猫舌ということ。

結愛

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特別な日

第150話

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「え、待って。そもそもいつから?」
「付き合ったのはーつい最近。こないだの土曜日」
「土曜日!?」
スマホをつけ、カレンダーを確認する。
「4日!?」
「うんー。そうだね」
「はあぁ~?なんで?急に?」
「いや、うちの地元でお祭りがあってさ」
「ほお。お祭りね」
「そうそう。商店街のほうでね。毎年あるんだけど」
「オレが行ったことあるあの?」
「そうそう。焼きそばとたこ焼き食べたよね」
「オレ毎年行ってたか」
「だね?1年のときと去年。うん。あ、今年で途切れたね」
「たしかに」
「んで?」
「あぁ、そうそう。一緒にお祭り行ってね」
「浴衣?」
「洋服ー」
「まあ、そうか」
「で、2人でそれこそ焼きそば食べたり
たこ焼き食べたり、ベビーカステラとか、あ、わたあめも食べたな」
「食べるなぁ~」
「よー食うわ」
「あ、あとチョコバナナも食べたし、あぁ!チュロスも食べた。
あとクロワッサンたい焼き?ってのも食べた。あれ美味しかったなぁ~」
「食い過ぎでは?」
「胃どうなってんの?」
「いや、まあ、さすがに苦しかったね」
「んで?んで?」
「んでね、まあ、腹パンなったから、近くに公園があったからそこに行ったの。
ま、そこでもまだベビーカステラが残ってて「はち切れそう」って言いながら食べたりね。
あ、ラムネも買って飲んだりしてね。
んで、告白したんですよ。好きです。付き合ってくださいって」
「え、いきなり?」
「うん。まあ、そうね」
「え、タイミングは?鹿島がもっさんを好きになったタイミングは?」
「え。タイミングか…。うぅ~ん」
鹿島が考える。
「わかんねぇや」
笑顔の鹿島。
「はぁ?」
「いや、なんか一緒にいろんなとこに出掛けたり、ゲームの話してたらいつの間にか
「あぁ、森もっさんがゲームの話してて
一番楽しいって思ってもらえる相手はオレがいいな」って思ってね」
「おぉ~…」
「おぉ…」
思わず声が漏れた。「いつの間にか」とか「一番楽しいって思ってもらえる相手は
オレがいいな」とかすごく恋らしい恋だなと思い、思わず声が出てしまった。
「だから、好きだなって。だから告白したらまさかのオッケーだったのよ!」
「おめでとう」
「おめでとう」
「ありがとうごぜーやす」
「なんでオッケーだったんだろ」
「失礼な!」
「いや、違くて。もっさんも好きだったってこと?」
「うぅ~ん。まあ?そうかな?」
「腹立つな」
腹立つ顔の鹿島。
「なんかね、ふーもオレが楽しそうにゲームするのが好きなんだって。
でこれからも一緒にゲームして、楽しそうなとこ見てこっちも楽しみたいって言ってた」
「はぁ~ん?」
「てか、ふーって呼んでんだ?」
「あ!気づいちゃった!?」
「「わざとらしぃ~」」
「おぉ、ハモってる」
鹿島が笑う。
「デルフィンだからふー?」
「そうそう。フィンって言うのはなんかあれで
もっさんってのも付き合ってる感ないじゃん?
で2人でいろいろ考えた結果、フィンの「フ」を取って「ふー」になった」
「で、もっさんは?」
「んふふ~。京弥って呼んでくれてるぅ~」
「あぁ、尻に敷かれるタイプだ」
「わかるわかる」
「んー?まあー?別にー?ふーになら尻に敷かれてもいいかな?」
「腹立つ」
「腹立つな」
ちょうどお風呂が出来上がったらしく、じゃんけんをして
天も祝福しているのか幸せ者の鹿島が一番手にお風呂へ行くこととなった。
そしてこの場で彼女のいない僕が最後になった。匠が出てきて、今度は僕がお風呂へ行く。
体を洗い、髪を洗って湯船に浸かる。テレビを眺める。
湯船のお湯の温度も38℃と高くないが季節も季節ということもあって
少し浸かっていたら体全体ががぽかぽかし始めたので浴槽の縁に座る。
濡れて少しひんやりしているタイルの上にお尻を乗せ、なぜか少し心地良かった。
もう一度軽く湯船に浸かってからお風呂を出た。
タオルを借りて、お風呂場で髪をガシャガシャして水分をある程度飛ばす。
部屋着に着替えて、タオルを肩にかけ、リビングへ向かう。
ソファーに座って3人でバラエティー番組を笑って見た。
その後、昼の続きのボードゲーム実況の続きを見て、気づけば深夜2時。
そこからホラー鑑賞会が始まり、4時に部屋へ行った。布団を敷いて寝転がる。
「もう掛け布団いらない季節よなぁ~」
「そんな季節ねぇよ」
「いや暑くて気づいたら、掛け布団蹴ってない?」
「まあ、あるあるだけど」
「ほらぁ~」
「でも掛け布団ないと落ち着かないことない?」
「まあ、わかるな」
「まあ、わかってしまうね」
その後も少し夏についてを話した。
「あとは怜ちゃんだけだね」
「ん?なにが?」
「告白ですよぉ~」
「あぁ」
いざ言われると別に今から電話をかけて告白するわけでも
明日告白するわけでもないのに心臓がうるさく鳴り始めた。
「怜夢告白する予定とかあるの?」
「あぁ~。いや、今んとこないけど」
「そうなんだ」
「でも告白するとしたら、旅行先かな」
「え!マジで!?」
「いや、うん。花火大会もあるし、お祭りもあるし。
あとなんか、なんだろ。旅行で区切りつけたいかな」
「区切り?」
「うん。まあ、妃馬さんとの今の関係を壊したくないよ?
フラれたら、まあ、妃馬さんが「友達のままでいましょ」って言ってくれたとしても
まあ、告白以前には戻れないじゃん?そうなると自然と距離できると思うんだよ。
でも、だとしても、一緒に旅行行ってくれるし、一緒に出掛けてくれるし
すごく優しい妃馬さんに伝えたい。っていうか
妃馬さんがオレのことなんとも思ってないのに
オレがそんな感情持ってたら、向こうも嫌じゃん?
だから、まあ、良い方向に転ぶにしても悪い方向に転ぶにしても、旅行で一区切りつけたい」
「そっかぁ~」
「旅行でか。いつ?」
「最終日じゃない?無理だったら気まずいし」
「たしかに」
「怖い。なんかオレが怖い」
「なんで鹿島が怖がってんだよ」
「いや、なんだろうね?わからん。さっきのホラーより怖い」
「よし。じゃ、もう1本怖いやつ見よう」
「ごめん。やめて?」
3人で笑った。笑って忘れようとしたが
寝るまでずっと「告白」という文字とそれに関しての想像が止まず
ずっと心臓がうるさく鳴っていた。

朝、昼起きてお昼ご飯をコンビニに買いに行き
ダイニングテーブルでテレビを見ながら食べる。
「そういえば鹿島。今月末?はダメって言ってたけどなんかあるん?」
「あぁ、いや、別にこれといって特別なことではないんだけど
単純に父さんの実家に行くだけ」
「あ、そうなんだ」
「お父さん愛媛だっけ?」
「そうそう」
「匠よく覚えてたね」
「うん。ジュースの話のときに
このジュース年1で飲んでるなんてなんて贅沢なやつだ。って思ってたから」
「それ、匠ちゃんだけには言われたくないよね」
「それな」
「匠ちゃんは?ご両親の実家帰るとかないの?」
「うぅ~ん。年末ぐらいかな」
「あ、そうなんだ」
「オレの場合北海道だから、冬は地獄なんだけどね」
「そうなんだ。北海道!いいね!」
「マジ引くほど寒いよ?もう家から1歩も出たくないくらい」
「だろうね」
「雪だるま作ろぉ~扉開いてぇ~」
「ちっさい頃は作ってたね。手赤くして」
「いいねぇ~。みんなでスキーとかも行きたいよね」
「あぁ、いいね。やっぱ東北?」
「北海道ならそこら辺でスキーできるしな。ダメだけど」
「北海道。ありだな」
「防寒めっちゃしないとヤバいよ。あと運転が怖いって父もお兄ちゃんも言ってた」
「運転はぁ~怖いだろうね」
「あ、そうだ。京弥免許持ってる?」
「持ってるよ?」
「車?」
「車」
「良かったぁ~」
「なんで?あ、今度の旅行か」
「そそ。運転頼もうと思って。オレ免許ないから」
「オレもなーい」
「ほお。私か。ちなみにどんな車?」
「ん。ガレージにあるから後で見せる」
「え。レンタルじゃなくて匠ちゃんのお父さんの車?」
「そーだけど」
「怖い。ぶつけたら100万くらい飛びそう」
「大丈夫大丈夫。ファミリーカーだから。もう1台のは頼んでも貸してくれないと思う」
「Oh…」
「ねえ怜夢」
「ん?」
「その鶏塩淡々スープってなに?」
「ん?これ?食べてみる?」
「いや、いい。どんな感じ?」
「んん~。鶏鍋1人前って感じ?」
「うまいじゃん」
「うまいよ?」
「やっぱ1口貰う」
そんな会話をし、お昼ご飯を食べ終えた。その後、お腹いっぱいになって睡魔に誘われ
睡眠の悪魔の手を握り、身体を任せて眠ったり、起きてボーっとテレビを見たり
ガレージで鹿島と一緒に車を見て「高級車ぁ~」と息を呑んだり
そろそろ布団干さないと。と鹿島と布団を行ったり来たりして庭に干したりした。
私服に着替える。
「じゃ、そろそそ行くわ」
「んー」
「また旅行のことで話そーねー」
「そらそうだ」
リュックを持って玄関に向かう。
「んじゃ」
「まぁ~たねぇ~」
「またねぇ~」
扉が閉まる。
「おぉ。暑ノ井くんとぉ~…あ、鹿島くん?」
振り返る。門が開いて、匠のお父さんが入ってきた。
「あ、おひさしぶりです。あ、匠のお父さんね」
「あ!初めまして!鹿島京弥です!」
「うんうん。匠から聞いてるよ」
「あ、さっき車見せてもらいました」
「あぁ、今度旅行するときのね。暑ノ井くん免許持ってるの?」
「あ、いえ。僕は持ってないのでこちらが」
「僕が運転することになりました!」
「あ、そうなんだね」
「超絶安全運転で傷1つなくお返しします!」
「うん。よろしくね」
「はい!練習しておきます!」
「気をつけてね」
「はい!」
「じゃ、そろそろ」
「あ、うん。2人ともまたね」
「はい。また」
「はい!」
匠のお父さんにお辞儀をして匠邸の敷地を出る。
「優しい人だったろ?」
「うん。でもなんか優しすぎてなんか怖かった」
「うぅ~ん。わからんでもないな」
その後鹿島を駅まで送り届けて、家に帰った。
手洗いうがいを済ませ、部屋に戻り、着替えて、洗濯物を持って1階に。
洗濯物を洗濯籠に入れて、リビングへ入る。
妹は出掛けているらしく母はキッチンでスマホを眺めている。
ソファーで寛いでいると妹が帰ってきて、少し遅れて父も帰ってくる。家族で夜ご飯を食べる。
夜ご飯を食べ終え、家族団欒。お風呂が出来て、各々のタイミングでお風呂に入り
各々のタイミングで部屋に戻った。ベッドに座り、スマホを取り出しホームボタンを押す。
妃馬さんからの通知。鹿島と匠とした会話を思い出し、心臓がうるさく鳴り始める。
通知をタップし、トーク画面へ飛ぶ。

「聞きました!?フィンちゃんとしまくんの話!」
「聞きました聞きました!マジでビックリしました!」
「ね!まさか付き合うとは!」
「その様子だと妃馬さんももっさんのことあんま知らなかった感じですか?」
「そうですね。いや、楽しそうだなぁ~とは思ってたんですけど
まさか恋愛感情あるとは思ってませんでした」
「僕もです。いや、まあ好きなのは確定だったんですけど
それこそ妃馬さんじゃないですけど、僕も恋愛感情になってるとは驚きました」
「めっちゃ普通に話してましたけど、やっぱどこかニヤけてましたw」

読み返しニヤける。

「鹿島はふつーにめっちゃニコニコしてましたw」

送信ボタンをタップする。鹿島の顔を思い出す。
「腹立つ」
思わず笑う。テレビをつけ、眺めながらたまにスマホをチェックする。
妃馬さんから返信が来ていたら読んで返信していた。
森本さんと鹿島の話をしたり、今度一緒に出掛ける予定を話したりして眠りについた。
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