猫舌ということ。

結愛

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親友の新しい1歩

第137話

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そこから火水木金と妃馬さんに言った通り
過ぎるまでは「あぁ、まだ火曜日か」とか思っていたが
振り返ればあっという間に過ぎ、土曜日、朝ご飯を家族で食べる。
13時に冷袋(ヒエブクロ)で待ち合わせだったため、12時頃家を出ると伝え
1人でお昼ご飯を食べるつもりだったが9時に朝ご飯を食べたため、全然お腹が減らず
結局お昼ご飯を食べずに家を出た。
電車に乗り、乗り換えをし、冷袋(ヒエブクロ)のアナウンスが流れる。
電車の速度が落ち、止まる。ホームに降り、階段を下りる。
階段を下りると、とんでもない階段の数があることに気づく。
迷いそうだなと思ったが案内通りに進むと東口が見えた。改札を出て、階段を上る。
広い歩道の奥に道路が見える。
出てすぐの壁の辺りで。というふんわりした待ち合わせだったので歩道に出て振り返る。
黒いロングスカートに
胸の辺りに英語がプリントされているTシャツをインした栗色の髪をした女性が目に入る。
待たせてしまった。と思いイヤホンを外し、駆け寄る。
「すいません!お待たせしました!」
すると妃馬さんがスマホから顔を上げる。
「おぉ!あ、全然待ってないので大丈夫です。なんならいつも私が待たせてる側なので」
「いや、そんなことはないですけど」
「じゃ、行きましょうか」
「ですね」
妃馬さんと一緒にanimania(アニマニア)へ向かう。
結果、迷った。道をまっすぐ進み、左に曲がる。
そのまま進むがどこにもanimania(アニマニア)は見当たらない。
途中で止まって、妃馬さんが調べてくれる。
すぐそこに広場があって、その斜向かいだということで広場へ歩く。
その広場で辺りを見回す。
すぐに青ベースに白文字のなぜか「i」だけが黄色の看板の縦長のビルが目に入った。
「あ、あった」
「ほんとだ」
妃馬さんは音成や森本さんの付き合いで来たことがあるらしいが僕は初めてだった。
なぜか緊張する。
カプセル自動販売機が置いてある店頭を通り過ぎ、入り口から中に足を踏み入れる。
感想としては、すごく異質な本屋さんだった。香りは本屋さんのそれと変わりない。
ただ客層が普通の本屋さんではない。
お客さんの纏うオーラは一般人のそれとは違って感じた。
各階を回り、お目当てのコーナーを見つけた。
最終日だったが、そんなに人はおらず
事前に匠から教えてもらったキャラのキーホルダーを妃馬さんと買った。
その後なんとなくマンガコーナーを見て回った。
少年マンガは見たことあるタイトルも多かったが
その他は聞いたことも見たこともないタイトルばかりだった。
さすがオタクのホーム。そう感じさせる場所だった。青いビニール袋を片手に建物を出る。
カプセル自動販売機のある広場で止まり、妃馬さんがスマホをタプタプする。
僕はなぜか青いビニール袋を少し開いて中を見る。
透明なビニールに包まれたキーホルダーに冊子のようなものも入っている。
レジでお金を払って買うときに青いビニール袋に
慣れた手付きで当たり前のように商品を入れる前に冊子を入れてくれたのだ。

これが鹿島が言ってたゲームのコードなのか?

と思う。すると妃馬さんが
「あ、この近くに1軒あるっぽいのでまずそこ行きましょ」
と歩き出す。
「りょーかいです。行きましょ」
そう言いながら妃馬さんの後をついていく。
少し歩いてビルの中に入り、様々なお店がある中に雑貨屋さんは複数あった。
しかしどの雑貨屋さんを探しても猫のスマホケースはいくつも見つかったが
フクロウのスマホケースは1つも見つからなかった。ビルを出る。
「きゅーけー」
妃馬さんが言う。スマホを出して、ホームボタンを押す。15時38分。
休憩には少し遅いが僕も休憩したいと思っていた。妃馬さんがスマホをタプタプして
「あ、ちょっと歩きますけどいいですか?」
と言うので
「もちろん。行きましょ」
そう言って2人で歩く。たしかにしばらく歩いた。
「あ、ここですここです」
と指指す妃馬さん。指の先にはカフェがあった。2人でお店に入る。
ショーケースにはプリンが並んでいた。
「ここプリンが美味しいらしいです」
「おぉ~」
2人でショーケースに近寄って眺める。
この間のシュークリームが有名なお店のように味が様々あった。
少しの間、妃馬さんとショーケース前に
オモチャを買ってもらえない子どものように座り込み
ようやく決めて、お互いそれぞれ注文する。
そのお店はテラス席はなく、店内の席だけだったので2人で店内の席に座る。
「あ、やっぱり怜夢さんプレーンにしたんですね」
「あ、そうですそうです。妃馬さんはー…」
「ほうじ茶にしてみました」
「ほお。ほうじ茶。渋いっすね」
「そーですー…でも最近コンビニスイーツとかでもほうじ茶とかありますよ?」
「あ、そうなんですか?」
「ですです。ロールケーキとか、それこそシュークリームとか」
「こないだのお店ほうじ茶ありましたっけ?」
「あぁ~…どうだったかな」
「コンビニのシュークリームはって話ですもんね?あるんですね。知らなかった」
「今も売ってるかはわかんないですけど、ありましたよ」
「今度覗いてみよ」
そんな話を終え、プリンを食べ始める。
プラスチックのスプーンでガラスの容器に入ったプリンを掬う。口に運ぶ。
滑らかな口あたりに卵の香りというのか
もちろんコンビニのプリンやプチップルンプリンも美味しいのだが
なんというか、自然な味というか、高級な美味しいプリンという感じで美味しかった。
「「んん!美味しい!」」
妃馬さんとハモった。顔を見合わせて笑う。
「なんかこう滑らか?な感じですね」
「そうそう!こう…んん~…表現が難しい…」
「わかりますわかります。こう…溶けるとはまた違って…こう…」
身振り手振りを加えて説明しようとするが
「あぁ、難しい」
どうも表現できない。
「わかりますわかります」
容器もそんなに大きくないので必然的に内容量もそんなに多くない。
そのため、そんなこんなで食べ進めるとあっという間に半分までいった。
「「…良かったら」」
自分の声ともう1つ声がすることに気づくまで少し間があった。
妃馬さんとハモったことに気づいて妃馬さんと顔を見合わせて笑う。
「2回目」
妃馬さんが笑いながら言う。
ただ「2回目」と笑顔で言っただけなのにその言葉と表情にドキッっとした。
その後妃馬さんと容器を交換して、ほうじ茶のプリンを一口口へ運ぶ。
ほうじ茶の香りが鼻に抜け、お茶の苦さはなくほんのり甘く、口あたりは滑らかで
本当にプレーンのプリンとほうじ茶の良いとこ取りをしたという感じだった。
「うん!美味しい!」
「あ!美味しい!」
さすがに今度はハモらなかった。
その後なんでもない話をしているとあっという間に
ガラス製の容器にはプリンの欠片しか残っていなかった。
妃馬さんはミルクティー、僕はレモンティーを飲む。
グラスも氷だけになったところでお店を出た。
その後も何軒か雑貨屋さんを見て回ったが、どこも猫のスマホケースは容易に見つかるものの
フクロウのスマホケースは置いていなかった。
スマホで時間を確認するといつの間にか18時を回っていた。
「帰りましょうか」
「そうですね」
駅に向かって歩く。
「フクロウの時計とかはあったのになぁ~」
「あぁ、あの掛け時計と置き時計のやつ」
「木彫りなのかな?可愛かったですよね」
「なんか山荘とかに置いてありそうですけどね」
「たしかに。猟銃とか掛かってる感じね」
「めっっちゃわかる」
「怜夢さんて小説とか読みます?」
「まあ、たまに読みますね。最近は本屋さん自体あんま行かないですけど」
「学生時代とかは?」
「中高も同じ感じかな。まあ、他の男子よりは読んでたかな?って感じです」
「そうなんですね」
「なんでですか?」
「いや、木彫りの置き時計とかで山荘って出てきたから」
「いや、あれは本読んでなくてもイメージありません?それこそドラマとかで」
「まあ、たしかに」
「お?天然かな?」
「違いますー」
そんな話をし、駅について改札を通り、ホームで電車を待ち、電車に乗る。
乗り換えをし、井の蛙線の電車に乗り、妃馬さんの最寄り駅で降りる。
いつもの妃馬さんの家への道を2人で歩く。
「そういえば今思い出したんですけど」
「ん?」
「あの、カフェ行く前。妃馬さん時間確認しました?」
「しー、ましたね」
「3時半とかだったかな?僕も確認したんですけど
animania(アニマニア)に結構長いこといたんですね」
「あ!それ私も思いました!」
「あそこ時間の感覚が変になりますね」
「2時間近くいたんですよね?」
「かーな?1時に冷袋(ヒエブクロ)駅について
10分?20分?くらいかかってanimania(アニマニア)行って
スマホケース探し終えて3時半とかでしょ?」
頭の中でざっくり計算する。
「うん。まあ2時間くらいか」
「めちゃくちゃいましたね」
「知らんマンガばっかだったので、ちょっと物珍しさから時間早く感じたんですかね」
「そうかもですね。たしかにハマったら抜け出せそうにないですね」
「無理でしょうねぇ~…。匠が良い例です」
「沼にハマった」
「ですね。天国だって言ってますけどね」
「あぁもうダメだ」
「そもそも抜ける気もないですからね」
「恋ちゃんも割とだからなぁ~」
「カップル揃ってオタクとは」
「お似合いですけどね」
「そうなんですよねぇ~」
「あ!そうだ!気づきました?」
「なんですか?」
「小野田さんネイル男子じゃないですか」
「はいはい」
匠は白髪ピアスマンでメイク男子なだけでなくネイル男子でもある。
髪同様、爪も白く塗っている。
「恋ちゃん好きな色が青なんですけど、小野田さん付き合いだしてから
白と青のハーフにしてるんですよ」
「え、マジっすか?気づかなかった。てか気にしてなかった」
「自分でやってるらしいですね」
「あぁ、それはそうですね。金あるんだからネイルサロンとか美容院とか行けばいいのに」
「たしかに。器用なんですね」
「絵もうまいし」
「顔良いし」
「運動できるし」
「お金持ちだし」
「なんなんあいつ」
良いとこ言っていて良いとこがありすぎて「なんなんだあいつ」となる。
「恋ちゃんもね、可愛いし」
「オタクだし」
「一途だし」
「身長低いし」
「え、怜夢さんそれ褒めてます?」
「まあ、貶してはないですよ?」
「身長低いしって」
と言いながら笑う妃馬さん。
「いや、背低いの可愛いじゃないですか」
「小っちゃい子が好きなんですか?」
「はい…いや、その言い方は語弊生まれますよ」
「ん?…あ、たしかに」
妃馬さんが笑い、それを見て僕も笑う。
そんな話をしているといつの間にかいつもの曲がり角に差し掛かり
その角を曲がると根津家の入っているマンションのエントランスが見える。
「今度は~…」
「真新宿?」
「ですね。でもあそこも広いからなぁ~」
「そうなんですよね。横に広いというか」
「真新宿に服飾の大学あるの知ってます?」
「知ってます知ってます」
「あそこ友達行きました」
「え!私の友達も行ってます!」
「マジですか!?」
「マジですマジ」
「あそこすごいらしいですね。人が」
「あ、めっちゃ多いらしいですよ」
「ニャンスタで見ましたけど、食堂とかすごかった」
「あ、私も見たかも」
「うちの大学の倍くらいありました」
「え!ヤバッ!ほんとです?」
「割とほんとです」
「すごー。今度ニャンスタで見てみよー」
「うちもそんな狭くはないんですけどね」
「広いと思ってました」
「ね。意外と人も多いし」
「そうそう。でもあそこは海外からも来るらしいですよ。なんか世界でも有名らしいですよ」
「あ、そうなんですね。すげー」
エントランス前にはとっくについていたが会話が終わらず、エントランス前で話し続けた。
「じゃあ、今度は真新宿ですね」
「ですね」
「あの大学もお邪魔します?」
「覗いてみますか」
2人で笑う。
「じゃ、また、えぇ~」
「月曜とあとでLIMEでですね」
「月曜か。そうかそうか。じゃ、また月曜とあとでLIMEで」
「はい!」
笑顔の妃馬さんにドキッっとする。手を振ると笑顔で振り返してくれる。
いつものことだけど、だけど嬉しい。踵を返し、駅へ歩き出す。
電車に乗り、家へ帰る。家で家族で夜ご飯を食べ家族団欒
各々のタイミングでお風呂へ入り、各々のタイミングで部屋へ戻った。
その夜は鹿島からの実況のお誘いもゲームのお誘いもなかったので
テレビを見ながら眠くなったら眠りについた。
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