上 下
45 / 81

第四十五話 予選結果発表

しおりを挟む
「誰も見つからないな」
「会場は広いから仕方ないのである……。お、向こういるのはアリサではないか?」

 レイチェルが指差した方向には確かにアリサがいた。アリサのすぐ横にはシルヴィアとエリーもいる。どうやら他のみんなは先に集まっていたらしい。

「お~い! アリサー! シルヴィアー! エリー!」

 俺はみんなの名前を呼びながら彼女たちの元へ走っていく。

「あなた……誰?」

 アリサはきょとんとして言った。他の二人も同様に不思議そうな顔をして俺のことを見ている。

「俺だよ! 俺! 見てわからないのか? ……あ、分からないよな。レイチェル、説明してやってくれ」

「はぁ……、はぁ……。ユー子よ、私をおいて先に行くでない!」

 レイチェルは息を切らせてこちらに走ってきた。

「……レイチェルの……お友達?」

 シルヴィアが俺とレイチェルの顔を交互に見つめながら言う。

「ふむ。お友達というかだな、家族のようなものである」

「こら、レイチェル。紛らわしいことを言うな。俺はユートだよ、レイチェルにヴルトゥームの幻覚で女の子の姿にしてもらったんだ。……そのほうが対戦相手を探しやすかったもんでな」

「ふーん、それならよかったわ。てっきりあんたが女装趣味に目覚めたのかと思ったわよ」

 アリサの言葉に俺はドキッとしてしまう。どんな見た目になってるか自分ではわからないので女装といえるのかはともかく、女の子アイドルとしてチヤホヤしてもらうのはちょっと楽しいと思っていたりしていた。

「ま、まあこれは純粋に戦略的なものなので、この予選会が終わるまではこのままの格好で行くからよろしくな。……とそんなことよりもだな、プレートをどんだけ集められたのか確認しないと」

 見るとアリサは胸に三枚のプレートをつけている。エリーのほうはというと一枚のプレートをつけているだけだ。俺が十三枚でシルヴィアが一枚、レイチェルが0枚だから合計で十八枚か。

「五人で十八枚か。……こりゃちょっと厳しいかもな」
「何を言ってますの? よくごらんになってくださいな」

 エリーは突然自分の服をめくり上げて、彼女のたわわな胸を包んでいる下着を露出する。

「――ば、馬鹿! いくらお前が変態だからって時と場所を考えろよ!」
「あら、時と場所を選べばいいんですの? ……冗談ですの、そんな目で見ないでほしいですわ」

 エリーはめくりあげた服をパタパタとなびかせる。すると、パタパタするたびにプレートが一枚、また一枚と、どんどん落ちて出てきた。

「わたくしが集めたプレートの数は全部で二十一枚ですの。もともと持っていた分と合わせると二十二枚ですわ。わたくしがどうやら一番みたいですわね! オーホッホッホッホッ」

 エリーは手を頬に添えて高笑いをしている。俺が一番だと思ってたのにこりゃ意外だな……でもありがたい。

「エリーがそんな怪力だったとは知らなかったぜ。でもこれなら予選通過にかなりの期待が持てるな!」

「ちょっと、怪力とは失礼ですわね。わたくしは対戦相手の動きをメドゥーサで止めただけですの。楽勝でしたわ」

 あ、そっか。メドゥーサってタイマンならかなり恐ろしい能力だったな。

「よし! 後は結果を待つだけだな」

 俺は自分自身で納得するように頷いた。みんなで集めたプレートは全部で三十九枚。十分勝負になる枚数だろう。


――――――――――――――――――――


 その後教会の係員が集計しに現れて、俺たちチームのプレートの枚数を記録していった。そして運命の結果発表だ。

「は~い! お待ちかねの結果発表の時間よ! 一位から順に発表していくわね」

 緊張するな。正直周りの状況を見ている余裕はなかったので俺たちの他の強豪チームがどれだけ荒稼ぎしたかはわからない。

「緊張してるようですわね? こういうのは泣いても笑っても結果は変わらないのですから、どーんと構えるべきですわ」

「……そうだな。やれるだけやったし、どーんと構えるぜ」

 覚悟は決めた。俺は高鳴る胸を押さえながら発表を待った。
 
 発表者のローザは順位が書かれているであろう紙を係りのものから受け取ると、一瞬顔を引きつらせた。……もしかして俺たちのチームが予選落ちだったりしたのか? 不安になるな。
 その後思い切り息を吸ってから拡声器の口に顔を近づけ、怒声のように順位を読み始めた。

「それでは第一位! 『ユートとその下僕たち』! ……これは私信なんだけど、あとでユート君教会裏にいらっしゃい」

 げっ……、確かそのギルド名って、ローザが登録に便宜上必要とかいってたから俺が適当に書いたやつじゃないか。

「ユート? 下僕ってどういうことかしら?」

 アリサが今まで見たことのない笑顔を向けて俺に聞いてくる。普通に怒られるよりも恐ろしいんですけど。

「あ、あの名前はだな、本気でつけたわけじゃないんですよ? ……いつもギルド内でこきつかわれてるから、登録名の中でくらいは偉くなりたかったんです」

 俺は観念して勢いよく土下座する。プライドもへったくれもないが、このままアリサの蹴りが飛んでくるよりはましだ。

「なんとも浅ましい名前の決め方であるな。それだったら『レイチェルとその弟子たち』のほうが何億倍もよいというのに……」

「わるかったって、この大会が終わったら登録名を変えてもらうようにローザに頼むから許してくれ……ください」

 俺はもう一度土下座をしてみんなに謝る。下僕はやっぱり俺のほうだよな……。はぁ……。

「……第五位は『天使たちのお茶会』! 以上の五チームが予選通過よ、おめでとう! 次が最終予選だからがんばってね! 落ちちゃったチームは残念だったけど、また来年にも大会を開くからそのときまでに腕を磨いて待っててね!」

 ギルド名でどたばたしているうちに予選通過の発表が終わってしまったな。といっても他のギルド名を全然知らないから聞いなくても問題ないのだけれど。

 発表が終わると予選落ちしたチームの人たちは会場から出ていく人と、閲覧席に移動していくものにわかれて大きな二つの波ができた。『ユートとその下僕たち』の面々は、それぞれ必死に波に飲み込まれないように踏ん張っている。

 それからしばらくすると波は収まり、会場には予選を通過したチームのみが残される。その中にはよく知っている顔がいた。

「アデルじゃないか? なんかお前とはいろんなところで会うな」

「……もしかしたら何処かで会ったことがあるのかな? 僕は人を覚えるのがあまり得意じゃなくてね、ごめんねお嬢さん」

 アデルはユー子の姿をしているのが俺だということに気づいていないようだ。……説明しなければそりゃわからないよな。でも考えてみたら女の子に化けてるのがバレるのはちょっと恥ずかしいからここは白を切ろう。

「あ、ごめんなさい。知り合いと間違えて全然違う人に声かけちゃった! 私ったらドジっ子☆」

「……君はもしかして? いや、気のせいかな。知り合いと似た気配を感じたからその人の親戚かなと思ったけど、そんなわけないよね」

「え!? 私の家族はこの辺にはいないから、違うと思う……わよ。それじゃあお互い最終予選がんばろ~ね、バイバイ」

 俺はそそくさとその場を離れた。とりあえずバレなくてよかった。アデルのやつ、変にするどいとこあるから気をつけないとな……。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

母親に家を追い出されたので、勝手に生きる!!(泣きついて来ても、助けてやらない)

いくみ
ファンタジー
実母に家を追い出された。 全く親父の奴!勝手に消えやがって! 親父が帰ってこなくなったから、実母が再婚したが……。その再婚相手は働きもせずに好き勝手する男だった。 俺は消えた親父から母と頼むと、言われて。 母を守ったつもりだったが……出て行けと言われた……。 なんだこれ!俺よりもその男とできた子供の味方なんだな? なら、出ていくよ! 俺が居なくても食って行けるなら勝手にしろよ! これは、のんびり気ままに冒険をする男の話です。 カクヨム様にて先行掲載中です。 不定期更新です。

気がついたら異世界に転生していた。

みみっく
ファンタジー
社畜として会社に愛されこき使われ日々のストレスとムリが原因で深夜の休憩中に死んでしまい。 気がついたら異世界に転生していた。 普通に愛情を受けて育てられ、普通に育ち屋敷を抜け出して子供達が集まる広場へ遊びに行くと自分の異常な身体能力に気が付き始めた・・・ 冒険がメインでは無く、冒険とほのぼのとした感じの日常と恋愛を書いていけたらと思って書いています。 戦闘もありますが少しだけです。

王宮で汚職を告発したら逆に指名手配されて殺されかけたけど、たまたま出会ったメイドロボに転生者の技術力を借りて反撃します

有賀冬馬
ファンタジー
王国貴族ヘンリー・レンは大臣と宰相の汚職を告発したが、逆に濡れ衣を着せられてしまい、追われる身になってしまう。 妻は宰相側に寝返り、ヘンリーは女性不信になってしまう。 さらに差し向けられた追手によって左腕切断、毒、呪い状態という満身創痍で、命からがら雪山に逃げ込む。 そこで力尽き、倒れたヘンリーを助けたのは、奇妙なメイド型アンドロイドだった。 そのアンドロイドは、かつて大賢者と呼ばれた転生者の技術で作られたメイドロボだったのだ。 現代知識チートと魔法の融合技術で作られた義手を与えられたヘンリーが、独立勢力となって王国の悪を蹴散らしていく!

異世界転生!俺はここで生きていく

おとなのふりかけ紅鮭
ファンタジー
俺の名前は長瀬達也。特に特徴のない、その辺の高校生男子だ。 同じクラスの女の子に恋をしているが、告白も出来ずにいるチキン野郎である。 今日も部活の朝練に向かう為朝も早くに家を出た。 だけど、俺は朝練に向かう途中で事故にあってしまう。 意識を失った後、目覚めたらそこは俺の知らない世界だった! 魔法あり、剣あり、ドラゴンあり!のまさに小説で読んだファンタジーの世界。 俺はそんな世界で冒険者として生きて行く事になる、はずだったのだが、何やら色々と問題が起きそうな世界だったようだ。 それでも俺は楽しくこの新しい生を歩んで行くのだ! 小説家になろうでも投稿しています。 メインはあちらですが、こちらも同じように投稿していきます。 宜しくお願いします。

突然だけど、空間魔法を頼りに生き延びます

ももがぶ
ファンタジー
俺、空田広志(そらたひろし)23歳。 何故だか気が付けば、見も知らぬ世界に立っていた。 何故、そんなことが分かるかと言えば、自分の目の前には木の棒……棍棒だろうか、それを握りしめた緑色の醜悪な小人っぽい何か三体に囲まれていたからだ。 それに俺は少し前までコンビニに立ち寄っていたのだから、こんな何もない平原であるハズがない。 そして振り返ってもさっきまでいたはずのコンビニも見えないし、建物どころかアスファルトの道路も街灯も何も見えない。 見えるのは俺を取り囲む醜悪な小人三体と、遠くに森の様な木々が見えるだけだ。 「えっと、とりあえずどうにかしないと多分……死んじゃうよね。でも、どうすれば?」 にじり寄ってくる三体の何かを警戒しながら、どうにかこの場を切り抜けたいと考えるが、手元には武器になりそうな物はなく、持っているコンビニの袋の中は発泡酒三本とツナマヨと梅干しのおにぎり、後はポテサラだけだ。 「こりゃ、詰みだな」と思っていると「待てよ、ここが異世界なら……」とある期待が沸き上がる。 「何もしないよりは……」と考え「ステータス!」と呟けば、目の前に半透明のボードが現れ、そこには自分の名前と性別、年齢、HPなどが表記され、最後には『空間魔法Lv1』『次元の隙間からこぼれ落ちた者』と記載されていた。

推しのダンジョン配信者を死なせたくないので炎の仮面冒険者始めました~日本初の100層踏破者は毎回コメント欄がツッコミの嵐

煌國粋陽
ファンタジー
「配信者の安全を守るのは視聴者の務めだよなぁ」 ある出来事により社畜から冒険者へ転向した主人公の存在が日本中を騒がせる事になるダンジョン配信物語。 ダンジョン内にイレギュラー発生した黒竜から美少女配信冒険者パーティーを救った事で主人公の存在が明るみに。 毎回配信コメント欄がツッコミの嵐になる仮面冒険者は自分のクランを創る事に。

知識を従え異世界へ

式田レイ
ファンタジー
何の取り柄もない嵐山コルトが本と出会い、なんの因果か事故に遭い死んでしまった。これが幸運なのか異世界に転生し、冒険の旅をしていろいろな人に合い成長する。

処理中です...