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毒
しおりを挟む「はぁ~めんどくせぇーあんま自分が人を殺した事実に触れたくないから基本末端にやらせるんだが......お前相手だとそうはいかないんだよなぁ~はぁー」
現場に近付くにつれて先輩の愚痴も増えていった。いつもの癖なんだ。先輩は片付けとかそういう後始末が大の苦手なんだ。僕は先輩のそういとこを知っているからこその扱い方を会得している。
「先輩、片付けが終わったら好きな銘柄のタバコ奢りますよ。ですからやる気出してください」
「マジ? よっし、やる気出てきた」
そう言って先輩は両手に装着している黒色の手袋を整え、一息吐いた。
それからしばらくして、現場に着いた。先輩と僕はその足のまま、自分達が殺めた死体達が眠るビルの中へと歩いていった。
「先輩。ちゃんと『事後清掃キット』は持ってきてますよね? まさか忘れたなん____」
「忘れた」
「言ってる最中でなんとなく察してましたが潔すぎますよ。せめて言い訳の一つや二つはして欲しかったです」
「だって、言い訳しても怒るでしょ?」
「そりゃそうですよ。仕事道具忘れたなんて許されないんですから」
「ほらね?」
「ほらね? じゃないですよ......」
死体がある四階までの階段を歩きながらそんな話をした。今登りきった階段で四階に着いた。そこで、思わぬ者を見た。
「先輩。あれって......」
「ああカイ。私達の後始末の代行人......というわけじゃなさそうだ」
僕達が見た者とは全身黒色のスーツ姿の男達。おそらく、ここにある死体の仲間だろう。先輩は続けて言った。
「あいつらの仲間なら......カイ、何をするかはもう分かっているよね?」
「はい先輩。残業ですね」
「当たり」
僕は腰から拳銃を取り出し、先輩は腰に掛かった鞘からロングナイフを抜き出した。
途端! 先輩はスーツ姿の男達の輪に勢い良く飛び込み、まず一人、ロングナイフで体を裂き、斬り殺した。戦闘開始だ。僕も拳銃で一人撃ち殺した。残りは三人。戦闘に台本などは無い。戦闘中の行動は全てアドリブだと、先輩に教わった。
「おいおいどうしたァ! ちょっと前に殺したお前らの仲間の方がまだ骨があって強かったわ!」
戦闘に入り、テンションが上がった先輩の声が、四階フロアに響く。それと同時に、敵の悲鳴も上がった。
「クソが! テメェらいつの間に来てやがった!?」
先輩がまた一人、ロングナイフで斬り殺した。その瞬間____
ドゴォーンと大きな音を立てながらビルの壁を突き破り、白色の鎧に覆われた大男がフロアに乱入してきた。大男は、壁を突き破った勢いで先輩にぶつかった。大男にぶつかられ壁に勢い良く激突した先輩は口から血を吐いていた。
「先輩!」
「おい茶髪のクソガキィ! お前の相手は俺らだ!」
先輩の元へ駆け寄ろうとする僕に向けて残り二人となったスーツ姿男達の凶弾が放たれる。先輩に気を取られすぎて見事に二発ともモロに喰らってしまった僕はその場で倒れ込んでしまった。
痛い......凶弾を喰らった場所は右足と右腕。右足は動かなくなり、右腕は強い痺れを感じる。そして不運な事に右手で拳銃を持っていたせいで右腕を撃たれた際に先輩と大男の合間に飛んでいってしまったようだ。倒れて床目線で先輩達の方を見ると確かにそれらしき黒い物体があった。拳銃で撃たれ、行動の自由を失った、攻撃手段を失った。このままじゃ、死んでしまう。そう思った時だった。何やら先輩と大男の方で大きな動きがあったようだ。フロア中に先輩の怒りと楽しさが混じった声が響き渡った。
「チッ......痛ってぇな......レディーにそんな当たり強かったらモテねぇぞホワイトゴリラ」
「フン、お前こそそんなに語彙が強いと異性から引かれるぞ」
内容は軽口の飛ばし合いだった。視界が暗くなってきた。傷口から血が出すぎたのだ。眠気は無いのに、瞼が意志とは勝手に閉じようとする。目のま......え......がみえ、なくな....った......
意識が途切れるほんの寸前に聞こえてきたのは先輩の声だった。
「仕方ねぇ、こいつをあんま使いたかねぇが......背に腹は変えられねぇ」
「異能力・毒杯」
【燭台】
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