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3話 メール
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デスクに座ると、パソコンの電源を入れる。
「おっ、鈴屋さんからメール」
鈴屋さんは、先月行ったチャリティイベントの収益を寄付する、寄付先の一つで代表をしている。
寄付先は、公益性の高いNPOや孤児院を中心に決められている。
その中でも、鈴屋さんは自然災害時の復興支援を行うNPO団体の代表だ。
早速、鈴屋さんからのメールを読んでいく。
『国岡正巳様 前略。先月のチャリティイベントお疲れ様でした。私も1日目から――』
あいさつと本題が書かれていた。
内容を要約するとこんな感じだった。
『聞いていたよりも寄付額が少ないのだけど、何かトラブルありましたか?』
聞いていたというのは、事前に収益予測と分配割合から俺から鈴屋さんに、今年の寄付予想額を伝えていたのだ。
なぜ予想額を前もって伝えたのかというと、鈴屋さんからの『次期の計画を立てなければいけないので、可能であれば予想寄付額を教えてください』という問合せに、俺が統計分析をして予想金額を答えていたという状況がある。
何故分析が出来るのかというと、大学で統計分析学を履修していたのだ。俺自身分析するのが嫌いでは無かったので、成績はそれなりに良かった。
卒業してからも暇なときには、色々な事をテーマに分析したりもしていた。本格的に分析するのが久し振りとは言え、精度は申し分なかったはずだ。
無理して、過去10年の参加者数と収益額、寄付額なんかの資料も各部署から集めたし……
何にしても一先ず、事実関係を調べてみる必要がある。
手違い、勘違い、他の可能性だってある。
……正直、勘違いであって欲しいが、"鈴屋さんからメールが来た"という事実があるからには、調べざるを得ないだろう。
何故なら、多少の誤差で連絡してくるはずがないのだから。
一応、鈴屋さんのメール本文を小型記憶端末にコピーする。コピーした後で、小型記憶端末をスーツの内ポケットに仕舞うと、経理担当の部署へ向かった。
――
経理の部署がある階は3つ上の階なので、階段を上がって行く。
目当てのフロアに着いたので、入り口にあるパネルから、チャリティイベント担当の”経理”を呼び出す。
「お疲れ様、ちょっと確認したい事があるんですけど、良いですか?」
「正巳か、分かった。少し待っててくれ」
少しすると、ドアが開いて人が歩いてくる。
「先輩、こんなので申し訳ありませんけど、差し入れです」
手に持っていたカロリーバーを差し出す。
このカロリーバーは、常にデスクの引き出しにストックしている。
「お、悪いな。……ここじゃなんだから上のフロア行くか」
カロリーバーを受け取った後で、上を指している。
「ですね、そうしましょう」
「……お前が丁寧だと、なんか怖いな」
普段はなるべくフラットな話し方をするようにしている。
何かの本で、敬語を使い続けていると上に立つ人間にはなれない。と読んだ事があるからだ。
特に上に立ちたいわけでは無いが、丁寧に話すだけで普段と違う雰囲気(今回の場合は緊張感のある雰囲気)を作れるのであれば、多少なりとも意味があったのだろう。
「そうですか?」
「ああ、もっと気安い感じで話してくれ」
「今回は内容が内容なので……」
少し声のトーンを落とす。
「……だからこそ、なんだけどな」
かすかに聞き取れる位のつぶやきが聞こえる。
なんだか事情を知っていそうだなと思いながら、目当てのフロアに着いたので、入っていった。
「おっ、鈴屋さんからメール」
鈴屋さんは、先月行ったチャリティイベントの収益を寄付する、寄付先の一つで代表をしている。
寄付先は、公益性の高いNPOや孤児院を中心に決められている。
その中でも、鈴屋さんは自然災害時の復興支援を行うNPO団体の代表だ。
早速、鈴屋さんからのメールを読んでいく。
『国岡正巳様 前略。先月のチャリティイベントお疲れ様でした。私も1日目から――』
あいさつと本題が書かれていた。
内容を要約するとこんな感じだった。
『聞いていたよりも寄付額が少ないのだけど、何かトラブルありましたか?』
聞いていたというのは、事前に収益予測と分配割合から俺から鈴屋さんに、今年の寄付予想額を伝えていたのだ。
なぜ予想額を前もって伝えたのかというと、鈴屋さんからの『次期の計画を立てなければいけないので、可能であれば予想寄付額を教えてください』という問合せに、俺が統計分析をして予想金額を答えていたという状況がある。
何故分析が出来るのかというと、大学で統計分析学を履修していたのだ。俺自身分析するのが嫌いでは無かったので、成績はそれなりに良かった。
卒業してからも暇なときには、色々な事をテーマに分析したりもしていた。本格的に分析するのが久し振りとは言え、精度は申し分なかったはずだ。
無理して、過去10年の参加者数と収益額、寄付額なんかの資料も各部署から集めたし……
何にしても一先ず、事実関係を調べてみる必要がある。
手違い、勘違い、他の可能性だってある。
……正直、勘違いであって欲しいが、"鈴屋さんからメールが来た"という事実があるからには、調べざるを得ないだろう。
何故なら、多少の誤差で連絡してくるはずがないのだから。
一応、鈴屋さんのメール本文を小型記憶端末にコピーする。コピーした後で、小型記憶端末をスーツの内ポケットに仕舞うと、経理担当の部署へ向かった。
――
経理の部署がある階は3つ上の階なので、階段を上がって行く。
目当てのフロアに着いたので、入り口にあるパネルから、チャリティイベント担当の”経理”を呼び出す。
「お疲れ様、ちょっと確認したい事があるんですけど、良いですか?」
「正巳か、分かった。少し待っててくれ」
少しすると、ドアが開いて人が歩いてくる。
「先輩、こんなので申し訳ありませんけど、差し入れです」
手に持っていたカロリーバーを差し出す。
このカロリーバーは、常にデスクの引き出しにストックしている。
「お、悪いな。……ここじゃなんだから上のフロア行くか」
カロリーバーを受け取った後で、上を指している。
「ですね、そうしましょう」
「……お前が丁寧だと、なんか怖いな」
普段はなるべくフラットな話し方をするようにしている。
何かの本で、敬語を使い続けていると上に立つ人間にはなれない。と読んだ事があるからだ。
特に上に立ちたいわけでは無いが、丁寧に話すだけで普段と違う雰囲気(今回の場合は緊張感のある雰囲気)を作れるのであれば、多少なりとも意味があったのだろう。
「そうですか?」
「ああ、もっと気安い感じで話してくれ」
「今回は内容が内容なので……」
少し声のトーンを落とす。
「……だからこそ、なんだけどな」
かすかに聞き取れる位のつぶやきが聞こえる。
なんだか事情を知っていそうだなと思いながら、目当てのフロアに着いたので、入っていった。
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