猫舌ということ。

結愛

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親友の新しい1歩

第133話

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「水族館行ったのは知ってるよね?」
「うん。音成のニャンスタ見たから」
「そう。水族館行っていろいろ見て、その後予約してたお店でご飯食べたのよ」
「予約?」
「高級店?」
「いや、別に高級店ではない。
でも美味しくて人気だから要予約ってネットに書いてあったから予約して
そこでご飯食べて春色橋に歩いて行ったのよ」
「春色橋?」
「ほお」
なぜか聞いてるだけなのにドキドキしてきた。
「春色橋っていう、ちょっと歩いたとこに橋があってね。
運良くその日天気良くてさ、スカイタワーも含めて夜景がまあ綺麗なわけよ」
「いいねぇ~」
鹿島はニヤニヤしながら声を上げ、僕は声に出さずに頷く。
「んでそこで、まあ、告白したわけですよ」
「なんて?」
「いや、まあ、そこはいいやん」
「えぇ~気になるけど…まあ、で?」
「まあ、付き合ってくださいって言ったら
まあ、はい。こちらこそよろしくお願いしますと」
想像してたら嬉しさとドキドキと
匠の立場になったときの告白が成功した安堵感で自然と口角が上がっていた。
「ヒュー!」
「良かったな」
「うん。マっ…ジで嬉しかった」
「いやぁ~なんか親友としてめっちゃ嬉しいんだけど
このリア充のこのなんか…この感じ腹立つ」
「怜ちゃん、わかる」
「なんでよ」
「で?その後は?」
「その後?」
「告白した後」
「いや、帰ったけど。そのまま」
「あ、そうなんね」
「なに?」
「いや…キスとか…したんかなーって」
「どストレートに聞くな」
鹿島のストレートさに思わず笑う。匠も笑っていた。
「いや、してないよ。手繋いで帰ったけど」
「っ…ふぅ~…」
鹿島が息を吐きながら天を仰ぐ。
なにしてんねん!と思うかもしれないが僕もその気持ちがわかった。
ド青春してるな。と思い、僕も息を吐いた。
「最高かよ」
「な」
鹿島に同意する。
「恋バナ…ってさぁ」
「うん」
「彼女できたら別枠な気ぃしない?」
「鹿島…わかる」
「だよね!」
「リア充枠とリア充になりたい枠で恋バナの…なんつーの?テイストが違う」
「それ!テイストが違う」
「リア充なりたい枠の恋バナは誰が好きーとか
デートはどこ行くーとか、いつ告白するーとかだけど
リア充枠はいつなにしたとかどこ行ったとか、起こったことを後日報告的な恋バナよね」
「わかる!それオレがめっちゃ言いたいことわかってる!」
「京弥日本語崩壊してる」
匠が笑う。いつもの笑顔だが、告白成功の話を聞いて
気のせいかもしれないけど、いつもより明るい笑顔に思えた。
「じゃあ、次は鹿島の恋バナかな?」
「ねぇよ」
鹿島が笑う。
「お風呂やってくるわ」
匠が立ち上がり、お風呂場へ向かう。
「いやぁ~幸せそうだな」
「だねぇ~」
背中からも幸せオーラが滲み出ている気がした。
匠がお風呂場へ消えて、出てくる。鹿島と僕の視線に気づいて
「え?なに?」
と半笑いでこちらへ歩いてくる。
「いや?幸せそうな背中だなって」
「ねー」
「ねー」
鹿島と顔を見合わせる。
「なに幸せそうな背中って」
半笑いでソファーに座る。
「なんだろうね。滲み出てた」
「そうそう。もわぁ~っと」
「もわぁ~?なんか臭そうじゃない?」
「え?そお?」
「たしかに臭そう」
匠と僕で笑う。鹿島も釣られて笑う。軽快な音楽と共に
「お風呂が沸きました」
とAIのような女性の声がお風呂場からする。
「さーいしょーはグー。じゃーんけーん…」
「「「ぽんっ!」」」
「ほんなら行ってきまーす」
匠がお風呂へ向かう。しばらくして髪にタオルをターバンのように巻いた匠が出てきて
次は僕の番。お風呂へ行き、体を洗い、髪を洗って
湯船に浸かりながら、匠が点けっぱなしにしていたテレビを見て
僕もそのままテレビをつけたまま、脱衣所に半身を出し、バスタオルを取って
髪をガシャガシャしてある程度の水分を飛ばし、体を拭いて、部屋着に着替えて
脱いだ下着のパンツ、普段着を持ってリビングへ戻る。
「バトンターッチ」
こちらへ向かって歩いてくる鹿島が右手を挙げていたので僕も右手を挙げ
すれ違うときにパチンと手を当てた。
そして鹿島がお風呂から出てきて、リビングで少し話をしていた。
「屋上行きまっしょい!」
番組終わりに急に鹿島が言う。
「なに急に」
「いいからいいから。あ、2人で先に行ってて」
?と思ったがテレビを消して匠と2人で屋上に向かう。屋上への扉を開ける。
涼しくも暖かくもない常温の風が体にあたる。
「もう夏が近づいてるんだなぁ~」
「わかる」
「もう自然乾燥にしよ」
そう言い頭にターバンのように巻いていたバスタオルを取る匠。
水分で毛束としてまとまった綺麗な白い髪が落ちる。
「乾くのどんくらいかかるん?」
「いつも?んん~…わからん。いつもこうやって巻いて
寝る前に取ってもまだ湿ってるから
諦めてバスタオル枕の上にひいて寝て、起きたら乾いてるから」
「マジか。でも湿ったまま寝たら髪爆発せん?」
「いや。長いからかな」
「あぁ~。それあるな。オレ湿った状態で寝たら凄いことになるもん」
「わかるわかる。中学高校のとき朝大変だったことオレもあった」
「はいはい。わかるわかる」
中学、高校時代の話で盛り上がるかな?と思っていたら
ガチャッっと扉が開く音がして、匠と2人で扉のほうに視線をやる。
「おっ待たせー」
鹿島が片手に湯気のたったお皿を、もう片手には取り皿を3枚重ねて持っていた。
「え、なに?」
「またなんか作ってきたん?」
「いや、実はさっき夜ご飯作った時に作ってたんよ」
「え?なに?」
「じゃーん」
鹿島は湯気のたったお皿を胸の下の高さにして中を見せる。
「お赤飯?」
「大正かーい!」
「告白成功記念?」
「お祝い事はお赤飯でしょ。はい取り皿」
「お、ありがと」
「さんくす」
鹿島がポケットからお箸を出す。
「お前ポケットから」
思わず笑う。
「まあいいけどね」
「まあ、オレも別に気にしないけど」
「あぁ、ごめんごめん」
「いや、オレらは別にいいんだけど」
「そう。でも潔癖症のやつだったら泡吹いて倒れてるぞ」
「そんな!?」
匠と2人で笑う。鹿島も釣られて笑う。各自取り皿に取って
「「「いただきまーす」」」
一口食べる。ささげの豆の香り、塩の塩味、胡麻の風味が広がり、誕生日感がすごかった。
「え、しょっぱ」
「え?」
「お赤飯って甘いんじゃないん?」
「え?」
「しょっぱいん?」
「え、普通じゃない?」
「うん。普通に美味しいと思うけど」
「あ、不味いわけじゃなくて。美味しいんだけどさ。
うちのお赤飯と違ってビックリしただけ」
「え、匠ちゃん家のお赤飯は違うの?」
「うん。うちはこの豆が甘納豆で甘い」
「え!マジ?」
「全然想像できん」
「小さい頃からそうだった」
「え、今度食べてみたい」
「わかる。気になる」
「11月かな?」
「遠いなぁ~。覚えてるかな」
「匠の誕生日とお赤飯をセットで覚えれば、思い出すよ」
「なにその世界史的な覚え方」
「たしかに」
「世界史懐かしい」
3人で笑う。その後もくだらない話をしていた。
「あ、オレトイレ行ってくるわ」
「あいあーい」
「いてらー」
階段を下りて、2階のトイレに行った。用を済ませ
屋上へ帰ろうとしたとき、ふと思いつき、1階へ下りた。ガチャッ。扉を開ける。
「はい。これ」
鹿島にお酒の缶を渡す。
「おぉ、ありがと。持ってきてくれたん」
「はい。匠」
「おぉ、さんきゅ。それで長かったんか。うんこかと思ってた」
「6本全部持ってきたん?お疲れ様ですぅ~」
「え、どうやって扉開けたん?」
「片方の3本を扉の脇に置いて開けたけど?」
「あぁ」
「第三の腕があるんかと思った」
「モンスターか」
「いや、第三の腕は男子なら持ってるぞ」
「第三の足じゃなくて?」
「ど下ネタど下ネタ」
カペリプシュッ。プルタブを開け
「じゃ、とりあえず、匠ちゃんおめでとー!」
「おめでとー!」
「ありがとー!」
3つの缶が中央で合わさる。
アルコールの味がほのかに感じる、でも極限にジュースに近いお酒だった。
「あぁ~、ひさしぶりに飲んだわ」
「オレもだわ~。やっぱ2人とも家でも飲まない?」
「そうな。飲まないな」
「飲まない」
「オレも誕生日のときとかイベント事のときだけかな」
「同じ同じ」
「オレも同じだね。クリスマスとかもちょっと飲むね」
「匠ちゃんイベント続くよね」
「ん?」
「11月11日に誕生日で12月25日にクリスマス」
「あぁ~そーゆーこと」
「10月終わりにはハロウィンだしな」
「ハロウィン…縁ないわぁ~」
「オレもー」
「え?鹿島も?」
「京弥は毎年甘谷行ってると思ってた」
「わかるわかる」
「いや、匠ちゃんはまだしも、行くとしたら毎年怜ちゃん誘うよ。
その誘いない時点で気づいてよ」
「たしかにな」
「甘谷は~…行かんね」
「行ったことは?」
「ハロウィンのとき?1回だけあるね」
「どうだった?」
「二度と行きたくないって思ったよ」
「だろうね」
3人で笑う。
「オレテレビで見てても行きたいって思わないもん」
「わかる。行ってる人たちは楽しいんだろうけどね」
「いやぁ?オレ行ったけど、二度と行きたくないって思ったもん。
だからオレみたいに興味本意で行って
「もう二度と行かん」って思ってる人も多いと思うよ?」
「あぁ~たしかに。多いかもな。行って後悔してる人」
「痴漢とかスリも多いらしいよ?」
「え?日本?」
「それな。でもさ、2人ともテレビで見たならわかるだろうけど
密集度すごいじゃん?だから少し触っても
「あぁ当たったのかな?」って思うくらいだから、被害報告ない痴漢めっちゃ多いと思うよ」
「え?やられました?」
「してないわ!」
3人で笑った。
「匠ちゃん髪だいぶ乾いた?」
鹿島が匠の髪を触る。
「いや?まだちょい重い気がする」
「あぁ、まだちょい湿ってる」
「もうプリンになり始めてるからブリーチしないと」
「え、見して」
鹿島が匠の髪の根本を見る。
「え、こんだけやん」
「白だと目立つんよ」
「まあ、オレも髪明るいから気持ちはわかるけど」
「怜夢はいいな。そんなん気になんないで」
「まあね。楽だね」
「あのさ、あの怜ちゃんの金髪あったじゃん?あのときはどんな経緯で金髪にしたの?」
「え。いや別に高校生特有の夏休みだし
金髪にしてみっかってノリで」
「そうそう。匠金髪にしたらどんな感じなん?とか怜夢こそどんな感じなんだろ?って話で
じゃあ、金髪してみっかってことで
一緒にホンキ(ホンキオーテの略称)にブリーチ剤買いに行って、その日にやった」
「でも似合ってたね」
「そうなんよ。似合ってたのに」
「いや、それこそプリンが気になって。
1ヶ月も金髪してなかったけど、そのときですら気になったから」
その後も髪色トークを続けた。
「匠ちゃん音成さんと付き合ってなんか変わった?」
「んー。いや、特に変わってないかな」
「まあ、まだ1週間も経ってないしな」
「あれは?呼び方とか。小野田くんだったじゃん」
「あぁ、呼び方ね。オレは恋って呼ぶようになった」
「フゥ~」
「フゥ~」
匠が音成を名前で呼んでいることがなぜか嬉しく、どこか恥ずかしく、むず痒かった。
「音成さんは?音成さんは?」
「…たっくんって呼ばれてます」
「フゥー!」
「フゥー!」
口角が上がるのが止められなかった。
鹿島と一緒に匠を挟むように肘で匠の脇腹をつつく。
「はぁー!羨ましいー!」
「リア充めー」
「2人はどうなん?」
「どうって?」
「京弥は森本さんと。怜夢は妃馬さんと」
「どうって…」
「ねぇ?」
鹿島と顔を見合わせる。
「進展は?」
「いや、オレはそうね…いや、まあ、趣味友って感じかな?」
「そうなん?」
「いや、爆裂に可愛いし、爆裂に美人だよ?でも好きかどうかはわからん。いや!好きよ?
めっちゃ仲良くしてもらってるし、話も合うし」
「恋愛としてはまだわからんと」
「まあ、そうね」
「でも付き合えるなら付き合いたい?」
「ぐぅ~…ぎぎぎ…そう…ね」
「酒の力だ」
「酒の力で動かない機械が動いた」
「あぁ、さっきのギギギって機械が動いた音なんや?」
「そうそう。京弥の喉のシャッターが開いた音」
「ちょ、勝手なこと言わんで?そんなこと言ってる怜ちゃんはどうなん?」
「そうね。妃馬さんと」
「どうって…。まあ、仲良くさせてもらってますよ」
「スマホケースいいのがないんだってね」
「音成情報か?」
「そうそう」
「スマホケースねぇ~…いいのがないのよ」
「フクロウのがないらしい」
「フクロウのスマホケース?たしかに見ないねぇ~」
「妃馬さんの好きな猫のスマホケースはめっちゃあるんだけどね」
「猫のスマホケースはよく見るわ」
「ロストでも猫のスマホケースは5個くらいあった」
「フクロウのスマホケースはゼロ」
「そう。nyAmaZon(ニャマゾン)にはあるんだけど」
「でも現地で探したいんよね」
「正解」
「楽しそうね」
「でも鹿島も森本さんと楽しくゲームとかしてんだろ?」
「そうね。今はスプラタウンやってる。
で、なんか一緒にできるゲームないですかねって探してるとこ」
「そっちも探してんのか」
「たしかに」
恋バナやなんでもない話をしているうちに3人とも2缶が空になった。
スマホを取り出し、ホームボタンを押す。妃馬さんからの通知。時刻表示は0時54分。
「もう1時じゃん」
「お、もう1時か」
「じゃ、ホラー鑑賞しますか」
「行きましょう」
「ま、今日は恋愛映画でもいいけどね」
「野郎3人で?」
「キュンキュンしようやぁ~」
「匠の名前呼びの話を越えるものはない」
「たしかにぃ~?」
「やめてください」
照れる匠と一緒の3人で1階へ下りる。その後、投稿映像のホラー作品を
リビングの大きなテレビでカーテンを閉め、家の中を真っ暗にして見た。
多少怖いものがあって、3人で肩を寄せ合って和室に行ったのが4時近くになってからだった。
布団を敷いて、3人「川」の字で寝転がる。
「恋バナ~…しようと思ったけど
匠ちゃんの名前呼びがキュンキュンすぎて、まだ味が残ってる」
「わかる。このガムまだ味する」
「そんな噛み締めるなよ」
「えっえっ、どんなさぁ、流れでさぁ
呼ぶ呼び方決まったの?ってどういうさぁ、どういうなの?」
「どういう質問なの?」
「えぇ~とね。告白して…なんかなんだろうね。なんか嬉しさで変な間が空いてさ」
想像できた。嬉しさと恥ずかしさから自然と口角が上がっている顔のまま下を向いたり
相手を見たり、景色を見たり。
「んで、ベンチで座って夜景とか川見ながら話してたのよ。
その話の中で「小野田くん」って呼ばれたから
できたらでいいから、呼び方変えてくれない?って
で呼び捨てはなんかあれだからってことで「たっくん」ってことになって
こっちが呼び方変えるんだから、そっちも変えてくれるんだよね?ってことで
オレも名前で呼ぶことになったんですよ」
「はぁ~いいわぁ~」
「恋バナってこうよな」
「な。高校のとき、同じグループのやつに彼女できたときの惚気話聞いてるときは
ゲボつまんなかったけど、親友の惚気話は聞けるもんだねぇ~」
「ちょっとムカつくけどな」
「まあねぇ~」
「ムカつかんで?」
「次どっか行く予定あるの?」
「今んとこないな」
「付き合って初めてのデート。さあどこへ行く」
「動物園とか」
「デートだねぇ~」
「大学生だから平日でも割と融通効くからねぇ」
「え、平日動物園?」
「ワンチャン」
「パンダ見て、人類を滅ぼし、パンダを増やす計画を立てたり」
「人類を滅ぼす?」
「まあ、パンダは人気だからねぇ~」
「でも平日動物園は笑うな」
「動物園からの…居酒屋?」
「キモい流れ」
「わかる」
「動物園からの~…なに?」
「ピクニックとか?」
「ピ ク ニッ ク」
一文字ずつ区切って笑う鹿島。
「ピクニックなんてデート以外にしねーだろ」
「女の子嬉しいんかな?ピクニック」
「でもお弁当必須よな」
「たしかに」
「ま、動物園デートは休日必須だな」
「かもねー」
「京弥なら初デートどこ行く?」
「んん~…そうだなぁ~…無難に買い物とかかな」
「ほおほお」
「買い物行ってー、まあ買う買わないはあれだけど
その後夜ご飯食べてーお酒飲んでー解散?」
「鹿島はいくとこまでいきそうよな」
「わかる」
「いや…。まあそれは空気によるでしょ」
「怜夢は?」
「オレも別に特別なスポットには行かないかも。
それこそピクニックじゃないにしても、ちょい遠出して町ブラして、ご飯食べたり
公園行って休憩したりかな」
「なるほどねぇ~」
「ちょっと遠出はいいかもね。それこそ深草とか」
「あそこ立派なデートスポットちゃうの?」
「え。そうなの?」
「知らんけど」
「買い物かぁ~。どこがいいかな」
「高いとこはあれだしねぇ~」
「匠ちゃんなら買えるでしょ」
「買える買えないでなしに」
「そんな高いもの買うことほぼないだろ」
「プレゼントでもちょっとねぇ~」
「まだ大学生だしな」
「社会人でも高いプレゼントって気が引けるよな。いや知らんけど」
その後もデートの話やそこから脱線していろんな話をしているうちに
3人ともいつの間にか眠っていた。

朝…昼起きて、3人横並びで歯を磨き顔を洗って
コンビニに行ってお昼ご飯を買ってお昼ご飯を食べた。
「さてー。なにしますかな?」
「どっか行くー?」
「今何時ー?」
スマホを取り出し、ホームボタンを押す。
妃馬さんからの「おはようございます?」のメッセージ。時刻表示、14時19分。
「2時半でーす」
「2時半かー」
「どーするー」
「どっか行くとしたらどこ?」
「んー。ダーツとか?」
「ダーツ?」
「なぜにダーツ?」
「いやわからんけど、行くなら大吉祥寺かなー
大吉祥寺だとしたらなにかなーダーツかなーって」
「あぁ~」
「ダーツかー。怜夢やってたっけ?」
「やってないね。あのぉ~卒業式の後の集まりでやったりしたよ」
「匠ちゃんは?やっぱ卒業式の後の集まりでやっただけ?」
「いや、オレらは卒業式の後ボーリングだったな」
「え、あ、2人クラス違うの?」
「高3のときは違ったな」
「あ、そうなんだ?」
「うん。だからクラス毎に集まってたから」
「匠ちゃんはダーツ経験なし?」
「いや?小学生?くらいのときはよく父とやってたよ?」
「マジ!?小学生から?」
「中学に入ってもたまにやってたかな。今もガレージにあるのよ」
「マジ!?」
「父と一緒にやってた。あとお兄ちゃんともやってた」
「マジかー強いじゃーん」
「強くない強くない」
「ボウリングとかダーツってなるとステージ1?」
「だろうね。ステ1(ステージ1の略称)大吉祥寺にもあるし」
「いくらなんやろー。そういや今日全然持ってきてないわ」
「まあ、匠のお祝い…というか、結果を聞くのが目的だったからな」
そんな感じでなんでもない会話を
見てもいないテレビをソファーにだらーと身体を預けながら眺めてながらしていただけで
あっという間に15時を過ぎた。
「3時過ぎましたぁ~」
「おぉ~マジかぁ~」
「夜どーするー?」
「いやいや、今日は夜には帰るよ」
「あ、そーなん」
「よしっ!」
もう少しダラダラしていたかったが
もう少し、あと少しとどんどん伸びそうだったので決意を固めて立ち上がる。
「布団を干そう」
「あぁ、そうね」
鹿島も立ち上がり伸びをする。匠も立ち上がり、3人で2階の和室の客室へ向かった。
それぞれ使った布団を持ち、1階へ持っていく。
匠が干す準備をしているうちに鹿島と2人で和室に戻り、掛け布団と枕を持って1階へ下りる。
敷き布団、掛け布団、枕を干し、部屋着から普段着に着替える。
「じゃ、月曜からは音成と匠が付き合ってると見ればいいのやな」
「なんで」
匠が笑う。
「これからは匠ちゃんのイチャラブトークが聞けると」
「なんで」
その後少し話をした後
「んじゃ、帰りますわ」
「ん」
「お邪魔しましたぁ~」
「あいあ~い」
荷物を持ち、玄関へ向かう。
「次のデートの話期待してまっせ」
「してまっせ」
「わかったから」
靴を履き、半笑いの匠のほうを向き
「んじゃ、またな」
「またね」
「お邪魔しましたー」
「お邪魔しましたー匠ちゃんまたね」
「あいあい~。ん。またね」
扉を開いて外に出る。手を振る匠が扉で隠れる。
鹿島と僕も手を振るのをやめて歩き出す。すると人用の両開きの門が開く。
「あら!怜夢くん?」
匠のお母さんだった。
「あ、どうも!おひさしぶりです」
「あら、そうか。昨日泊まってたんだもんね」
「はい。お邪魔させてもらってました」
「でー」
「あ、鹿島京弥です!匠くんとは大学で仲良くしてもらってて
昨日、今日と、あとこの間もお邪魔してました!」
「あぁ~そうそう。鹿島くんね!匠から聞いてた」
鹿島が「匠くん」と言ってるのが可笑しくて、笑いそうになるのを堪える。
「あ、はい!」
「もう帰るの?」
「あ、そうですね。もう帰ろうかと」
「夜ご飯食べてけばいいのに。って言ってもデリバリーだけど」
「あ、いえいえ。この間美味しいお寿司いただいちゃったので」
「あ、ご馳走様でした!」
「ご馳走様でした」
「あぁいーのよ全然。美味しかったでしょ?
あそこよく行くとこなんだけどウニが美味しくてね」
「あぁ!ウニめっちゃ美味しかったです!」
「でしょー?」
「でも匠は食べてなかったですけどね」
「あ、そうなのよ。あの子ウニ嫌いでね。私とか匡(キョウ)が食べちゃうのよ」
「あ、匡(キョウ)さんって匠のお兄さんね」
「あぁ」
「あれ?匡(キョウ)には会ったことないっけ?」
「あ、僕は数回程度…かな?」
「僕はないっす」
「そっかそっか。今彼女と暮らしてるから、こっちにはあんま来ないのよ」
「そーなんですね」
鹿島は無言で頷く。
「あ、ごめんね、こんなとこで長々と」
「いえいえ全然。ひさしぶりにお話できて嬉しかったです」
「僕も初めてお会いできて良かったです」
「じゃ、ぜひまた来てね。今度はみんなでご飯食べたいね」
「はいぜひ」
「ぜひぜひ」
「じゃ、気をつけて帰ってねー」
「はい。お邪魔しましたー」
「お邪魔しましたー!」
匠のお母さんに手を振って、匠邸の敷地から外に出る。
「匠ちゃんのお母さん綺麗な人だねぇ~」
「若いよな」
「お父さんは?」
「優しそうな感じの。あ、でも見た目は若い」
「へぇ~」
「でも鹿島のご両親も若いじゃん」
「それ言うなら怜ちゃんのご両親もね?」
そんななんでもない話をし、鹿島を駅まで送り、僕は歩いて家に帰った。
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