猫舌ということ。

結愛

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暑さの終わり

第170話

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長かったようであっという間に過ぎ去った夏休み。大学生の夏休みは高校生と比べると長い。
大学生が人生で1番遊べる、1番楽しいと言われる所以だろう。
ひさしぶりに大学へ行く準備をして大学へ向かう。
後期も後期で一応授業の選定期間があり、試しに講義を受けてみて受講するかどうかを決める。
もちろん1年生、2年生で落としている必修科目は「必修」なので必然的に受講する講義となる。
なので大学が始まってから2週間ほどはお試しだ。
なので自主的に夏休みを延ばしている者もいたりする。匠とか。
鹿島は意外と最初のほうは来るタイプだ。段々と来なくなるタイプ。
その2週間、鹿島や匠と講義を回り
講義の内容やテストに重点を置いているのか、出席率に重点を置いているのかを確認した。
テストの点が終わっていても単位が取れるように
なるべく出席率に重点を置いている講義を取った。
ある日の帰り、鹿島と匠と3人で飲みに行くことになった。
「いらっしゃいませー!」
「3人で」
「3名様!座敷の席へご案内いたします!」
座敷の席へいき、靴を脱いで座敷に上がる。注文はタッチパネル。
先程の店員さんが水とおしぼりを持ってきてくれた。
「じゃー、とりあえず飲み物とー唐揚げとか枝豆頼んどきますか」
「いいね」
「オレカシオレー」
「オ~…レもそーしよ」
「じゃオレはいつも通りレモンサワーっと…」
鹿島に注文してもらい、しばらくすると店員さんが
カシスオレンジ2つ、レモンサワー1つ、唐揚げと枝豆、フライドポテトを持ってきてくれた。
「じゃ、とりあえず、かんぱーい!」
「「かんぱーい」」
カキン!コキン!グラスをあてて乾杯する。カシスオレンジを飲む。
オレンジジュースが少し苦いのか、アルコールの苦味なのか
甘さの後に苦味が残るカシスオレンジだった。
「あ!そうそう!今日聞きたかったことがあるんだ!」
鹿島がレモンサワーのグラスを置き、フライドポテトを食べながら僕の方を向く。
「ん?オレ?」
「そそ」
「なに」
「いやさ、怜ちゃん、妃馬さんと付き合ってんだよね?」
「うん。付き合わせてもらってるね。なに急に」
「だよね?」
「うん」
「なんでまだ敬語なん?」
「あ!それオレも気になってた」
「だよね!匠ちゃん!気になるよね」
匠が唐揚げを食べ、コクコクと頷く。
言われてみればたしかに妃馬さんと話すときは未だに敬語だった。
「あぁ~」
「なんか理由あんの?」
「いや特に理由はないけど」
「ないんかい!」
「ないない」
「なんで敬語なん」
「さあ?出会ったときから敬語だったから。流れ?」
「敬語やめよう的なのにはならんかったん?」
「あぁ~…まあ、敬語じゃないほうが付き合ってる感は出るよね」
「京弥は?」
「ん?」
「京弥ももっさんと出会ったときはもっさんに敬語だったじゃん?」
「まあね。そりゃ初めましてで敬語じゃないあったらまあまあヤバいやつでしょ」
「まあね」
「京弥はいつ敬語じゃなくなったの?」
「うぅ~ん。オレは怜ちゃんと違うかも。
基本ゲームで遊んでたから自然と敬語じゃなくなっていったなぁ~」
「なるほどねぇ~」
「そっかそっか。たしかにな」
「そそ。怜ちゃん、敬語やめようとは思わない感じ?」
「思わなくはないよ。でもキッカケがわからん」
「キッカケ…キッカケねぇ~」
「敬語禁止ね!敬語使ったら罰ゲーム!ってのも嫌だしねぇ~」
「あ、無理無理。そーゆー人」
「わかるわー!なんか再現Vとかで出てくるいけすかないチャラ男ね」
「そそ!見た目は京弥」
「おい!誰がいけすかないチャラ男やねん!」
3人で笑ってお酒を飲みながら
おつまみがてらに唐揚げやら枝豆やらフライドポテトを食べた。
お酒がなくなったらおかわりを頼んで、なんでもない話をしたり
匠が下ネタ脳で小さいことをキッカケに
放送なんてできるはずないレベルの下ネタトークに発展し
アルコールも入り、ゲラゲラ笑った。
一旦お会計を済ませ、その店を出てもう1軒居酒屋へ行った。
そこでは鹿島の惚気話を聞いたり、あまり聞かない匠からの惚気話を引き出したりした。
気づいたら23時。その日はお開きとなりそれぞれ帰った。
帰ると当たり前だが家族は夜ご飯もお風呂も済ませており
父は部屋に帰っておりリビングにはいなかった。
僕もお風呂を済ませ、リビングで自分のグラスに四ツ葉サイダーを注いで部屋に戻った。
ベッドに座り、スマホを点けると

「まだ飲んでるんですか?」

と妃馬さんからの通知があった。あくびをしながらその通知をタップし
トーク画面に飛び、返信を打ち込もうとメッセージを入力するところをタップする。
キーボードが出てくる。そこで今日の会話を思い出す。



「いやさ、怜ちゃん、妃馬さんと付き合ってんだよね?」
「うん。付き合わせてもらってるね」
「だよね?」
「うん」
「なんでまだ敬語なん?」



「そそ。怜ちゃん、敬語やめようとは思わない感じ?」
「思わなくはないよ。でもキッカケがわからん」



敬語…敬語か…。

そう思う。

「もう帰ったよ」

打ち込んでから、いやいやいや、と思い、消すボタンを長押しして全て消す。
いきなりすぎる。敬語をやめるにしてももっと徐々にだ。

「帰ってお風呂から出たところです」

…。「です」いるか?いや、いるか。などと考える。
あぁ、もういいや。と思い送信ボタンをタップする。
アルコールも入り、返信を変に考え勝手に疲れて、気づいたらスマホを握ったまま眠っていた。
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