143 / 183
特別な日
第143話
しおりを挟む
火曜日は特にこれと言って特別なことはなにもなく、ただいつも通りに過ぎて行った。
ペチペチと頬を叩かれる感覚で目を覚ます。
「おはよー」
妹の声。
「ん。おはよ」
「誕生日おめ」
「あぁ、今日か」
そういえばもう自分の誕生日だった。
「2…1?」
「だね。21歳」
「立派な大人だねぇ~」
「全然?立派の「り」の字もない」
「そうなん」
「夢香もなってみりゃわかるけど、21でも全然子どもだわ」
「へぇ~」
そんな会話を交わし、妹と共に1階へ下り、歯を磨き、顔を洗いリビングへ入る。
「おぉ、怜夢。おはよう」
「怜夢おはよ」
「ん。おはよ」
「誕生日おめでとう」
「誕生日おめでとう」
「はい。どうもです」
顔を洗ったがまだどこか眠い目を擦りながら、自分の席につく。家族で朝ご飯を食べ始める。
「今日ピザにしようと思うんだけど、なんのピザがいい?」
「んー。マルゲリータがあればなんでもいいかな」
「じゃ、マルゲリータとあとクワトロでも頼もうか」
「ん」
「私チーズのやつ食べたい」
「じゃあ、3枚?」
「ピザでお腹いっぱいになるだろうね。ケーキはオレが買ってくるから」
「あ、そお?じゃ、お願い」
そんな誕生日限定の会話をしながら朝ご飯を食べ
食べ終えると妹と父が着替えに2階へ行く。妹と父を見送り、母に「3、4限だ」と伝える。
着替えて12時前に家を出た。電車に乗り、乗り換えをして、大学の最寄り駅で降りる。
コンビニに寄ってココティー(心の紅茶の略称)のストレートティーを買い
正門から大学の敷地内に入り、講義室を目指す。開け放たれた後ろの出入り口から中に入る。
見渡すこともなく匠の綺麗な白髪が目に入る。
隣には鹿島もいた。2人に近づく。鹿島が僕に気づき
「おぉ!誕生日おめでとー!」
イヤホンを外し、首にかける。
「おぉいきなりですか。どうもです」
「おぉ怜夢。おめでとー」
「匠もありがと」
2人の後ろを縫い、鹿島の隣に1席空けて腰を下ろす。
「もう21かぁ~」
「それ今朝妹とも話してた」
「お、夢香ちゃんと?」
「あ、京弥夢香ちゃん知ってんだ?」
「うん。何回か会ってるよ」
「あ、そうなんだ。あ、これ。はい」
と匠がトートバッグの中からラッピングしてあるプレゼントを取り出し僕にくれる。
「え、マジ?いいの?」
「どうぞどうぞ」
「あ、待って待って。オレのからぁ~…」
鹿島も自分のバッグからラッピングされたプレゼントを取り出し僕にくれる。
「開けてね?」
「おぉ、鹿島も。マジでありがと。でも鹿島のから開けるのね。なぜに?」
「いや、どうせ匠ちゃんのはうん十万のプレゼントだろうから」
「んなわけあるか」
「ま、とりあえずオレのから」
「いいっすか?」
鹿島が頷く。匠も見守る。ビニールを留めてあるテープを取る。
中に手を入れる。手触り、恐らく服だ。そのまま出してみる。やはりTシャツだった。
綺麗に畳まれていたが、ちゃんと見たいので肩の部分を持ち、広げてみる。
「おぉ!フクロウのTシャツじゃん」
「結構良くない?めっちゃ夏っぽいし」
フクロウがビーチでサングラスをかけて
水色の飲み物の入ったレモンが縁に刺さっていて
小さなパラソルとストローの入ったグラスを持って寛いでいるイラストが
全面にプリントされたTシャツだった。
「マジありがと!めっちゃ可愛いやん」
「冬には着れなそうな」
「それは考えた。でも夏着れればいいんじゃね?って思って」
「まあ、これから夏真っ盛りだもんな」
「ありがたく着させていただきます」
「じゃ、次オレねー」
鹿島のプレゼントは薄かったが匠からのプレゼントは立体的だった。
包装の上から触るとなにか角ばっていて箱が入っていそうだった。
子どもが貰ったら大喜びして包装の紙をビリビリに破いて開けそうだな。と思った。
僕はそっと紙を破らないようにテープを剥がしていく。
「え!?マジ!?」
そこにあったのは鹿島がハマって、匠も買った
「Dilapidated my buddy」の予約特典付きプレミアムエディションだった。
「え!?マジか!匠ちゃんこれ買えたんだ?」
「うん。まだnyAmaZon(ニャマゾン)にあったから」
「え。マジで?いいの?」
「買うか悩んでたじゃん。買ってなきゃいいんだけど」
「買ってない買ってない。マジか。マジでありがと」
「おうよ」
大きな箱の中のフィギュアを見る。
「スゲェ~。全然見た事ないけどリアル~」
「オレも買ってビビった。京弥がクオリティー高いんよってー言ってたけど
正直、オレはそうでもないだろって思ってたんよ。
ほら、いろいろとふフィギュア見てきてるからね?」
「アニメとかマンガのフィギュアってクオリティーヤバそうだもんね」
「基本はスゴいね。中にはヒドイクオリティーのもあるけど。
まあ、そういう高クオリティーの見てきてるから
特装版とはいえ付録のフィギュアなんてって思ってたけど、これはクオリティー高いね」
「すごいね。このサビの感じとか
女の子の無邪気だけど顔が汚くなってる辺り職人なのかな?とか
おじいちゃんの頑固そうな顔だけど優しそうな感じとか
主人公のいけすかなそうな感じとか手に取るようにわかるな」
「おぉ~怜ちゃんすごいね。大体当たってる」
「まあ、女の子レンチ持ってるし」
「たしかにな」
「いやぁ~マジで2人ともありがとうございます。2つとも飾らせていただきます」
「いや、オレのは着て!?」
3人で笑った。すると講師の方が入ってきて
「講義を始めたいと思います」
と講義が始まった。講義中はゲームをして過ごし、あっという間に講義終了の時間になった。
「さぁ~て、次もありますよ」
「せやねんなぁ~」
「森もっさん来るかな」
「来ないね」
「来ないだろうね」
「6人揃わないかぁ~」
「この前はガチレアだったね」
「それなぁ~」
3人で荷物をまとめて次の講義のある講義室に移動する。
開け放たれた後ろの出入り口から中に入る。3人それぞれ1席空けて横並びに座る。
周りを見渡すが音成や妃馬さん、森本さんは見当たらない。
「森本さんどころか、いつもの3人すらいませーん」
「まだ5分前だしー」
「まあ、でも来ないよな」
「もっさんは来ないよな」
しばらくすると音成と妃馬さんが楽しそうに話しながら入ってきた。
「お、来た」
「はいーもっさんいないー」
「はいー残念ー」
テーブルの上からスマホと手に取り、ホームボタンを押す。
「行きますよw」
妃馬さんからのその通知をタップし、トーク画面へ飛ぶ。
「おはようございます」
「おはようございます。あれ?今日妃馬さん4限だけですよね?」
「ですよー」
「早くないですか?」
「これから恋ちゃんと遊んでから大学行きます」
「おぉ、なるほど。遊びが楽しくて、大学行くの忘れそう」
「行きますよw」
返信を打ち込む。
「来ましたね」
送信ボタンをタップし、トーク一覧に戻り、電源を切り、画面を下にしてテーブルに置く。
もう一度匠から貰った「Dilapidated my buddy」のフィギュアを眺める。
「かっけぇ~」
「じゃーん。オレの今のバボ」
鹿島がサティスフィーの画面を見せる。倉庫でヒロインの女の子がバボの手入れをしている。
「おぉ。スゲェ。フィギュアと全然違う」
「カスタムできるから」
「でも、やっぱこのサビサビのバボと出会うシーンがいいよな」
「わかるわかる。この女の子と出会わなければ、たぶん主人公は腐ってたし
おじいちゃんがバボマニアじゃなければ、主人公がまたバボに触れることもなかった。
この錆びたバボと出会うシーンは最高のシーンだね」
「そうなんだ。ヤバいね。激楽しそう」
「激楽しい」
「激楽しい」
講師の方が入ってきて、しばらくしてから講義が始まった。
正直この講義中に「Dilapidated my buddy」をやろうかとも思ったのだが
あまりにも名作な匂いがし、鹿島も匠も名作だと言っていたので
プレイ中声が出そうだったのでやめておいた。
結果、この講義中にやることをやめておいて正解だった。
妃馬さんからの返信があるかと思い、スマホを手に取る。
ホームボタンを押すと妃馬さんからの通知に加えて、音成、妃馬さん、姫冬ちゃん、森本さん
鹿島、匠、僕の7人のグループLIMEの通知もあった。
珍しいなと思い、まずは妃馬さんからの通知をタップする。
「恋ちゃんと遊ぶのは楽しかったですけど忘れませんでしたw」
返信を打ち込む。
「音成は忘れてそうですよねw」
送信ボタンをタップする。トーク一覧に戻り音成、妃馬さん、姫冬ちゃん、森本さん
鹿島、匠、僕の7人のグループLIMEのトーク画面に入る。
「人狼リベンジやりましょーよ」
森本さんからの通知だった。するとリアルタイムでトークが進んでいく。
「お!いいっすよ!」
「フィンちゃん。私たち講義中」
「私はやるよー」
「恋ちゃんさすが」
「オレもやりますー」
「小野田さんもさすが」
「私も参戦なのだ!」
「おぉ!姫冬ちゃんもアプリ取ったん!?」
「取りましたよー!お姉ちゃんに勧められて」
「これで7人でできるのか」
「姫冬ちゃんは?今講義?」
「ですよー」
「わりぃ子だなw」
「鹿島先輩に言われたくなーいw」
「たしかにw」
「もっさんなんてサボってるからね」
ゲーマーの男の子が口笛を吹いて誤魔化している様子のスタンプ。
「誤魔化してるwま、じゃ、とりあえず部屋作りますわ」
「うぃーっす」
「了解です」
「あいあいさー!」
そこから講義室から想像の中の山荘に、今度は7人が閉じ込められた。
山荘には宿の主人の他にその宿に泊まっていた7人がいた。
ある朝起きると宿の主人が無惨にも殺害されていた。
その大きな引っ掻き傷から人狼の仕業だという話になった。
「この7人の中に人狼がいる」
そこからお互いを疑いながらも信じる「人狼ゲーム」が始まった。
「とりあえず僕が占い師です」
僕は占い師と名乗り出た。これは事実だ。
「アハーン?怜ちゃんが人狼か」
「は?占い師だって」
「なぜなら、このオレが占い師だからさ!」
鹿島が人狼であることは「僕の中では」確定した。
「騎士様はー?」
「名乗り出ないほうがいいんじゃない?」
「そうなんですね」
「姫冬様。騎士様ってのは一晩に1人を護れるんだよ。
騎士って名乗り出たら狙われるでしょ?
まあ、あえて名乗り出て身代わりになるって手もあるけど
7分の1だから初日は名乗り出ないほうがいいかな?」
「なるほどね。さすがフィンちゃん」
「今回は霊媒師もいるけど」
「あぁ、霊媒師はね、吊られた人、人狼に殺られた人が
人狼だったかどうかを判定できる役職です」
「は名乗り出たほうがいいの?」
「難しい質問だねぇ~」
「そうですね。初日占い師と霊媒が名乗り出ると騎士様が護るべきはどっち?ってなるし
占い師と違って霊媒は次の朝に結果がわかるので
とりあえずまだいいんじゃないかな?って思います」
「なるほどなるほど」
「じゃ、とりあえず暑ノ井さん、鹿島さん、それぞれ誰占ってどうだったかを教えて下さい」
「僕は姫冬ちゃんを占って白でした」
「オレは森もっさんを占って白でした」
人狼は2人。2匹?鹿島が人狼であることは「僕の中では」確定している。
もう1人。1匹?いる。鹿島が言った「森もっさんは白」これは果たして
「テキトー」に言ったのか「適当」に言ったのか。
この場合の「テキトー」とは人狼じゃない人をあえて白と言う事により信頼を得るという意味。
そして「適当」とはもう1人、1匹の人狼を白ということにより
この人は白ですよーと意識付けるという意味。
「まあ?オレからすれば?怜ちゃんが人狼なので、怜ちゃんを吊りましょうとしか言えない」
ここはあえて引いてみようと思った。
「まあ、オレもそうだけど、ま、今回は霊媒師もいるし、仮にオレが吊られても
霊媒師が白って出してくれるだろうからね。
そのときは「あぁ、本物の占い師を失った」って嘆き悲しんでもらって
鹿島を吊ってもらえれば、人狼1人消えるんで」
「んん~そう言われると怜夢さんが本物な感じがしてきますよね」
「わかるわかる。占い師やっぱ重要だから暑ノ井くん残しかなぁ~」
「いいんじゃね?京弥嘘くせぇ」
「ちょっと匠ちゃん!なっさんも。占い師重要だからこそ話し合お?オレが本物なんだから」
「初日人狼吊れないと厳しい?」
「そうだねぇ~。まあ、うぅ~ん難しいね」
「ま、私も鹿島先輩が怪しいと思いますけど」
「え、待って?それ人柄で言ってない?」
「…」
「え?待って誰か否定して?」
「でもさ、ここで占い師吊る必要ある?」
「どーゆーことですか?」
「それこそ占い師って重要なポジションですから初日に吊らなくても」
「いや、でもこの場合鹿島かオレが人狼なんですよ?ま、この場合鹿島ですけど(小声)」
「聞こえてるよ?怜ちゃんが人狼だけどね?」
「とまあ、どっちかが人狼なので初日にまあ、人狼吊れたらいいんですけど
仮に本物を吊っちゃったとしても霊媒師が吊っちゃったほうが本物って言ってくれるんで
もう片方を吊ってもらえれば人狼1人いなくなるんで」
「でもさ、怜ちゃん。人狼もう1匹いるんだから、そのもう1匹が霊媒騙るんじゃない?
そうなったら前の日吊ったのが本物か人狼かわかんなくない?」
たしかにそれもそうだ。
「でもさ、霊媒師を騙らないってパターンもあるでしょ」
「どういうことですか?」
「例えば、例えばですよ?僕が人狼で占い師騙ってたとして
初日に本物の占い師が吊られました。そして次の日霊媒師が名乗り出ます。
妃馬さんがもう1人の人狼だとして霊媒師の対抗として名乗り出ました。
セオリーとしては霊媒師2人の場合
どちらを信用していいかわからないから占い師もう1人も吊ります。だよね鹿島?」
「まあぁ~…そうだね?」
「となると霊媒師2人が疑われます」
「あ、そっか。霊媒師って名乗り出ずに潜伏してたほうが疑われずに済むんですね」
「そーゆーことです」
「これ、人狼側にヒント与えてることになりません?」
「あ…そうですね」
その僕の発言が決め手となり、初日に吊られるのは鹿島となった。
翌朝、人狼の被害者が出た。匠だった。そして
「私が霊媒師でした」
と妃馬さんが名乗り出た。
「霊媒した結果…鹿島さんは人狼でした」
僕は知っていた。妃馬さんの霊媒の結果、必然的に僕は「本物の」占い師と認定された。
そして前日の僕の助言を聞いたのか霊媒師の対抗は出てこなかった。
「今回オレが占ったのはもっさんです。結果は…人狼でした!」
「おぉ!?となると?」
「フィンちゃん吊って終了?」
「になりますね」
「え!暑ノ井先輩マジナイスプレイすぎません?」
「ありがと」
そして森本さんもなにも弁明することなく
その日森本さんを吊ると次の日、犠牲者は出ず、山荘に平和が訪れた。
想像の中の山荘から現実の講義中の講義室へ戻ってくる。
「いやぁ~なんで怜ちゃん森もっさん占ったのさ」
「いや、占い師吊る流れにしてたのに
もっさんが占い師つのはどうでしょう?っていうから鹿島を庇ってるのかな?って」
「森もっさん」
「それを言うなら鹿島さんもっと本物アピしてくれないと」
「え、騎士様誰だったの?」
「私でーす」
「姫冬ちゃんか!」
「あ、姫冬様が騎士様だったんだ?」
「怜夢護ったの?」
「そうですよー?私が暑ノ井先輩をお護りしました!」
「ま、狙われたのたっくんだったけどね」
「人間側が勝利ならそれでええ。オレも浮かばれるってもんよ」
可愛い女の子のキャラクターが幽体離脱しているスタンプ。
「くっそー!前回は人狼側にやられて、今回は人間側にやられて」
「暑ノ井さんと恋ちゃん、今んとこ負けなし?」
「そうだね?」
「そっすね?」
「暑ノ井くんイエーイ」
「音成イエーイ」
「え、待って。リベンジしたすぎる」
「森もっさん。その気持ちわかる」
「鹿島さんとは人狼ペアなりたくないわ。戦犯がすぎる」
「ちょっとぉ~」
「ww」
可愛いキャラクターがお腹を抱えて笑っているスタンプ。
猫が大爆笑しているスタンプ。
同じシリーズだけど毛色が違う猫が大爆笑しているスタンプ。
フクロウがお腹を抱えて笑っているスタンプ。
僕はスマホの右上の時刻表示を確認した。
人狼があっさり吊られたためか、まだ30分ほど講義時間が残っていた。
結局その後もう1試合することになった。
今度はあっさり人狼が吊られることはなく最終日までもつれ込んだが
結果的に人狼を吊ることに成功し、生き残りは少ないものの、人間側の勝利となった。
「では、今回はここで終わりにしたいと思います。お疲れ様でした」
7月も終わりに近づき、テストも近いというのに講義中人狼ゲームをしていた。
救いようが無い。でも楽しかった。
「んじゃ、帰りますか」
「うっし」
「うぇーい」
荷物をまとめて音成と妃馬さんに近づく。5人で講義室を出る。校舎を出て、駅までを歩く。
「いやぁ~人狼楽しかったっすねぇ~」
「まさかこの場にいないフィンちゃんが提案してくるとは」
「人数多いほうが盛り上がるね」
「だな」
「夢香ちゃんも入ってもらう?」
「怜夢さんの妹さん?」
「ですです。でもオレらと違ってバリバリ高校生だから授業中にってなぁ~…」
「そっか。私たちの後輩だっけ?」
「そうそう」
「制服変わってない?」
「オレら卒業してまだ3年だぞ?変わってないって」
「わからんやん」
「どんな制服だったの?」
「えぇ~っとね。…あれ何色っていうの?」
「ネイビー…?かな?」
「ネイビー?のブレザーだった。猫型の校章が可愛かったね」
「猫型の校章!?いいね!」
「あとはふつー?」
「ふつーじゃない?ネクタイもリボンもふつー」
「京弥んとこは?
コーミヤ(黄葉ノ宮高校の略称)でしょ?」
「だよー。でも知ってるでしょ?」
「まあ、何回も見たからね」
「なんで聞いたし」
「流れ?」
「でもコーミヤ(黄葉ノ宮高校の略称)の制服派手だよね」
「そお?」
「ブレザーの襟が黄色って割と攻めてる気するけど」
「うんうん」
「ま、うちはそこより着崩しとか髪色とかピアスとかだよね」
「それのほうがあるな」
「青髪とか赤髪もいたからな」
「派手だねぇ~」
「ま、フィンちゃんも赤髪っちゃ赤髪だけど」
「森もっさんも派手だよねぇ~金髪に赤インナー」
「京弥が言ってる赤髪青髪って全部ってこと?」
「そそ。全体が赤、青ってこと」
「それは派手だねぇ~」
「後輩にもいたわ」
「マジ?ふつー先輩が怖くて派手にできないもんでしょ」
「怖い先輩いなかったからなぁ~。オレらの世代もみんな優しかったし。
バスケ部で青髪とかいたなぁ~」
「え、マジで?バスケ部で青髪!?その人背番号5番?
好きな食べ物テリヤキバーガーでスピードスターだった?」
「え?いや、知らないけど。あんま関わったことないし」
音成と匠が楽しそうに笑っている。アニメネタだ。ただ珍しく僕もわかっていた。
なんでもない話をして歩いているとあっという間に駅につく。
電車に乗り、鹿島と別れる。大吉祥寺で降りる。
「では、私たちは大吉祥寺で用があるので」
今日が3回に1回の1回の日かと思い
「じゃ、ここで」
と音成と匠に別れを告げる。
「じゃ、またな怜夢」
「おう。これマジでありがとな」
「おう」
「小野田さんまたです」
「妃馬さんまたです」
「あ、そうじゃん!暑ノ井くんお誕生日おめでとうでした」
「あ、どうもでした。ま、過去形じゃなくて今日だけどな」
「それもそっか」
「ま、ありがと」
「またねぇ~」
「またなぁ~」
「サキちゃんもまたね」
「うん。恋ちゃんまた明日ね」
音成と匠が改札に向かう階段を上り始める。
妃馬さんと僕はワクデイジーのある通りのほうへ行き、エスカレーターで下りる。
大きな植木鉢のようなもののある広場から外に出ようとしたとき、トントンと肩を叩かれる。
妃馬さんは僕の右斜め前にいるし、なんだろう?落とし物したかな?と思い振り返る。
するとそこには茶髪でインナーカラーにピンクを入れている
胸くらいまである髪を巻いた派手なギャルがいた。
隣にも黒髪ショートだけどギャルだろうなという雰囲気の人がいた。
「はい。僕ですか?」
と言うと
「お!やっぱそうじゃん!暑ノ井っしょ!?」
記憶を巡らせる。警察の防犯カメラの映像から
写真に一致する人物を探すように頭の中で写真がスライドしていって…
「Match」という文字が出た。
「女川!?」
「そーだよー!ヤバ!なんで?なんでこんなとこで会うん?」
「いや、知らねーよ」
「さすがに草な」
「草…。草ってキモくね?」
「そ?」
「草ってなんかおもろくないときに使うイメージあってさ。
おもろいなら笑えよって話じゃん?」
「ま、その認識で合ってるよ?笑うほどではないときとか
あとは全然笑えないときに場を和ませたい&皮肉って意味で草って使うかな」
「意外と考えてんのな」
「まあね」
すると隣では
「あれ?根津っち?」
と黒髪ショートのギャルが妃馬さんを知っているようだった。
「え!?茉莉香(まりか)ちゃん!?」
「だよー!え!マジで!?」
「すごー!」
妃馬さんと黒髪ショートのギャルが手を合わせてぴょんぴょん飛び跳ねている。
「女川は?なにしてんの?」
「今?今ふつーに大学生だけど」
「知ってる…ってかあそこでしょ?あの真新宿の服飾の」
「あ、そうそう。よく知ってんじゃん」
「高校んときチラッっと聞いたし。ま、で?今は?遊びで?」
「そうそう。うちと茉莉香(まりか)。あぁ、こいつね」
と親指で隣で妃馬さんと楽しそうに喋っている黒髪ショートのギャルを指指す。
「うちと茉莉香(まりか)同じとこでバイトしててさ。
そのバイト先が大吉祥寺だから少し遊んでからそのままバイト行くべってことで」
「あ、そうなんだ」
「暑ノ井は?デート?」
「デート…まあ、ちょっと歩きますか?みたいな?」
「なんそれ。付き合ってんじゃないん?」
「付き合ってはないな」
「ほおぉ~ん?」
女川がニヤニヤする。
「付き合って「は」ないね?」
「なんだよ」
「別にー?」
「どこでバイトしてんの?」
「カフェ。っつっても大人のカフェですが」
「なんその言い方」
「いや大人のカフェってなんかエロいじゃん?」
「ま、わかるけど」
「んでそこが6時からでさ。いやそこの店長がイケメンなんだわ」
「下心かよ」
「え、マジ鬼イケメンだから。すげーよ?」
「告ったの?」
「いやまだ。でもバイト入った瞬間ニャンスタの垢速攻聞いて、DMでやり取りして
少ししてLIMEも聞いて、電話もしてる」
「ふーん。デートは?」
「それがまだなんよー。したいんだけどさ」
「断られてると?」
「予定が合わないんだってさ。これ脈なし?」
「オレに聞くなよ」
「いや男側の意見として」
「あぁ~ね。いや、どうだろうな。単にマジで予定合わないだけかもだし
なんか付き合えない理由とかがあるのかもよ?実は既婚者とか」
「マジ!?」
「いや知らんけどさ。指輪してた?」
「指輪はしてる。オシャレさんだから」
「結婚指輪だバカ」
「あーね。してないと思う」
「じゃ、結婚はしてないか。
オシャレ指輪つけてるのに結婚指輪だけ外すってのも考えづらいし」
「なるなる。さすが暑ノ井!あったま良いぃー!」
「そら、どうも」
「あ、そだ。ニャンスタ教えてよ」
「いいけど、どーやんの」
ポケットからスマホを取り出す。
「貸してみ?」
女川に僕のスマホを渡す。女川が慣れた手付きで目まぐるしく指を動かす。
「ほい」
スマホが返ってくる。
「投稿みてな。付き合ってツーショット載せたるから」
「はいはい。楽しみにしてるわ」
「じゃ、邪魔しちゃ悪いし」
女川が僕の肩に手をポンッっと乗せ、顔を僕の耳元に近づけて
「お互い頑張ろうや」
と言われ
「じゃまたー!」
と笑顔で女川が僕に手を振る。黒髪ショートのギャルも女川についていき、僕を見て
「じゃ、また」
と言われた。なんて返していいかわからなかったので
「はあ…また」
と言うと2人は隣同士で楽しそうに歩いていった。
「なんか、まさかでしたね」
妃馬さんが言う。
「ですね。妃馬さんも知り合いだったみたいで」
「はい。てか、もう帰りますか。充分時間潰れましたし」
正直自分の誕生日ということもあり
ワクデイジーかなんかで少し話したいなという気持ちもあったが
「でーすね。行きましょうか」
と言い、エスカレーターに乗り、上がって
また改札までのエスカレーターに乗り、改札と通り、ホームについていた電車に乗り込む。
「さっきの怜夢さんの同級生ですか?」
「ですです。中学のときの」
「中学のときの!」
「でも成人式の後の同窓会で会ってたので」
「なるほど」
「妃馬さんは?あの人は」
「あの子は本郷茉莉香(まりか)ちゃん。私の高校のときの同級生です」
「そうなんですね。綺麗な人ですね」
「そうですね。高校の頃は茶髪ポニーテールだったんですけどね」
「黒髪ショートカットでしたね」
「高校ではもっとギャルしてたんですけどね」
「でも女川と付き合ってるんだからまだギャルですよ」
「派手でしたねー。怜夢さんの同級生の方」
「ですね。爆発したって感じ」
「爆発?」
「いや、中学のときから茶髪にしたりしてたので」
「あぁ~。高校は違うんですか?」
「はい。女川はコーミヤ(黄葉ノ宮高校の略称)行きましたので」
「へぇ~。コーミヤ(黄葉ノ宮高校の略称)に」
「コーミヤ(黄葉ノ宮高校の略称)校則緩いんで
もう高校でギャル爆発してたかもですけどね」
「成人式ではどうだったんですか?」
「成人式は黒髪から毛先が茶髪っていうグラデーションでした」
「おぉ、落ち着いてるようで意外と派手なやつ」
「意外とね」
その後も高校の校則だったり、着崩しだったり
当時のことを話しているとあっという間に妃馬さんの最寄り駅に着き
2人で電車を降り、改札を通り、いつもの道を歩き始めた。
ペチペチと頬を叩かれる感覚で目を覚ます。
「おはよー」
妹の声。
「ん。おはよ」
「誕生日おめ」
「あぁ、今日か」
そういえばもう自分の誕生日だった。
「2…1?」
「だね。21歳」
「立派な大人だねぇ~」
「全然?立派の「り」の字もない」
「そうなん」
「夢香もなってみりゃわかるけど、21でも全然子どもだわ」
「へぇ~」
そんな会話を交わし、妹と共に1階へ下り、歯を磨き、顔を洗いリビングへ入る。
「おぉ、怜夢。おはよう」
「怜夢おはよ」
「ん。おはよ」
「誕生日おめでとう」
「誕生日おめでとう」
「はい。どうもです」
顔を洗ったがまだどこか眠い目を擦りながら、自分の席につく。家族で朝ご飯を食べ始める。
「今日ピザにしようと思うんだけど、なんのピザがいい?」
「んー。マルゲリータがあればなんでもいいかな」
「じゃ、マルゲリータとあとクワトロでも頼もうか」
「ん」
「私チーズのやつ食べたい」
「じゃあ、3枚?」
「ピザでお腹いっぱいになるだろうね。ケーキはオレが買ってくるから」
「あ、そお?じゃ、お願い」
そんな誕生日限定の会話をしながら朝ご飯を食べ
食べ終えると妹と父が着替えに2階へ行く。妹と父を見送り、母に「3、4限だ」と伝える。
着替えて12時前に家を出た。電車に乗り、乗り換えをして、大学の最寄り駅で降りる。
コンビニに寄ってココティー(心の紅茶の略称)のストレートティーを買い
正門から大学の敷地内に入り、講義室を目指す。開け放たれた後ろの出入り口から中に入る。
見渡すこともなく匠の綺麗な白髪が目に入る。
隣には鹿島もいた。2人に近づく。鹿島が僕に気づき
「おぉ!誕生日おめでとー!」
イヤホンを外し、首にかける。
「おぉいきなりですか。どうもです」
「おぉ怜夢。おめでとー」
「匠もありがと」
2人の後ろを縫い、鹿島の隣に1席空けて腰を下ろす。
「もう21かぁ~」
「それ今朝妹とも話してた」
「お、夢香ちゃんと?」
「あ、京弥夢香ちゃん知ってんだ?」
「うん。何回か会ってるよ」
「あ、そうなんだ。あ、これ。はい」
と匠がトートバッグの中からラッピングしてあるプレゼントを取り出し僕にくれる。
「え、マジ?いいの?」
「どうぞどうぞ」
「あ、待って待って。オレのからぁ~…」
鹿島も自分のバッグからラッピングされたプレゼントを取り出し僕にくれる。
「開けてね?」
「おぉ、鹿島も。マジでありがと。でも鹿島のから開けるのね。なぜに?」
「いや、どうせ匠ちゃんのはうん十万のプレゼントだろうから」
「んなわけあるか」
「ま、とりあえずオレのから」
「いいっすか?」
鹿島が頷く。匠も見守る。ビニールを留めてあるテープを取る。
中に手を入れる。手触り、恐らく服だ。そのまま出してみる。やはりTシャツだった。
綺麗に畳まれていたが、ちゃんと見たいので肩の部分を持ち、広げてみる。
「おぉ!フクロウのTシャツじゃん」
「結構良くない?めっちゃ夏っぽいし」
フクロウがビーチでサングラスをかけて
水色の飲み物の入ったレモンが縁に刺さっていて
小さなパラソルとストローの入ったグラスを持って寛いでいるイラストが
全面にプリントされたTシャツだった。
「マジありがと!めっちゃ可愛いやん」
「冬には着れなそうな」
「それは考えた。でも夏着れればいいんじゃね?って思って」
「まあ、これから夏真っ盛りだもんな」
「ありがたく着させていただきます」
「じゃ、次オレねー」
鹿島のプレゼントは薄かったが匠からのプレゼントは立体的だった。
包装の上から触るとなにか角ばっていて箱が入っていそうだった。
子どもが貰ったら大喜びして包装の紙をビリビリに破いて開けそうだな。と思った。
僕はそっと紙を破らないようにテープを剥がしていく。
「え!?マジ!?」
そこにあったのは鹿島がハマって、匠も買った
「Dilapidated my buddy」の予約特典付きプレミアムエディションだった。
「え!?マジか!匠ちゃんこれ買えたんだ?」
「うん。まだnyAmaZon(ニャマゾン)にあったから」
「え。マジで?いいの?」
「買うか悩んでたじゃん。買ってなきゃいいんだけど」
「買ってない買ってない。マジか。マジでありがと」
「おうよ」
大きな箱の中のフィギュアを見る。
「スゲェ~。全然見た事ないけどリアル~」
「オレも買ってビビった。京弥がクオリティー高いんよってー言ってたけど
正直、オレはそうでもないだろって思ってたんよ。
ほら、いろいろとふフィギュア見てきてるからね?」
「アニメとかマンガのフィギュアってクオリティーヤバそうだもんね」
「基本はスゴいね。中にはヒドイクオリティーのもあるけど。
まあ、そういう高クオリティーの見てきてるから
特装版とはいえ付録のフィギュアなんてって思ってたけど、これはクオリティー高いね」
「すごいね。このサビの感じとか
女の子の無邪気だけど顔が汚くなってる辺り職人なのかな?とか
おじいちゃんの頑固そうな顔だけど優しそうな感じとか
主人公のいけすかなそうな感じとか手に取るようにわかるな」
「おぉ~怜ちゃんすごいね。大体当たってる」
「まあ、女の子レンチ持ってるし」
「たしかにな」
「いやぁ~マジで2人ともありがとうございます。2つとも飾らせていただきます」
「いや、オレのは着て!?」
3人で笑った。すると講師の方が入ってきて
「講義を始めたいと思います」
と講義が始まった。講義中はゲームをして過ごし、あっという間に講義終了の時間になった。
「さぁ~て、次もありますよ」
「せやねんなぁ~」
「森もっさん来るかな」
「来ないね」
「来ないだろうね」
「6人揃わないかぁ~」
「この前はガチレアだったね」
「それなぁ~」
3人で荷物をまとめて次の講義のある講義室に移動する。
開け放たれた後ろの出入り口から中に入る。3人それぞれ1席空けて横並びに座る。
周りを見渡すが音成や妃馬さん、森本さんは見当たらない。
「森本さんどころか、いつもの3人すらいませーん」
「まだ5分前だしー」
「まあ、でも来ないよな」
「もっさんは来ないよな」
しばらくすると音成と妃馬さんが楽しそうに話しながら入ってきた。
「お、来た」
「はいーもっさんいないー」
「はいー残念ー」
テーブルの上からスマホと手に取り、ホームボタンを押す。
「行きますよw」
妃馬さんからのその通知をタップし、トーク画面へ飛ぶ。
「おはようございます」
「おはようございます。あれ?今日妃馬さん4限だけですよね?」
「ですよー」
「早くないですか?」
「これから恋ちゃんと遊んでから大学行きます」
「おぉ、なるほど。遊びが楽しくて、大学行くの忘れそう」
「行きますよw」
返信を打ち込む。
「来ましたね」
送信ボタンをタップし、トーク一覧に戻り、電源を切り、画面を下にしてテーブルに置く。
もう一度匠から貰った「Dilapidated my buddy」のフィギュアを眺める。
「かっけぇ~」
「じゃーん。オレの今のバボ」
鹿島がサティスフィーの画面を見せる。倉庫でヒロインの女の子がバボの手入れをしている。
「おぉ。スゲェ。フィギュアと全然違う」
「カスタムできるから」
「でも、やっぱこのサビサビのバボと出会うシーンがいいよな」
「わかるわかる。この女の子と出会わなければ、たぶん主人公は腐ってたし
おじいちゃんがバボマニアじゃなければ、主人公がまたバボに触れることもなかった。
この錆びたバボと出会うシーンは最高のシーンだね」
「そうなんだ。ヤバいね。激楽しそう」
「激楽しい」
「激楽しい」
講師の方が入ってきて、しばらくしてから講義が始まった。
正直この講義中に「Dilapidated my buddy」をやろうかとも思ったのだが
あまりにも名作な匂いがし、鹿島も匠も名作だと言っていたので
プレイ中声が出そうだったのでやめておいた。
結果、この講義中にやることをやめておいて正解だった。
妃馬さんからの返信があるかと思い、スマホを手に取る。
ホームボタンを押すと妃馬さんからの通知に加えて、音成、妃馬さん、姫冬ちゃん、森本さん
鹿島、匠、僕の7人のグループLIMEの通知もあった。
珍しいなと思い、まずは妃馬さんからの通知をタップする。
「恋ちゃんと遊ぶのは楽しかったですけど忘れませんでしたw」
返信を打ち込む。
「音成は忘れてそうですよねw」
送信ボタンをタップする。トーク一覧に戻り音成、妃馬さん、姫冬ちゃん、森本さん
鹿島、匠、僕の7人のグループLIMEのトーク画面に入る。
「人狼リベンジやりましょーよ」
森本さんからの通知だった。するとリアルタイムでトークが進んでいく。
「お!いいっすよ!」
「フィンちゃん。私たち講義中」
「私はやるよー」
「恋ちゃんさすが」
「オレもやりますー」
「小野田さんもさすが」
「私も参戦なのだ!」
「おぉ!姫冬ちゃんもアプリ取ったん!?」
「取りましたよー!お姉ちゃんに勧められて」
「これで7人でできるのか」
「姫冬ちゃんは?今講義?」
「ですよー」
「わりぃ子だなw」
「鹿島先輩に言われたくなーいw」
「たしかにw」
「もっさんなんてサボってるからね」
ゲーマーの男の子が口笛を吹いて誤魔化している様子のスタンプ。
「誤魔化してるwま、じゃ、とりあえず部屋作りますわ」
「うぃーっす」
「了解です」
「あいあいさー!」
そこから講義室から想像の中の山荘に、今度は7人が閉じ込められた。
山荘には宿の主人の他にその宿に泊まっていた7人がいた。
ある朝起きると宿の主人が無惨にも殺害されていた。
その大きな引っ掻き傷から人狼の仕業だという話になった。
「この7人の中に人狼がいる」
そこからお互いを疑いながらも信じる「人狼ゲーム」が始まった。
「とりあえず僕が占い師です」
僕は占い師と名乗り出た。これは事実だ。
「アハーン?怜ちゃんが人狼か」
「は?占い師だって」
「なぜなら、このオレが占い師だからさ!」
鹿島が人狼であることは「僕の中では」確定した。
「騎士様はー?」
「名乗り出ないほうがいいんじゃない?」
「そうなんですね」
「姫冬様。騎士様ってのは一晩に1人を護れるんだよ。
騎士って名乗り出たら狙われるでしょ?
まあ、あえて名乗り出て身代わりになるって手もあるけど
7分の1だから初日は名乗り出ないほうがいいかな?」
「なるほどね。さすがフィンちゃん」
「今回は霊媒師もいるけど」
「あぁ、霊媒師はね、吊られた人、人狼に殺られた人が
人狼だったかどうかを判定できる役職です」
「は名乗り出たほうがいいの?」
「難しい質問だねぇ~」
「そうですね。初日占い師と霊媒が名乗り出ると騎士様が護るべきはどっち?ってなるし
占い師と違って霊媒は次の朝に結果がわかるので
とりあえずまだいいんじゃないかな?って思います」
「なるほどなるほど」
「じゃ、とりあえず暑ノ井さん、鹿島さん、それぞれ誰占ってどうだったかを教えて下さい」
「僕は姫冬ちゃんを占って白でした」
「オレは森もっさんを占って白でした」
人狼は2人。2匹?鹿島が人狼であることは「僕の中では」確定している。
もう1人。1匹?いる。鹿島が言った「森もっさんは白」これは果たして
「テキトー」に言ったのか「適当」に言ったのか。
この場合の「テキトー」とは人狼じゃない人をあえて白と言う事により信頼を得るという意味。
そして「適当」とはもう1人、1匹の人狼を白ということにより
この人は白ですよーと意識付けるという意味。
「まあ?オレからすれば?怜ちゃんが人狼なので、怜ちゃんを吊りましょうとしか言えない」
ここはあえて引いてみようと思った。
「まあ、オレもそうだけど、ま、今回は霊媒師もいるし、仮にオレが吊られても
霊媒師が白って出してくれるだろうからね。
そのときは「あぁ、本物の占い師を失った」って嘆き悲しんでもらって
鹿島を吊ってもらえれば、人狼1人消えるんで」
「んん~そう言われると怜夢さんが本物な感じがしてきますよね」
「わかるわかる。占い師やっぱ重要だから暑ノ井くん残しかなぁ~」
「いいんじゃね?京弥嘘くせぇ」
「ちょっと匠ちゃん!なっさんも。占い師重要だからこそ話し合お?オレが本物なんだから」
「初日人狼吊れないと厳しい?」
「そうだねぇ~。まあ、うぅ~ん難しいね」
「ま、私も鹿島先輩が怪しいと思いますけど」
「え、待って?それ人柄で言ってない?」
「…」
「え?待って誰か否定して?」
「でもさ、ここで占い師吊る必要ある?」
「どーゆーことですか?」
「それこそ占い師って重要なポジションですから初日に吊らなくても」
「いや、でもこの場合鹿島かオレが人狼なんですよ?ま、この場合鹿島ですけど(小声)」
「聞こえてるよ?怜ちゃんが人狼だけどね?」
「とまあ、どっちかが人狼なので初日にまあ、人狼吊れたらいいんですけど
仮に本物を吊っちゃったとしても霊媒師が吊っちゃったほうが本物って言ってくれるんで
もう片方を吊ってもらえれば人狼1人いなくなるんで」
「でもさ、怜ちゃん。人狼もう1匹いるんだから、そのもう1匹が霊媒騙るんじゃない?
そうなったら前の日吊ったのが本物か人狼かわかんなくない?」
たしかにそれもそうだ。
「でもさ、霊媒師を騙らないってパターンもあるでしょ」
「どういうことですか?」
「例えば、例えばですよ?僕が人狼で占い師騙ってたとして
初日に本物の占い師が吊られました。そして次の日霊媒師が名乗り出ます。
妃馬さんがもう1人の人狼だとして霊媒師の対抗として名乗り出ました。
セオリーとしては霊媒師2人の場合
どちらを信用していいかわからないから占い師もう1人も吊ります。だよね鹿島?」
「まあぁ~…そうだね?」
「となると霊媒師2人が疑われます」
「あ、そっか。霊媒師って名乗り出ずに潜伏してたほうが疑われずに済むんですね」
「そーゆーことです」
「これ、人狼側にヒント与えてることになりません?」
「あ…そうですね」
その僕の発言が決め手となり、初日に吊られるのは鹿島となった。
翌朝、人狼の被害者が出た。匠だった。そして
「私が霊媒師でした」
と妃馬さんが名乗り出た。
「霊媒した結果…鹿島さんは人狼でした」
僕は知っていた。妃馬さんの霊媒の結果、必然的に僕は「本物の」占い師と認定された。
そして前日の僕の助言を聞いたのか霊媒師の対抗は出てこなかった。
「今回オレが占ったのはもっさんです。結果は…人狼でした!」
「おぉ!?となると?」
「フィンちゃん吊って終了?」
「になりますね」
「え!暑ノ井先輩マジナイスプレイすぎません?」
「ありがと」
そして森本さんもなにも弁明することなく
その日森本さんを吊ると次の日、犠牲者は出ず、山荘に平和が訪れた。
想像の中の山荘から現実の講義中の講義室へ戻ってくる。
「いやぁ~なんで怜ちゃん森もっさん占ったのさ」
「いや、占い師吊る流れにしてたのに
もっさんが占い師つのはどうでしょう?っていうから鹿島を庇ってるのかな?って」
「森もっさん」
「それを言うなら鹿島さんもっと本物アピしてくれないと」
「え、騎士様誰だったの?」
「私でーす」
「姫冬ちゃんか!」
「あ、姫冬様が騎士様だったんだ?」
「怜夢護ったの?」
「そうですよー?私が暑ノ井先輩をお護りしました!」
「ま、狙われたのたっくんだったけどね」
「人間側が勝利ならそれでええ。オレも浮かばれるってもんよ」
可愛い女の子のキャラクターが幽体離脱しているスタンプ。
「くっそー!前回は人狼側にやられて、今回は人間側にやられて」
「暑ノ井さんと恋ちゃん、今んとこ負けなし?」
「そうだね?」
「そっすね?」
「暑ノ井くんイエーイ」
「音成イエーイ」
「え、待って。リベンジしたすぎる」
「森もっさん。その気持ちわかる」
「鹿島さんとは人狼ペアなりたくないわ。戦犯がすぎる」
「ちょっとぉ~」
「ww」
可愛いキャラクターがお腹を抱えて笑っているスタンプ。
猫が大爆笑しているスタンプ。
同じシリーズだけど毛色が違う猫が大爆笑しているスタンプ。
フクロウがお腹を抱えて笑っているスタンプ。
僕はスマホの右上の時刻表示を確認した。
人狼があっさり吊られたためか、まだ30分ほど講義時間が残っていた。
結局その後もう1試合することになった。
今度はあっさり人狼が吊られることはなく最終日までもつれ込んだが
結果的に人狼を吊ることに成功し、生き残りは少ないものの、人間側の勝利となった。
「では、今回はここで終わりにしたいと思います。お疲れ様でした」
7月も終わりに近づき、テストも近いというのに講義中人狼ゲームをしていた。
救いようが無い。でも楽しかった。
「んじゃ、帰りますか」
「うっし」
「うぇーい」
荷物をまとめて音成と妃馬さんに近づく。5人で講義室を出る。校舎を出て、駅までを歩く。
「いやぁ~人狼楽しかったっすねぇ~」
「まさかこの場にいないフィンちゃんが提案してくるとは」
「人数多いほうが盛り上がるね」
「だな」
「夢香ちゃんも入ってもらう?」
「怜夢さんの妹さん?」
「ですです。でもオレらと違ってバリバリ高校生だから授業中にってなぁ~…」
「そっか。私たちの後輩だっけ?」
「そうそう」
「制服変わってない?」
「オレら卒業してまだ3年だぞ?変わってないって」
「わからんやん」
「どんな制服だったの?」
「えぇ~っとね。…あれ何色っていうの?」
「ネイビー…?かな?」
「ネイビー?のブレザーだった。猫型の校章が可愛かったね」
「猫型の校章!?いいね!」
「あとはふつー?」
「ふつーじゃない?ネクタイもリボンもふつー」
「京弥んとこは?
コーミヤ(黄葉ノ宮高校の略称)でしょ?」
「だよー。でも知ってるでしょ?」
「まあ、何回も見たからね」
「なんで聞いたし」
「流れ?」
「でもコーミヤ(黄葉ノ宮高校の略称)の制服派手だよね」
「そお?」
「ブレザーの襟が黄色って割と攻めてる気するけど」
「うんうん」
「ま、うちはそこより着崩しとか髪色とかピアスとかだよね」
「それのほうがあるな」
「青髪とか赤髪もいたからな」
「派手だねぇ~」
「ま、フィンちゃんも赤髪っちゃ赤髪だけど」
「森もっさんも派手だよねぇ~金髪に赤インナー」
「京弥が言ってる赤髪青髪って全部ってこと?」
「そそ。全体が赤、青ってこと」
「それは派手だねぇ~」
「後輩にもいたわ」
「マジ?ふつー先輩が怖くて派手にできないもんでしょ」
「怖い先輩いなかったからなぁ~。オレらの世代もみんな優しかったし。
バスケ部で青髪とかいたなぁ~」
「え、マジで?バスケ部で青髪!?その人背番号5番?
好きな食べ物テリヤキバーガーでスピードスターだった?」
「え?いや、知らないけど。あんま関わったことないし」
音成と匠が楽しそうに笑っている。アニメネタだ。ただ珍しく僕もわかっていた。
なんでもない話をして歩いているとあっという間に駅につく。
電車に乗り、鹿島と別れる。大吉祥寺で降りる。
「では、私たちは大吉祥寺で用があるので」
今日が3回に1回の1回の日かと思い
「じゃ、ここで」
と音成と匠に別れを告げる。
「じゃ、またな怜夢」
「おう。これマジでありがとな」
「おう」
「小野田さんまたです」
「妃馬さんまたです」
「あ、そうじゃん!暑ノ井くんお誕生日おめでとうでした」
「あ、どうもでした。ま、過去形じゃなくて今日だけどな」
「それもそっか」
「ま、ありがと」
「またねぇ~」
「またなぁ~」
「サキちゃんもまたね」
「うん。恋ちゃんまた明日ね」
音成と匠が改札に向かう階段を上り始める。
妃馬さんと僕はワクデイジーのある通りのほうへ行き、エスカレーターで下りる。
大きな植木鉢のようなもののある広場から外に出ようとしたとき、トントンと肩を叩かれる。
妃馬さんは僕の右斜め前にいるし、なんだろう?落とし物したかな?と思い振り返る。
するとそこには茶髪でインナーカラーにピンクを入れている
胸くらいまである髪を巻いた派手なギャルがいた。
隣にも黒髪ショートだけどギャルだろうなという雰囲気の人がいた。
「はい。僕ですか?」
と言うと
「お!やっぱそうじゃん!暑ノ井っしょ!?」
記憶を巡らせる。警察の防犯カメラの映像から
写真に一致する人物を探すように頭の中で写真がスライドしていって…
「Match」という文字が出た。
「女川!?」
「そーだよー!ヤバ!なんで?なんでこんなとこで会うん?」
「いや、知らねーよ」
「さすがに草な」
「草…。草ってキモくね?」
「そ?」
「草ってなんかおもろくないときに使うイメージあってさ。
おもろいなら笑えよって話じゃん?」
「ま、その認識で合ってるよ?笑うほどではないときとか
あとは全然笑えないときに場を和ませたい&皮肉って意味で草って使うかな」
「意外と考えてんのな」
「まあね」
すると隣では
「あれ?根津っち?」
と黒髪ショートのギャルが妃馬さんを知っているようだった。
「え!?茉莉香(まりか)ちゃん!?」
「だよー!え!マジで!?」
「すごー!」
妃馬さんと黒髪ショートのギャルが手を合わせてぴょんぴょん飛び跳ねている。
「女川は?なにしてんの?」
「今?今ふつーに大学生だけど」
「知ってる…ってかあそこでしょ?あの真新宿の服飾の」
「あ、そうそう。よく知ってんじゃん」
「高校んときチラッっと聞いたし。ま、で?今は?遊びで?」
「そうそう。うちと茉莉香(まりか)。あぁ、こいつね」
と親指で隣で妃馬さんと楽しそうに喋っている黒髪ショートのギャルを指指す。
「うちと茉莉香(まりか)同じとこでバイトしててさ。
そのバイト先が大吉祥寺だから少し遊んでからそのままバイト行くべってことで」
「あ、そうなんだ」
「暑ノ井は?デート?」
「デート…まあ、ちょっと歩きますか?みたいな?」
「なんそれ。付き合ってんじゃないん?」
「付き合ってはないな」
「ほおぉ~ん?」
女川がニヤニヤする。
「付き合って「は」ないね?」
「なんだよ」
「別にー?」
「どこでバイトしてんの?」
「カフェ。っつっても大人のカフェですが」
「なんその言い方」
「いや大人のカフェってなんかエロいじゃん?」
「ま、わかるけど」
「んでそこが6時からでさ。いやそこの店長がイケメンなんだわ」
「下心かよ」
「え、マジ鬼イケメンだから。すげーよ?」
「告ったの?」
「いやまだ。でもバイト入った瞬間ニャンスタの垢速攻聞いて、DMでやり取りして
少ししてLIMEも聞いて、電話もしてる」
「ふーん。デートは?」
「それがまだなんよー。したいんだけどさ」
「断られてると?」
「予定が合わないんだってさ。これ脈なし?」
「オレに聞くなよ」
「いや男側の意見として」
「あぁ~ね。いや、どうだろうな。単にマジで予定合わないだけかもだし
なんか付き合えない理由とかがあるのかもよ?実は既婚者とか」
「マジ!?」
「いや知らんけどさ。指輪してた?」
「指輪はしてる。オシャレさんだから」
「結婚指輪だバカ」
「あーね。してないと思う」
「じゃ、結婚はしてないか。
オシャレ指輪つけてるのに結婚指輪だけ外すってのも考えづらいし」
「なるなる。さすが暑ノ井!あったま良いぃー!」
「そら、どうも」
「あ、そだ。ニャンスタ教えてよ」
「いいけど、どーやんの」
ポケットからスマホを取り出す。
「貸してみ?」
女川に僕のスマホを渡す。女川が慣れた手付きで目まぐるしく指を動かす。
「ほい」
スマホが返ってくる。
「投稿みてな。付き合ってツーショット載せたるから」
「はいはい。楽しみにしてるわ」
「じゃ、邪魔しちゃ悪いし」
女川が僕の肩に手をポンッっと乗せ、顔を僕の耳元に近づけて
「お互い頑張ろうや」
と言われ
「じゃまたー!」
と笑顔で女川が僕に手を振る。黒髪ショートのギャルも女川についていき、僕を見て
「じゃ、また」
と言われた。なんて返していいかわからなかったので
「はあ…また」
と言うと2人は隣同士で楽しそうに歩いていった。
「なんか、まさかでしたね」
妃馬さんが言う。
「ですね。妃馬さんも知り合いだったみたいで」
「はい。てか、もう帰りますか。充分時間潰れましたし」
正直自分の誕生日ということもあり
ワクデイジーかなんかで少し話したいなという気持ちもあったが
「でーすね。行きましょうか」
と言い、エスカレーターに乗り、上がって
また改札までのエスカレーターに乗り、改札と通り、ホームについていた電車に乗り込む。
「さっきの怜夢さんの同級生ですか?」
「ですです。中学のときの」
「中学のときの!」
「でも成人式の後の同窓会で会ってたので」
「なるほど」
「妃馬さんは?あの人は」
「あの子は本郷茉莉香(まりか)ちゃん。私の高校のときの同級生です」
「そうなんですね。綺麗な人ですね」
「そうですね。高校の頃は茶髪ポニーテールだったんですけどね」
「黒髪ショートカットでしたね」
「高校ではもっとギャルしてたんですけどね」
「でも女川と付き合ってるんだからまだギャルですよ」
「派手でしたねー。怜夢さんの同級生の方」
「ですね。爆発したって感じ」
「爆発?」
「いや、中学のときから茶髪にしたりしてたので」
「あぁ~。高校は違うんですか?」
「はい。女川はコーミヤ(黄葉ノ宮高校の略称)行きましたので」
「へぇ~。コーミヤ(黄葉ノ宮高校の略称)に」
「コーミヤ(黄葉ノ宮高校の略称)校則緩いんで
もう高校でギャル爆発してたかもですけどね」
「成人式ではどうだったんですか?」
「成人式は黒髪から毛先が茶髪っていうグラデーションでした」
「おぉ、落ち着いてるようで意外と派手なやつ」
「意外とね」
その後も高校の校則だったり、着崩しだったり
当時のことを話しているとあっという間に妃馬さんの最寄り駅に着き
2人で電車を降り、改札を通り、いつもの道を歩き始めた。
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
隣の席の女の子がエッチだったのでおっぱい揉んでみたら発情されました
ねんごろ
恋愛
隣の女の子がエッチすぎて、思わず授業中に胸を揉んでしまったら……
という、とんでもないお話を書きました。
ぜひ読んでください。
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子
ちひろ
恋愛
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子の話。
Fantiaでは他にもえっちなお話を書いてます。よかったら遊びに来てね。
隣の人妻としているいけないこと
ヘロディア
恋愛
主人公は、隣人である人妻と浮気している。単なる隣人に過ぎなかったのが、いつからか惹かれ、見事に関係を築いてしまったのだ。
そして、人妻と付き合うスリル、その妖艶な容姿を自分のものにした優越感を得て、彼が自惚れるには十分だった。
しかし、そんな日々もいつかは終わる。ある日、ホテルで彼女と二人きりで行為を進める中、主人公は彼女の着物にGPSを発見する。
彼女の夫がしかけたものと思われ…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる