猫舌ということ。

結愛

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旅の始まり、旅の終わり

第160話

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森本さんと鹿島の元へ戻ると2人は仲良く浮き輪を枕にして寝ていた。
なので僕と妃馬さんも寝っ転がることにした。音成と匠は引き続き砂でお城を作るらしい。
僕たちも浮き輪を枕にしようとも思ったが
森本さんと鹿島を起こしてしまうかもと思ったので
僕は音成か匠が畳んでくれた自分のTシャツを枕にして寝転がった。
サラサラの砂なのだが、レジャーシートを1枚ひいているだけで少し固く感じる。
レジャーシートのビニール感が背中に伝わる。ビーチパラソルの裏側が目の入る。
傘の骨に白と黄色の布。太陽の光が微かに入ってきている。
すると横に寝転がった感覚が伝わる。そちらを向くと妃馬さんが寝転がっていた。
しかし妃馬さんは枕がなく寝づらそうだった。なので
「「あの」」
と勇気を持って声をかけた…。
心臓の音で聞こえづらかったが妃馬さんの声も被っていた気がした。
「「あ、どうぞ」」
また被った。
「どうぞ」
と妃馬さんに譲る。すると
「じゃあ。あの良かったら腕貸してくれませんか?」
僕が勇気を出して言おうとしたことだった。
「僕も言おうと思ってました」
「私の腕?」
妃馬さんのキョトン顔に思わず笑ってしまう。
「良かったら僕の腕使いますか?って」
「あぁ、なるほど」
恥ずかしかったが、枕がないので仕方ない。
別にいい口実ができたとかそんなことは思っていない。
…1ミリくらいは思っているかもしれないが。ドキドキしながら腕を横に伸ばす。
「じゃあ…失礼します」
二の腕に重さが加わる。心臓がもう一段階跳ねる。
二の腕の肌に妃馬さんの髪の1本1本の感覚が伝わる。
海で濡れて少し湿り気のある冷たい髪、海水で少しだけ軋んだ髪、その髪の1本1本の太さ。
ドキドキで妃馬さんのほうを向けない。
「いい枕です」
妃馬さんの顔を見ていないが声から妃馬さんが笑顔なのが伝わる。
「そ…れは良かったです」
「眠くなってきた…はぁ…」
妃馬さんのあくびが聞こえる。
「寝ていいですよ?」
「いいんですか?」
「はい。なんなら寝やすい体勢に変えてくれてもいいですよ?」
「じゃあ、お言葉に甘えて…」
すると二の腕から重さが消える。
横を見ると妃馬さんが体を起こし、パーカーのフードを被った。
そしてもう一度二の腕に重さが加わる。
かと思ったら二の腕と脇の継ぎ目と胸筋の端に重さが移動する。
「寝るならここかな」
あまりにも心配すぎる。二の腕と脇の継ぎ目と胸筋の端に妃馬さんの頭がある。
引く程の心臓がドキドキしているが聞こえてしまっているのではないか。
心臓を落ち着かせるために深呼吸を鼻からしながら
ビーチパラソルの端が風に靡くのを眺める。



すると僕もいつの間にか眠っていたらしい。ぼやぁ~っと目が覚める。
妃馬さんはまだ寝ているらしく、二の腕と脇の継ぎ目と胸筋の端に重さがあった。
足元のほうでキャッキャ聞こえる。声的に音成、森本さん、鹿島、匠だ。
しばらくそのキャッキャを聞きながらビーチパラソルの裏側を眺めていると
二の腕と脇の継ぎ目と胸筋の端の重みがモゾモゾと動き出す。
「ん。んん」
起きたらしい。
「ん。おはようございます…。怜夢さん…起きてます?」
ドキッっとした。まるで2人で一夜を過ごし、朝一緒に一緒のベッドで目覚めたようだった。
「起きてますよ。おはようございます」
「んんー!いい枕だったー」
僕のすぐ側で妃馬さんが伸びをする。
「それはどうもです」
重さが加わっていたためか、腕の先が痺れ始めた。
「お!サキちゃんおはよ!」
「おはよ。なにニヤニヤしてんの?」
「別に~?」
「なっさん隙あり!」
「キャ!ちょっとぉ~!今はなしじゃない?」
「そんなルールありませーん」
僕も体を起こす。まるでホリー・パッターの「知られざる部屋」で
ホリーがホウキから落ちて腕を骨折したときに「骨が治る呪文」としてかけられたが
骨が無くなったときの腕のように腕がぶらーんとなる。痺れていて力が入れられないためだ。
「お、怜ちゃんも起きてんじゃん!おーい!交たぁ~」
「隙あり!」
「ぶぶぶぶぶぅ~」
音成が鹿島の顔に向かって水鉄砲で水をかけた。すると鹿島は前日の温泉のときと同じように
顔にかかった水を唇を震わせるリップロールで飛ばす。
「お返しだぜ!」
「怜夢ー妃馬さぁ~ん!交代します?てかしてください」
匠が水鉄砲を掲げて言う。
「待って。腕痺れとる」
「え、あぁ、私のせいか。すいません!」
「いえいえ全然全然。全然大丈夫です」
「大丈夫?ほんとですか?」
「大丈夫…ですよ?」
「…。えい」
妃馬さんが僕の腕をツンッっと触る。
「んん~。足と違って、あぁ!とはならないなぁ~」
「なぁ~んだ。恋ちゃんパァ~ス!」
妃馬さんがパーカーを脱いで音成の元へ走る。次第に血が流れていったのか痺れが治り
動かせるようになったので僕も匠の元に近寄り、匠から水鉄砲を受け取る。
森本さんと鹿島も水鉄砲に水を補充するらしく
妃馬さんと僕も水鉄砲に水を補充し、撃ち合いが始まった。青春ど真ん中の光景だった。
水鉄砲から撃ち出された水は直線だが水滴がその直線状の水から何粒も溢れ落ち
その水に夏の強い陽射しが反射し輝いていた。ように感じる。
顔にかかったり、かけたり、意図的ではないが森本さんのお腹辺りにかかったり
水が出なくなったら水を入れに行って、その入れに行っているときにも鹿島が邪魔してきて
相撲のように鹿島を海の中に投げ飛ばしたり、とても楽しかった。
さすがに疲れて音成と匠の元へ戻ると2人とも浮き輪を枕にして仲良く寝ていた。
その様子を森本さんはスマホでパシャパシャと写真を撮っていた。
ビーチパラソルの影で休んでいると音成と匠が起き
音成と匠は引き続き、お城の完成を目指した。
もうある程度出来ていて、あと少しという感じだった。
妃馬さん、森本さんはもう一度海に入ってくるといって
浮き輪を持って仲良く海へ走っていった。
鹿島と僕はなんでもない話を笑いながらして、しばらくして匠が
「できた」
と言ったのでパッっとそちらを見るとなんとも言えないお城が出来上がっていた。
僕にも作れそうだなとも思ってしまったが
手先の器用な匠がこれなんだから僕には無理なんだろうと思った。
「んん~。時間かけた割にビミョーだな」
と匠も自分で言っていた。
「ま、でも素人でこんだけ出来れば上出来じゃん?」
と鹿島が言う。そんな話をしていると水を滴らせた妃馬さんと森本さんが帰ってきた。
「お!出来てんじゃないっすか」
「出来栄えビミョーですけどね」
「じゃ、どうせならこのお城とみんなで写真撮りません?」
という妃馬さんの提案に誰も反対するものはいなかった。
荷物をうまく組み合わせて、ある程度の高さにして
スマホをそこに置き、タイマーで写真を数枚撮った。
「じゃ、鹿島。壊してあげて」
「え、オレが?」
「うん。ここに残すレベルじゃないし壊しときたい」
「なら自分でやりゃいいじゃん」
「だよね?匠ちゃん自分でやんなよ」
と言う鹿島にスッっと近づく匠。
なにかと思ったら匠は鹿島の足をかけてそのお城の上に倒した。
砂のお城は鹿島の背中に押されて木っ端微塵。
「ビッ…クリしたぁ~」
「1本!」
「1本!」
「うっしゃ」
「これでしまくんと小野田さん2人で壊したことになりましたね」
「たしかに」
その後、片付けをし、ビーチパラソルを返し
公共の使えるシャワーで海水、そして砂を念入りに落とす。
水着を捲るとお腹の辺りに砂のラインができており
水着の中に手を突っ込み砂を落とし、髪も洗う。
大体落とし終わったかと思い、家から持ってきたバスタオルで拭く。
全員終わって車の停まっている駐車場へと歩く。
歩いてる途中も全員バスタオルで髪をグシャクシャしていた。
駐車場へ着き、海に行く前に車内で着替えたときと同じように
レジャーシートの端を持ち、窓を隠すようにして
着替えが見られないようにまずは女子陣に着替えてもらった。
別に最悪男子陣は見られてもいいので女子陣が着替え終わったら
レジャーシートを畳み、トランクに積み、女子陣は外で待ってもらい、車内で着替える。
シャワーで念入りに落としたというのになぜか着替えているときに砂が出てきた。
着替え終わり、女子陣を乗せてホテルへと戻った。
ホテルへ戻る途中での夕陽がとてつもなく綺麗だった。ホテルの駐車場に車を停め
ホテルの人から掃除機を借りて車内の砂を掃除してから部屋に戻った。
ベランダに水着を干し、ベッドに寝転がると危うく寝そうになったので
女子陣を部屋に呼びボードゲームをすることにした。
今回は「ドッグ&キャンディー」の「非日常編」をプレイすることにした。
ルールは「日常編」と同じだろうからとルールは確認せず
チームカードと手札を鹿島が配ってくれて
チームカードは最後に確認するので確認せずに手札だけ見てじゃんけんをする。
森本さんから時計回りとなった。森本さんが山札を捲る。
「人喰いザメに襲われた。あぁ、非日常だね」
「たしかに」
「たしかに」
「えぇ~?2枚ね。2枚2枚…。えぇ~じゃあ、襲われたとしか書かれていないので
死んではないはずなのでとりあえず着ていた横じまのセーターで血が出ないように結んで
なにか変なウイルスに感染してしまうかもしれないので
ワクチンを接種して、病院に向かいます」
「ほお」
「ほお?」
「じゃ、せーの」
判定は…全員「OK」だった。
しかしみんな「うぅ~ん」という感じで親指を立てて「GOOD」を出していた。
「や…ったぁ~…なんかあんま、喜びづらいな」
森本さんがそのお題カードを自分の元へ持っていき、手札を補充する。
「いやぁ~…なんか、なんとも言えない感じ?」
「わかる。たしかに「襲われた」としか書いてないから
その襲われた瞬間どうするかとかじゃないからなぁ~」
「そうですね。まあいいんだけどぉ~…って感じ」
「はい!次京弥!」
「はいはい。じゃ、いきまーす!」
鹿島が山札を捲る。
「ヒーローになった!おぉ、いいじゃん。が、明らかにスーツのサイズが小さい。
なるほどなるほど。で?2枚ね。んん~…」
鹿島が手札を見て考える。
「んん?ムズイぞ?」
としばらく鹿島が考える。
「あぁ~。えぇっとね。まずタワーに行きます。
でタワーの脚の部分にスーツの端をくくり付けて
で、もう片方の端をタクシーのリアバンパーにくくり付けて思いっきり入って伸ばします!
んームズイ!」
全員「うぅ~ん」と考える。
「じゃ、行きますよ?せーの」
判定は…音成、妃馬さん、僕が「OK」で森本さんと匠が「NG」だった。結果的には「OK」だ。
「あっぶねぇ~」
と言いながらそのお題カードを自分の元へ持っていき、手札を補充する。
「なんでダメだったん?」
「いや、今度は伸びすぎるんじゃね?って思って」
「わかります!同じ同じ」
「あぁ~なるほどね。なっさんはOK。ありがとうございます!」
「いや、私はね、どんな手札かはわかんないけど、なんか絞り出したんだなぁ~って」
「情!?」
「情だね」
「わかる。オレもそお」
「私も同じ」
「同情票だったか。じゃあ次怜ちゃん」
「あいあい」
僕も山札を捲る。
「マフィアに潜入捜査中。正体がバレそう…怖っ。え!また2枚?」
僕の手札は「ほうき」「ホッケーマスク」「ボクシンググローブ」だ。
この3枚のうち2枚でこの危機をどうにかしなければいけない。難しい。
「えぇ?うぅ~ん…」
手札を見てもなにもストーリーが思いつかない。
「じゃあねぇ~…まずホウキでホコリを舞わせます。
…で…で…ホッケーマスクを被ります。…あぁ、終わった」
判定は案の定「NG」だった。
「だよね。ですよね。これは無理」
結果が「NG」だったのでお題カードはそのままで手札だけで補充する。
「ホッケーマスクで顔隠したら、もうそうですって言ってるようなもんだもんね」
「わかる」
「わかります」
「ホコリ舞い上げたところまでは良かったんだけど」
「そうそう」
「手札的にそこでジエンド」
その後、匠、妃馬さん、音成と回り
また森本さんとその順でどんどんと危機を回避したり、回避できなかったり、盛り上がった。
もう19時を過ぎたので次一巡したら終わろうということになり
音成に順番が終わり、いざチームカードを確認する。僕は「キャンディー」チームだった。
音成、森本さん、僕が「キャンディー」チームで
妃馬さん、鹿島、匠が「ドッグ」チームだった。集めたポイント、お題カードを集計する。
「せーので言うよ?いくよ?せーの!」
「7!」
「6!」
僕たち「キャンディー」チームの勝利となった。
「イエーイ!」
「ふぅ~!」
「やったね!」
「やったね」
音成と森本さんとハイタッチをする。
「負けたかぁ~」
「でもこのゲームめっちゃおもろい!」
「たしかにな」
「姫冬ちゃんとやってるんですか」
片付けながら話をする。
「はい。姫冬と母と」
「あ、お母さんも」
「はい。だってこれ2人だったら
決着つかないですもん」
「あ、あぁ、そうか。たしかに」
片付け終わり、夜ご飯へ行く。バイキングで席を確保し、好きなものを取って好き勝手食べた。
その後部屋に戻り、夏休みだからかその日も21時から心霊特集がやっていたので
女子陣を部屋に呼び、6人で見た。終わったのが23時前。
その後怖い話でもしようかという流れになった。
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