猫舌ということ。

結愛

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暑さの終わり

第171話

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朝起きるとスマホの充電は30パーセントだった。妹が起こしにきて
「珍しいー起きてるー」
などと言って出て行った。スマホを充電ケーブルに繋いで部屋を出て
1階に行って歯を磨いて顔を洗ってリビングで家族で朝ご飯を食べた。
妹と父を見送り、いつも通り早過ぎる昼寝をしてお昼前に家を出た。
3限のお試し講義には鹿島も匠も来ており、3人横並びで半分講義を聞きながらも
テーブルの自分たちの前に自分たちそれぞれのバッグを置き
テーブルの下、太ももの上でゲームをしていた。
「えぇ~来週からどの講義も本格的な講義となります。
この講義も来週の今日からちゃんと出席を取っていきますので
えぇ~この講義を取る方たち、来週からよろしくお願いします」
と講義を締めた。
「この講義取る?」
「取る取る。出席率重視だし。ね、匠ちゃん」
「ん?あぁ取る取るー」
「上の空」
「なにしてんの?」
「ん?反転裁判ー。今2入ったとこー」
「なっつ」
「懐かし」
「サティスフィーで123ギュッってなったやつ出たから」
「あ、そうなん?」
「そうそう」
「鹿島知ってた?」
「いや、知らんかった」
「鹿島も知らないとは」
「オレ小学生のときやっててさ、好きだったから定期的に検索してたんだよね。
そしたら大反転裁判ってのが発売されてさ」
「あぁ、それは知ってる」
「それは知ってるんだ」
「でそれの1クリアしたところでネットの検索のあれから
たぶんあなたへのおすすめ的な記事で
反転裁判の123まとめたやつがダウンロード版限定で出ますよーって記事が出て
これは買わな!と思って即買いしたってわけ」
「あぁ~ダウンロード版限定かぁ~そーゆー系はあんま情報入らないからなぁ~」
「そーなんだ」
「あのスキーム(Scheme)(ネットでのゲーム販売サイト))とか、そーゆーのの情報とかも
パスタイム スポットとかサティスフィーで販売されたやつの情報が入ってくるから
円盤とかカセットで発売されたやつのやつね?まああとは逆とかもね。
スキームで発売されたゲームを眺めて、あ、面白そうと思ったゲームとかが後々人気出て
パスタイム スポットとかサティスフィーで販売されたときとかも
情報は入ってくる。あ!あと流行ってゲームもね!」
「あぁ~一般人が騒いでるゲームとかね」
「そーそー!良いゲームもあるけど、くそみたいなゲーム…あ、違うよ?
ゲーム制作の方とかゲーム自体を批判してるんじゃなくて、騒いでる一般人がね!」
「誰に言い訳してるんかわからんし、一般人を死ぬほど批判しとるがな」
「それな」
「いや!もしかしたらドッキリでテレビ放送されてるかもしれないし
オレはゲーム大好きなゲーマーとして
ゲーム制作者様やゲーム会社様、ゲーム自体を批判はしてはいけないから」
「テレビて。ないない」
「いやジンルイ観察!ではあるじゃん」
「はいはい。あの番組ならあり得るね」
「でしょ?」
「でも一般人はいいんだ?」
「一般人は別にどーでもいいよ。大抵騒ぐ一般人は大概くそでしょ」
「おぉ~言うねぇ~」
「もし放送されたら炎上だね」
「炎上?上等。んなオレのことなんも知らねぇ
オレのゲーム愛も知らねぇやつらになに言われようが関係ねぇ」
「あ、高校時代のヤンキー鹿島が出てきた」
「ほんとだ」
「ヤンキーやめて」
そんな話をして講義室を後にした。4限は空いていたので食堂で3人でゲームをして過ごした。
5限に大ホールのような講義室へ行った。
5限は音楽やそれに付随するミュージカルなどの歴史、映像などの鑑賞の講義で
テストがなく、講義終わりに毎回短い感想文を書いて、それを提出することで出欠を取り
出席率で単位を取れる講義だったのでものすごい人数がいた。
スマホをつけると妃馬さんからのLIMEがあった。

「音楽の歴史取るんですか?」

どうやら妃馬さんもこの講義室にいるらしい。
「お、恋たちもいるらしいよ」
どうやら匠にも音成からLIMEがあったらしい。
「マジか!ふーいるかな」
「もっさん…どうだろうね。ふつーにサボってるかもよ」
「まあねぇ~。でも5限だし。LIMEしてみよ」
僕も妃馬さんに返信することにした。

「僕は取る予定です。まあ、鹿島も匠も取るでしょうね。楽な講義ですし」

送信ボタンをタップした。
「お、ふーも来てるらしい」
「おぉ珍しい」
「それな」
「てかこの講義ではゲームできんから暇よなぁ~」
「わかる」
「講義聞くっていう選択肢はないのね」
「「ないねぇ~」」
「2人揃ってろくでもねぇな」
「怜夢もね」
「怜ちゃんもね」
鹿島と匠がハモリ3人で笑った。
講義が始まるまでゲームする…時間はなかったので3人並んでスマホをいじる。
「あ、そうだ。昨日の動画見てないんよーねっと」
鹿島が呟く。
「ん?なに?NSSPさん?」
「違う違う。NSSPさんは毎日見てるよ。なんなら再生リスト多いやつ流しながら寝てるレベル」
「好きだなぁ~」
「あの、なんていうの?仲良くワイワイしてる感じ?それ聞きながら寝ると良い夢見れそうで」
「京弥」
「ん?」
「わかる」
「お!匠ちゃんも?」
「うん。オレも再生リスト流しながら寝てる。特にワメブロラジオシリーズとか」
「あ!めっちゃわかる!」
「わかるんだ。で?なにを見るの?」
「ん?あぁ、えぇ~っとね。…ちょっと待ってねぇ~…」
鹿島がMyPipeのアプリを開く。
「あぁ、これこれ」
と僕にスマホの画面を見せる。
「けま8P?下ネタ?」
「違う違う。KEMA(ケマ)8P(エイトピー)さん。8Pのとこはあんま呼ばないね。
KEMAさんって呼ぶ人がほとんど」
「誰」
「知らん?トップ オブ レジェンズの実況…者さん?ストリーマーさん?」
「へぇ~。海外の方?」
「ううん。日本人…だと思う。実況日本語だし、動画のタイトルもサムネも日本語だし」
「ふぅ~ん。見して」
「じゃ昨日の動画見よっか」
「オレも見るー」
鹿島、僕、匠で座っていたので、真ん中の僕の前に鹿島のスマホを置いて
3人で肩を寄せ合って小さなスマホの画面を眺めた。
その画面の中では僕がやっているトップ オブ レジェンズと同じだけど違うような
華麗で綺麗なエイムで、壁ジャンプだったりなどを駆使して
相手を翻弄しつつもピッタリとしたエイムで相手を倒しまくる動画が流れた。
声も楽しそうで自分で「今の上手すぎたな」とか
ワンマガ(ワンマガジンで相手を倒すこと)したときなどは
「あぁ、やってしまった」とか言ってみたり
もうワンマガが珍しくもないからなのか、そこには触れずに次の相手に行ったり
レベルがまるで違った。
「うっま」
「ヤバ」
「すごいよね。KEMA(ケマ)さんって元々他のFPSゲームでランカーだったんだって。
んで、トップ オブ レジェンズが出て、プレイして
動画上げたら「上手すぎる!」って人気になったんよね。
ちなみに8PはBest Playerの「B」を「8」にしてるんだって。なんでかは知らんけど」
「へぇ~。すご」
「鹿島はこの人を参考にして練習してるわけか」
「んん~…上手すぎて参考にはしてない。
あと動画見るときは音量0にして見てるから、足音とかそーゆーのも聞こえないし」
「ん?なんで音量ゼーロォ~にしてんの?」
「ゼーロォ~」
「いや、KEMAさん唯一笑い声が好きじゃないんよねぇ~」
「笑い声」
「そそ。なんかイキった陰キャみたいなんだよね」
「うわっ、コーミヤ(黄葉ノ宮高校の略称)でそんな感じだったん?」
「陰キャイジメですか」
「してないしてない!冤罪だ!」
降参のように手を挙げる鹿島。
「吐け。おらゲロっちまえば楽になるぞ」
「楽になるぞ~」
「えぇ~それでは~」
とものすごく前の講義台のところにいる講師の方が講義を始めた。
少し話をすると前のスクリーンに映像を出すため
大ホールのような講義室の明かりは消された。ゲームができないという理由はこれだ。
こんな暗い中ゲームをしていたら顔が照らされてしまうため、さすがに注意される。
だが音楽の講義なため大音量で音楽が流れるので小声で話すことはできる。
音楽が始まったので先程の話の続きを小声でした。
「いやさ?他の学年とかは知らんけど
うちの学年は陽キャ陰キャとか関係なく、みんな仲良かったんだって」
「なんか前も聞いたな」
「たしかに。聞き覚えあるわ」
「でもなんか、わかる?別にイジメとかはしないけどさ
調子乗った陰キャとかあ、こいつ高校デビューだな、って感じの、なんかキモい…っていうか
あ、あぁ…って感じ?の笑い声」
「ふぅ~ん?」
「最初の頃は気になってなかったんだけどね~。
ま、ゲーマーなんて大概みんなそうだけど、音声出してプレイ見てたりすると自分自分でさ
んでそっから徐々に、んん~…って思ってきて、で笑い声ね。
あぁ無理だわって思って、最近は音量ゼーロォ~にして見てる。
でもプレイ自体は相変わらずめっちゃ上手いからね」
「蛙化現象だな」
「たしかに。典型的だな」
「だからプレイの参考…っていうかちゃんと音量ありで見てるのは
海外のプロゲーマーの方の切り抜き?抜粋?動画だね。
ちゃんとありがたいことに字幕つけてくれるから言ってることもわかるし。
ふつーに参考になること言ってたりするしね。まあ、口悪かったり仲悪かったりするけど。
あと日本人でいうと反り血パンダとかつり目ヘッドホンペンギンとかかな?
つり目ヘッドホンペンギンのクランは割と全員好き。
でもたまに見方視点っていってV Piperの映像が入るときは
マジこれ冗談じゃなくて割とガチで頭痛くなる」
「へぇ~。全然わからん」
「匠ちゃんは?」
「ん?」
「匠ちゃんはどんな動画見てんの?よく見るやつ」
「よく見るやつはNSSPさんとENINSHOWさんだね」
「あぁ、その二大巨頭なのね」
「まああとはあれだね、アニメの主題歌聴いたり」
「なるほど」
「さすがオタク」
「んで「あなたへのおすすめ」でなんかアニメ、マンガレビューとか
「アニメ○○第何話、同時視聴!」とか出てきて「フ○ッキュー」って中指立てながら
「チャンネルをおすすめに表示しない」ってのを押して
「二度とオレの前に出てくるな。く○ばれ」って言ってる」
「怖ぇ」
「匠ちゃん元ヤン?」
「違う違う。二次元ジャンキーなだけ」
「二次元ジャンキー」
「カッコよく言ってるけど要するにオタク」
「それな」
「たしかに」
と言いながら3人で声を押し殺して笑った。
「怜ちゃんは?」
「あぁ、怜夢はMyPipeでなに見てんの?」
「オレ?オレはね、「ビビビ」さんって知ってる?」
「知らん」
「知らない」
「心霊系のチャンネルなんだけど、スゴイよ。マジで。クオリティーがダンチ」
「あぁ~心霊系ね」
「そそ。大概心霊系見てるかな。海外の映像何選とか
ビビビさん以外にもいる心霊系のチャンネルとか見てる。
あ、あとフェイクドキュメンタリーでのホラーとか」
「怖い系が好きなんね」
「そそ。妹に勧めたら妹もハマった」
「実況系は見ないの?」
「いや?すっしーは見てるよ。寿司沢さん」
「はいはい!知ってる知ってる!」
「オレも知ってるー。なんかリポツリで回ってきた気がする」
「ポツッターで?」
「うん。なんか推してるマンガがアニメ化されたかなんかで、それをポツリしてたっぽくて」
「へぇ~」
「やめてほしいけどね。正直なこと言うと」
「なんで」
「え。だってニワカ増えんじゃん」
「なーるほど」
「オレはわかるよ」
「さすがゲーヲタ」
「ゲーオタと二次オタクは似たとこあるかもな」
「あるかもね」
「たしかに?」
「でもビビビさん、まあ、クオリティー高いからしょーがないんだけど、投稿頻度低くてさ。
だから、すっしーで食い繋いでるって感じ?あとまあ、過去動画見返したり
「売値が安い家」っていう「ビビビ」さんに出てる方のサブチャンネル的なのも見てる。
心霊写真が主のやつ」
「過去動画見返すのはどのチャンネルでもあるね」
「好きだからね」
その後もスマホもゲームも使えず、ただテキトーな話をして講義を過ごした。
お試し期間だが「こういう感じだよ」ということで講義の終了15分前に紙が配られて
その日見た映像、聴いた音楽の感想を書いて、前の箱に入れて終了となる。
ほぼ聴いていなかったが、今話題の曲をということだったのはなんとなく耳に入っていたし
3人で話してたとはいえ、BGMには大きすぎるボリュームで曲が流れていたため
今の曲の特徴とそれに関する感想をテキトーに書いた。
鹿島と匠も恐らくテキトーに書いたのだろう。
明るくなった講義室でテーブルの影に隠れてスマホをいじっていた。
僕も太ももの上、テーブルに隠れてスマホをいじる。

「たしかにw楽ですよねこの講義。フィンちゃんなんて寝てましたからねw」

「寝てた」
鹿島が笑いながら呟く。返信を打ち込む。

「寝てたw鹿島もいつか寝そうw」

送信ボタンをタップする。感想文を書き終えたからと言って
書き終えた順で解散!というわけではなく
ちゃんと講義が終わる時間まではいくら早く書き終わろうとその場で待機しないといけない。
しかも音楽が止まり、急に静かになるので今度は喋れない。
スマホの画面を点けると妃馬さんから返信が来ていた。

「たしかにwしまさんとか小野田さんは最終的には来なくなりそうwフィンちゃんもだけど」

たしかに。と思ったが5限なのでよっぽどでなければ来るだろうと思った。

「どうでしょう?wさすがに5限だから来るんじゃないですかね。もっさんもさすがに」

送信ボタンをタップする。
「はい。それでは時間となりましたので、前の箱に感想文を入れて終了となります」
と言った途端ざわざわ、ガヤガヤと大ホールのような講義室が騒めき始める。
僕たち3人も移動しようとしたがテーブルとテーブルの間のなだらかな階段状になった通路には
前の箱に感想文を入れ、いち早く帰りたい列が出来ていたので
そのまま座って空くのを待つことにした。しばらくすると列が前に進んでいって
僕たち3人のいるテーブルの横の通路が最後尾になったので荷物を持って3人で列に並んだ。
渋滞の高速道路の車のようにゆっくりと進んでいき
やっと前の箱に感想文を入れることができた。前の扉から外に出る。
「んん~!終わったぁ~」
「今週のラストだな」
「来週から本格的に講義スタートでしょ」
「ダールゥ~」
「ま、講義によっては今週からスタートしてたっぽいけどね」
「そなの?」
「鹿島は全然聞いてなかっただろうから知らないだろうけど
今回配ったプリント、来週も使うのでって言ってた講義もそこそこあったぞ」
「マジか。まあ大丈夫か。たぶん捨ててはないし」
「あぁ~、京弥捨てそうな」
「まあぁ~捨て…るよね。講義終わったら」
「オレ捨てないわ」
「あぁ~、怜夢は捨てなさそう」
「なんかさ、捨てんのめんどくない?
講義終わったときにはプリントもめっちゃ多くなってるやん」
「たしかに。京弥は捨てんでしょ?」
「捨てるよ。んなまとめて捨てればいいじゃん。新聞とか雑誌みたいに」
「紐で結んで?」
「そそ。正味この先使うことないでしょ」
「まあね?」
「ないだろうね」
「じゃあもう、ポイよ」
「脳からも?」
「そうそうポイッっと、っておい!」
「すごい。大下手くそのお手本のようなノリツッコミ」
「ね。ある意味美しかったわ」
「めっちゃ貶してるよね?ね?…うおっ」
鹿島の身長が急に縮む。パッっと振り返ると鹿島の後ろには森本さんがいた。
その横には音成と妃馬さんもいた。
「カックンっていったね」
どうやら森本さんが鹿島に膝カックンをしたらしい。
「身長縮んだ?」
「ふーが縮ませたんでしょ」
「そうなの?」
「そうなの!」
6人で話しながら笑いながら駅へ向かった。その後音成と匠を2人で帰らせるため
妃馬さんと僕は大吉祥寺駅で音成、森本さん、鹿島、匠の4人と別れた。
大吉祥寺のワクデイジーのあるほうの通りに出ると
明日から土日だということだからか、いつもより賑わっている気がした。
妃馬さんからか、僕からか、ほぼ同じタイミングでお互いに手を伸ばし
お互いの手を握り合う。付き合っているんだな、と感じる。
買う予定もないのに靴を見たり、まだ暑かったので
アイス(冷たい)のカフェラテやミルクティーラテを買って、飲みながら練り歩いた。
飲み物を飲み終えたところで駅に戻り、電車に乗り妃馬さんの最寄り駅で降りた。
手を繋ぎながら妃馬さんの家を目指す。
「今度2人で飲みにでも行きましょうか」
「いいですねー。付き合ってからまだどこも行ってないですし」
「えー?プール行ったじゃないですか」
「2人で、ですよ」
「あぁ」
ご機嫌なのか繋いだ手が揺れる。
「じゃあ夕方くらいからテキトーにウィンドウショッピングでもして
お店入って飲みましょうか」
「いいですね!楽しみです!」
ブランコのように手の揺れが大きくなる。
「いつにしましょう?」
「いつがいいかなぁ~」
「明日とか明後日は?土日」
「どっちも空いてます」
僕のほうを向いてニコッっと笑う妃馬さん。
「じゃあぁ~…明日?」
「いいですよ?どこ行きます?」
「んん~…どうしましょうか?」
「大吉祥寺でいいかな?」
妃馬さんが耳を僕のほうに寄せる。
「いいとも~?」
妃馬さんが求めているのはこれなのかわからず、自信なさげに腕を上げながら言う。
「疑問系」
妃馬さんが笑う。どうやら求めていたもののようだ。
「いいともー!」
ピンッっと腕を上げて言い直す。妃馬さんが楽しそうに笑う。
そんな妃馬さんを見て、僕も楽しくなり自然を笑っていた。
あっという間に根津家の入っているマンションのエントランス前に着いた。
少しだけ手を繋いだまま話をした。
付き合ってからもう何度も妃馬さんの家まで送るときに手を繋いで行っていた。
でも未だに手を離すタイミングもわからず、未だに手を離すときどこかで少し寂しさを感じる。
絡み合った蔓のように人差し指が離れるまでがゆっくりだった。
人差し指も寂しそうにゆっくりと離れ
「じゃあ、明日?ですよね」
「はい。明日です」
「じゃあまた明日。とあとでLIMEでも」
「はい。また明日。あとでLIMEでも」
手を挙げる。妃馬さんも手を挙げる。
手を合わせ、しばらく手を合わせたまま無言の時間を過ごす。
そしてハイタッチのようにパンッっと軽く手をあて
手を振って妃馬さんに背を向けて駅へと歩き出す。電車に乗って自分の家の最寄り駅で降りる。
家に帰り、父は遅いらしく、母、妹と3人で夜ご飯を食べる。
妹がお風呂に入っている間に父が帰宅し、父が軽く夜ご飯を食べている間に母がお風呂に入り
父がお風呂に入っている間に母が父の食器を洗っていた。
父の後に僕がお風呂に入り、各々のタイミングで部屋に帰った。
部屋に戻ってテレビをつけ、妃馬さんとLIMEのやり取りをした。
妃馬さんに「おやすみなさい」とLIMEをし、妃馬さんから「おやすみなさい」と返ってきて
時間を空けてから「おやすみ!」というスタンプを送って
明日のデートを楽しみに眠りについた。
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