猫舌ということ。

結愛

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特別な日

第144話

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「制服シルフィーね。憧れます」
「わかります。…今もギリ制服いけるかな?」
「コスプレ?」
「になりますかね。やっぱり」
「いや、怜夢さんは全然いけそうですけどね」
「いやいやいや。それを言ったら妃馬さんのほうが…」
妃馬さんの制服姿を想像してしまった。
セーラー服の妃馬さん、ブレザーの妃馬さん。着崩してる妃馬さん。夏服の妃馬さん。
高校は違うというのに音成、匠、夢香、僕の出身校「猫井戸高校」の制服を着ている妃馬さん。
「怜夢さ~ん」
と手を振る妃馬さん。
「似…合うというか、全然違和感ないですよ」
「そうですか?でもさすがに恥ずいですよね」
「まあ、たしかに」
「でもやっぱり制服シルフィーしてみたいなぁ~」
「じゃ、みんなで制服シルフィー行きます?」
「みんなで?」
「「赤信号 みんなで渡れば 恐くない」って言うじゃないですか」
「なるほど?」
「6人もいれば制服シルフィーも恥ずかしさ軽減されるかな?って」
「たしかに!あ、でも赤信号は渡ったらダメですよ?」
「わかってますよ」
2人で笑う。楽しく話しているとあっという間にいつもの曲がり角に来ていて
曲がると根津家の入っているマンションのエントランスが見えた。
なんでもない話をするとすぐにエントランス前に着く。
「あ、そうだ」
妃馬さんがなにか思い付いたように
「怜夢さんお誕生日おめでとうございます」
と言ってくれた。
「ありがとうございます」
知ってくれていたのか、はたまた音成と匠と別れるときに
音成が「おめでとう」と言ってくれたからなのか分からなかった。
すると妃馬さんがバッグから小さな紙袋を出して
「これ、喜んでもらえるかわからないんですけど」
とその小さな紙袋を僕に差し出してくれた。
「え、マジですか?」
「マジです」
「貰っていいんですか?」
「はい」
妃馬さんからその小さな紙袋を受け取る。
紙袋の中を見るとラッピングされた小さな箱が入っていた。
「誕生日知ってたんですか?」
「姫冬から聞きました」
「姫冬ちゃんから?」
と思い返すと

「姫冬ちゃん急にごめんね。聞きたいことがあって」
「全然へーきですよー。なんですか?」
「妃馬さんの誕生日っていつかな?」
「お姉ちゃんの誕生日?7月8日ですね」
「おぉ、ありがとありがと」
「あ、暑ノ井先輩」
「ん?」
「暑ノ井先輩の誕生日はいつですか?」
「オレ?オレは7月18日だけど」
「ありがとーございまーす!」
「はい。こちらこそ」

妃馬さんの誕生日を聞いたときに教えていた。
「姫冬に聞いたら知ってたので」
「あ、僕が妃馬さんの誕生日聞いたときに聞かれたので」
「そうだったんですね」
「中見てもいいですか?」
「あ…のぉ~…」
「気に入ってもらえるかわからないから後でのほうがいいですか?」
「それです」
「妃馬さんのセンスなら大丈夫だと思いますけどわかりました」
妃馬さんが笑顔になる。
「誕生日祝ってもらえるだけで嬉しいのにプレゼントまで貰っちゃって。
本当にありがとうございました」
「いえいえ」
「開けてないけど、もうめっちゃ嬉しいです」
「それは良かった」
安堵が混じった妃馬さんの笑顔は一際輝いて見えた。
「じゃ、ほんとありがとうございました」
「いーえ」
「じゃ明日&LIMEで」
「はい!また明日&LIMEで」
妃馬さんに手を振る。妃馬さんも振り返してくれる。
自分の誕生日ということもあってか、なぜか名残惜しかった。
もう少し、あと少しでもいいから話していたかった。
そう思いながら妃馬さんに背を向け歩き、角を曲がる。
角を曲がってすぐスマホを取り出し、妃馬さんとのLIMEのトーク画面へ行く。

「今日はありがとうございました。
誕生日プレゼント、まだ見てないんですが
妃馬さんから祝っていただいただけでも嬉しかったのにプレゼントまでいただけるなんて。
ほんと最高の誕生日です。ありがとうございます」

その後にフクロウが飛んで喜んでいるスタンプを送った。
イヤホンを耳に入れ、音楽を聴きながら駅まで歩く。
駅に着き、改札を通り、ホームで電車を待つ。
スマホをポケットから取り出すとき、どうしても紙袋が気になり
視線が1回紙袋の中のラッピングされた箱に行ってしまう。
スマホのホームボタンを押すと通知がたくさん来ていた。
そのどれもが「誕生日おめでとう」のメッセージだった。
音成、妃馬さん、姫冬ちゃん、森本さん、鹿島、匠、僕の7人のグループLIMEで
森本さんと姫冬ちゃんが「誕生日おめでとうございます」とメッセージをくれていて
それに返信した。妃馬さんからは個別にメッセージが来ていた。

「いえいえ!プレゼント気に入っていただけるといいんですが…。
改めまして、お誕生日おめでとうございます」

そのメッセージの後に猫が三角帽を被ってクラッカーを鳴らして
「おめでとう!」とはしゃいでいるスタンプが送られていた。思わずニヤける。
また紙袋の中のラッピングされた箱に視線が行く。

「中身確認させていただきますね。楽しみです。
改めまして、ありがとうございます」

その後にフクロウが飛んで喜んでいるスタンプを送った。
駅構内にアナウンスが流れ、ホームに暖かい風を引き連れて電車が入ってくる。
扉が開き、中から人が降りてくる。乗り込む。扉のサイド、シートの端の壁に寄りかかる。
手元の紙袋を胸の辺りに上げる。中からラッピングされた小さな箱を取り出す。
青より少し薄く、水色よりは濃い色のリボンを解く。
ラッピング用紙を綺麗に剥がす。黒い箱が出てくる。
ラッピング用紙を綺麗に折って紙袋にしまう。
その黒い箱を開ける。すぐにフクロウと目が合った。
そこには丸く組み合わせた木の枝のデザインの真ん中にフクロウが留まっているピアスだった。
片方を手に取る。そこまで大きくなく着けやすそうだった。
まじまじと見てしまう。後ろ姿も綺麗で可愛かった。
ピアスの針とキャッチの部分を持つ。軽く揺れる。電車の中の照明が反射してキラリと光る。
ピアスが可愛くて、そして妃馬さんから貰ったことも含めて口角が上がり始める。
ピアスを元に戻し、蓋を閉め、紙袋に戻す。スマホを取り出し、ホームボタンを押す。
音成、妃馬さん、姫冬ちゃん、森本さん
鹿島、匠、僕の7人のグループLIMEが盛り上がっていて、通知が複数来ていた。
そして妃馬さんからの通知。

「わー。めっちゃドキドキしますね。怜夢さんもこんな感覚だったんですか?」

通知をタップし、返信を打ち込む。

「ですね。僕も妃馬さんにプレゼントして
喜んでもらえるかな?どうかな?って思ってましたw
確認しました。控えめに言って最高です!フクロウの探すの大変だったでしょうに。
ほんとありがとうございます。着けさせていただきますね」

その後にフクロウが親指を立てて「最高だぜ!」と言っているスタンプを送った。
さて降りるか。と扉の上部のモニターを見るともう僕の降りる駅はとっくに通り過ぎていた。
次の駅で降り、反対の電車に乗り、今度はちゃんと降りることができた。家の扉を開く。
「あ!おかえりー!」
母の声。イヤホンを取りながら
「ただいまー」
と返事をする。どうやら父も妹もまだ帰っていないようだ。
洗面所で手洗いうがいを済ませ、2階の自分の部屋へ行く。
1回もそこで勉強したことないであろう勉強机の上にバッグを置き
妃馬さんから貰ったプレゼントの紙袋をベッドの前のローテーブルに置く。
もう一度中を確認しようという思いと、とりあえず部屋着に着替えようという思いが混ざり
もう一度フクロウのピアスを見ようとベッドに腰を下ろし、紙袋に手を伸ばし
でも着替えようとベッドから腰を浮かし
でもやっぱりもう一度フクロウのピアスを見ようとベッドに腰を下ろし、紙袋に手を伸ばしを
数回繰り返して、結局部屋着に着替えた。洗濯物を持ち、1階へ下りる。
洗面所に入り、洗濯籠に洗濯物を入れる。
リビングへ行き、キッチンへ入り、自分のグラスにSanta(サンタ)グレープを注ぐ。
「あ、ピザ7時頃届くから」
そうソファーから言う母。
「んー」
と言いながら部屋へ戻る。部屋の扉を閉め、ベッドへ向かう。
ローテーブルにグラスを置き、その手で紙袋から箱を取り出し、蓋を開ける。
フクロウと目が合う。ピアスの針の部分とキャッチの部分を掴む。
フクロウが揺れる。着けてみようかとも考えたがなんとなくやめた。元に戻し、蓋を閉める。
1回もそこで勉強したことないであろう勉強机の上に置かれたバッグから
鹿島から貰ったTシャツと
匠から貰った「Dilapidated my buddy」の予約特典付きプレミアムエディションを出し
ローテーブルの上に置く。鹿島から貰ったTシャツを広げる。
「めっちゃ夏満喫してんなぁ~こいつ」
Tシャツにプリントされたフクロウを見て思わず笑う。軽く畳み、ベッドの上に置く。
匠から貰った「Dilapidated my buddy」の予約特典付きプレミアムエディションの
大きな箱を手に取り、今一度フィギュアを眺める。やはりクオリティーが高い。
今からプレイするのが楽しみだと思いながらローテーブルの上に置く。
ローテーブルの上に置いたテレビのリモコンの赤く丸いボタンを押し、テレビをつけ
グラスのSanta(サンタ)グレープを飲む。
するといつの間にか眠っていたようで頬を両サイドからつままれる感覚で目を覚ます。
「うー?」
「誕生日おめでとー」
「あいあおー(ありがとー)」
妹がパッっと手を離す。
「これなに?」
妹が妃馬さんから貰ったプレゼントの紙袋を指指す。
「プレゼントです」
「誰から?…え。待って。妃馬さん?」
「あ、はい。そうですが」
「え!マジ!?見して見して?」
「まあ。その横の黒いやつがそう」
「開けてい?」
顔で「どうぞ」と言う。妹が蓋を開ける。
「えぇ~可愛いぃ~」
「な。めっちゃいいよな」
「お兄ちゃんフクロウ好きなの知ってんだ」
「うん。母さんと夢香からネックレス貰ったって話もした」
「あ~ねぇ~。それは印象残るわな」
妹が蓋を閉める。
「これは?」
「これは匠。んでこっちが鹿島」
「京弥くんもフクロウなんだ」
「そうそう。でもこれも可愛いよな」
「たしかに。ザ夏だね」
「な」
そんな会話をし終え、妹と共に1階へ下りる。
リビングに入るとダイニングテーブルの上にはお赤飯の盛られたお皿
唐揚げ、サラダの盛られたお皿、そしてケーキがあった。
キッチンでグラスにSanta(サンタ)グレープを注ぎ、席につく。
至って普通のショートケーキには
「怜夢くんお誕生日おめでとう!」と書かれたチョコレートのプレートが乗っていた。
太い蝋燭が2本、細い蝋燭が1本刺さっていた。
しばらくするとピンポーンとインターフォンが鳴る。母が玄関に向かう。
すぐに母がピザの箱を3つ重ねて持ってきた。ダイニングテーブルにピザの箱を置く。
今まで唐揚げの香りが支配していたリビングが一気にピザの香りが上書きしてくる。
匠の家のダイニングテーブルと違い
うちのダイニングテーブルはそんなに広くないため、ピザの箱3枚など乗るはずもない。
ソファーのスツールともオットマンとも呼ばれるものを持ってきて
その上に2枚を重ねて置いた。そして母がライターで蝋燭に火を点け
「「「ハーピバースデートゥーユー」」」
歌が始まった。照れ臭い。
どう反応していいかわからないし、妹に至っては歌うのを嫌がっているのが見え見えだ。
「「「ハーピバースデートゥーユー」」」
歌い終わり、僕が蝋燭の火を吹き消す。蝋燭から煙が上がる。煙の匂い。嫌いじゃない。
パチパチパチ。拍手があがる。
「おめでとー」
「おめでとー」
「おめでとさん」
「ケーキ先食べようか。お腹いっぱいになるとあれだから」
そう言って母がケーキを持ってキッチンへ行く。
切り分けたケーキをお皿に乗せて持ってきてくれた。
まずはケーキを食べ、その後はそれぞれ
母と妹は自分の好きなチーズが盛り盛りのピザを食べたり
父と僕はマルゲリータを食べたり、お赤飯を食べたり、唐揚げを食べたり
結局、ピザを食べ切るのに注力しすぎて、お赤飯とサラダは大いに余ってしまった。
お腹はぱんぱんでソファーに座る。今日は妹がお風呂を作りにいってくれた。
スマホを取り出す。音成、妃馬さん、姫冬ちゃん、森本さん
鹿島、匠、僕の7人のグループLIMEが盛り上がっていて
妃馬さんからも個人的にLIMEが来ていた。
LIMEアプリを開き、妃馬さんとのトーク画面に入る。

「そうだったんですね。気持ちわかりました。
控えめに言って最高w良かった(*´˘`*)ホッ
そこは怜夢さんのお母様と妹さんのお知恵をお借りしました」

ドキッっとして、バッっと母を振り返り、横にいる妹にも視線を送る。妹と目が合う。
「なに?」
「いや…別に…」

「怜夢さんのお母様と妹さんのお知恵をお借りしました」

え?母さんと夢香に相談した?でも連絡手段は?鹿島から聞いたとか?そんなことあるか?

そこで妹の妃馬さんのプレゼントを最初に見たリアクションを思い出した。

「これなに?」
妹が妃馬さんから貰ったプレゼントの紙袋を指指す。
「プレゼントです」
「誰から?…え。待って。妃馬さん?」
「あ、はい。そうですが」
「え!マジ!?見して見して?」
「まあ。その横の黒いやつがそう」
「開けてい?」
顔で「どうぞ」と言う。妹が蓋を開ける。
「えぇ~可愛いぃ~」
「な。めっちゃいいよな」
「お兄ちゃんフクロウ好きなの知ってんだ」
「うん。母さんと夢香からネックレス貰ったって話もした」
「あ~ねぇ~。それは印象残るわな」
妹が蓋を閉める。

あのリアクションは初見のリアクションだ。
もし事前に知っていてあのリアクションを出来ているなら
我が妹ながら大女優になれる。そう思った。

「控えめに言ってですw表現し切れないくらい嬉しいです。
母と妹の知恵?」

送信ボタンをタップする。盛り上がっていた音成、妃馬さん、姫冬ちゃん、森本さん
鹿島、匠、僕の7人のグループLIMEのトーク画面に入る。

「小野田さん誕生日いつなんですか?」
「オレですか?オレは1111です」
「へぇ~小野田先輩トッキーの日なんですね!」
「ポッポの日でもある」
「棒状お菓子の記念日ね!オレそれで覚えてる」
「そーゆーもっさんと姫冬ちゃんは?」
「私は8月1日です」
「森もっさんは8月1日だよ」
「京弥には聞いてないわ」
「私は4月27でした!」
「あ、そっか。怜夢からプレゼント貰ったんだっけ?」
「ですよー!センスも良きでした」
「なっさんは?いつなの?」
「恋は1122だよ」
「匠ちゃんには聞いてませーん」
宇宙人が変なダンスを踊っているスタンプ。
「仕返しのつもりかw」
「私の誕生日はいい夫婦の日なんですよぉ~」
「恋ちゃん、キモい」
「キモい!?」
「ラブラブ匂わせヤバい」
「そんなつもりほんとになかったw」
「キモいw直球すぎるw」
「フィンちゃんww」
「狙ってなかったんかいw狙ってる思ってたw」
「ちゃうちゃうw」

一段落していたので既読だけをつけてトークルームを後にした。
その後はいつも通り、各々でお風呂に入り、各々のタイミングで部屋へ戻った。
部屋に戻るとき階段を上りながら思う。
いつからだろう。両親からプレゼントを貰わなくなったのは。
もちろん21歳の今でも誕生日は特別な日だ。特別な料理を食べて、ケーキまで食べる。
でも子ども頃は夜ご飯を食べた後、父や母からプレゼントを貰っていた。
大きな箱や小さな箱を包むラッピング用紙をビリビリに破り
お目当ての中身を抱きしめて喜んでいた記憶がある。
いつからだろう。欲しいものを言わなくなったのは。反抗期もなかった。…と思う。
これが子どもから大人へのステップアップの1つだろうか。そう思うと寂しく
大人にはなりたくない。と思った。

でもお年玉は貰ってるしなぁ~

まだ子ども。ということにしておいて寂しさの感情に蓋を閉じた。
ベッドに腰かけ、スマホを取り出す。電源をつけると妃馬さんからのLIMEがある。
通知をタップして、妃馬さんとのトーク画面へ飛ぶ。

「そこまで喜んでいただけるとは。なんかこっちが照れますw
はい。前、怜夢さんが言ってたネットで検索してっていう」

なるほど

納得した。返信を打ち込む前に目の前のローテーブルに置いてある
妃馬さんから貰ったピアスが入っている黒いケースを手に取る。蓋を開ける。
フクロウと目が合う。フクロウの頭を撫でる。自然と口角が上がる。
嬉しさで一杯で、今にも溢れ出そうなほどだった。
いつからか両親にプレゼントをねだることもなくなったし
プレゼントを貰うこともなくなった。誕生日の歌を歌ってもらい、蝋燭の揺らめく火を消す。
煙が上っていくのを見て、嫌いじゃない香りを嗅ぐ。
いつもは食べない料理を食べて、ケーキを食べて。
その後はなんてことない日常に戻っていた。でも今年は部屋に戻ると

お前が待っててくれてるもんな

撫でているフクロウの表情は変わることはない。
でもどこかフクロウが嬉しそうにしているように感じた。妃馬さんに返信を打ち込む。

「そんな?wあぁ、なるほどなるほど。それですね」

送信ボタンをタップする。ピアスケースの蓋を閉じる。
テレビをつけ、なんとなしに眺める。
たまにスマホを触り、妃馬さんから返信が来ていれば、それにまた返信していた。

「怜夢さんも照れました?wそれです。逆にどれだと思ってたんですか?」
「まあ…そうですね。次の日大学で見かけたときは照れましたね…w
いや、母や妹に直接聞いたのかと…」
「落とさないかめちゃくちゃ怖かったですけどw
そんなわけないじゃないですかw」
「たしかに。最初は違和感あるってか心配ですよね。
まあ、そうなんですけど「お母様と妹さんのお知恵を?」え!?ってなりましたw」
「耳元でぷらぷらしてるのおもしろくて無駄に首振ったり顔動かしたりしてましたw
焦りました?w」
「あぁ~わかりますw僕もピアス開けて
チャームが揺れるやつ買ったとき無駄に揺らしてましたw
焦った…まあ、焦りもしましたね。
あとどうやってコンタクト取ったん?とも思いました」
「やっぱりそうなんですねw
たしかにw」
「でも、イヤリングは慣れたときが一番無くしやすいかも。
鹿島から聞いたのかな?とか」
「あぁ!たしかに!慣れたら慣れたで危ないですね!
鹿島さん怜夢さんのお母様のLIME知ってるんですか?」
「母はたまに無くして帰ってきますからw
いや、母のは知らないですけど妹のは知ってるはずです」

その後返信はなかったので、寝たんだなと思った。僕もあくびが出る。
スマホの右上の時刻表示を見る。3時46分。いつの間にか4時近くになっていた。
そりゃ寝るはずだ。あくびも出る。
スマホを充電コードに繋ぎ、テレビを消し、部屋の電気も消す。
暗い部屋。窓から差し込む街灯の光や月明かりで薄ぼんやりと部屋の中が見える。
ローテーブルに置かれた妃馬さんから貰った紙袋。
その紙袋を貰ったときのやり取りや景色を思い出す。

「あ、そうだ」
妃馬さんがなにか思い付いたように
「怜夢さんお誕生日おめでとうございます」
と言ってくれた。
「ありがとうございます」
知ってくれていたのか、はたまた音成と匠と別れるときに
音成が「おめでとう」と言ってくれたからなのか分からなかった。
すると妃馬さんがバッグから小さな紙袋を出して
「これ、喜んでもらえるかわからないんですけど」
とその小さな紙袋を僕に差し出してくれた。
「え、マジですか?」
「マジです」
「貰っていいんですか?」
「はい」
妃馬さんからその小さな紙袋を受け取る。
紙袋の中を見るとラッピングされた小さな箱が入っていた。
「誕生日知ってたんですか?」
「姫冬から聞きました」
「姫冬ちゃんから?」
と思い返すと妃馬さんの誕生日を聞いたときに教えていた。
「姫冬に聞いたら知ってたので」
「あ、僕が妃馬さんの誕生日聞いたときに聞かれたので」
「そうだったんですね」
「中見てもいいですか?」
「あ…のぉ~…」
「気に入ってもらえるかわからないから後でのほうがいいですか?」
「それです」
「妃馬さんのセンスなら大丈夫だと思いますけどわかりました」
妃馬さんが笑顔になる。
「誕生日祝ってもらえるだけで嬉しいのにプレゼントまで貰っちゃって。
本当にありがとうございました」
「いえいえ」
「開けてないけど、もうめっちゃ嬉しいです」
「それは良かった」
安堵が混じった妃馬さんの笑顔は一際輝いて見えた。

本当に驚いたけど、どこか期待していた自分もいた。思い出して顔がニヤける。
今日着けて行こうかな。なんて考えているといつの間にか眠りについていた。
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