わざとゆっくりしているのがわかる。わかるのだが、身体が耐えられない。思わず自分の腰を動かしてしまった。
それに気づいたのか、アキちゃんは体を起こし、たぶん、いやきっと、じっと接合部を見ている、自分は動かずに。
「ナツミにはほんと参る……はあー気持ちいいね……ほら、もっと好きに動いていいよ」
「あっあっ……おねがいっ……」
「……ナツミはほんとエッチだなあ……だから外ひとりで歩かせれない……俺、気が気でないんだけど」
「ううう……アキちゃん……」
「くっ……動いてほしいの?」
「はうっ……う、うん」
「ナツミ約束だよ? 誰にもここ入れさせちゃダメだよ一生」
「う、うん」
「俺のだけで満足してくれる?」
「うん……」
後ろからぎゅうっと抱きしめられた。耳たぶをカプリと食べられる。
「ナツミいい子……これからもいっぱいエッチなことしようね」
再び腰を掴まれて、グイーと一旦出口付近まで引き抜くと、一気にジュボッと奥まで貫かれた。
「ああああああっ」
じゅうーーーー、と引き抜きかけて、また一気に貫かれる。
「あっいっちゃう!! ああ!!」
そこからずっと奥を狙って腰をバンバン打ち付け、そのたびに目の前の机がギギギと床と擦れる。
「あっあっあっ!! いくっ……ああああ」
「くうっ!!……はあ……気持ちよすぎっ!」
先にナツミが意識を手放し、しばらくのちアキラも覆いかぶさった。
衣装係に頼んだのだろう。文化祭が終わって、ヴァンパイヤの衣装をご機嫌で持ち帰ってきたアキラを見て、慌てて十字架のネックレスを探しに部屋に逃げ込んだナツミであった。
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