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特別な日
第142話
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「では皆さん、オレたちは今山荘にいます」
「え、なに急に」
「いいからいいから。皆さん想像してください?」
鹿島に言われた通り想像する。
「怜ちゃん。なんかパパッっと設定と物語のあらすじ的なの頼む」
想像しようとしてたのに、芸人さんだったらズッコケているところだ。
「オレ任せかよ」
「たのんました」
「しゃーない」
僕は頭で想像しながら適当(テキトー)なあらすじを考え、口に出す。
「私たちは今大雪で外へ出られない。山荘に閉じ込められました。
私たちは同じ山荘に泊まりに来たまだ顔を合わせて2日も経っていないほぼ初対面です。
お互い何者か知りません。するとその宿のオーナーが殺害されました。
どうやら宿泊者6人の中に人狼が紛れ込んでいるようです。こんなんでどお?」
「さすがです。じゃあ引き続き想像しながら、人狼していきましょう!」
といってもスマホの画面に映し出されているのは「狂人」の文字。
人狼ゲームで狂人は人狼を勝たせるのが役目だ。人狼側が勝利すれば勝ちとなる。
なので人間を翻弄する役目だ。話し合いが始まる。
「じゃとりあえず占い師の方名乗り出てもらって」
「はいはーい。私占い師でーす」
音成が占い師だと名乗り出た。
「はい違いますー。私が占い師ですー」
森本さんも占い師だと名乗り出た。僕が狂人である以上、音成か森本さんが人狼だ。
「ほおほお。占い師は2人でいいですかな?
じゃあ、占いの結果をなっさんから教えてもらっても?」
「私はサキちゃんを占いました」
「どうでした?」
「シロでした」
「なるほど。森もっさんは?」
「私もサキちゃんを調べて村人でした」
「なるほどぉ~同じね。手掛かりなしか…。
ちなみに騎士さんは名乗り出ます?名乗り出ないって選択もあるけど」
「騎士は名乗り出ないとメリットあるんですか?」
妃馬さんが訊ねる。
「そうですね。今回6人なので2ナイトなんですよ。
なので初日に名乗り出たら人狼は騎士を狙う可能性が出るんですよね。
そうなると2日目に占い師を残せますからね。名乗り出ないメリットとしては
それこそ初日に真の占い師を護れたら2日目も占い師の意見を聞けるということです」
「判断材料が増えるってことですね」
「そーゆーことです。ただ今回は狂人がいるので
占いでシロって出ても狂人の可能性があります」
「じゃあ、私もまだ狂人の可能性があるということ?」
「ですね。でもまあ、人狼を炙り出すゲームなので
とりあえず狂人は置いといてシロって出たら村人って思っていいと思います」
「てことはとりあえずサキちゃんは村人確定でいい?」
「いいと思いますよ」
「とりあえずどうする?占い師2人で当たり前だけどどっちかが偽物」
「フィンちゃんが偽物ですー」
「違いますー恋ちゃんですー」
「と言っても占い師2人とも同じ人占ってるし
狂人もいますから占い師の偽物が人狼とは限らないんですよね」
よしよし。良い流れだ。僕も参戦する。
「だな。あれでしょ?この場合って初日に人狼吊れなかったら、結構厳しいよね?」
「そうだね」
「どーゆーこと?」
「説明しよう!」
鹿島が人差し指を立てる。
「今オレたちは6人いる」
「初日に人狼でない人を吊る。5人になる。
人狼はまだ生きているので夜に1人やられる。4人になる。
仮に占い師のどっちかを吊って、吊ったほうが本物だった場合
狂人と狼が生きている可能性がある。
となると4人の場合、人狼と狂人が協力すれば票を合わせられる。
残った人間も協力して同じ人に入れれば2票対2票。
今回のルールでは同票の場合はランダム処刑だから運ゲー」
「ちょっと森もっさん。オレの説明取んないでよ」
「なるほどですね。じゃあ、初日超重要じゃん」
「だよー。だから…どうしようね」
「セオリーで行ったら占い師どっちかを吊るですよね」
「ですね」
まずい。僕が狂人なので占い師のどちらかが人狼だ。ただ僕にもどちらかわからない。
わかれば人狼に加担し、本物の占い師を吊らせるように意見すればいい。
ただ仮に人狼が吊られてしまったら即ゲームオーバーだ。それこそ運ゲーである。
それならあえて初日には占い師は吊らないという方向に話を転がす必要がある。
それかあえて自分が人狼であるという風に不自然な立ち回りをするか。どちらかだ。
「占い師吊るのはどうなんだろ」
「いや、怜ちゃんが言わんとすることはわかるよ」
「でも人狼が占い師を偽ってる場合50パーセントの確率で勝てるんですよね?」
さすがは妃馬さん。だからセオリーとしてはまず占い師を吊るのだろう。
「まあそうなんですけど、仮に狂人が占い師だった場合
偽物の占い師を吊ったところで人狼は生きてるんですよ」
「たしかに」
「そこなんよなぁ~」
「でもやっぱ占い師吊ったほうがいいんじゃないですか?」
妃馬さんがまた占い師を吊ろうという話を出す。
「なんでですか?」
「まあ、これは怜夢さんが言った偽物の占い師が狂人だったらの場合なんですけど
人狼は生きてるって話でしたけど本物の占い師も生きてるわけじゃないですか。
そうすれば、占いで人狼確定できる可能性も残るってことですよね?」
さすがは妃馬さん。説得力がある。
「たしかに。可能性残したほうがいいか」
「そうですねぇ~…。たしかにセオリー通りいったほうが
メリットデカいのか…。匠ちゃんはどう思う?」
「どう思う。人狼っぽいセリフだねぇ~」
「え?それはどっち?オレが人狼ってこと?」
「違う違う。人狼ゲームっぽいねってこと」
「あーね」
「そうだなぁ~…。その話し合いももちろん大事だけど
騎士様は誰を護るべきか問題もあるよな」
「あるねぇ~。たしかにそこも難しい」
「たしかにですね。とりあえずセオリー通り占い師のどっちか吊って
残った占い師を護るって形でいいんじゃないですかね」
「まあ、そうなるよねぇ~」
まずい。占い師のどちらかを吊る流れになっている。
「恋ちゃんはどう思う?」
妃馬さんが自称占い師の音成に話を振る。
「まあ、占い師の私としては私は吊られたくないなぁ~っていう当たり前の感想なんだけど。
でもまあセオリー通りいったほうがいいっていう話もまあ、そうなんだろうなって思う。
だからまあ、フィンちゃんか私を吊るってならしょーがないかなと。
でも占い師を残すっていう暑ノ井くんの意見も
もう少し深掘りしてもいいのかな?とも思う」
中立な立場に見えるが人狼側の意見だとしても筋が通る。
「怜夢さんはやっぱり占い師残す側ですか?」
「そー…で す か ね?
いや、まあセオリー通りの占い師どっちか吊ってっていう妃馬さんの意見も
もちろんいいと思うんですけど、僕がさっき言ったように運ゲーなんですよ。
妃馬さんの言った通り、狂人が占い師騙ってて
狂人占い師を吊れたとしても残った占い師が本物か
狂人占い師を吊れたかどうかの判別がつかないですよね?」
「あぁ~そうか」
「なるほどな」
よしよし
心の中でしめしめと思う。
「人狼占い師の場合なら吊れたらそこで終了で
あ、人狼占い師だったんだってわかりますけど。
しかも本物の占い師が残れたとしても人狼を占える確率も33パーセント?…だよな。
4人になって…。あれ?そもそも占い師いかれるんじゃないですか?
狂人占い師が吊られたなら人狼は生きてる。ってことは占い師狙いますよね」
「でも占い師は騎士様が護ってくれるから」
「あ、そっか。じゃあ護られたとして…。ん?人狼が占い師狙って騎士様が護れたら?」
「5回残るね」
「GJだね」
「部活?」
「部活?」
「そっか。5人か。残った5人で占い師自身を除けば4人
…25パーセントの確率か。高くはないですよね?」
「うん…。まあたしかにそうですね」
「でもその場合人間側が勝つ確率めっちゃ高いよ」
「そうなんですね?」
「だって狂人死んで人間側が圧倒的に多いし」
「そうか」
たしかに。人狼は占い師を殺りたいはずだ。ただ騎士が占い師を護ればそれは阻まれる。
「でもさ、人狼もさすがにそれはわかるんじゃない?
だから数的不利にならないようにあえて占い師以外を殺りにくるかもよ?」
「あぁ~たしかにねぇ~。今回騎士様2連続で同じ人護れないから
騎士様が1日目に占い師護ったら次人狼の餌食確定だもんな」
よしよし。惑わせている。
「てか、こんな話し合っていいもんだっけ?」
「まあ、アプリの時間はとっくに過ぎてるけど、まあいいんじゃない?慣れだし」
「じゃ、まあこれくらいで投票でいいんじゃない?」
音成の一言で投票に行くことになった。
「さて今回吊られるのは…森もっさんです。あぁ~森もっさぁ~ん」
「後悔しますよー」
「さてと…?…あぁ、人狼は生きておられるみたいですわ」
「あらら」
「そして犠牲者は妃馬さんです」
「サキちゃぁ~ん」
「マジか、妃馬さん」
「まあ妃馬さん人間だったしね」
「となると森もっさんは人間だったってことだね。狂人か村人かはともかく」
「となると?恋が人狼?」
「違うよ!私が本物の占い師です!」
「じゃあ、なっさん。今回は誰を占ってどうでしたか?」
「しまくんを占ってシロでした」
「なっさんは本物です」
「チョロすぎんだろ」
「で、こうなると?」
「人狼は当たり前だけどいます。で、狂人いるかいないかは置いておいて
騎士様いるなら名乗り出てほしいなぁ~って」
「私が騎士様です」
匠が名乗り出た。
「おぉ。イケメン騎士様。馬乗って登場」
「山荘に馬」
「ないか」
「ないな」
狂人の僕はここで騎士の対抗として出ると変に注目を浴びてしまうが
音成が人狼、でも音成は自分を本物の占い師だという。
そして鹿島は人狼占い師の音成からシロだと言われた。匠は騎士。
となると必然的に僕が人狼ということになる。
もちろん狂人は人狼側なので僕が疑われ吊られたほうがいいのだが
なにも行動せずに疑われるのは逆に不自然だと思ったので
「はい僕が騎士でーす」
と名乗り出た。
「お?怜夢が人狼だったか」
「それはこっちのセリフだ」
「恋はオレが護ったんだよ」
「あ?オレだよ。彼氏かなんか知らねぇけど、今回に関してはオレが護ったの。君からね」
「おぉっと!幼馴染を巡ってイケメン2人が争っております!」
「ま、私はたっくん一筋だけどね」
良い流れだ。このまま僕に目がいけば僕が吊られる。そうすれば人狼の勝利になる。
「とりあえず鹿島。方針を決めてくれ」
「おぉ、オレでいいの?じゃあ、そうだな…。とりあえず騎士様2人は怪しいよね。
まあ、これは順番になるけど後出のほうがオレは怪しく見えちゃうな」
「さすが京弥。わかってるわ」
「そう言われると匠ちゃんも怪しく聞こえちゃうんだけどね」
正直どちらでもいい。僕が吊られようが匠が吊られようが。
音成、人狼に目が向かなければいいのだ。
「でも、なっさんもマジで占い師なの?って話もあるけど」
「私?私は本物だよ。しまくんシロって言ったじゃん。…え?もしかしてしまくんが人狼?」
「なんでそうなるのさ!」
「だって私がシロって言ってるのに疑ってくるってことは
自分がシロじゃないのにシロって言ってきたってことを意味してるってことじゃないの?」
「でもそうなると合わないな。もっさんが狂人だったとしても
鹿島が人狼だとすると匠がなんで騎士を騙ってるかがわかんなくなる」
「おい。騙ってんのは怜夢だろ」
「そっかそっか。じゃあしまくんはシロ確だね」
「ありがとーございます!」
「じゃあやっぱ鹿島の判断だな」
「んん~…なっさんが人狼なら騎士の2人のうちどっちかが狂人だよね。当たり前だけど」
「匠ね」
「怜夢ね」
「逆になっさんが狂人の場合、人狼はなかなかのメンタルだよね。
でもあれか。狂人へのオレが人狼だアピールもできるのか。
でもセオリーとしては初日に占い師吊って、なのに犠牲者が出たんだから
森もっさんの犠牲を無駄にしないために占い師を吊るってのがセオリーだよね」
「でも今日で終わりでしょ?そのセオリーはもっと日があるときのじゃないの?」
「あぁ~たしかに。
犠牲を無駄にしないためにって言って吊って犠牲者出たら終わりだもんね」
「そろそろ投票行く?このまま話してても、たぶん延長戦ってだけじゃない?」
「まあ~そうな」
僕は投票する人を決めている。匠だ。そしてきっと音成も匠に入れるはずだ。
話の流れ的に鹿島は僕に入れるだろう。そして匠は当たり前だが僕に入れるはず。
そうなれば人狼の勝ちは確定となる。
「では投票が終わりました。結果…匠ちゃん2票、怜ちゃん2票です。
ということでランダムで吊られる人が決まります」
画面の匠と僕が交互に点滅する。点滅が次第にゆっくりになって止まる。
「匠ちゃんが吊られます。あぁ…匠ちゃん!」
「あ、人狼側の勝利だってさ」
「やったー!」
想像の山荘から現実のワクデイジーに戻ってきた。
「やっぱり恋ちゃんが人狼だったの!?」
「だよー」
「私本物の占い師だったのに」
「あのとき票数バラけてたよね」
「占い師吊る吊らないで決まってなくてオレは全然関係ない怜夢に入れた」
「それなんだよねぇ~オレも関係ない匠ちゃんに入れた」
「私はフィンちゃんに入れた」
「私も恋ちゃんに入れた」
「オレはもっさんに入れました」
「それで森もっさんが吊られたのか。なんで怜ちゃんなっさんが人狼だってわかったの?」
「うぅ~ん。運?もあるけど、占い師を吊るかどうかの話になったとき
オレの意見を深掘りしたほうがいいって言ってて
まあ、本物の占い師でも吊られたくないからそう言うだろうけど
もしかしたら人狼アピールなのかな?って思って」
「さすが暑ノ井くん」
「合ってた?」
「合ってた合ってた。私もなんとなく暑ノ井くんが狂人じゃないかって思ってたから」
「やっぱりラストセオリー通り占い師吊るべきだったな」
「それなー。占い師吊る流れ作れば
オレと匠ちゃん2人がなっさんに入れたからワンチャンあったよな」
「そっか。最後小野田さんと暑ノ井さんに票が割れた時点で、もう人狼の勝利だったのか」
「そっかそっか。そうだよね」
「うわぁ~マジで恋ちゃんめぇ~」
「へへーん。やってやったぜ。イエイ暑ノ井くん!」
「イエイ!」
音成とハイタッチする。
「マジ最後ミスったなぁ~」
「最後もだけど最初も占い師吊ろうって話をしっかりすれば
票バラけずに済んだかもなぁ~」
「恋怖ぁ~」
「恋ちゃん怖ぁ~」
「恋ちゃん怖ぁ~」
「なっさん怖ぁ~」
「てか怜夢さんも怖」
「たしかに怜夢怖」
「怜ちゃん怖」
「暑ノ井さん怖」
「暑ノ井くん怖」
「お前だけは言うなよ」
6人で笑った。各自頼んだポテトやナゲット、飲み物はもうすでに空になっており
人狼で相当時間を過ごしたのでゴミ箱にゴミを捨てて6人でワクデイジーを出た。
匠がボードゲームを買うと言っていたのでワクデイジーの後行く?と聞いたが
時間も時間ということもあり、帰ることにした。
「まだ日が出てるわ」
「ほんとだ。夕暮れきれー」
「夏だなー。日の入りが遅くなってきてる」
「たしかに!5時でもまだ全然明るかったですもんね」
「あと単純に暑いし」
「わかります。日本暑い」
「まるで外国人みたいに」
「私ドイツのハーフなもんで」
「日本のほうが長いくせに」
夕暮れの中、6人で笑いながら駅へと歩く。改札前に着き、鹿島に別れを告げようとすると
鹿島がスタスタと井の蛙線のほうの改札にスマホをあてて、中へ入っていった。
「え?鹿島?そっち井の蛙線だぞ?」
「え?うん。みんな来ないの?おいでよ」
「おぉ…」
戸惑いながら鹿島以外の5人も改札に交通系電子マネーをあて、中に入る。
「どしたん?引っ越したん?」
「いや森もっさんを送ろうかと」
「あぁ、なるほどね」
「ありがとうございます」
「いえいえ」
「あ、この感じ初めてじゃないのな?」
「はい。何回か送ってもらってます」
「そうそう。暗くなるまで付き合わせちゃったとき何回かね」
「最初戸惑ったでしょ。もっさん」
「そー…ですね。でもグリクエ(グリフォンクエストの略称)の仲間だと思ってください。
って言われて笑いました」
「なるほどね。さすが鹿島」
「だろ?」
「でも京弥、グリクエ(グリフォンクエストの略称)やったことないんだろ?」
「ないねん」
「グリクエ(グリフォンクエストの略称)私でも聞いたことある」
「妃馬さん普段ゲームします?」
「そーですねー。大騒乱スパイクファミリーズとか」
「マジっすか!?スパファミ(大騒乱スパイクファミリーズの略称)やってんすか!?」
「妹とたまに。あとは金鉄(金太郎電鉄の略称)とか」
「おぉ~。パーティーゲーム系っすね」
「そうですね。基本妹としてるので」
「そっかそっか。姫冬ちゃんと」
「姫冬ちゃん、スパファミ(大騒乱スパイクファミリーズの略称)強いよ」
「マジ?なっさんやったの?」
「うん。泊まったとき4人でやったけど、私とサキちゃんはボロ負け。
フィンちゃんも負かしてるから」
「たしかに姫冬様は強い」
「うわぁ~お手合わせ願いてぇ~」
「オンラインでやれるじゃん」
「そっか。頼も」
アナウンスが流れ、電車が入ってきて、そこそこ満員の中6人で電車に入る。
全員座れず、ドア側で6人固まる。
「混み杉晋助じゃね」
「くだらねぇ~」
「晋助様カッコいいよねぇ~」
「わかる」
「うおっ」
「キツすぎる」
「永大前(えいだいまえ)までの辛抱だ」
「わかった」
扉が閉まり、電車が動き出す。永大前(えいだいまえ)までで大分人が減り余裕ができる。
「まあこの時間はどの線も混むよねぇ~」
「そうな」
「またこの6人揃ったら、居酒屋とかファミレスでもいいけどゆっくり話しましょ」
「いいですね。人狼のリベンジもしないとだし」
「人狼と狂人のパーフェクトゲームだったね」
「だな」
そんな話をしていると次の駅が森本さんと僕の降りる駅となる。
「じゃ、みんなまたね」
「しまくんまたねー」
「鹿島またな」
「京弥またなぁ~」
「しまさんまた」
「またねぇ~」
「もっさんまたね~」
「恋ちゃんまたね」
「もっさんまた」
「恋ちゃんまたねぇ~」
電車が止まり、扉が開く。森本さんと鹿島がホームに降りる。
森本さん鹿島が一度こちらを振り返り、手を振る。僕たち4人も森本さんと鹿島に手を振る。
階段のところへ森本さんと鹿島が消えていく。扉が閉まり、電車が動く。
すぐに音成と妃馬さんの降りる駅に着き、4人で降りて、いつもの道を歩き出す。
「やっぱり怜夢さんが狂人だったんですね」
「あ、気づかれてました?」
「確証は当たり前ですけどなかったんですけど、やけに占い師を吊るのを躊躇ってたので」
「まあ、そうですね~。音成が吊られたらそこでゲームセットだったので
とりあえず話逸らして最悪僕が怪しく見えるように話もってきました」
「みんなまんまとやられましたね」
「てか最後僕騎士の対抗で出ないと終わってたと思います」
「なんでですか?」
「いや、最初音成ともっさんが占い師で出てきて
もっさんが吊られて、まだ犠牲者が出た。てことはもっさんは本物の占い師か狂人。
仮にもっさんが狂人なら音成本物だけど今回は人数が少ない上に役所も限られてる。
てなるとただの村人も人狼と同じくらい珍しい。で残ったのが音成、鹿島、匠、僕。
音成が鹿島を占って人間判定を出して匠が騎士だと名乗り出た。
てなると僕は?ってなりますよね?
だから後出しでも騎士って名乗り出ないといけなかったんです」
「え、でも私が狂人の可能性もあったし、しまさんが狂人の可能性もありませんでした?」
「あぁ~。そうか。たしかに。自分が狂人だったから考えがそこに行きませんでした」
「でもそうか。あえてあそこで騎士って名乗り出ることで
めっちゃ怪しく見えて票入ったのかもですね」
「あぁ、それは狙いました」
「そっか。あそこで1番ダメなのは恋ちゃんに視線が向くことですもんね」
「そうそう!そうなんです」
「そっか。わぁ~やられたなぁ~」
「人狼流行りそうですね。6人の中だけでですけど」
「たしかに流行りそう。あ、姫冬にも取らせよ」
「いいですね。7人になれば、もう1夜、増えるのかな?」
「そー…です…かね?最後が3人になるから。そうじゃないですかね」
「お、面白そうだな。7人人狼。ぜひ姫冬ちゃんにもアプリ取ってもらってください」
「わかりました。あ、でもあの子、講義中に友達とやりそうだな…」
「たぶん僕たちも講義中やりますよ」
「まあぁ~…たしかに?フィンちゃん来たらやろうよ。って言われるだろうしなぁ~」
「あと鹿島がいるときもきっとやりましょってLIMEありますよ」
「たしかに。そしたら私もノリノリでやりそう」
「でも最低でも6人でやりたいですよね」
「たしかに」
そんな話をしていると
根津家が入っているマンションのエントランスを通り過ぎ、音成の家の前についた。
「まさか今日6人揃うとはね」
「な。こんななんでもない日に」
「そうそう。ほんとなんでもない日だよね」
「金曜とかなら、あの後飲み行ってカラオケ行って終電で帰るみたいのできたのにな」
「ほんとそれ」
「でも明日の講義サボる前提なら行けましたけどね」
「お、妃馬さん意外とヤンチャな発言するんすね」
「怜夢さんもでしたけど、私ってそんな真面目なイメージあります?」
「うん。サキちゃん真面目そうだよ?」
「それ恋ちゃんだけには言われたくないな?」
「たしかに」
「たしかにな」
4人で笑った。
「じゃ、3人ともまた明日ね」
「おう。匠は行くかわからんけどな」
「あ、そっか」
「恋に会いに行くよ」
「キャー!たっくん!」
「あぁ~。これは振ったオレが悪い」
「ほんとですよ。怜夢さんのせいで胃もたれが…」
「ちょっと。誰と誰のやり取りが胃もたれするのさ」
「匠と音成」
「恋ちゃんと小野田さん」
音成に手を振り、今度はすぐそこまで妃馬さんを送り届ける。
「ラブラブすぎません?」
「ですよね」
「いや、さーせん」
「小野田さんいつから恋ちゃんのこと好きだったんですか?」
「いつから。そうですねぇ~。恋愛的に好きになったのは大学1年のころかな」
「そうなんですね」
「ちょっと気分落ちてるときがあって
そんときに励ましのLIMEくれたりとかアニメとか教えてくれて」
「あ、もしかして匠にアニメ教えたのって」
「うん。恋だよ」
「そうなんですね」
「そーなんだ?」
「まあ、正確に言うと、こんな沼あるんだよって言われただけで
オレがどんどん沼に喜んで入ってったって感じ」
「気分落ちてるときってあれですか?」
「あ、もしかして怜夢から聞いてます?」
「…鬱…?」
「あーですです。音成のお陰で鬱から抜け出せたっていうか、まあ、そんな感じです」
「でもそこから今年まで全然なにもなかったんですね」
「そうですね。ちょくちょくLIMEはしてたんですけど
やっぱ鬱ってどうも完治してないっていうか。
こうたまにひょんなことで気分落ちちゃうんですよね」
「あぁ~」
「なんで、まあ、時間かかりました」
「でも恋ちゃん嬉しそうで良かったです」
「ま、胃もたれするからあんまいちゃつかないでほしいけど」
「ちょっと」
3人で笑う。
「じゃ、妃馬さんまた」
「はい。小野田さん怜夢さん。また明日」
「また明日、あとでLIMEでも」
「ですね。あとでLIMEでも」
手を振って妃馬さんと別れ、匠と駅へと歩く。2人でホームで電車を待ち、電車に乗り
「んじゃ、またな」
と匠に言って電車を降りる。玄関の扉を開く。
「遅かったねぇ~」
母が言う。
「あ、うん。LIMEすればよかったね」
「え。もしかして夜ご飯いらない?」
「あぁ、違くて。少し遅くなるって」
「あぁ。で、夜は食べるのね?」
「はい。いただきます」
洗面所で手洗いうがいを済ませ
家族を待たせてしまっていたので着替えず、そのまま夜ご飯を食べた。
お風呂を作ってその足でそのまま部屋に戻り、部屋着に着替えた。
洗濯物を洗濯籠に入れ,リビングで寛ぐ。
お風呂ができた合図がして各々のタイミングでお風呂に入り
各々のタイミングで部屋に戻った。
ベッドに腰掛け、ポケットからスマホを取り出し、ホームボタンを押す。
妃馬さんからの通知に加えて音成、妃馬さん、姫冬ちゃん、森本さん
鹿島、匠、僕の7人のグループLIMEの通知もあった。
妃馬さんへの返信を済ませ、グループLIMEを開く。
すると妃馬さんから今日撮ったプリント カンパニーの写真が送られていた。
姫冬ちゃんはそれを見てすごく羨ましがっていた。
テレビを見ているとスッっといつの間にか眠りについていた。
「え、なに急に」
「いいからいいから。皆さん想像してください?」
鹿島に言われた通り想像する。
「怜ちゃん。なんかパパッっと設定と物語のあらすじ的なの頼む」
想像しようとしてたのに、芸人さんだったらズッコケているところだ。
「オレ任せかよ」
「たのんました」
「しゃーない」
僕は頭で想像しながら適当(テキトー)なあらすじを考え、口に出す。
「私たちは今大雪で外へ出られない。山荘に閉じ込められました。
私たちは同じ山荘に泊まりに来たまだ顔を合わせて2日も経っていないほぼ初対面です。
お互い何者か知りません。するとその宿のオーナーが殺害されました。
どうやら宿泊者6人の中に人狼が紛れ込んでいるようです。こんなんでどお?」
「さすがです。じゃあ引き続き想像しながら、人狼していきましょう!」
といってもスマホの画面に映し出されているのは「狂人」の文字。
人狼ゲームで狂人は人狼を勝たせるのが役目だ。人狼側が勝利すれば勝ちとなる。
なので人間を翻弄する役目だ。話し合いが始まる。
「じゃとりあえず占い師の方名乗り出てもらって」
「はいはーい。私占い師でーす」
音成が占い師だと名乗り出た。
「はい違いますー。私が占い師ですー」
森本さんも占い師だと名乗り出た。僕が狂人である以上、音成か森本さんが人狼だ。
「ほおほお。占い師は2人でいいですかな?
じゃあ、占いの結果をなっさんから教えてもらっても?」
「私はサキちゃんを占いました」
「どうでした?」
「シロでした」
「なるほど。森もっさんは?」
「私もサキちゃんを調べて村人でした」
「なるほどぉ~同じね。手掛かりなしか…。
ちなみに騎士さんは名乗り出ます?名乗り出ないって選択もあるけど」
「騎士は名乗り出ないとメリットあるんですか?」
妃馬さんが訊ねる。
「そうですね。今回6人なので2ナイトなんですよ。
なので初日に名乗り出たら人狼は騎士を狙う可能性が出るんですよね。
そうなると2日目に占い師を残せますからね。名乗り出ないメリットとしては
それこそ初日に真の占い師を護れたら2日目も占い師の意見を聞けるということです」
「判断材料が増えるってことですね」
「そーゆーことです。ただ今回は狂人がいるので
占いでシロって出ても狂人の可能性があります」
「じゃあ、私もまだ狂人の可能性があるということ?」
「ですね。でもまあ、人狼を炙り出すゲームなので
とりあえず狂人は置いといてシロって出たら村人って思っていいと思います」
「てことはとりあえずサキちゃんは村人確定でいい?」
「いいと思いますよ」
「とりあえずどうする?占い師2人で当たり前だけどどっちかが偽物」
「フィンちゃんが偽物ですー」
「違いますー恋ちゃんですー」
「と言っても占い師2人とも同じ人占ってるし
狂人もいますから占い師の偽物が人狼とは限らないんですよね」
よしよし。良い流れだ。僕も参戦する。
「だな。あれでしょ?この場合って初日に人狼吊れなかったら、結構厳しいよね?」
「そうだね」
「どーゆーこと?」
「説明しよう!」
鹿島が人差し指を立てる。
「今オレたちは6人いる」
「初日に人狼でない人を吊る。5人になる。
人狼はまだ生きているので夜に1人やられる。4人になる。
仮に占い師のどっちかを吊って、吊ったほうが本物だった場合
狂人と狼が生きている可能性がある。
となると4人の場合、人狼と狂人が協力すれば票を合わせられる。
残った人間も協力して同じ人に入れれば2票対2票。
今回のルールでは同票の場合はランダム処刑だから運ゲー」
「ちょっと森もっさん。オレの説明取んないでよ」
「なるほどですね。じゃあ、初日超重要じゃん」
「だよー。だから…どうしようね」
「セオリーで行ったら占い師どっちかを吊るですよね」
「ですね」
まずい。僕が狂人なので占い師のどちらかが人狼だ。ただ僕にもどちらかわからない。
わかれば人狼に加担し、本物の占い師を吊らせるように意見すればいい。
ただ仮に人狼が吊られてしまったら即ゲームオーバーだ。それこそ運ゲーである。
それならあえて初日には占い師は吊らないという方向に話を転がす必要がある。
それかあえて自分が人狼であるという風に不自然な立ち回りをするか。どちらかだ。
「占い師吊るのはどうなんだろ」
「いや、怜ちゃんが言わんとすることはわかるよ」
「でも人狼が占い師を偽ってる場合50パーセントの確率で勝てるんですよね?」
さすがは妃馬さん。だからセオリーとしてはまず占い師を吊るのだろう。
「まあそうなんですけど、仮に狂人が占い師だった場合
偽物の占い師を吊ったところで人狼は生きてるんですよ」
「たしかに」
「そこなんよなぁ~」
「でもやっぱ占い師吊ったほうがいいんじゃないですか?」
妃馬さんがまた占い師を吊ろうという話を出す。
「なんでですか?」
「まあ、これは怜夢さんが言った偽物の占い師が狂人だったらの場合なんですけど
人狼は生きてるって話でしたけど本物の占い師も生きてるわけじゃないですか。
そうすれば、占いで人狼確定できる可能性も残るってことですよね?」
さすがは妃馬さん。説得力がある。
「たしかに。可能性残したほうがいいか」
「そうですねぇ~…。たしかにセオリー通りいったほうが
メリットデカいのか…。匠ちゃんはどう思う?」
「どう思う。人狼っぽいセリフだねぇ~」
「え?それはどっち?オレが人狼ってこと?」
「違う違う。人狼ゲームっぽいねってこと」
「あーね」
「そうだなぁ~…。その話し合いももちろん大事だけど
騎士様は誰を護るべきか問題もあるよな」
「あるねぇ~。たしかにそこも難しい」
「たしかにですね。とりあえずセオリー通り占い師のどっちか吊って
残った占い師を護るって形でいいんじゃないですかね」
「まあ、そうなるよねぇ~」
まずい。占い師のどちらかを吊る流れになっている。
「恋ちゃんはどう思う?」
妃馬さんが自称占い師の音成に話を振る。
「まあ、占い師の私としては私は吊られたくないなぁ~っていう当たり前の感想なんだけど。
でもまあセオリー通りいったほうがいいっていう話もまあ、そうなんだろうなって思う。
だからまあ、フィンちゃんか私を吊るってならしょーがないかなと。
でも占い師を残すっていう暑ノ井くんの意見も
もう少し深掘りしてもいいのかな?とも思う」
中立な立場に見えるが人狼側の意見だとしても筋が通る。
「怜夢さんはやっぱり占い師残す側ですか?」
「そー…で す か ね?
いや、まあセオリー通りの占い師どっちか吊ってっていう妃馬さんの意見も
もちろんいいと思うんですけど、僕がさっき言ったように運ゲーなんですよ。
妃馬さんの言った通り、狂人が占い師騙ってて
狂人占い師を吊れたとしても残った占い師が本物か
狂人占い師を吊れたかどうかの判別がつかないですよね?」
「あぁ~そうか」
「なるほどな」
よしよし
心の中でしめしめと思う。
「人狼占い師の場合なら吊れたらそこで終了で
あ、人狼占い師だったんだってわかりますけど。
しかも本物の占い師が残れたとしても人狼を占える確率も33パーセント?…だよな。
4人になって…。あれ?そもそも占い師いかれるんじゃないですか?
狂人占い師が吊られたなら人狼は生きてる。ってことは占い師狙いますよね」
「でも占い師は騎士様が護ってくれるから」
「あ、そっか。じゃあ護られたとして…。ん?人狼が占い師狙って騎士様が護れたら?」
「5回残るね」
「GJだね」
「部活?」
「部活?」
「そっか。5人か。残った5人で占い師自身を除けば4人
…25パーセントの確率か。高くはないですよね?」
「うん…。まあたしかにそうですね」
「でもその場合人間側が勝つ確率めっちゃ高いよ」
「そうなんですね?」
「だって狂人死んで人間側が圧倒的に多いし」
「そうか」
たしかに。人狼は占い師を殺りたいはずだ。ただ騎士が占い師を護ればそれは阻まれる。
「でもさ、人狼もさすがにそれはわかるんじゃない?
だから数的不利にならないようにあえて占い師以外を殺りにくるかもよ?」
「あぁ~たしかにねぇ~。今回騎士様2連続で同じ人護れないから
騎士様が1日目に占い師護ったら次人狼の餌食確定だもんな」
よしよし。惑わせている。
「てか、こんな話し合っていいもんだっけ?」
「まあ、アプリの時間はとっくに過ぎてるけど、まあいいんじゃない?慣れだし」
「じゃ、まあこれくらいで投票でいいんじゃない?」
音成の一言で投票に行くことになった。
「さて今回吊られるのは…森もっさんです。あぁ~森もっさぁ~ん」
「後悔しますよー」
「さてと…?…あぁ、人狼は生きておられるみたいですわ」
「あらら」
「そして犠牲者は妃馬さんです」
「サキちゃぁ~ん」
「マジか、妃馬さん」
「まあ妃馬さん人間だったしね」
「となると森もっさんは人間だったってことだね。狂人か村人かはともかく」
「となると?恋が人狼?」
「違うよ!私が本物の占い師です!」
「じゃあ、なっさん。今回は誰を占ってどうでしたか?」
「しまくんを占ってシロでした」
「なっさんは本物です」
「チョロすぎんだろ」
「で、こうなると?」
「人狼は当たり前だけどいます。で、狂人いるかいないかは置いておいて
騎士様いるなら名乗り出てほしいなぁ~って」
「私が騎士様です」
匠が名乗り出た。
「おぉ。イケメン騎士様。馬乗って登場」
「山荘に馬」
「ないか」
「ないな」
狂人の僕はここで騎士の対抗として出ると変に注目を浴びてしまうが
音成が人狼、でも音成は自分を本物の占い師だという。
そして鹿島は人狼占い師の音成からシロだと言われた。匠は騎士。
となると必然的に僕が人狼ということになる。
もちろん狂人は人狼側なので僕が疑われ吊られたほうがいいのだが
なにも行動せずに疑われるのは逆に不自然だと思ったので
「はい僕が騎士でーす」
と名乗り出た。
「お?怜夢が人狼だったか」
「それはこっちのセリフだ」
「恋はオレが護ったんだよ」
「あ?オレだよ。彼氏かなんか知らねぇけど、今回に関してはオレが護ったの。君からね」
「おぉっと!幼馴染を巡ってイケメン2人が争っております!」
「ま、私はたっくん一筋だけどね」
良い流れだ。このまま僕に目がいけば僕が吊られる。そうすれば人狼の勝利になる。
「とりあえず鹿島。方針を決めてくれ」
「おぉ、オレでいいの?じゃあ、そうだな…。とりあえず騎士様2人は怪しいよね。
まあ、これは順番になるけど後出のほうがオレは怪しく見えちゃうな」
「さすが京弥。わかってるわ」
「そう言われると匠ちゃんも怪しく聞こえちゃうんだけどね」
正直どちらでもいい。僕が吊られようが匠が吊られようが。
音成、人狼に目が向かなければいいのだ。
「でも、なっさんもマジで占い師なの?って話もあるけど」
「私?私は本物だよ。しまくんシロって言ったじゃん。…え?もしかしてしまくんが人狼?」
「なんでそうなるのさ!」
「だって私がシロって言ってるのに疑ってくるってことは
自分がシロじゃないのにシロって言ってきたってことを意味してるってことじゃないの?」
「でもそうなると合わないな。もっさんが狂人だったとしても
鹿島が人狼だとすると匠がなんで騎士を騙ってるかがわかんなくなる」
「おい。騙ってんのは怜夢だろ」
「そっかそっか。じゃあしまくんはシロ確だね」
「ありがとーございます!」
「じゃあやっぱ鹿島の判断だな」
「んん~…なっさんが人狼なら騎士の2人のうちどっちかが狂人だよね。当たり前だけど」
「匠ね」
「怜夢ね」
「逆になっさんが狂人の場合、人狼はなかなかのメンタルだよね。
でもあれか。狂人へのオレが人狼だアピールもできるのか。
でもセオリーとしては初日に占い師吊って、なのに犠牲者が出たんだから
森もっさんの犠牲を無駄にしないために占い師を吊るってのがセオリーだよね」
「でも今日で終わりでしょ?そのセオリーはもっと日があるときのじゃないの?」
「あぁ~たしかに。
犠牲を無駄にしないためにって言って吊って犠牲者出たら終わりだもんね」
「そろそろ投票行く?このまま話してても、たぶん延長戦ってだけじゃない?」
「まあ~そうな」
僕は投票する人を決めている。匠だ。そしてきっと音成も匠に入れるはずだ。
話の流れ的に鹿島は僕に入れるだろう。そして匠は当たり前だが僕に入れるはず。
そうなれば人狼の勝ちは確定となる。
「では投票が終わりました。結果…匠ちゃん2票、怜ちゃん2票です。
ということでランダムで吊られる人が決まります」
画面の匠と僕が交互に点滅する。点滅が次第にゆっくりになって止まる。
「匠ちゃんが吊られます。あぁ…匠ちゃん!」
「あ、人狼側の勝利だってさ」
「やったー!」
想像の山荘から現実のワクデイジーに戻ってきた。
「やっぱり恋ちゃんが人狼だったの!?」
「だよー」
「私本物の占い師だったのに」
「あのとき票数バラけてたよね」
「占い師吊る吊らないで決まってなくてオレは全然関係ない怜夢に入れた」
「それなんだよねぇ~オレも関係ない匠ちゃんに入れた」
「私はフィンちゃんに入れた」
「私も恋ちゃんに入れた」
「オレはもっさんに入れました」
「それで森もっさんが吊られたのか。なんで怜ちゃんなっさんが人狼だってわかったの?」
「うぅ~ん。運?もあるけど、占い師を吊るかどうかの話になったとき
オレの意見を深掘りしたほうがいいって言ってて
まあ、本物の占い師でも吊られたくないからそう言うだろうけど
もしかしたら人狼アピールなのかな?って思って」
「さすが暑ノ井くん」
「合ってた?」
「合ってた合ってた。私もなんとなく暑ノ井くんが狂人じゃないかって思ってたから」
「やっぱりラストセオリー通り占い師吊るべきだったな」
「それなー。占い師吊る流れ作れば
オレと匠ちゃん2人がなっさんに入れたからワンチャンあったよな」
「そっか。最後小野田さんと暑ノ井さんに票が割れた時点で、もう人狼の勝利だったのか」
「そっかそっか。そうだよね」
「うわぁ~マジで恋ちゃんめぇ~」
「へへーん。やってやったぜ。イエイ暑ノ井くん!」
「イエイ!」
音成とハイタッチする。
「マジ最後ミスったなぁ~」
「最後もだけど最初も占い師吊ろうって話をしっかりすれば
票バラけずに済んだかもなぁ~」
「恋怖ぁ~」
「恋ちゃん怖ぁ~」
「恋ちゃん怖ぁ~」
「なっさん怖ぁ~」
「てか怜夢さんも怖」
「たしかに怜夢怖」
「怜ちゃん怖」
「暑ノ井さん怖」
「暑ノ井くん怖」
「お前だけは言うなよ」
6人で笑った。各自頼んだポテトやナゲット、飲み物はもうすでに空になっており
人狼で相当時間を過ごしたのでゴミ箱にゴミを捨てて6人でワクデイジーを出た。
匠がボードゲームを買うと言っていたのでワクデイジーの後行く?と聞いたが
時間も時間ということもあり、帰ることにした。
「まだ日が出てるわ」
「ほんとだ。夕暮れきれー」
「夏だなー。日の入りが遅くなってきてる」
「たしかに!5時でもまだ全然明るかったですもんね」
「あと単純に暑いし」
「わかります。日本暑い」
「まるで外国人みたいに」
「私ドイツのハーフなもんで」
「日本のほうが長いくせに」
夕暮れの中、6人で笑いながら駅へと歩く。改札前に着き、鹿島に別れを告げようとすると
鹿島がスタスタと井の蛙線のほうの改札にスマホをあてて、中へ入っていった。
「え?鹿島?そっち井の蛙線だぞ?」
「え?うん。みんな来ないの?おいでよ」
「おぉ…」
戸惑いながら鹿島以外の5人も改札に交通系電子マネーをあて、中に入る。
「どしたん?引っ越したん?」
「いや森もっさんを送ろうかと」
「あぁ、なるほどね」
「ありがとうございます」
「いえいえ」
「あ、この感じ初めてじゃないのな?」
「はい。何回か送ってもらってます」
「そうそう。暗くなるまで付き合わせちゃったとき何回かね」
「最初戸惑ったでしょ。もっさん」
「そー…ですね。でもグリクエ(グリフォンクエストの略称)の仲間だと思ってください。
って言われて笑いました」
「なるほどね。さすが鹿島」
「だろ?」
「でも京弥、グリクエ(グリフォンクエストの略称)やったことないんだろ?」
「ないねん」
「グリクエ(グリフォンクエストの略称)私でも聞いたことある」
「妃馬さん普段ゲームします?」
「そーですねー。大騒乱スパイクファミリーズとか」
「マジっすか!?スパファミ(大騒乱スパイクファミリーズの略称)やってんすか!?」
「妹とたまに。あとは金鉄(金太郎電鉄の略称)とか」
「おぉ~。パーティーゲーム系っすね」
「そうですね。基本妹としてるので」
「そっかそっか。姫冬ちゃんと」
「姫冬ちゃん、スパファミ(大騒乱スパイクファミリーズの略称)強いよ」
「マジ?なっさんやったの?」
「うん。泊まったとき4人でやったけど、私とサキちゃんはボロ負け。
フィンちゃんも負かしてるから」
「たしかに姫冬様は強い」
「うわぁ~お手合わせ願いてぇ~」
「オンラインでやれるじゃん」
「そっか。頼も」
アナウンスが流れ、電車が入ってきて、そこそこ満員の中6人で電車に入る。
全員座れず、ドア側で6人固まる。
「混み杉晋助じゃね」
「くだらねぇ~」
「晋助様カッコいいよねぇ~」
「わかる」
「うおっ」
「キツすぎる」
「永大前(えいだいまえ)までの辛抱だ」
「わかった」
扉が閉まり、電車が動き出す。永大前(えいだいまえ)までで大分人が減り余裕ができる。
「まあこの時間はどの線も混むよねぇ~」
「そうな」
「またこの6人揃ったら、居酒屋とかファミレスでもいいけどゆっくり話しましょ」
「いいですね。人狼のリベンジもしないとだし」
「人狼と狂人のパーフェクトゲームだったね」
「だな」
そんな話をしていると次の駅が森本さんと僕の降りる駅となる。
「じゃ、みんなまたね」
「しまくんまたねー」
「鹿島またな」
「京弥またなぁ~」
「しまさんまた」
「またねぇ~」
「もっさんまたね~」
「恋ちゃんまたね」
「もっさんまた」
「恋ちゃんまたねぇ~」
電車が止まり、扉が開く。森本さんと鹿島がホームに降りる。
森本さん鹿島が一度こちらを振り返り、手を振る。僕たち4人も森本さんと鹿島に手を振る。
階段のところへ森本さんと鹿島が消えていく。扉が閉まり、電車が動く。
すぐに音成と妃馬さんの降りる駅に着き、4人で降りて、いつもの道を歩き出す。
「やっぱり怜夢さんが狂人だったんですね」
「あ、気づかれてました?」
「確証は当たり前ですけどなかったんですけど、やけに占い師を吊るのを躊躇ってたので」
「まあ、そうですね~。音成が吊られたらそこでゲームセットだったので
とりあえず話逸らして最悪僕が怪しく見えるように話もってきました」
「みんなまんまとやられましたね」
「てか最後僕騎士の対抗で出ないと終わってたと思います」
「なんでですか?」
「いや、最初音成ともっさんが占い師で出てきて
もっさんが吊られて、まだ犠牲者が出た。てことはもっさんは本物の占い師か狂人。
仮にもっさんが狂人なら音成本物だけど今回は人数が少ない上に役所も限られてる。
てなるとただの村人も人狼と同じくらい珍しい。で残ったのが音成、鹿島、匠、僕。
音成が鹿島を占って人間判定を出して匠が騎士だと名乗り出た。
てなると僕は?ってなりますよね?
だから後出しでも騎士って名乗り出ないといけなかったんです」
「え、でも私が狂人の可能性もあったし、しまさんが狂人の可能性もありませんでした?」
「あぁ~。そうか。たしかに。自分が狂人だったから考えがそこに行きませんでした」
「でもそうか。あえてあそこで騎士って名乗り出ることで
めっちゃ怪しく見えて票入ったのかもですね」
「あぁ、それは狙いました」
「そっか。あそこで1番ダメなのは恋ちゃんに視線が向くことですもんね」
「そうそう!そうなんです」
「そっか。わぁ~やられたなぁ~」
「人狼流行りそうですね。6人の中だけでですけど」
「たしかに流行りそう。あ、姫冬にも取らせよ」
「いいですね。7人になれば、もう1夜、増えるのかな?」
「そー…です…かね?最後が3人になるから。そうじゃないですかね」
「お、面白そうだな。7人人狼。ぜひ姫冬ちゃんにもアプリ取ってもらってください」
「わかりました。あ、でもあの子、講義中に友達とやりそうだな…」
「たぶん僕たちも講義中やりますよ」
「まあぁ~…たしかに?フィンちゃん来たらやろうよ。って言われるだろうしなぁ~」
「あと鹿島がいるときもきっとやりましょってLIMEありますよ」
「たしかに。そしたら私もノリノリでやりそう」
「でも最低でも6人でやりたいですよね」
「たしかに」
そんな話をしていると
根津家が入っているマンションのエントランスを通り過ぎ、音成の家の前についた。
「まさか今日6人揃うとはね」
「な。こんななんでもない日に」
「そうそう。ほんとなんでもない日だよね」
「金曜とかなら、あの後飲み行ってカラオケ行って終電で帰るみたいのできたのにな」
「ほんとそれ」
「でも明日の講義サボる前提なら行けましたけどね」
「お、妃馬さん意外とヤンチャな発言するんすね」
「怜夢さんもでしたけど、私ってそんな真面目なイメージあります?」
「うん。サキちゃん真面目そうだよ?」
「それ恋ちゃんだけには言われたくないな?」
「たしかに」
「たしかにな」
4人で笑った。
「じゃ、3人ともまた明日ね」
「おう。匠は行くかわからんけどな」
「あ、そっか」
「恋に会いに行くよ」
「キャー!たっくん!」
「あぁ~。これは振ったオレが悪い」
「ほんとですよ。怜夢さんのせいで胃もたれが…」
「ちょっと。誰と誰のやり取りが胃もたれするのさ」
「匠と音成」
「恋ちゃんと小野田さん」
音成に手を振り、今度はすぐそこまで妃馬さんを送り届ける。
「ラブラブすぎません?」
「ですよね」
「いや、さーせん」
「小野田さんいつから恋ちゃんのこと好きだったんですか?」
「いつから。そうですねぇ~。恋愛的に好きになったのは大学1年のころかな」
「そうなんですね」
「ちょっと気分落ちてるときがあって
そんときに励ましのLIMEくれたりとかアニメとか教えてくれて」
「あ、もしかして匠にアニメ教えたのって」
「うん。恋だよ」
「そうなんですね」
「そーなんだ?」
「まあ、正確に言うと、こんな沼あるんだよって言われただけで
オレがどんどん沼に喜んで入ってったって感じ」
「気分落ちてるときってあれですか?」
「あ、もしかして怜夢から聞いてます?」
「…鬱…?」
「あーですです。音成のお陰で鬱から抜け出せたっていうか、まあ、そんな感じです」
「でもそこから今年まで全然なにもなかったんですね」
「そうですね。ちょくちょくLIMEはしてたんですけど
やっぱ鬱ってどうも完治してないっていうか。
こうたまにひょんなことで気分落ちちゃうんですよね」
「あぁ~」
「なんで、まあ、時間かかりました」
「でも恋ちゃん嬉しそうで良かったです」
「ま、胃もたれするからあんまいちゃつかないでほしいけど」
「ちょっと」
3人で笑う。
「じゃ、妃馬さんまた」
「はい。小野田さん怜夢さん。また明日」
「また明日、あとでLIMEでも」
「ですね。あとでLIMEでも」
手を振って妃馬さんと別れ、匠と駅へと歩く。2人でホームで電車を待ち、電車に乗り
「んじゃ、またな」
と匠に言って電車を降りる。玄関の扉を開く。
「遅かったねぇ~」
母が言う。
「あ、うん。LIMEすればよかったね」
「え。もしかして夜ご飯いらない?」
「あぁ、違くて。少し遅くなるって」
「あぁ。で、夜は食べるのね?」
「はい。いただきます」
洗面所で手洗いうがいを済ませ
家族を待たせてしまっていたので着替えず、そのまま夜ご飯を食べた。
お風呂を作ってその足でそのまま部屋に戻り、部屋着に着替えた。
洗濯物を洗濯籠に入れ,リビングで寛ぐ。
お風呂ができた合図がして各々のタイミングでお風呂に入り
各々のタイミングで部屋に戻った。
ベッドに腰掛け、ポケットからスマホを取り出し、ホームボタンを押す。
妃馬さんからの通知に加えて音成、妃馬さん、姫冬ちゃん、森本さん
鹿島、匠、僕の7人のグループLIMEの通知もあった。
妃馬さんへの返信を済ませ、グループLIMEを開く。
すると妃馬さんから今日撮ったプリント カンパニーの写真が送られていた。
姫冬ちゃんはそれを見てすごく羨ましがっていた。
テレビを見ているとスッっといつの間にか眠りについていた。
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