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転生しました?
第2話
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オークの扉を開けて外に出る。外に出るのも一苦労。
1メートルのブロックを登らないといけない。
「ふぅ」
川のせせらぐ音。綺麗な水面に太陽がキラキラと反射している。
そよぐ風に草葉が揺れる。思わず深呼吸をする。
早朝の空気。そして水辺。さらに大自然。本当に空気が澄んでいて綺麗な気がした。
一晩中下へ下へと掘り進んでいたし、1段50センチの階段を登るのにも汗をかいたため
川に近づいて両手で水を掬い、喉を潤す。
※ここはワールド メイド ブロックスの世界です。川の水も飲んでも平気です。
しかし現世では綺麗であっても川の水には菌などが潜んでいる場合がありますので
あまり真似しないでください。
そして少し躊躇したが、ここら一帯を見渡しても優恵楼(ゆけろう)1人しかいない。
優恵楼(ゆけろう)は服を全て脱ぎ、真っ裸で川へ入る。
「おおぉ~!」
足を踏み入れると思いの外冷たくて声が出る。
水の流れが足にあたり、その流れは足を包むように流れ去っていく。
「きもちいな」
意を決して腰までを水につけた。
「おぉ~!」
何とは言わないが縮み上がった。もうそこまでったらこっちのもの。
そのまま仰向けに倒れるように水に浸かった。
普通の世界と違い、川に大きな岩や石などがなく、捕まる場所がないので
少しの流れでもすぐに流されてしまう。すぐに立ち上がる。髪から水が滴り落ちる。
「あぁ~…なんも言えねぇ」
気持ち良すぎて名言が出た。
「でもいつまでもこれってわけにもいかないよな」
と現実に戻る。
「家具MOD入ってるなら…バスタブもあるはず」
そうこの世界にはベースであるワールド メイド ブロックスの世界に
プラスアルファでMODというものが入っている。初日に作ったオークのイスもそうだ。
普通のワールド メイド ブロックスではイスなど作れないのだ。
「てか普通に穴掘って水入れて、その下燃やしたら温泉にならないの?」
と思ってやってみようと思ったが、火をつけるための火打石というアイテムもないし
火はつけたら少ししたら消えてしまうのを思い出して諦めた。
髪はしばらく乾かないだろうと諦め、体が自然乾燥するのを待ってから服を着た。
そして今日は少しだけ周りを探索しようと思っていたので
川辺に目印である柱を建てることにした。
ジャンプして自分の足元に丸石ブロックを置く。
それを何度も繰り返し、柱を建てようとしたが、丸石ブロックを7個ほど積んだときに
「高っ…怖っ…」
となってしまった。それはそうだろうブロック7個。
7メートルである。建物でいったら2階、3階ほどだが充分高いし怖い。
しかし拠点に帰ってくるための目印にしたいのだ。
7ブロックなんてそこらの木で隠れてしまう。目印としては全然ダメ。
それを優恵楼(ゆけろう)もわかってはいた。わかってはいたが怖い。高くて怖い。
普段自分が画面を見てゲームをプレイする側だったときは
ぽんぽんぽんぽん積んでいっていたのに
いざ自分がとなると、こんなに怖いものなのかと実感する。
しかし探索に行くとなったら拠点に帰ってくるため目印は必要である。
なので仕方なくゆっくり、慎重にブロックを積んでいった。
できることなら空を見ながらブロックを置きたい。高さを感じたくない。
しかしブロックを置くときはブロックを置く場所を見ないといけないし
なにより仮に空を見ながらブロックを置けたとしても
足元が狂って落下する…なんて考えるだけで、どこがとは言わないが縮み上がるほど怖かった。
30ブロックほど積んだところで手を止める。
「も…もお…い…いいだろ…」
30ブロック。30メートル。おおよそマンション10階。怖くないはずない。そりゃ声も震える。
目印となる柱を建てたまではいいが、今度はそこから動けない。
ワールド メイド ブロックスの世界では、どんな高さからだろうが
水に飛び込めばダメージを喰らわないという仕様がある。
ワメブロを長年やってきた優恵楼(ゆけろう)も、もちろんそのことは理解している。
川辺に柱を建てたのだから、その側の川に飛び込めばダメージは喰らわない。
そんなことはわかっていた。しかし体が動かない。怖い。
「あぁ~…ここで生涯を終えるのか…」
半分冗談、半分マジだった。静かに川を見下ろす。
「たぁ~かぁ~。プールの飛び込みも10メートルだろ?…あぁ、無理無理。どうしよ」
無理なものは無理である。マンションの10階から飛び降りる?助かるとわかっていても
もしかしたらとかいろいろなことを考え、怖くなって飛び降りれないものだろう。
「ふぅ~…」
優恵楼(ゆけろう)は1メートル×1メートルの丸石ブロックの上で体育座りをしながら
体育座りのままゆっくりと川のほうへ移動する。足がはみ出る。足を下ろす。
「ふぅー…ふぅ~…」
太ももの横、丸石の端に手を置く。恐怖で自分の手も冷たくなっているからか
それともそんなことに気を回せないためか、丸石の冷たさは感じなかった。目を瞑る。
「ふぅ~…ふぅ~…」
やろうとしていることはわかる。優恵楼(ゆけろう)もそのつもりだ。
しかしそこからが長かった。読者の皆様もきっと想像しながら
焦ったいな
と思うだろう。しかし自分がその立場になってほしい。
きっと優恵楼(ゆけろう)と同じ…バッシャーーン!
そんなナレーションをしていると大きな音と水飛沫が上がった。
決断して飛び込んだらしい。タイミングというものを考えてほしい(byナレーター)
「はあぁ~…はあぁ~…」
水面から顔を出す優恵楼(ゆけろう)。地上へ這い上がり、草地で仰向けになる。
寝転んだ自分の周りの草地が湿る。
「ふぅ~…あぁ~…。…生きてる」
綺麗な青空に流れる雲を見ながら呟いた。
「怖すぎる…」
もう二度と味わいたくないと思うのと同時に
あと何回これを味わわなければならないんだろうとも思った。しばらく寝転んで立ち上がる。
服はびちゃびちゃ。せっかく服を濡らさないように朝水浴びしたのに意味がなかった。
服を乾かすためにフェンスを作って干すかと思い
とりあえず棒をクラフトしようと左手のスマートウォッチのような機械をタップする。
するとその機械の上、空中にアイテム欄が出る。10個のハートマーク、体力ゲージ
10個のお肉マーク、空腹ゲージに2×2のクラフトのためのマスも出る。
今まで気づかなかったが、その2×2のマスの右上に洋服マークがあった。
タップしてみる。するとどうやら洋服を変えられるようだった。
「なるほど。スキンみたいなもんね」
ワールド メイド ブロックスにはスキンというものが存在する。
既存のスキンから有名キャラクターのスキン、オシャレなスキン、不気味なスキン
スキンを自作する人も多い。実況者さんのほとんどは自作
もしくは視聴者さんが作ってくれたスキンを使っている人が多い。
それほどスキンは多種多様、十人十色なのである。
優恵楼(ゆけろう)も自分が画面を見てゲームをプレイする側だったとき
スキンを購入していた。どの服もそのときのスキンに似ている。
「あぁ、さすがにオレ自身の顔は変わんないのね」
この世界では服だけしか変わらないらしい。それもそうか。と思い、服を変える。
体の水滴はある程度服が吸収してくれていたらしく
新しい服に変えても大丈夫なほどになっていた。髪は濡れたままだが。
さていよいよ探索の始まりだ。ということで歩き出す。
振り返る。30メートルの柱が建っている。
「あれオレが建てたのか」
信じられない気持ちと誇らしい気持ちがあった。ところどころに木が生えている原っぱを歩く。
土ブロックも1ブロック1メートルあるので乗り越えるのも一苦労。
原っぱをしばらく歩くと奥にトウヒの木が生い茂る森が現れた。
「おぉ~。これまた探索が大変そうだこと」
恐らくその森に入ったら、せっかく怖い思いをして建てた目印も見えない。
しかしトウヒの木材も苗木も欲しい。とりあえず森には入らず
手前のトウヒの木1本を伐ることにした。石の斧でトントンと伐っていく。
しかしトウヒの木は背が高い。一番下のブロックは残してその上2ブロック分を伐って
切り株に登り、さらに上を伐っていく。それでも届かないほど背が高い。
なので足元に土ブロックを設置して、なんとか全て伐り終えた。
「ふぅ…」
これまた一苦労。木を伐り終えると自然葉っぱも元気をなくし消えていく。
そのときに苗木が落ちてくる。リンゴも落ちてきた。ぐぅ~…。お腹が鳴った。
そういえば昨日丸一日なにも食べていない。この世界に来て初めての食事。
服でリンゴの表面を拭いて齧り付く。シャリッ。果汁が溢れるほどの瑞々しさ。
リンゴの香りと多少の酸味、蜜の甘みが口に広がる。
「うまっ」
お腹が減っていたせいか、このリンゴが特別美味しいのか、めちゃくちゃ美味しく感じた。
あっという間にリンゴは芯だけになった。芯だけになった途端、手から芯が消え去った。
「ご馳走様でした」
多少お腹に溜まったものの、まだ少し空腹。
そういえば食べ物を追加するMODも追加していたことに気づく優恵楼(ゆけろう)。
「料理もできんのか。ナイスオレ」
自画自賛した後、森の中を進んでみることにした。
迷わないように数メートル毎に丸石ブロックを置いて。そして丸石ブロックを置いているとき
あれ?あんな怖い思いしなくても、この方法でよかったのでは?
と思ってしまったが、その思いを振り払うように頭をブンブンと振る。
森の中には果物が生っている木がたくさんあった。ぶどうに洋梨、さくらんぼ、桃に柿。
見つけたとき目を輝かせた優恵楼(ゆけろう)はしばらくうっとりと眺めた。
収穫し、我慢などできず、口に放り込んだ。そのどれもが美味しく、やっと満腹になった。
さらに進むと
「わっ。洋館だ」
洋館が現れた。某有名ゾンビゲームのような出立ち。
外観は綺麗だがどことなく怪しげで暗い雰囲気を醸し出している。窓から中を覗く。
ところどころにつけられた松明で照らされてはいるものの
それは充分な光源とはいえず、薄暗かった。
「あ、これは…」
何年もワメブロをやっている優恵楼(ゆけろう)は知っている。洋館には強い敵がいることを。
しかしその敵が強いから、今の自分では入るのはダメだとかそういうわけではなく
「これは怖いやつだ」
そう。ただただ洋館が薄暗く怖いためであった。回れ右して拠点へ帰ることにした。
置いてきた丸石ブロックを頼りに森を抜け
原っぱに戻ってくると遠くに目印となる柱が見える。
「おぉ」
なんか嬉しく、なんか誇らしい。
拠点…なんて呼べるほど立派なものではないが拠点に帰ってきた。
「ただいま」
柱をペチペチ触る。そして植林を施すことにした。
まずは苗木を作る。といっても本来苗木はそのまま植えれば木になる。
しかし優恵楼(ゆけろう)が植えようとしているのは果実の苗木。
果実の苗木はクラフトしないとできない。果物3つになんの苗木でもいいが苗木を1つ。
するとその果物の苗木ができる。とりあえず苗木自体が少ないのでリンゴの苗木
さくらんぼの苗木、柿の苗木をクラフトした。等間隔で苗木を植える。
「まだかな」
もちろんまだである。しかし木が育つのがこんなに待ち遠しいとは。
空を見る。太陽はちょうど真上ほど。まだお昼くらいらしい。
苗木を貰うため、原っぱのほうへ行ってオークの木を伐ることにした。
木を伐っているとコッコッコッコ。という声が聞こえた。
「お?」
振り返る。鶏がいた。
「おぉ!」
と喜ぶのと同時に
「鶏…種か」
と思う。鶏をついて来させる餌。繁殖さするための餌が種なのだ。
種は雑草を抜くことで確率的に手に入る。そういえばこの世界に来てから雑草を抜いていない。
初めて雑草を抜いてみる。雑草を掴んで、引っ張る。
もっと根が張って抜きづらいかと思ったらあっさり抜けた。
優恵楼(ゆけろう)が画面を見てゲームをプレイする側だったときと同じ。
こうも簡単に抜けると楽しくなり、どんどん雑草を抜いていった。
するとポコッっと種がアイテムとして出た。
近づくと種も近づいてきて、左手のスマートウォッチのような機械に吸い込まれていった。
その後も何本も雑草を抜いた。何個も種が出た。そしてその種を右手に持つ。握る。
すると手の中で種が具現化する。おおよそ10粒ほどの種。
その匂いに釣られてか、鶏がコッコッコッコ言いながら近づいてくる。少し可愛い。
優恵楼(ゆけろう)が画面を見てゲームをプレイする側だったときは
鶏なんて見つけたらすぐに剣で鶏肉に捌いていた。ゲーム序盤では貴重な食料なためである。
しかし今の優恵楼(ゆけろう)にはそんな考え毛頭ない。
「ほら、おいで!」
優恵楼(ゆけろう)の後をついて回る鶏。
「かわゆいな。お主」
拠点前に着いた。
「さぁ~て。じゃあお主の家を作るか」
クラフトテーブルで、まずはフェンスとフェンスゲートを作った。
フェンスで囲いを作り、出口としてフェンスゲートを設置する。
右手に種を持ってその囲いの中に鶏を誘導する。入ってくれた。
「お主は聞き分けの良い子だなぁ~。お主の名前はお主にしよう」
勝手に名前まで決めた。完全に愛着が沸いている。フェンスゲートから外に出る。
囲いの中にいるお主は不思議そうに囲いの中を歩き回っていた。
繁殖させるために捕獲したときのいつもならこれで完了だ。しかし
「なんか…なんか…物足りないな」
なにか物足りなさを感じてしまった。
もう少しフェンスを作り足し、オークのハーフブロックも作った。
土ブロックを積んで囲いの四方の角のフェンスを柱のように伸ばした。
そしてハーフブロックで屋根をつけた。土ブロックを回収し、地面に下りる。
少し離れてお主の小屋を見る。
「おぉ~。ま、幾分かマシか」
これで雨からも守られる。仕上げに松明を何本かつけて明るさを確保して完了。
「まさかこの世界に来て初めて建てた建物が鶏の建物とは」
予想外すぎて笑う優恵楼(ゆけろう)。クラフトテーブルで看板を作って
「お主の家」
と表示させて飾ったほどだ。
「今日からお主はオレの家族な」
「コケッ」
返事をしてくれたようで嬉しかった。
「よしっ!」
空を見るとまだ夕暮れではないものの、もうすぐ夕暮れ。太陽が落ちかけていた。
「お主~。ま、今は一人だけど、奥さんも連れてきてあげるからな」
お主がオス前提で進めているが、メスかもしれない。種を右手に持ってお主に差し出す。
お主が優恵楼(ゆけろう)の右手から種を食べる。お主の周りにハートが出る。
「相手がいないからな」
と言って洞穴に戻った。クラフトテーブルで石の鍬とバケツを作る。
外に出て土を鍬で耕す。1ブロックを囲むように周りの8ブロックを耕す。
そして真ん中の1ブロックをスコップで掘る。川辺に行って右手のアイテムをバケツに変える。
バケツの取手を握るとバケツが具現化する。重さはそんなにない。
しゃがんでバケツに水を入れる。少し重くなる。
「芸細(げいこま)」
芸が細かいもなにも、優恵楼(ゆけろう)が今生きている世界なので
芸が細かいという表現も正しいのか微妙なものである。
水入りバケツを持ったまま先程耕したところへ向かう。真ん中に空けた穴に水を流し込む。
バケツから流れる水に、もう夕暮れとなったオレンジ色の太陽の光がキラキラと反射する。
先程耕した8ブロックにみるみるうちに水が染み渡って
耕した土ブロックの表面の色が濃くなり、潤いをもったのがわかる。
「よし」
下準備は整った。右手のアイテムを種に切り替える。
「コケッ?」
お主が反応する。
「お主のじゃないよ」
種を持ったまま土の真ん中を少し掘り、種を埋めて土を被せる。
それを8ブロック全てに行った。
「これ…畑大きくしたら腰死ぬぞ」
小さな畑ができた。少し汗をかいたので川辺に行き、川の水で顔を洗った。
小麦が育つのを楽しみにしながら洞穴に戻った。
チェストに荷物をしまってオークのイスに座る。
「さてぇ~どーおーすーるーかーなー?」
前後に揺れながら考える。
「時計ないし、時計欲しいし。でも地下の空洞は怖いし…」
ハッっと思いつき、クラフトテーブルで石のツルハシを10本作った。
「ディナ~マイニング~」
ディナーマイニングとは
ワールド メイド ブロックスにて効率良く鉱石を手に入れる方法である。
優恵楼(ゆけろう)は階段をある程度の高さまで下りて、階段の横に広場を作る。
そしていざディナーマイニングだ。同じ高さでひたすらに直線状に掘っていく。
すると鉱石が現れる。鉄だったり石炭だったり。
ツルハシが2本ほど壊れたら先程の階段横の広場に戻り
先程掘った部分から2ブロック空けて、また直線状に掘っていく。
ありがたいことに鉄だったり石炭だったりがよく手に入る。
鉄や石炭なんていくらあっても困らない。
「お」
石のグレーに赤い粒々があるブロックが現れた。
「ブラッドストーンやん」
ブラッドストーン。それはこのワールド メイド ブロックスの世界で
いろいろな回路を組んだりするために使う、電気回路のような役割の鉱石だ。
優恵楼(ゆけろう)は石のツルハシから鉄のツルハシに持ち替え、ブラッドストーンを掘る。
黄色というのか黄緑というのか、経験値の玉とともにブラッドストーンがアイテム化する。
「あとは金だな」
あと金があれば時計ができる。しかし金鉱石ブロックには意外と出会わないのだ。
鉄、石炭は集まる集まる。石のツルハシが2本壊れたら広場に戻って
先程掘った部分から2ブロック隣を掘るを繰り返す。ツルハシが無くなったら作りに戻る。
鉄、石炭、ブラッドストーンは集まった。
ツルハシを作るときに釜戸を5つほど作り、広場に置いて
ディナーマイニングしているときに精錬されるように鉄と石炭をセッティングする。
そして続けてディナーマイニングをする。
トットットットット。ボコッ。トットットットット。ボコッ。
「お。あ」
新しい鉱石が出てきた。出てきたが
「いらねぇ~」
と優恵楼(ゆけろう)はつい口に出してしまう。出会った鉱石。ラピスラズリ。青い鉱石だ。
「青…水色がよかったなぁ~」
と文句を言いながらも鉄のツルハシで掘る。ラピスラズリと経験値の玉が複数飛び出る。
「今は…今はいらんよ」
なぜ今はいらないのか。今現時点でラピスラズリは使い道がないからだ。
ラピスラズリブロックという綺麗な青のブロックにするくらいだ。
結局オークの扉の4つの小窓から陽の光が差し込むまでディナーマイニングを続けたが
金を掘り当てることはできず、収穫は鉄、石炭が大量
ブラッドストーン、ラピスラズリだった。
「いやぁ~さすがに疲れたぁ~」
とベッドで横になりたいがベッドはない。仕方なくオークのイスに腰を下ろす。
「いらないときは出るんだけどなぁ~…金。物欲センサーか?」
背骨をボキボキと鳴らし、重い腰を上げ、オークの扉を開いた。
1メートルのブロックを登らないといけない。
「ふぅ」
川のせせらぐ音。綺麗な水面に太陽がキラキラと反射している。
そよぐ風に草葉が揺れる。思わず深呼吸をする。
早朝の空気。そして水辺。さらに大自然。本当に空気が澄んでいて綺麗な気がした。
一晩中下へ下へと掘り進んでいたし、1段50センチの階段を登るのにも汗をかいたため
川に近づいて両手で水を掬い、喉を潤す。
※ここはワールド メイド ブロックスの世界です。川の水も飲んでも平気です。
しかし現世では綺麗であっても川の水には菌などが潜んでいる場合がありますので
あまり真似しないでください。
そして少し躊躇したが、ここら一帯を見渡しても優恵楼(ゆけろう)1人しかいない。
優恵楼(ゆけろう)は服を全て脱ぎ、真っ裸で川へ入る。
「おおぉ~!」
足を踏み入れると思いの外冷たくて声が出る。
水の流れが足にあたり、その流れは足を包むように流れ去っていく。
「きもちいな」
意を決して腰までを水につけた。
「おぉ~!」
何とは言わないが縮み上がった。もうそこまでったらこっちのもの。
そのまま仰向けに倒れるように水に浸かった。
普通の世界と違い、川に大きな岩や石などがなく、捕まる場所がないので
少しの流れでもすぐに流されてしまう。すぐに立ち上がる。髪から水が滴り落ちる。
「あぁ~…なんも言えねぇ」
気持ち良すぎて名言が出た。
「でもいつまでもこれってわけにもいかないよな」
と現実に戻る。
「家具MOD入ってるなら…バスタブもあるはず」
そうこの世界にはベースであるワールド メイド ブロックスの世界に
プラスアルファでMODというものが入っている。初日に作ったオークのイスもそうだ。
普通のワールド メイド ブロックスではイスなど作れないのだ。
「てか普通に穴掘って水入れて、その下燃やしたら温泉にならないの?」
と思ってやってみようと思ったが、火をつけるための火打石というアイテムもないし
火はつけたら少ししたら消えてしまうのを思い出して諦めた。
髪はしばらく乾かないだろうと諦め、体が自然乾燥するのを待ってから服を着た。
そして今日は少しだけ周りを探索しようと思っていたので
川辺に目印である柱を建てることにした。
ジャンプして自分の足元に丸石ブロックを置く。
それを何度も繰り返し、柱を建てようとしたが、丸石ブロックを7個ほど積んだときに
「高っ…怖っ…」
となってしまった。それはそうだろうブロック7個。
7メートルである。建物でいったら2階、3階ほどだが充分高いし怖い。
しかし拠点に帰ってくるための目印にしたいのだ。
7ブロックなんてそこらの木で隠れてしまう。目印としては全然ダメ。
それを優恵楼(ゆけろう)もわかってはいた。わかってはいたが怖い。高くて怖い。
普段自分が画面を見てゲームをプレイする側だったときは
ぽんぽんぽんぽん積んでいっていたのに
いざ自分がとなると、こんなに怖いものなのかと実感する。
しかし探索に行くとなったら拠点に帰ってくるため目印は必要である。
なので仕方なくゆっくり、慎重にブロックを積んでいった。
できることなら空を見ながらブロックを置きたい。高さを感じたくない。
しかしブロックを置くときはブロックを置く場所を見ないといけないし
なにより仮に空を見ながらブロックを置けたとしても
足元が狂って落下する…なんて考えるだけで、どこがとは言わないが縮み上がるほど怖かった。
30ブロックほど積んだところで手を止める。
「も…もお…い…いいだろ…」
30ブロック。30メートル。おおよそマンション10階。怖くないはずない。そりゃ声も震える。
目印となる柱を建てたまではいいが、今度はそこから動けない。
ワールド メイド ブロックスの世界では、どんな高さからだろうが
水に飛び込めばダメージを喰らわないという仕様がある。
ワメブロを長年やってきた優恵楼(ゆけろう)も、もちろんそのことは理解している。
川辺に柱を建てたのだから、その側の川に飛び込めばダメージは喰らわない。
そんなことはわかっていた。しかし体が動かない。怖い。
「あぁ~…ここで生涯を終えるのか…」
半分冗談、半分マジだった。静かに川を見下ろす。
「たぁ~かぁ~。プールの飛び込みも10メートルだろ?…あぁ、無理無理。どうしよ」
無理なものは無理である。マンションの10階から飛び降りる?助かるとわかっていても
もしかしたらとかいろいろなことを考え、怖くなって飛び降りれないものだろう。
「ふぅ~…」
優恵楼(ゆけろう)は1メートル×1メートルの丸石ブロックの上で体育座りをしながら
体育座りのままゆっくりと川のほうへ移動する。足がはみ出る。足を下ろす。
「ふぅー…ふぅ~…」
太ももの横、丸石の端に手を置く。恐怖で自分の手も冷たくなっているからか
それともそんなことに気を回せないためか、丸石の冷たさは感じなかった。目を瞑る。
「ふぅ~…ふぅ~…」
やろうとしていることはわかる。優恵楼(ゆけろう)もそのつもりだ。
しかしそこからが長かった。読者の皆様もきっと想像しながら
焦ったいな
と思うだろう。しかし自分がその立場になってほしい。
きっと優恵楼(ゆけろう)と同じ…バッシャーーン!
そんなナレーションをしていると大きな音と水飛沫が上がった。
決断して飛び込んだらしい。タイミングというものを考えてほしい(byナレーター)
「はあぁ~…はあぁ~…」
水面から顔を出す優恵楼(ゆけろう)。地上へ這い上がり、草地で仰向けになる。
寝転んだ自分の周りの草地が湿る。
「ふぅ~…あぁ~…。…生きてる」
綺麗な青空に流れる雲を見ながら呟いた。
「怖すぎる…」
もう二度と味わいたくないと思うのと同時に
あと何回これを味わわなければならないんだろうとも思った。しばらく寝転んで立ち上がる。
服はびちゃびちゃ。せっかく服を濡らさないように朝水浴びしたのに意味がなかった。
服を乾かすためにフェンスを作って干すかと思い
とりあえず棒をクラフトしようと左手のスマートウォッチのような機械をタップする。
するとその機械の上、空中にアイテム欄が出る。10個のハートマーク、体力ゲージ
10個のお肉マーク、空腹ゲージに2×2のクラフトのためのマスも出る。
今まで気づかなかったが、その2×2のマスの右上に洋服マークがあった。
タップしてみる。するとどうやら洋服を変えられるようだった。
「なるほど。スキンみたいなもんね」
ワールド メイド ブロックスにはスキンというものが存在する。
既存のスキンから有名キャラクターのスキン、オシャレなスキン、不気味なスキン
スキンを自作する人も多い。実況者さんのほとんどは自作
もしくは視聴者さんが作ってくれたスキンを使っている人が多い。
それほどスキンは多種多様、十人十色なのである。
優恵楼(ゆけろう)も自分が画面を見てゲームをプレイする側だったとき
スキンを購入していた。どの服もそのときのスキンに似ている。
「あぁ、さすがにオレ自身の顔は変わんないのね」
この世界では服だけしか変わらないらしい。それもそうか。と思い、服を変える。
体の水滴はある程度服が吸収してくれていたらしく
新しい服に変えても大丈夫なほどになっていた。髪は濡れたままだが。
さていよいよ探索の始まりだ。ということで歩き出す。
振り返る。30メートルの柱が建っている。
「あれオレが建てたのか」
信じられない気持ちと誇らしい気持ちがあった。ところどころに木が生えている原っぱを歩く。
土ブロックも1ブロック1メートルあるので乗り越えるのも一苦労。
原っぱをしばらく歩くと奥にトウヒの木が生い茂る森が現れた。
「おぉ~。これまた探索が大変そうだこと」
恐らくその森に入ったら、せっかく怖い思いをして建てた目印も見えない。
しかしトウヒの木材も苗木も欲しい。とりあえず森には入らず
手前のトウヒの木1本を伐ることにした。石の斧でトントンと伐っていく。
しかしトウヒの木は背が高い。一番下のブロックは残してその上2ブロック分を伐って
切り株に登り、さらに上を伐っていく。それでも届かないほど背が高い。
なので足元に土ブロックを設置して、なんとか全て伐り終えた。
「ふぅ…」
これまた一苦労。木を伐り終えると自然葉っぱも元気をなくし消えていく。
そのときに苗木が落ちてくる。リンゴも落ちてきた。ぐぅ~…。お腹が鳴った。
そういえば昨日丸一日なにも食べていない。この世界に来て初めての食事。
服でリンゴの表面を拭いて齧り付く。シャリッ。果汁が溢れるほどの瑞々しさ。
リンゴの香りと多少の酸味、蜜の甘みが口に広がる。
「うまっ」
お腹が減っていたせいか、このリンゴが特別美味しいのか、めちゃくちゃ美味しく感じた。
あっという間にリンゴは芯だけになった。芯だけになった途端、手から芯が消え去った。
「ご馳走様でした」
多少お腹に溜まったものの、まだ少し空腹。
そういえば食べ物を追加するMODも追加していたことに気づく優恵楼(ゆけろう)。
「料理もできんのか。ナイスオレ」
自画自賛した後、森の中を進んでみることにした。
迷わないように数メートル毎に丸石ブロックを置いて。そして丸石ブロックを置いているとき
あれ?あんな怖い思いしなくても、この方法でよかったのでは?
と思ってしまったが、その思いを振り払うように頭をブンブンと振る。
森の中には果物が生っている木がたくさんあった。ぶどうに洋梨、さくらんぼ、桃に柿。
見つけたとき目を輝かせた優恵楼(ゆけろう)はしばらくうっとりと眺めた。
収穫し、我慢などできず、口に放り込んだ。そのどれもが美味しく、やっと満腹になった。
さらに進むと
「わっ。洋館だ」
洋館が現れた。某有名ゾンビゲームのような出立ち。
外観は綺麗だがどことなく怪しげで暗い雰囲気を醸し出している。窓から中を覗く。
ところどころにつけられた松明で照らされてはいるものの
それは充分な光源とはいえず、薄暗かった。
「あ、これは…」
何年もワメブロをやっている優恵楼(ゆけろう)は知っている。洋館には強い敵がいることを。
しかしその敵が強いから、今の自分では入るのはダメだとかそういうわけではなく
「これは怖いやつだ」
そう。ただただ洋館が薄暗く怖いためであった。回れ右して拠点へ帰ることにした。
置いてきた丸石ブロックを頼りに森を抜け
原っぱに戻ってくると遠くに目印となる柱が見える。
「おぉ」
なんか嬉しく、なんか誇らしい。
拠点…なんて呼べるほど立派なものではないが拠点に帰ってきた。
「ただいま」
柱をペチペチ触る。そして植林を施すことにした。
まずは苗木を作る。といっても本来苗木はそのまま植えれば木になる。
しかし優恵楼(ゆけろう)が植えようとしているのは果実の苗木。
果実の苗木はクラフトしないとできない。果物3つになんの苗木でもいいが苗木を1つ。
するとその果物の苗木ができる。とりあえず苗木自体が少ないのでリンゴの苗木
さくらんぼの苗木、柿の苗木をクラフトした。等間隔で苗木を植える。
「まだかな」
もちろんまだである。しかし木が育つのがこんなに待ち遠しいとは。
空を見る。太陽はちょうど真上ほど。まだお昼くらいらしい。
苗木を貰うため、原っぱのほうへ行ってオークの木を伐ることにした。
木を伐っているとコッコッコッコ。という声が聞こえた。
「お?」
振り返る。鶏がいた。
「おぉ!」
と喜ぶのと同時に
「鶏…種か」
と思う。鶏をついて来させる餌。繁殖さするための餌が種なのだ。
種は雑草を抜くことで確率的に手に入る。そういえばこの世界に来てから雑草を抜いていない。
初めて雑草を抜いてみる。雑草を掴んで、引っ張る。
もっと根が張って抜きづらいかと思ったらあっさり抜けた。
優恵楼(ゆけろう)が画面を見てゲームをプレイする側だったときと同じ。
こうも簡単に抜けると楽しくなり、どんどん雑草を抜いていった。
するとポコッっと種がアイテムとして出た。
近づくと種も近づいてきて、左手のスマートウォッチのような機械に吸い込まれていった。
その後も何本も雑草を抜いた。何個も種が出た。そしてその種を右手に持つ。握る。
すると手の中で種が具現化する。おおよそ10粒ほどの種。
その匂いに釣られてか、鶏がコッコッコッコ言いながら近づいてくる。少し可愛い。
優恵楼(ゆけろう)が画面を見てゲームをプレイする側だったときは
鶏なんて見つけたらすぐに剣で鶏肉に捌いていた。ゲーム序盤では貴重な食料なためである。
しかし今の優恵楼(ゆけろう)にはそんな考え毛頭ない。
「ほら、おいで!」
優恵楼(ゆけろう)の後をついて回る鶏。
「かわゆいな。お主」
拠点前に着いた。
「さぁ~て。じゃあお主の家を作るか」
クラフトテーブルで、まずはフェンスとフェンスゲートを作った。
フェンスで囲いを作り、出口としてフェンスゲートを設置する。
右手に種を持ってその囲いの中に鶏を誘導する。入ってくれた。
「お主は聞き分けの良い子だなぁ~。お主の名前はお主にしよう」
勝手に名前まで決めた。完全に愛着が沸いている。フェンスゲートから外に出る。
囲いの中にいるお主は不思議そうに囲いの中を歩き回っていた。
繁殖させるために捕獲したときのいつもならこれで完了だ。しかし
「なんか…なんか…物足りないな」
なにか物足りなさを感じてしまった。
もう少しフェンスを作り足し、オークのハーフブロックも作った。
土ブロックを積んで囲いの四方の角のフェンスを柱のように伸ばした。
そしてハーフブロックで屋根をつけた。土ブロックを回収し、地面に下りる。
少し離れてお主の小屋を見る。
「おぉ~。ま、幾分かマシか」
これで雨からも守られる。仕上げに松明を何本かつけて明るさを確保して完了。
「まさかこの世界に来て初めて建てた建物が鶏の建物とは」
予想外すぎて笑う優恵楼(ゆけろう)。クラフトテーブルで看板を作って
「お主の家」
と表示させて飾ったほどだ。
「今日からお主はオレの家族な」
「コケッ」
返事をしてくれたようで嬉しかった。
「よしっ!」
空を見るとまだ夕暮れではないものの、もうすぐ夕暮れ。太陽が落ちかけていた。
「お主~。ま、今は一人だけど、奥さんも連れてきてあげるからな」
お主がオス前提で進めているが、メスかもしれない。種を右手に持ってお主に差し出す。
お主が優恵楼(ゆけろう)の右手から種を食べる。お主の周りにハートが出る。
「相手がいないからな」
と言って洞穴に戻った。クラフトテーブルで石の鍬とバケツを作る。
外に出て土を鍬で耕す。1ブロックを囲むように周りの8ブロックを耕す。
そして真ん中の1ブロックをスコップで掘る。川辺に行って右手のアイテムをバケツに変える。
バケツの取手を握るとバケツが具現化する。重さはそんなにない。
しゃがんでバケツに水を入れる。少し重くなる。
「芸細(げいこま)」
芸が細かいもなにも、優恵楼(ゆけろう)が今生きている世界なので
芸が細かいという表現も正しいのか微妙なものである。
水入りバケツを持ったまま先程耕したところへ向かう。真ん中に空けた穴に水を流し込む。
バケツから流れる水に、もう夕暮れとなったオレンジ色の太陽の光がキラキラと反射する。
先程耕した8ブロックにみるみるうちに水が染み渡って
耕した土ブロックの表面の色が濃くなり、潤いをもったのがわかる。
「よし」
下準備は整った。右手のアイテムを種に切り替える。
「コケッ?」
お主が反応する。
「お主のじゃないよ」
種を持ったまま土の真ん中を少し掘り、種を埋めて土を被せる。
それを8ブロック全てに行った。
「これ…畑大きくしたら腰死ぬぞ」
小さな畑ができた。少し汗をかいたので川辺に行き、川の水で顔を洗った。
小麦が育つのを楽しみにしながら洞穴に戻った。
チェストに荷物をしまってオークのイスに座る。
「さてぇ~どーおーすーるーかーなー?」
前後に揺れながら考える。
「時計ないし、時計欲しいし。でも地下の空洞は怖いし…」
ハッっと思いつき、クラフトテーブルで石のツルハシを10本作った。
「ディナ~マイニング~」
ディナーマイニングとは
ワールド メイド ブロックスにて効率良く鉱石を手に入れる方法である。
優恵楼(ゆけろう)は階段をある程度の高さまで下りて、階段の横に広場を作る。
そしていざディナーマイニングだ。同じ高さでひたすらに直線状に掘っていく。
すると鉱石が現れる。鉄だったり石炭だったり。
ツルハシが2本ほど壊れたら先程の階段横の広場に戻り
先程掘った部分から2ブロック空けて、また直線状に掘っていく。
ありがたいことに鉄だったり石炭だったりがよく手に入る。
鉄や石炭なんていくらあっても困らない。
「お」
石のグレーに赤い粒々があるブロックが現れた。
「ブラッドストーンやん」
ブラッドストーン。それはこのワールド メイド ブロックスの世界で
いろいろな回路を組んだりするために使う、電気回路のような役割の鉱石だ。
優恵楼(ゆけろう)は石のツルハシから鉄のツルハシに持ち替え、ブラッドストーンを掘る。
黄色というのか黄緑というのか、経験値の玉とともにブラッドストーンがアイテム化する。
「あとは金だな」
あと金があれば時計ができる。しかし金鉱石ブロックには意外と出会わないのだ。
鉄、石炭は集まる集まる。石のツルハシが2本壊れたら広場に戻って
先程掘った部分から2ブロック隣を掘るを繰り返す。ツルハシが無くなったら作りに戻る。
鉄、石炭、ブラッドストーンは集まった。
ツルハシを作るときに釜戸を5つほど作り、広場に置いて
ディナーマイニングしているときに精錬されるように鉄と石炭をセッティングする。
そして続けてディナーマイニングをする。
トットットットット。ボコッ。トットットットット。ボコッ。
「お。あ」
新しい鉱石が出てきた。出てきたが
「いらねぇ~」
と優恵楼(ゆけろう)はつい口に出してしまう。出会った鉱石。ラピスラズリ。青い鉱石だ。
「青…水色がよかったなぁ~」
と文句を言いながらも鉄のツルハシで掘る。ラピスラズリと経験値の玉が複数飛び出る。
「今は…今はいらんよ」
なぜ今はいらないのか。今現時点でラピスラズリは使い道がないからだ。
ラピスラズリブロックという綺麗な青のブロックにするくらいだ。
結局オークの扉の4つの小窓から陽の光が差し込むまでディナーマイニングを続けたが
金を掘り当てることはできず、収穫は鉄、石炭が大量
ブラッドストーン、ラピスラズリだった。
「いやぁ~さすがに疲れたぁ~」
とベッドで横になりたいがベッドはない。仕方なくオークのイスに腰を下ろす。
「いらないときは出るんだけどなぁ~…金。物欲センサーか?」
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