その日は月が輝いて

本編

橘 冬真の話 Ⅴ

金曜日の楽しい夜から日は経って水曜日。相も変わらず会社はホワイトで、年齢の割に部下が多い俺はいろんなハラスメントをしないように気を遣った生活を送っている。

あれから柊木くんは、友人に教えられた“お願い”が役に立ってかかなり砕けてくれるようになった。
(最近は柊木くんとメールするのが癒しになってるな)
いい歳した男が若い男に癒されるなんて地獄絵図でしかないが、いい歳した女性は婚期を逃すまいとしているのか何なのか、グイグイ来すぎてこっちが疲れてしまうのだ。


まあそんな事もあったが今は仕事だ。
今週は休日出勤は避けなければならない。

というのも、実は先週柊木くんと飲みに行った帰りに、弟の誕生日プレゼントを買うのに付き合ってもらう約束をしたからだ。
偏見かもしれないがホストは人からプレゼントを貰うことが多いと思っているので、何を貰ったら嬉しいかわかると思ったのだ。
とはいえ突然知らない人の欲しいものなんて分かるはずもないので、一度弟を連れて3人で遊びに行くことになった。もちろん弟には誕生日プレゼントの話は伏せて、遊びに行こうとだけ伝えた。

それが弟と柊木くんと合わせた結果、今週の土曜に決まったので今週は特に真面目に仕事をしている。

弟に会うのは久しぶりなので少し楽しみだ。
半年に1度のペースでしか実家帰っていないのが、高校生の弟には寂しく感じたのだろうか、この前電話をかけた時は声が弾んでいた。そしていつも通りの変わり者だった。

｢折角同じ地域で仕事しとるのになんで実家帰ってこんの？はっ！彼氏が出来たのね！？なかなか帰ってこんで彼氏と愛を育んで((ｹﾞﾌﾝｹﾞﾌﾝ｣

と帰省(と彼氏)を催促された。
これで分かる人がほとんどだろう。弟は高校2年生にして腐男子というものをしているらしい。
でもまあ、柊木くんとはまた違った俺の癒しである。