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第6話
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「お、おはよう。汐田」
ぎこちない朝の挨拶の気恵(キエ)。
「おはよ。二日酔い?」
「いや、なんでもない」
「?」な伊織。前日のルビアくんの歓迎会飲み会の帰り
家まで送ってくれた伊織をより意識してしまっていた気恵。
「景馬(ケイマ)大丈夫だったんかな」
「あ、あぁ。今朝LIME来てた。頭痛いって」
「じゃあ、大丈夫だ」
頭が痛い=大丈夫。矛盾しているように感じるがわかるような気もする。これがお酒と大人。
「尾内(オウチ)は全然酔ってなかったから大丈夫だろうけど、大丈夫だった?」
優しい言葉をかける伊織。気恵も
汐田は優しいなぁ~
と思い一緒に歩いていたが、パッっと伊織の顔を見た。
めちゃくちゃ死んだ顔をしていた。一瞬ブレそうになったが
優しいなぁ~
ブレなかった。2人で職場「オーライ おおらか不動産」につき、オフィスに入った。
オフィス内には社長以外見当たらなかった。
「おぉ。おはよう伊織くん、尾内くん」
「おはよーございます」
「おはようございます」
「昨日大丈夫だった?」
「大丈夫でした。ま、自分は全然酔ってなかったんで」
「私も大丈夫でした」
「景馬くん大丈夫だった?」
「あ、大丈夫です。今朝LIME来たので」
気恵(キエ)がスマホを振る。
「そっかそっか」
「社長、昨日何時まで飲んでたんですか?」
「昨日は2時だっけな」
「2時?スゴっ」
「エグいっすね」
と驚いていると
「おはようございます!」
ルビアが出勤してきた。
「おぉ、ルビアくん!おはよー!」
「ルビアくんおはよー」
「おはよー」
「社長!尾内先輩、伊織先輩、おはようございます!
…あれ?景馬先輩と小角決(おかけ)先輩は?」
ルビアが自分のデスクのイスに座る。
「累愛(るあ)は来ないんじゃない?知らんけど」
「明観(あみ)は来ると思うよ」
と話していると
「おっはよーございまーす」
と元気の良い累愛(るあ)が入ってきた。
「お。来たわ」
「ん?なに?」
「いや、今日は来ないんじゃないかって話しててさ」
「あぁ。土日が終わったから?」
「そ」
「顧客獲得のためよぉ~。土日でお部屋決まったお客様が多かったからさ」
キランッ!っという効果音が聞こえてきそうな笑顔の累愛(るあ)。
「自慢ですか」
「自慢です」
「でもお給料の大半をアイドルに注ぎ込んでるんだもんね?」
と言う気恵。
「そうだよー?愛ファス(愛嬌ファーストクラス)に注ぎ込むために
仕事してるようなもんだからね」
「変なやつ」
「おいおいおいおい。こんなイケメン爽やか笑顔。綺麗な白いはピッカーン!
お客様に真摯に寄り添う、オーライ おおらか不動産 No,1プレイヤー
小角決(おかけ) 累愛(るあ)さんに向かって変なやつとは」
「長い長い。肩書き長いって」
いつもの朝礼時間になっても明観(あみ)は来ず、5人で朝礼をした。
朝礼が終わってしばらくしたところで
「遅れましたぁ~…」
と言いながら明観が出勤してきた。
「おぉ。景馬(ケイマ)くんおはよー。大丈夫だっ…」
いつもの眠そうな顔の明観ではなく
メイクで隠れているものの少し青白い、辛そうな顔の明観を見て
「じゃなさそうだね」
と訂正した社長。
「キツいっす…。朝起きたら気持ち悪くて頭痛くて」
「お、おはよう!景馬(ケイマ)!」
ぎこちない朝の挨拶の累愛(るあ)。
「おぉ…小角決(おかけ)…。おはよ…。相変わらず元気が良(よ)いのぉ…」
目が悪い人が見えづらい部分を見るときのように
目を細めて累愛を見る明観(あみ)。
「お、おう!元気元気!」
「ぼんやりとしか覚えてないんだけど、昨日送ってくれたよ…ね?」
「あ、そう…っすね」
「お世話になったようで」
軽く頭を下げる明観。ふらっっとする明観。
「危ないっ」
受け止める累愛(るあ)。
「おぉ。すまんすまん」
二日酔いでもいい香りがふわぁ~っと累愛の鼻に届く。
地下アイドル「愛嬌ファーストクラス」に給料のほとんどを注ぎ込み
チェキなども撮りまくっているため、至近距離でのいい香りには慣れているはずなのに
不覚にもなぜかドキッっとする累愛。
「おぉおぉ。大丈夫か。しばらく座ってろ?」
明観のデスクのイスをひく累愛。
「おぉ。すまんのぉ」
座る明観。
「なんかいるか?買ってくるけど」
「いや、悪いって」
「オレも飲み物買うついでだから」
「あ。そうなん?なら…ココティーのストレートティーを。お願いします」
「オーケー?」
張り切って会社を出て行った累愛(るあ)。
「妙に張り切ってるね」
「貢ぎ癖だろ」
しばらくしてペットボトル2本をそれぞれの手に持って帰ってきた累愛。
「なんかリレーしてる小学生みたいだな」
「両手にバトン持ってるけどね」
「累愛ならやりかねないだろ」
「たしかに」
「買ってきたぞー」
デスクに突っ伏し、力無く手を挙げる明観。
「置いとくぞー」
「サンクス…お金…」
「あぁいいいい。いらんいらん」
「そお?…すんませんなぁ~…」
いつものように休憩スペースで約1日分の鉄分 のむヨーグルトを飲み
一緒に喋っていた気恵(キエ)と一緒にオフィスへ戻る伊織。
「景馬。昨日大丈夫だったん?」
「…あぁ…昨日ね。小角決(おかけ)が送ってくれて」
と言われ「あ、どうも」みたいな感じで軽く頭を下げる累愛(るあ)。
「んで家帰ってゲームして」
みんな
「「は?」」
と言った。しかし突っ伏したまま話を続ける明観(あみ)。
「さすがにパスタイム スポットを起動する元気はなかったんだろうね。
サティスフィーでスプラタウンしてさ?
マッチ内容は覚えてないけど、ボロ負けしたんだろうね…。
キルレ(キルレート)ちょっと下がってたわ。…くそっ」
全員無言で聞いていたが
いやいやいや。あんな酔ってて、しかも今日も二日酔いになるくらいになってんのに
昨日帰った後ゲームしたん?
というツッコミを頭の中でしていた。
「キルレ下がったの“少し”なんだ」
と呟く伊織。
「すべてをなぎ倒す桂馬様ぞ?…酔ったくらいでは弱くならんって」
さすがは根っからのゲーマーである。
そんないつもとは違う朝だったが、いつもの時間に、いつも通り会社は始まる。
その日、気恵(キエ)は内見予定があるということで
お客様がご来店されて早々に会社を出た。
「景馬(ケイマ)、そういえば今日は大丈夫だったん?内見とか」
と伊織が何気なく聞くと
「私は必要最低限しか仕事しないから…そこは心配しないで」
という社会人としては意味がわからない発言をした。
「あぁ。聞いたオレがバカだったわ」
とパソコンをカチカチ、カタカタする伊織。
入り口の扉が開く鈴の音がする。伊織が累愛(るあ)を見る。
すると累愛も伊織を見た。無言で「累愛行っていいよ」というのを汲み取り
コクンと頷き、オフィスを出ていく累愛。
「伊織先輩いいんですか?」
と聞くルビア。
「いいのいいの。累愛、お客様の部屋、土日で決まっちゃったし
まあ、決まっちゃったしって言い方は変か。いいことだし。
ま、とりあえず今の累愛にはお客様が必要だからな」
とパソコンをカチカチ、カタカタさせながらノールックで言う伊織。
「なるほど」
「累愛オレより仕事できるしな」
「なるほど」
「なるほどじゃねぇーよ」
テンションの起伏なしにツッコミを入れる伊織。
「景馬(ケイマ)くん大丈夫かい?」
心配する社長。なにも言わずただデスクに突っ伏したまま右腕を少し挙げ
親指を立てる明観(あみ)。
「大丈夫なようには見えないけど」
「たしかに」
と頷くルビア。と話しているとまた入り口の扉が開く鈴の音が聞こえる。
「今日は飛び込みのお客さん多いかもな」
と言いながら立ち上がる伊織。それを見て立ち上がるルビア。
「ガチー?…無理だわー…」
入り口へ行くと累愛とお客様が入り口のカウンター部分で話しており
その後ろで別のお客様が立っていた。死んだ表情の顔から一気に爽やか笑顔になる伊織。
「いらっしゃいませ。ご来店ありがとうございます。
ようこそ オーライ おおらか不動産へ。奥のほうに部屋がありますので、どうぞ、奥のほうへ」
とお客様を奥の部屋へ案内する。するとルビアは休憩所のほうへ行き
紙コップに入れたお茶を片手に戻ってきた。お客様の前に出す。
「あ、すいません。ありがとうございます」
ルビアは頭を軽く下げる。伊織がルビアに近づき
「さんきゅ。あ、パソコン持って来れくれる?」
とお願いして、ルビアはコクンと頷きオフィスへ。
「お客様は当店は初めてでしょうか?」
「はい」
「では」
と言ってバインダーをお客様の前に出す。
「お手数で申し訳ないんですけど
こちらのほうにご記入をお願いしてもよろしいでしょうか」
「わかりました」
お客様が用紙を読みながらチェック欄にチェックを入れたり
最寄り駅の希望、ご希望の間取りなどを記入した。
ルビアが自分のノートパソコンを持って戻ってきた。
「さんきゅ」
「じゃあこちらで」
お客様がバインダーを反対に向ける。
「ありがとうございます。お受け取りします」
受け取って内容を確認する。
「なるほど。家賃重視でということで」
「はい」
「間取りとしてはご希望としては、できれば1DKということで」
「はい」
「最寄り駅がー…なるほど。ご勤務地が…なるほど。
一旦何件か、こちらのPCで出してみますので。少々お待ちください」
と言いながら伊織はルビアのパソコンを借りてカチカチ、カタカタと操作する。
「そうですねぇ~。家賃重視だとこんな感じですかね」
とノートパソコンの画面をお客様にも見えるような角度に変える。
「あぁ~」
と言いながら眺めるお客様。
「ここは、そうですね。ご希望に近いようなお家賃で、間取りも1DKですね。
ただ…駅から少し歩くというのと、少し狭いですかねぇ~」
「なるほど」
「画面で見ると広そうに見えますけど
実際に部屋に行くと狭いとか、その逆もありますね。
閉米数的には狭いんですけど、実際行ってみたら案外広いとか」
「たしかにありますね」
「あ。もしかして現在のお住まいも」
「そうですね。一人暮らしで賃貸です」
「そうだったんですね」
「更新が近いんで、この機に引っ越そうかなと思いまして」
「なるほど。そうだったんですね。じゃあ内見も慣れていらっしゃる」
「まあ、慣れてはいないですけど、初めてよりは」
「そうなんですね。じゃあ早速なんですが…」
とお客様と内見の日程を決めた。
そしてノートパソコンで見てみたい物件を一緒に探して
候補を数件出してもらい、お客様には帰ってもらった。
「いやぁ~今度の土日でオレお抱えのお客様ゼロになっちゃうかもなぁ~」
自慢のようなことを言いながらパソコンを操作している累愛(るあ)。
「そーゆーときはどーしてんの?」
伊織もまたパソコンを操作しながら累愛に聞く。
「そりゃー」
もしかしたらめちゃくちゃすごい裏技が聞けるかもしれないと
内心期待する伊織とルビアと社長。
「平日も出勤して普通に顧客獲得に勤しむよ」
めちゃくちゃ、めちゃくちゃに普通だった。
「あ、そうなんだ。…あ、入力ミスった」
動揺して入力をミスする伊織。その日は午前にまたもう1人お客様が来て、累愛が対応した。
「昼…か」
と左腕の腕時計を見ながら言う伊織。
「累愛ー。お昼ルビアと行くけど、累愛も行く?」
と立ち上がる。
「あ…今日はオレはパス。2人で行ってきて」
仕事忙しいのか。と思いつつ
「おっけ。じゃ、行くか」
「はい!」
とルビアと伊織、2人でお昼へ行った。いつもと同じ、チェーン店の中華ファミレスへ入る。
「累愛先輩、仕事できる人ですよねぇ~」
「まあなぁ~」
メニューを見ながら話す2人。
「お昼ご飯のときまで仕事なんて」
「…仕事かぁ~?…ま、別になんでもいいけど」
注文を決めて、店員さんに来てもらい、注文する。
あぁ~あのイケメン、この時間に来るんだぁ~。シフト増やそうかな
と思いながらキッチンへ行く店員さん。
一方「オーライ おおらか不動産」では。
「景馬ー大丈夫かー」
累愛(るあ)がパソコンをカチカチ、カタカタさせながら明観(あみ)に聞く。
「んん~…だいぶ楽になってきた…」
出社して午前中丸々寝ていて、それを許す社長のいる職場。いい職場すぎる。
「昼食べれる?」
「んん~…」
「コンビニ行ってきます」
「うん。いってらっしゃい」
累愛はワイヤレスイヤホンで音楽を聴きながらコンビニへ行き
検索エンジン、Hoogleで「二日酔い コンビニ」と調べる。
「あぁ~しじみね。イメージあるわ。梅干しのおにぎり…食べれるかな。
ゆでたまご。スポドリ。…栄養ドリンク。吐かないかな。
へぇ~。トマトがいいんだ。…トマト、ゆでたまご…」
と呟きながらスライスされたゆでたまご入りの冷製トマトパスタを手に取った。
「これ食べれるかな…。ま、いっか」
買い物カゴに入れる。その他にも栄養ドリンク、スポーツドリンクなどを入れてお会計をした。
「おかえり~」
「ただいま戻りましたー」
累愛はレジ袋を自分のデスクの上に置く。
レジ袋を開き、中から冷製トマトパスタを明観のデスクに置く。顔を上げる明観。
「なん…これ」
「Z○ZYか」
とツッコミながら栄養ドリンクも明観のデスクに置く。
「二日酔いにはトマト系とゆでたまごとか栄養ドリンクとかスポドリがいいんだよ」
「そーなん…」
「風邪とかのときにはぁ~?…」
レジ袋の中から
「タッタカタッタッター♫「トライデュエットぉ~」通称「トライぃ~」」
「秘密道具出てきた…」
スポーツドリンクも明観のデスクに置く。
「すまんな…」
「いいのいいの」
「お金…」
「いいいい。食べれるなら食べな?」
「すまんな…」
笑顔の累愛。しかし
「あ…」
ひしゃげたレジ袋を見て
「自分のお昼買ってないわ」
と気づいた。顔を上げて累愛のほうを見て思わず笑う明観(あみ)。
「なにしてん」
「いや…」
累愛がパッっと明観を見る。少し元気のない笑顔にドキッっとする。
まるで「ドキッ」っという効果音が聞こえてきそうである。
「あ…買ってきます!」
と言ってオフィスを飛び出して行った。
「ご馳走様でした」
「ご馳走様でした」
「いやぁ~。担々麺、美味しいですね」
「気に入った?」
「この辛さがいいっすね」
「ここのそんな辛くないんじゃない?」
「そうなんすか?」
「たしかコンビニでもっと辛いの売ってたはず」
「マジっすか!辛いもの…いいっすね」
「ハマったか」
「ハマりました」
お会計はまとめて伊織が払った。
「ありがとうございます!」
「はいはい」
会社に戻ると明観がゆっくりとパスタを食べていた。
「なんか優雅に食べとんな」
「どもぉ~」
「復活したんか」
「いや?まだ…」
「じゃあそれは」
ルビアが疑問をぶつける。伊織はなんとなく察していたので聞かなかった。
「これは小角決(おかけ)が買ってきてくれた」
ルビアは累愛に視線を向ける。伊織はやっぱりなと思っていた。
累愛は自分のお昼ご飯を食べながらニコーという笑顔を向ける。
「小角決がいてよかったわ」
という明観の発言に
「っ…ゲホッ…ゴホゴホ」
とむせる累愛。思わず笑う伊織。そんなこんなでお昼が終わった。
午前が忙しかったから、もしかしたら午後はものすごい忙しいかもしれないと思ったが
午後はそれほど忙しくはなかった。
「明日から休みだぁ~」
そり返る明観。
「ま、明観は今日も休みみたいなもんだったでしょ」
「出社してるだけ褒めてくれ」
社長を残して全員会社を出た。
「明日なにすっかな~」
「アイドルの追っかけは」
「基本ライブは土日なのよ」
「へぇ~」
「聞いといて興味ないんかい!」
ツッコまれるが表情1つ変えず、顔すら上げずスマホをいじる伊織。
「明日誘うかもいれないから空けとけよー」
「寝てるから断るわ」
「ルビアくんに叩き起こしてもらうわ」
「ふざけんな」
「明観。今日は早めに寝なよ?」
「大丈夫大丈夫。今んなって戻ってきたから」
「今日ただサボっただけ?」
「違う違う!マジで二日酔いだったから」
「んじゃ、またね明観」
「ういぃ~。またぁ~気恵(キエ)~」
「んじゃ、また明日!伊織!ルビアくん!」
「はい!またです!累愛先輩!」
「また“木曜日”な。累愛」
と言って伊織、ルビア、気恵組と累愛、明観組で別れた。
「今日お昼どうしたん?」
気恵に聞く伊織。
「あぁ。お客様と食べた」
「あぁ。オレは1回もないけど景馬とかからもたまに聞くな」
「なんか女子社員だとあるよね」
「相手が女性のお客さんならたまにな。こっちは同性でも一緒にお昼はないもんな」
「ないんですね」
「ないない。てかむしろなくていいわ。気遣う」
「あぁ~。伊織先輩の場合、お昼までお客さんと一緒だったら
表情筋が死んじゃいますもんね」
「それもある」
そんな話をしながら歩いていると気恵と別れる場所についた。
「んじゃ。ルビアくん、汐田。また木曜」
「うーす。また。お疲れー」
「お疲れ様です!尾内(オウチ)先輩!」
手を振って気恵とは別れた。
「いやぁ~助かったわ今日は」
「いいってことよ」
明観の家のマンションの前についた2人。
「お詫びというかお礼に」
その言葉にドキドキと少し期待する累愛(るあ)。
「朝までゲーム一緒にしよう」
まあ、捉え様によってはご褒美とも取れるが
「なんだそれ。景馬がゲームしたいだけだろ」
とツッコむ累愛。
「ぬははー」
「じゃ、安静にしとけよ」
「はいはーい」
「んじゃ、また木曜」
「ういー。また木曜な」
と累愛と明観も家へと帰っていった。
「伊織先輩はいつも休みなにするんすか?」
「いつも?…なにかな」
考える伊織。
「癖でだいたい8時に起きて、二度寝して昼に起きて
歯磨いて顔洗って昼食べて…ゲームして…
夜ご飯悩んで、スーパーに買いに行って…帰って夜食べて
バラエティとかドラマとか映画をビール飲みながら見て…気づいてら寝てる…かな」
というのを聞いて伊織顔負けの死んだ顔になるルビア。
「なんすかそれ。楽しいんすか」
辛辣なルビア。
「悪魔か」
「悪魔です」
「そうだった」
文字通り悪魔だった。
「まあ、明日はゆっくりするにせよ、明後日はなんかしましょうよ」
「なんかって?」
「…どっか出掛けるとか。買い物とか?」
「買い物ねぇ~」
「人間界ではなにするのが主流なんですか?」
「いや、オレの休日、割と主流だと思うけどな。独身だと」
「調べときますんで。オレに任せてください!」
「怖いなぁ~」
伊織の家のマンションの前についた。
「んじゃ、また連絡します」
「はいはい」
「では!お疲れ様でした!」
「お疲れ様ー」
ということで明日から休日が始まる。
ぎこちない朝の挨拶の気恵(キエ)。
「おはよ。二日酔い?」
「いや、なんでもない」
「?」な伊織。前日のルビアくんの歓迎会飲み会の帰り
家まで送ってくれた伊織をより意識してしまっていた気恵。
「景馬(ケイマ)大丈夫だったんかな」
「あ、あぁ。今朝LIME来てた。頭痛いって」
「じゃあ、大丈夫だ」
頭が痛い=大丈夫。矛盾しているように感じるがわかるような気もする。これがお酒と大人。
「尾内(オウチ)は全然酔ってなかったから大丈夫だろうけど、大丈夫だった?」
優しい言葉をかける伊織。気恵も
汐田は優しいなぁ~
と思い一緒に歩いていたが、パッっと伊織の顔を見た。
めちゃくちゃ死んだ顔をしていた。一瞬ブレそうになったが
優しいなぁ~
ブレなかった。2人で職場「オーライ おおらか不動産」につき、オフィスに入った。
オフィス内には社長以外見当たらなかった。
「おぉ。おはよう伊織くん、尾内くん」
「おはよーございます」
「おはようございます」
「昨日大丈夫だった?」
「大丈夫でした。ま、自分は全然酔ってなかったんで」
「私も大丈夫でした」
「景馬くん大丈夫だった?」
「あ、大丈夫です。今朝LIME来たので」
気恵(キエ)がスマホを振る。
「そっかそっか」
「社長、昨日何時まで飲んでたんですか?」
「昨日は2時だっけな」
「2時?スゴっ」
「エグいっすね」
と驚いていると
「おはようございます!」
ルビアが出勤してきた。
「おぉ、ルビアくん!おはよー!」
「ルビアくんおはよー」
「おはよー」
「社長!尾内先輩、伊織先輩、おはようございます!
…あれ?景馬先輩と小角決(おかけ)先輩は?」
ルビアが自分のデスクのイスに座る。
「累愛(るあ)は来ないんじゃない?知らんけど」
「明観(あみ)は来ると思うよ」
と話していると
「おっはよーございまーす」
と元気の良い累愛(るあ)が入ってきた。
「お。来たわ」
「ん?なに?」
「いや、今日は来ないんじゃないかって話しててさ」
「あぁ。土日が終わったから?」
「そ」
「顧客獲得のためよぉ~。土日でお部屋決まったお客様が多かったからさ」
キランッ!っという効果音が聞こえてきそうな笑顔の累愛(るあ)。
「自慢ですか」
「自慢です」
「でもお給料の大半をアイドルに注ぎ込んでるんだもんね?」
と言う気恵。
「そうだよー?愛ファス(愛嬌ファーストクラス)に注ぎ込むために
仕事してるようなもんだからね」
「変なやつ」
「おいおいおいおい。こんなイケメン爽やか笑顔。綺麗な白いはピッカーン!
お客様に真摯に寄り添う、オーライ おおらか不動産 No,1プレイヤー
小角決(おかけ) 累愛(るあ)さんに向かって変なやつとは」
「長い長い。肩書き長いって」
いつもの朝礼時間になっても明観(あみ)は来ず、5人で朝礼をした。
朝礼が終わってしばらくしたところで
「遅れましたぁ~…」
と言いながら明観が出勤してきた。
「おぉ。景馬(ケイマ)くんおはよー。大丈夫だっ…」
いつもの眠そうな顔の明観ではなく
メイクで隠れているものの少し青白い、辛そうな顔の明観を見て
「じゃなさそうだね」
と訂正した社長。
「キツいっす…。朝起きたら気持ち悪くて頭痛くて」
「お、おはよう!景馬(ケイマ)!」
ぎこちない朝の挨拶の累愛(るあ)。
「おぉ…小角決(おかけ)…。おはよ…。相変わらず元気が良(よ)いのぉ…」
目が悪い人が見えづらい部分を見るときのように
目を細めて累愛を見る明観(あみ)。
「お、おう!元気元気!」
「ぼんやりとしか覚えてないんだけど、昨日送ってくれたよ…ね?」
「あ、そう…っすね」
「お世話になったようで」
軽く頭を下げる明観。ふらっっとする明観。
「危ないっ」
受け止める累愛(るあ)。
「おぉ。すまんすまん」
二日酔いでもいい香りがふわぁ~っと累愛の鼻に届く。
地下アイドル「愛嬌ファーストクラス」に給料のほとんどを注ぎ込み
チェキなども撮りまくっているため、至近距離でのいい香りには慣れているはずなのに
不覚にもなぜかドキッっとする累愛。
「おぉおぉ。大丈夫か。しばらく座ってろ?」
明観のデスクのイスをひく累愛。
「おぉ。すまんのぉ」
座る明観。
「なんかいるか?買ってくるけど」
「いや、悪いって」
「オレも飲み物買うついでだから」
「あ。そうなん?なら…ココティーのストレートティーを。お願いします」
「オーケー?」
張り切って会社を出て行った累愛(るあ)。
「妙に張り切ってるね」
「貢ぎ癖だろ」
しばらくしてペットボトル2本をそれぞれの手に持って帰ってきた累愛。
「なんかリレーしてる小学生みたいだな」
「両手にバトン持ってるけどね」
「累愛ならやりかねないだろ」
「たしかに」
「買ってきたぞー」
デスクに突っ伏し、力無く手を挙げる明観。
「置いとくぞー」
「サンクス…お金…」
「あぁいいいい。いらんいらん」
「そお?…すんませんなぁ~…」
いつものように休憩スペースで約1日分の鉄分 のむヨーグルトを飲み
一緒に喋っていた気恵(キエ)と一緒にオフィスへ戻る伊織。
「景馬。昨日大丈夫だったん?」
「…あぁ…昨日ね。小角決(おかけ)が送ってくれて」
と言われ「あ、どうも」みたいな感じで軽く頭を下げる累愛(るあ)。
「んで家帰ってゲームして」
みんな
「「は?」」
と言った。しかし突っ伏したまま話を続ける明観(あみ)。
「さすがにパスタイム スポットを起動する元気はなかったんだろうね。
サティスフィーでスプラタウンしてさ?
マッチ内容は覚えてないけど、ボロ負けしたんだろうね…。
キルレ(キルレート)ちょっと下がってたわ。…くそっ」
全員無言で聞いていたが
いやいやいや。あんな酔ってて、しかも今日も二日酔いになるくらいになってんのに
昨日帰った後ゲームしたん?
というツッコミを頭の中でしていた。
「キルレ下がったの“少し”なんだ」
と呟く伊織。
「すべてをなぎ倒す桂馬様ぞ?…酔ったくらいでは弱くならんって」
さすがは根っからのゲーマーである。
そんないつもとは違う朝だったが、いつもの時間に、いつも通り会社は始まる。
その日、気恵(キエ)は内見予定があるということで
お客様がご来店されて早々に会社を出た。
「景馬(ケイマ)、そういえば今日は大丈夫だったん?内見とか」
と伊織が何気なく聞くと
「私は必要最低限しか仕事しないから…そこは心配しないで」
という社会人としては意味がわからない発言をした。
「あぁ。聞いたオレがバカだったわ」
とパソコンをカチカチ、カタカタする伊織。
入り口の扉が開く鈴の音がする。伊織が累愛(るあ)を見る。
すると累愛も伊織を見た。無言で「累愛行っていいよ」というのを汲み取り
コクンと頷き、オフィスを出ていく累愛。
「伊織先輩いいんですか?」
と聞くルビア。
「いいのいいの。累愛、お客様の部屋、土日で決まっちゃったし
まあ、決まっちゃったしって言い方は変か。いいことだし。
ま、とりあえず今の累愛にはお客様が必要だからな」
とパソコンをカチカチ、カタカタさせながらノールックで言う伊織。
「なるほど」
「累愛オレより仕事できるしな」
「なるほど」
「なるほどじゃねぇーよ」
テンションの起伏なしにツッコミを入れる伊織。
「景馬(ケイマ)くん大丈夫かい?」
心配する社長。なにも言わずただデスクに突っ伏したまま右腕を少し挙げ
親指を立てる明観(あみ)。
「大丈夫なようには見えないけど」
「たしかに」
と頷くルビア。と話しているとまた入り口の扉が開く鈴の音が聞こえる。
「今日は飛び込みのお客さん多いかもな」
と言いながら立ち上がる伊織。それを見て立ち上がるルビア。
「ガチー?…無理だわー…」
入り口へ行くと累愛とお客様が入り口のカウンター部分で話しており
その後ろで別のお客様が立っていた。死んだ表情の顔から一気に爽やか笑顔になる伊織。
「いらっしゃいませ。ご来店ありがとうございます。
ようこそ オーライ おおらか不動産へ。奥のほうに部屋がありますので、どうぞ、奥のほうへ」
とお客様を奥の部屋へ案内する。するとルビアは休憩所のほうへ行き
紙コップに入れたお茶を片手に戻ってきた。お客様の前に出す。
「あ、すいません。ありがとうございます」
ルビアは頭を軽く下げる。伊織がルビアに近づき
「さんきゅ。あ、パソコン持って来れくれる?」
とお願いして、ルビアはコクンと頷きオフィスへ。
「お客様は当店は初めてでしょうか?」
「はい」
「では」
と言ってバインダーをお客様の前に出す。
「お手数で申し訳ないんですけど
こちらのほうにご記入をお願いしてもよろしいでしょうか」
「わかりました」
お客様が用紙を読みながらチェック欄にチェックを入れたり
最寄り駅の希望、ご希望の間取りなどを記入した。
ルビアが自分のノートパソコンを持って戻ってきた。
「さんきゅ」
「じゃあこちらで」
お客様がバインダーを反対に向ける。
「ありがとうございます。お受け取りします」
受け取って内容を確認する。
「なるほど。家賃重視でということで」
「はい」
「間取りとしてはご希望としては、できれば1DKということで」
「はい」
「最寄り駅がー…なるほど。ご勤務地が…なるほど。
一旦何件か、こちらのPCで出してみますので。少々お待ちください」
と言いながら伊織はルビアのパソコンを借りてカチカチ、カタカタと操作する。
「そうですねぇ~。家賃重視だとこんな感じですかね」
とノートパソコンの画面をお客様にも見えるような角度に変える。
「あぁ~」
と言いながら眺めるお客様。
「ここは、そうですね。ご希望に近いようなお家賃で、間取りも1DKですね。
ただ…駅から少し歩くというのと、少し狭いですかねぇ~」
「なるほど」
「画面で見ると広そうに見えますけど
実際に部屋に行くと狭いとか、その逆もありますね。
閉米数的には狭いんですけど、実際行ってみたら案外広いとか」
「たしかにありますね」
「あ。もしかして現在のお住まいも」
「そうですね。一人暮らしで賃貸です」
「そうだったんですね」
「更新が近いんで、この機に引っ越そうかなと思いまして」
「なるほど。そうだったんですね。じゃあ内見も慣れていらっしゃる」
「まあ、慣れてはいないですけど、初めてよりは」
「そうなんですね。じゃあ早速なんですが…」
とお客様と内見の日程を決めた。
そしてノートパソコンで見てみたい物件を一緒に探して
候補を数件出してもらい、お客様には帰ってもらった。
「いやぁ~今度の土日でオレお抱えのお客様ゼロになっちゃうかもなぁ~」
自慢のようなことを言いながらパソコンを操作している累愛(るあ)。
「そーゆーときはどーしてんの?」
伊織もまたパソコンを操作しながら累愛に聞く。
「そりゃー」
もしかしたらめちゃくちゃすごい裏技が聞けるかもしれないと
内心期待する伊織とルビアと社長。
「平日も出勤して普通に顧客獲得に勤しむよ」
めちゃくちゃ、めちゃくちゃに普通だった。
「あ、そうなんだ。…あ、入力ミスった」
動揺して入力をミスする伊織。その日は午前にまたもう1人お客様が来て、累愛が対応した。
「昼…か」
と左腕の腕時計を見ながら言う伊織。
「累愛ー。お昼ルビアと行くけど、累愛も行く?」
と立ち上がる。
「あ…今日はオレはパス。2人で行ってきて」
仕事忙しいのか。と思いつつ
「おっけ。じゃ、行くか」
「はい!」
とルビアと伊織、2人でお昼へ行った。いつもと同じ、チェーン店の中華ファミレスへ入る。
「累愛先輩、仕事できる人ですよねぇ~」
「まあなぁ~」
メニューを見ながら話す2人。
「お昼ご飯のときまで仕事なんて」
「…仕事かぁ~?…ま、別になんでもいいけど」
注文を決めて、店員さんに来てもらい、注文する。
あぁ~あのイケメン、この時間に来るんだぁ~。シフト増やそうかな
と思いながらキッチンへ行く店員さん。
一方「オーライ おおらか不動産」では。
「景馬ー大丈夫かー」
累愛(るあ)がパソコンをカチカチ、カタカタさせながら明観(あみ)に聞く。
「んん~…だいぶ楽になってきた…」
出社して午前中丸々寝ていて、それを許す社長のいる職場。いい職場すぎる。
「昼食べれる?」
「んん~…」
「コンビニ行ってきます」
「うん。いってらっしゃい」
累愛はワイヤレスイヤホンで音楽を聴きながらコンビニへ行き
検索エンジン、Hoogleで「二日酔い コンビニ」と調べる。
「あぁ~しじみね。イメージあるわ。梅干しのおにぎり…食べれるかな。
ゆでたまご。スポドリ。…栄養ドリンク。吐かないかな。
へぇ~。トマトがいいんだ。…トマト、ゆでたまご…」
と呟きながらスライスされたゆでたまご入りの冷製トマトパスタを手に取った。
「これ食べれるかな…。ま、いっか」
買い物カゴに入れる。その他にも栄養ドリンク、スポーツドリンクなどを入れてお会計をした。
「おかえり~」
「ただいま戻りましたー」
累愛はレジ袋を自分のデスクの上に置く。
レジ袋を開き、中から冷製トマトパスタを明観のデスクに置く。顔を上げる明観。
「なん…これ」
「Z○ZYか」
とツッコミながら栄養ドリンクも明観のデスクに置く。
「二日酔いにはトマト系とゆでたまごとか栄養ドリンクとかスポドリがいいんだよ」
「そーなん…」
「風邪とかのときにはぁ~?…」
レジ袋の中から
「タッタカタッタッター♫「トライデュエットぉ~」通称「トライぃ~」」
「秘密道具出てきた…」
スポーツドリンクも明観のデスクに置く。
「すまんな…」
「いいのいいの」
「お金…」
「いいいい。食べれるなら食べな?」
「すまんな…」
笑顔の累愛。しかし
「あ…」
ひしゃげたレジ袋を見て
「自分のお昼買ってないわ」
と気づいた。顔を上げて累愛のほうを見て思わず笑う明観(あみ)。
「なにしてん」
「いや…」
累愛がパッっと明観を見る。少し元気のない笑顔にドキッっとする。
まるで「ドキッ」っという効果音が聞こえてきそうである。
「あ…買ってきます!」
と言ってオフィスを飛び出して行った。
「ご馳走様でした」
「ご馳走様でした」
「いやぁ~。担々麺、美味しいですね」
「気に入った?」
「この辛さがいいっすね」
「ここのそんな辛くないんじゃない?」
「そうなんすか?」
「たしかコンビニでもっと辛いの売ってたはず」
「マジっすか!辛いもの…いいっすね」
「ハマったか」
「ハマりました」
お会計はまとめて伊織が払った。
「ありがとうございます!」
「はいはい」
会社に戻ると明観がゆっくりとパスタを食べていた。
「なんか優雅に食べとんな」
「どもぉ~」
「復活したんか」
「いや?まだ…」
「じゃあそれは」
ルビアが疑問をぶつける。伊織はなんとなく察していたので聞かなかった。
「これは小角決(おかけ)が買ってきてくれた」
ルビアは累愛に視線を向ける。伊織はやっぱりなと思っていた。
累愛は自分のお昼ご飯を食べながらニコーという笑顔を向ける。
「小角決がいてよかったわ」
という明観の発言に
「っ…ゲホッ…ゴホゴホ」
とむせる累愛。思わず笑う伊織。そんなこんなでお昼が終わった。
午前が忙しかったから、もしかしたら午後はものすごい忙しいかもしれないと思ったが
午後はそれほど忙しくはなかった。
「明日から休みだぁ~」
そり返る明観。
「ま、明観は今日も休みみたいなもんだったでしょ」
「出社してるだけ褒めてくれ」
社長を残して全員会社を出た。
「明日なにすっかな~」
「アイドルの追っかけは」
「基本ライブは土日なのよ」
「へぇ~」
「聞いといて興味ないんかい!」
ツッコまれるが表情1つ変えず、顔すら上げずスマホをいじる伊織。
「明日誘うかもいれないから空けとけよー」
「寝てるから断るわ」
「ルビアくんに叩き起こしてもらうわ」
「ふざけんな」
「明観。今日は早めに寝なよ?」
「大丈夫大丈夫。今んなって戻ってきたから」
「今日ただサボっただけ?」
「違う違う!マジで二日酔いだったから」
「んじゃ、またね明観」
「ういぃ~。またぁ~気恵(キエ)~」
「んじゃ、また明日!伊織!ルビアくん!」
「はい!またです!累愛先輩!」
「また“木曜日”な。累愛」
と言って伊織、ルビア、気恵組と累愛、明観組で別れた。
「今日お昼どうしたん?」
気恵に聞く伊織。
「あぁ。お客様と食べた」
「あぁ。オレは1回もないけど景馬とかからもたまに聞くな」
「なんか女子社員だとあるよね」
「相手が女性のお客さんならたまにな。こっちは同性でも一緒にお昼はないもんな」
「ないんですね」
「ないない。てかむしろなくていいわ。気遣う」
「あぁ~。伊織先輩の場合、お昼までお客さんと一緒だったら
表情筋が死んじゃいますもんね」
「それもある」
そんな話をしながら歩いていると気恵と別れる場所についた。
「んじゃ。ルビアくん、汐田。また木曜」
「うーす。また。お疲れー」
「お疲れ様です!尾内(オウチ)先輩!」
手を振って気恵とは別れた。
「いやぁ~助かったわ今日は」
「いいってことよ」
明観の家のマンションの前についた2人。
「お詫びというかお礼に」
その言葉にドキドキと少し期待する累愛(るあ)。
「朝までゲーム一緒にしよう」
まあ、捉え様によってはご褒美とも取れるが
「なんだそれ。景馬がゲームしたいだけだろ」
とツッコむ累愛。
「ぬははー」
「じゃ、安静にしとけよ」
「はいはーい」
「んじゃ、また木曜」
「ういー。また木曜な」
と累愛と明観も家へと帰っていった。
「伊織先輩はいつも休みなにするんすか?」
「いつも?…なにかな」
考える伊織。
「癖でだいたい8時に起きて、二度寝して昼に起きて
歯磨いて顔洗って昼食べて…ゲームして…
夜ご飯悩んで、スーパーに買いに行って…帰って夜食べて
バラエティとかドラマとか映画をビール飲みながら見て…気づいてら寝てる…かな」
というのを聞いて伊織顔負けの死んだ顔になるルビア。
「なんすかそれ。楽しいんすか」
辛辣なルビア。
「悪魔か」
「悪魔です」
「そうだった」
文字通り悪魔だった。
「まあ、明日はゆっくりするにせよ、明後日はなんかしましょうよ」
「なんかって?」
「…どっか出掛けるとか。買い物とか?」
「買い物ねぇ~」
「人間界ではなにするのが主流なんですか?」
「いや、オレの休日、割と主流だと思うけどな。独身だと」
「調べときますんで。オレに任せてください!」
「怖いなぁ~」
伊織の家のマンションの前についた。
「んじゃ、また連絡します」
「はいはい」
「では!お疲れ様でした!」
「お疲れ様ー」
ということで明日から休日が始まる。
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