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特別な日
第149話
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「んじゃ、行ってくるわ」
「いってらっしゃい」
着替えを詰めたリュックを背負い、家を出る。蝉の声がもう当たり前に聞こえる時期。
しかし当たり前に聞こえるからといって慣れるものでもない。
蝉の声がより一層夏の暑さを加速させる気がする。
少しでも暑さを凌ごうとイヤホンをし、音楽で蝉の声を掻き消す。
駅で鹿島と待ち合わせをした。改札から続々と人が出てくる。鹿島がいた。
鹿島と目が合う。鹿島の顔がパッっと笑顔に変わる。
ワイヤレスイヤホンを取りながら近づいてきたので僕もイヤホンを取る。
「おっはー!」
「テンションたけぇな」
「いや、もうさ、旅行が決定してからソワソワしっぱなしよ」
「まあ、それはわかる」
「いやぁ~どうする?新しい水着でも買いに行く?」
「あぁ~、いやでも前のやつでいいかなぁ~。てか男の水着ってどっかで売ってる?」
「あぁ~、言われてみればたしかに」
「買うとしてもnyAmaZon(ニャマゾン)かなぁ~」
「まあ、そうか」
「レジャーシートあった?」
「あぁ、あったあった。結構広いから大丈夫だと思うけど。
あぁ!今日持ってくれば良かったか!」
「たしかに」
「しくったなぁ~」
そんな話をしながら歩いているといつの間にか匠邸の前についていた。
インターフォンを押し、門が開き中に入り
今度は玄関の扉のインターフォンを押して、匠が出てきてくれた。
中に入り、お風呂場の洗面台で手洗いうがいを済ませる。
飲み物を貰い、リビングのテレビ前のソファーに3人で座る。
「匠ちゃんすごいよね!割引とかじゃなくてタダなんだ?」
「そうそう。んで宿もいいとこよぉ~?」
「マジ?」
もし仮に匠がみんなで行きたくてという理由で
「タダ券当たったという体」をしているとしたら非常に申し訳ないが
考えたらとんでもない金額で、純粋に楽しめなさそうだったので考えるのをやめた。
匠がスマホで宿を検索して見せてくれた。
「おぉ!え?マジ!?すごくね?」
「うん。ここで一応男女3人ずつだったから2部屋」
「マジか!」
「大浴場もこんな感じ」
「おぉ!すげぇ!ひろっ!当たり前だけど」
「露天風呂も夜は星がきれーに見えるらしい」
「マジか!最高だな!」
「いいねぇ~、昼入って、また夜入る」
「男女のお風呂が切り替わるタイプらしい」
「あ、じゃあ午前午後で違うんだ?」
「らしいよ」
「しかも日曜日には花火大会もあります」
「え!?マジ!?匠ちゃん大好きー!」
鹿島が匠に抱きつく。
「どうもどうも」
「熱海だよね」
「そうそう」
「海でやんのかな?花火大会」
「そー…じゃない?知らんけど」
「穴場とかないかな?」
「探してみるか」
その後「熱海 花火大会 穴場」で調べた。みんな夢中で「へぇ~こんなとこあるんだ」とか
「あ!ここいいじゃん!」とかテンションが上がって言っていたが
よく考えたら調べて出てきてる時点で同じ考えの人がわんさかいるだろうと意気消沈した。
「ま、人混みも1つの醍醐味と思えば」
「まぁなぁ~?」
「近くでお祭り?もやるらしいよ」
「マジか。至れり尽くせりじゃん」
「あ、まあ、お祭りってお祭りじゃなくてこう、屋台が出てる感じらしい」
「充分でしょ」
「ね!オレらはお神輿とかじゃなくて屋台がメインだからな」
「だねぇ~」
「それもそうか」
そんな話をしながら匠のスマホで26日から泊まる宿についてを見て話した。
「あ、そうだ。今日もお寿司でいい?」
「あ!うん!お願いします」
「いいの?払いますよ?」
「いいいい。母も全然いいよって言ってくれてるから」
「ありがとうございます!ご馳走様です!」
「ありがとうございます。ご馳走になります」
「じゃ、ちょっと注文してきまーす」
「お願いします」
「お願いします!」
匠がスマホを持ち、階段を上る。
「いやぁ~あと何日?何日?」
「え?えぇ~…あと2週間ちょい?」
「ほぉ~!楽しみがすぎる!あ!ボードゲーム買お!」
「被らんようにな?」
「怜ちゃんなに持ってんだっけ?」
「「line」ってゲーム」
「持ってきた?」
「あ!…忘れてた」
「やりたかったのですが?」
「すいませんでした」
「おもしろそうなのなんだろ」
鹿島がスマホで検索しているようだった。
「あれは?「え?って言うゲーム」」
「あぁ!はいはい!こないだロストで見たね」
「あれおもろいらしいじゃん」
「おもろいおもろい」
「やったんだ?」
「高校んとき昼休みやったことある。あと修学旅行でも」
「うわ。楽しそ」
「めっちゃ楽しかった」
「いいなぁ~」
「他は~っと。お、これは?キャサリンジテンは?」
「知らん。どんなの?」
「カタカナ語禁止で物の説明をするゲーム」
「おもしろそう」
「これいいね。ロストで売ってるかな。ま、売ってなかったらnyAmaZon(ニャマゾン)だな」
「たしかに「line」持ってくりゃ良かったなぁ~」
「人狼…3人はないな」
「ないない。激おもろないと思う」
「だよね」
そんな話をしていたら匠が下りてきた。
「なーんの話してたん?」
「ん?ボドゲ。旅行先でやりたいねって」
「あぁ~」
「怜ちゃんが「line」忘れたんだって。やりたかったよね」
「あぁ「line」ってあれか。順番に並べる」
「そうそう」
「「え?」って言うゲームならあるけど、やる?」
「え?」
「え?」
「いや、今ゲームしてないよ?」
匠が笑う。
「え、あ、買ったん?」
「うん。買った買った」
「あっぶな」
「たしかにね」
「なにが?」
「いや、怜ちゃんとなんのボドゲ買おうかねって話してて
「え?って言うゲーム」は?って話出たから」
「あぁ、なるほど」
「聞いといてよかったな」
「ね。じゃあ、キャサリンジテン買お」
「なにそれ」
匠にも僕にしたのと同じ説明をする。
「あぁ、オレの好きな実況者さんたちがやってたわ」
「マジ?」
「見る?見てみる?ルール確認とかのために」
「見る見る」
匠がリモコンでテレビを操作し、MyPipeに変える。
「あ、オレのチャンネルと怜ちゃんのチャンネルも登録してある。ありがとうございます!」
「いーえー」
匠が「ENINSHOW(イイニンショウ)」というチャンネルで
「ボードゲーム」というプレイリストの中から
その「キャサリンジテン」をプレイしている動画を再生した。
3人組で活動しているグループらしく、1人1人個性がしっかりあって
初めて見たが、匠はもちろん鹿島も僕も大いに笑った。「良い認証」だった。
「おもろー!」
「めっちゃおもしろいじゃん」
「このチャンネル登録しよ。知らんかった」
「オレも毎日見よ」
「この人たちのワメブロ(ワールド メイド ブロックスの略称)もめっちゃおもろいよ」
「あ、ワメブロ(ワールド メイド ブロックスの略称)やってんだ?」
「やってない実況者のほうが珍しくね?」
「たしかに」
「あぁ~このボドゲ買お」
「他にもボドゲやってるよ」
「見たい見たい!」
「じゃ」
と言って匠は「ボードゲーム」のプレイリストを最初から再生した。
相当数あるらしく、飲み物を注ぎにいったりして見ているとあっという間に18時を過ぎた。
「あ、7時に来るからね」
「あいよー…あ、そうだ。そろそろいいかな」
「ん?」
「匠ちゃんちょっとニュースにしてもらっていい?」
「え、いいけど。何チャン?」
「何チャンでもいいや」
匠がリモコンで操作し、テレビがニュースに切り替わる。
もしかして街頭インタビューとかされたのか?
いや、でもそれなら「何チャンでもいい」ってのはおかしいか
そう考えたりしていた。すると鹿島は自分のリュックに手を突っ込み、ガサゴソと探り
「はい」
と匠と僕にクラッカーを手渡した。
「え?」
「なに?」
2人とも困惑していると
「えぇ~。発表があります」
と鹿島がかしこまり、声を整え
「えぇ~この度、ふーと付き合うことになりました!」
匠も僕も頭の上に「?」が浮かんだ。「付き合うことになりました」は聞き取れた。
「誰と」が聞き取れなかった。「ふー」?
「え、なに?ごめん。誰と付き合うになったって?」
「あぁ、ごめんごめん。森もっさんね」
また頭の処理が追いつかなくなり
匠も頭の処理が追いついていないのか、しばし無言の時間が訪れる。
「「え?」」
匠も同時に理解が追いついたのか、声が揃う。鹿島が嬉しそうな顔をしている。
「そうそう。そうそう!ほら、クラッカー、パンッ!っと」
そう言われたのでとりあえずクラッカーを鳴らす。パンッ!パンッ!パンッ!
テープが飛び出て、火薬の香りが辺りを漂う。
鹿島も自分で大きめのクラッカーを持っていて自分で鳴らしていた。
「イエーイ!フゥー!」
鹿島が満面の笑顔ではしゃいでいる。
「え?マジで!?」
「おぉ、おめでとうって来るかと思った」
鹿島が驚きつつも笑う。
「え。ガチ?」
匠も「おめでとう」とは言わず、驚いている。
「マジマジ。今日は旅行の決起集会と称してサプラァ~イズということで」
「いや、え。マジで言ってんの?」
「マジマジ。マジマジマァ~ジ」
「信じられん」
「わかるわかる」
「2人ともおめでとうは?」
「あ、はい。おめでとうございます」
「おめでとうです」
「ありがとうございまーす!!」
満面の笑みの鹿島。とても幸せそうだが、こちらとしてはまだ受け入れられていない。
「え、森もっさんってあのもっさん?」
「森本デルフィンちゃん」
「マジ?あのドイツとハーフの?」
「金髪でインナーカラー赤の」
「えぇ~マジか」
「ガチか」
「ありがとうございます!」
「幸せそうな顔」
「幸せでございます」
「え、いついつ?」
と聞こうとするとピンポーンとインターフォンが鳴った。
「あ、はいはぁ~い」
匠が立ち上がり、玄関へ向かう。
「ま、夜ご飯後ということで」
いつも明るい鹿島だが、いつも以上に明るく幸せそうに見えた。
匠が寿司桶を3つ重ねて運んできてくれて、大きなダイニングテーブルに置く。
3人で夜ご飯にした。前のようにいくらとウニを食べない匠は鹿島と僕に2つをくれて
今回は鹿島がいくら、僕はウニを貰った。ミステリー番組を見ながら
「なんでこーゆー人たちってなんでもオカルトに結びつけんの?」
とか
「わかる。可能性潰していって最後までわからなかったからUFOですとか言うならわかるけど」
とか
「そーゆーもんなん?あーゆーのレーザーポインターに見えるんよね。
それかシューティングゲームで撃ち落としたくなる」
とかいう話をしたり、UMAが出てきて
「え、なにこれ」
とか
「いや、なんかの動物だろ」
とか
「なんかシルエットがファンタジア フィナーレのヨルボルに似てる」
とか話して笑いながら夜ご飯を食べ終えた。
寿司桶を洗って、匠がお風呂を作りにいってくれて
鹿島と僕はソファーに腰を下ろした。匠が戻ってきて
ソファーに座って、そこから鹿島の話を聞いた。
「いってらっしゃい」
着替えを詰めたリュックを背負い、家を出る。蝉の声がもう当たり前に聞こえる時期。
しかし当たり前に聞こえるからといって慣れるものでもない。
蝉の声がより一層夏の暑さを加速させる気がする。
少しでも暑さを凌ごうとイヤホンをし、音楽で蝉の声を掻き消す。
駅で鹿島と待ち合わせをした。改札から続々と人が出てくる。鹿島がいた。
鹿島と目が合う。鹿島の顔がパッっと笑顔に変わる。
ワイヤレスイヤホンを取りながら近づいてきたので僕もイヤホンを取る。
「おっはー!」
「テンションたけぇな」
「いや、もうさ、旅行が決定してからソワソワしっぱなしよ」
「まあ、それはわかる」
「いやぁ~どうする?新しい水着でも買いに行く?」
「あぁ~、いやでも前のやつでいいかなぁ~。てか男の水着ってどっかで売ってる?」
「あぁ~、言われてみればたしかに」
「買うとしてもnyAmaZon(ニャマゾン)かなぁ~」
「まあ、そうか」
「レジャーシートあった?」
「あぁ、あったあった。結構広いから大丈夫だと思うけど。
あぁ!今日持ってくれば良かったか!」
「たしかに」
「しくったなぁ~」
そんな話をしながら歩いているといつの間にか匠邸の前についていた。
インターフォンを押し、門が開き中に入り
今度は玄関の扉のインターフォンを押して、匠が出てきてくれた。
中に入り、お風呂場の洗面台で手洗いうがいを済ませる。
飲み物を貰い、リビングのテレビ前のソファーに3人で座る。
「匠ちゃんすごいよね!割引とかじゃなくてタダなんだ?」
「そうそう。んで宿もいいとこよぉ~?」
「マジ?」
もし仮に匠がみんなで行きたくてという理由で
「タダ券当たったという体」をしているとしたら非常に申し訳ないが
考えたらとんでもない金額で、純粋に楽しめなさそうだったので考えるのをやめた。
匠がスマホで宿を検索して見せてくれた。
「おぉ!え?マジ!?すごくね?」
「うん。ここで一応男女3人ずつだったから2部屋」
「マジか!」
「大浴場もこんな感じ」
「おぉ!すげぇ!ひろっ!当たり前だけど」
「露天風呂も夜は星がきれーに見えるらしい」
「マジか!最高だな!」
「いいねぇ~、昼入って、また夜入る」
「男女のお風呂が切り替わるタイプらしい」
「あ、じゃあ午前午後で違うんだ?」
「らしいよ」
「しかも日曜日には花火大会もあります」
「え!?マジ!?匠ちゃん大好きー!」
鹿島が匠に抱きつく。
「どうもどうも」
「熱海だよね」
「そうそう」
「海でやんのかな?花火大会」
「そー…じゃない?知らんけど」
「穴場とかないかな?」
「探してみるか」
その後「熱海 花火大会 穴場」で調べた。みんな夢中で「へぇ~こんなとこあるんだ」とか
「あ!ここいいじゃん!」とかテンションが上がって言っていたが
よく考えたら調べて出てきてる時点で同じ考えの人がわんさかいるだろうと意気消沈した。
「ま、人混みも1つの醍醐味と思えば」
「まぁなぁ~?」
「近くでお祭り?もやるらしいよ」
「マジか。至れり尽くせりじゃん」
「あ、まあ、お祭りってお祭りじゃなくてこう、屋台が出てる感じらしい」
「充分でしょ」
「ね!オレらはお神輿とかじゃなくて屋台がメインだからな」
「だねぇ~」
「それもそうか」
そんな話をしながら匠のスマホで26日から泊まる宿についてを見て話した。
「あ、そうだ。今日もお寿司でいい?」
「あ!うん!お願いします」
「いいの?払いますよ?」
「いいいい。母も全然いいよって言ってくれてるから」
「ありがとうございます!ご馳走様です!」
「ありがとうございます。ご馳走になります」
「じゃ、ちょっと注文してきまーす」
「お願いします」
「お願いします!」
匠がスマホを持ち、階段を上る。
「いやぁ~あと何日?何日?」
「え?えぇ~…あと2週間ちょい?」
「ほぉ~!楽しみがすぎる!あ!ボードゲーム買お!」
「被らんようにな?」
「怜ちゃんなに持ってんだっけ?」
「「line」ってゲーム」
「持ってきた?」
「あ!…忘れてた」
「やりたかったのですが?」
「すいませんでした」
「おもしろそうなのなんだろ」
鹿島がスマホで検索しているようだった。
「あれは?「え?って言うゲーム」」
「あぁ!はいはい!こないだロストで見たね」
「あれおもろいらしいじゃん」
「おもろいおもろい」
「やったんだ?」
「高校んとき昼休みやったことある。あと修学旅行でも」
「うわ。楽しそ」
「めっちゃ楽しかった」
「いいなぁ~」
「他は~っと。お、これは?キャサリンジテンは?」
「知らん。どんなの?」
「カタカナ語禁止で物の説明をするゲーム」
「おもしろそう」
「これいいね。ロストで売ってるかな。ま、売ってなかったらnyAmaZon(ニャマゾン)だな」
「たしかに「line」持ってくりゃ良かったなぁ~」
「人狼…3人はないな」
「ないない。激おもろないと思う」
「だよね」
そんな話をしていたら匠が下りてきた。
「なーんの話してたん?」
「ん?ボドゲ。旅行先でやりたいねって」
「あぁ~」
「怜ちゃんが「line」忘れたんだって。やりたかったよね」
「あぁ「line」ってあれか。順番に並べる」
「そうそう」
「「え?」って言うゲームならあるけど、やる?」
「え?」
「え?」
「いや、今ゲームしてないよ?」
匠が笑う。
「え、あ、買ったん?」
「うん。買った買った」
「あっぶな」
「たしかにね」
「なにが?」
「いや、怜ちゃんとなんのボドゲ買おうかねって話してて
「え?って言うゲーム」は?って話出たから」
「あぁ、なるほど」
「聞いといてよかったな」
「ね。じゃあ、キャサリンジテン買お」
「なにそれ」
匠にも僕にしたのと同じ説明をする。
「あぁ、オレの好きな実況者さんたちがやってたわ」
「マジ?」
「見る?見てみる?ルール確認とかのために」
「見る見る」
匠がリモコンでテレビを操作し、MyPipeに変える。
「あ、オレのチャンネルと怜ちゃんのチャンネルも登録してある。ありがとうございます!」
「いーえー」
匠が「ENINSHOW(イイニンショウ)」というチャンネルで
「ボードゲーム」というプレイリストの中から
その「キャサリンジテン」をプレイしている動画を再生した。
3人組で活動しているグループらしく、1人1人個性がしっかりあって
初めて見たが、匠はもちろん鹿島も僕も大いに笑った。「良い認証」だった。
「おもろー!」
「めっちゃおもしろいじゃん」
「このチャンネル登録しよ。知らんかった」
「オレも毎日見よ」
「この人たちのワメブロ(ワールド メイド ブロックスの略称)もめっちゃおもろいよ」
「あ、ワメブロ(ワールド メイド ブロックスの略称)やってんだ?」
「やってない実況者のほうが珍しくね?」
「たしかに」
「あぁ~このボドゲ買お」
「他にもボドゲやってるよ」
「見たい見たい!」
「じゃ」
と言って匠は「ボードゲーム」のプレイリストを最初から再生した。
相当数あるらしく、飲み物を注ぎにいったりして見ているとあっという間に18時を過ぎた。
「あ、7時に来るからね」
「あいよー…あ、そうだ。そろそろいいかな」
「ん?」
「匠ちゃんちょっとニュースにしてもらっていい?」
「え、いいけど。何チャン?」
「何チャンでもいいや」
匠がリモコンで操作し、テレビがニュースに切り替わる。
もしかして街頭インタビューとかされたのか?
いや、でもそれなら「何チャンでもいい」ってのはおかしいか
そう考えたりしていた。すると鹿島は自分のリュックに手を突っ込み、ガサゴソと探り
「はい」
と匠と僕にクラッカーを手渡した。
「え?」
「なに?」
2人とも困惑していると
「えぇ~。発表があります」
と鹿島がかしこまり、声を整え
「えぇ~この度、ふーと付き合うことになりました!」
匠も僕も頭の上に「?」が浮かんだ。「付き合うことになりました」は聞き取れた。
「誰と」が聞き取れなかった。「ふー」?
「え、なに?ごめん。誰と付き合うになったって?」
「あぁ、ごめんごめん。森もっさんね」
また頭の処理が追いつかなくなり
匠も頭の処理が追いついていないのか、しばし無言の時間が訪れる。
「「え?」」
匠も同時に理解が追いついたのか、声が揃う。鹿島が嬉しそうな顔をしている。
「そうそう。そうそう!ほら、クラッカー、パンッ!っと」
そう言われたのでとりあえずクラッカーを鳴らす。パンッ!パンッ!パンッ!
テープが飛び出て、火薬の香りが辺りを漂う。
鹿島も自分で大きめのクラッカーを持っていて自分で鳴らしていた。
「イエーイ!フゥー!」
鹿島が満面の笑顔ではしゃいでいる。
「え?マジで!?」
「おぉ、おめでとうって来るかと思った」
鹿島が驚きつつも笑う。
「え。ガチ?」
匠も「おめでとう」とは言わず、驚いている。
「マジマジ。今日は旅行の決起集会と称してサプラァ~イズということで」
「いや、え。マジで言ってんの?」
「マジマジ。マジマジマァ~ジ」
「信じられん」
「わかるわかる」
「2人ともおめでとうは?」
「あ、はい。おめでとうございます」
「おめでとうです」
「ありがとうございまーす!!」
満面の笑みの鹿島。とても幸せそうだが、こちらとしてはまだ受け入れられていない。
「え、森もっさんってあのもっさん?」
「森本デルフィンちゃん」
「マジ?あのドイツとハーフの?」
「金髪でインナーカラー赤の」
「えぇ~マジか」
「ガチか」
「ありがとうございます!」
「幸せそうな顔」
「幸せでございます」
「え、いついつ?」
と聞こうとするとピンポーンとインターフォンが鳴った。
「あ、はいはぁ~い」
匠が立ち上がり、玄関へ向かう。
「ま、夜ご飯後ということで」
いつも明るい鹿島だが、いつも以上に明るく幸せそうに見えた。
匠が寿司桶を3つ重ねて運んできてくれて、大きなダイニングテーブルに置く。
3人で夜ご飯にした。前のようにいくらとウニを食べない匠は鹿島と僕に2つをくれて
今回は鹿島がいくら、僕はウニを貰った。ミステリー番組を見ながら
「なんでこーゆー人たちってなんでもオカルトに結びつけんの?」
とか
「わかる。可能性潰していって最後までわからなかったからUFOですとか言うならわかるけど」
とか
「そーゆーもんなん?あーゆーのレーザーポインターに見えるんよね。
それかシューティングゲームで撃ち落としたくなる」
とかいう話をしたり、UMAが出てきて
「え、なにこれ」
とか
「いや、なんかの動物だろ」
とか
「なんかシルエットがファンタジア フィナーレのヨルボルに似てる」
とか話して笑いながら夜ご飯を食べ終えた。
寿司桶を洗って、匠がお風呂を作りにいってくれて
鹿島と僕はソファーに腰を下ろした。匠が戻ってきて
ソファーに座って、そこから鹿島の話を聞いた。
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