猫舌ということ。

結愛

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新鮮な日々

第121話

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駅まで音楽と共に歩き、改札を通ってホームへ入る。
ホームで音楽と共に電車を待っているとトントンと左肩を叩かれる。
ん?と思って振り向くとマスクでは隠しきれない美人オーラダダ漏れの
金髪でインナーカラーが赤の女の人が立っていた。一瞬で森本さんだとわかった。
森本さんはワイヤレスイヤホンを耳から取る。その様子を見て僕もイヤホンを取る。
「偶然ですね」
「ですね」
「これから大学ですか?」
「5限に向かいます」
「おぉ~僕もです」
「まあ、本当は4限あったんですけどね」
「サボりっすか?」
「ダルくて」
「わかりますわかります。僕も今日1限あったんすけど、無理すぎてサボりました」
「あぁ~1限はヤバいですよね」
「ヤバいっす」
「私結構1限あるんですけど、全然行ってないです」
「あぁ~同じだ」
なぜか妃馬さんと話すときより砕けた喋り方になっている気がした。
「暑ノ井さん1限何個あるんですか?」
「1限か…1、2、3、4、4個かな?」
「勝ったー」
「なんの勝負っすか」
つい笑みが溢れる。
「ちなみに森本さんはいくつっすか?」
「私3つ」
「変わんねぇ~」
「たしかに」
森本さんの目が細まる。マスクをしていても笑っているのがわかる。
駅構内にアナウンスが流れ、間もなくして電車が生暖かい風を引き連れホームへ入ってくる。
左右に分かれて降りてくる乗客待ってから電車内へ乗り込む。
席は複数空いていたが僕は座らず
森本さんには座ってもらい、その前に立っていることにした。
吊り革の掴まるプラスチックの輪の部分ではなく
その輪と鉄のパイプを繋ぐ「吊り革」を握る。
「あ、そうだ聞きましたよ」
「はい?」
「鹿島とぉ~…なんだけっけ。…あぁ!ポップアップショップ行ったって」
「はい!付き合ってもらいました」
「楽しかったみたいですよ~」
「そうですか。それは良かったです。付き合わせて悪いかなぁ~って思ったんですけど」
「いやいや、あいつもゲーム好きなので。ユナイテッド ハーツのやつですよね?」
「ですです」
「やったことはないらしいっすけどゲーム好きには変わりないので」
「鹿島さんはファンタジア フィナーレ派らしいですね」
「そんな派閥はないでしょ」
「まあ、そんなバチバチな感じではいですけど
2作とも長編の名作なので全作やるには
結構な時間がかかるのでどっちかって人が多いですかね。
割とファンタジア フィナーレ勢が多いですかね」
「そうなんですね?」
「ファンタジア フィナーレは、まあ、ストーリーの繋がりが薄いらしいので
どのシリーズから始めてもいいってのがやり易いですよね」
「あぁ、鹿島も言ってました。
ユナイテッド ハーツはシリーズ1つ飛ばしただけでわからなくなるとか」
「そ う で す ね?まあキャラの可愛さ、世界観だけを楽しむならいいんですけど
シリーズ通してのストーリーなので「?」ってなることはあるかもですね」
「じゃあ2作ともやってるってなると相当ですよね」
「そうですね。相当なゲーマーか、ちょっとだけかじってるにわかかどっちかですね」
「あぁ~その可能性もあるのか」
「にわかのくせして語るとかね」
「匠と似たようなこと言ってる」
つい笑ってしまう。
「あ、小野田さんってオタクらしいですね」
「鹿島から聞きました?」
「はい」
「でもあいつまだ自分は立派なオタクではないって言うんですよ」
「あぁ~、わかる~」
「わかるんだ」
「私もゲーム好きとしてまだ日が浅いので、ゲーマーとかゲーム大好きとは言い辛いですね」
その心持ちがある時点で一般人とは一線を画してる。と思ったが
そこは人それぞれの考えがあると思ったので

匠と意見だけは合うかも

という内心を言葉にはしなかった。
「意外と二次元オタクとゲーマーって近いのかな」
「近いかもですね」
そんな新鮮だけど少し砕けた雰囲気で終点まで話す。
終点で乗り換え、大学の最寄り駅で降りる。
「正味、この時間でもダルいって思いません?」
森本さんはだいぶ鹿島、匠寄りな考えだった。
「まあ、わかりますけどね」
「駅降りて大学まで歩く足が50kgあるんかってくらい重いときありますもん」
「あぁ、あるある」
「でもサキちゃんとか恋ちゃんに会えるから」
「それめっちゃ大事っすね」
「2人とも最近キラキラしてるから、見てて楽しいし」
「聞いたっすか?てか聞いてるか」
「あぁ、恋ちゃん?」
「そうそう」
「小野田さんね」
「そうそう」
「青春っすね」
「青春っすねぇ~」
正門が近づく。
「あ、オレコンビニ行くっすけど、行きます?」
森本さんに声をかける。
「お、いいですね。私もなんか買お」
森本さんとコンビニに寄り、僕はココティー(心の紅茶)のストレートティーを
森本さんはジャスミンティーとロールケーキを買っていた。正門から大学の敷地内に入る。
「ロールケーキ?なぜに今?」
「いや、講義中食べようかと」
「マジっすか!?」
とんでもないことをさらっと言う森本さんとそのとんでもない内容、両方に驚く。
「甘いもの食べたかったし」
「もしかして高校でもやってました?」
「やってましたね」
「やっぱり」
2人で笑う。
「早弁とか?」
「いや、それこそロールケーキ食べたり、ガム噛んでたり、スマホで話してたり」
「やれることやってますね」
「暑ノ井さんだってやってた方でしょ」
「まあ、真面目に授業受けてた記憶は少ないっすね」
「ほらー」
そんなことを話しながら、講義室に入る。先に妃馬さん音成がいて
森本さんと僕を見つけるなり、妃馬さんは「え?」という顔をしていた。
音成は「おっす」と言った具合に手を挙げる。僕もそれに応え、手を挙げる。
森本さんとは別れて、席を探す。
すると綺麗な白髪が目に入ったので匠の席に一直線で向かう。
匠はすでに僕に気づいていて、近づくと
「一緒だったん?」
と声をかけられる。
「そうそう。駅で一緒になった」
と匠の座っているイスと後ろのテーブルの間を縫うようにして匠の隣の席に座る。
「最寄り駅一緒らしいね」
「音成情報?」
「そうそう。森本さんの話になったときに猫井戸だって」
「そうらしいね。駅で一緒になって、ここまで来たってわけ」
「仲良くなったん?」
「んん~。どうなんかな?」
「まだ胸張って仲良くなったとは言えない感じか」
「そ う…だね?」
「てか森本さん髪色派手だよねー。電話のときから思ってたけど」
「誰が言う?誰が」
「もうこの髪色慣れちゃってさ」
匠が笑う。
「白慣れるかね」
「まあ、最初は白派手だなぁ~って思ったよ?
でも紫のときも派手だって思ってたし、紫のときに視線は慣れたから」
「あぁ。あんときはビビったな」
「大阪のおばちゃんか!って言ってたね」
「大偏見だよな。反省してるわ」
2人で笑う。すると少し早いが講師の方が入ってくる。
しかし早く講義を始めることはなく座ってスマホを眺めていた。
講義が始まる時間になってもスマホを眺めていて、少し時間が過ぎてからハッっと気づき
「えぇ~それでは講義を始めます」
と講義を始めた。匠は変わらずサティスフィーをし
僕もバッグからサティスフィーを取り出し、電源をつける前にスマホの電源をつける。
妃馬さんからの通知がある。

「小野田さん来てますよ」
「フィンちゃんと一緒だったんですか?」

そのメッセージの後に猫が驚いているスタンプが送られていた。
一度サティスフィーとテーブルの上に置き
妃馬さんからの通知をタップし、妃馬さんへの返信を打つ。

「来てましたね。すぐわかりました」
「たまたま駅で一緒になって」

その後、僕もフクロウが驚いているスタンプを送った。スマホをテーブルの上に置き
いつも通り講師の方に見えないよう太ももの上でサティスフィーを始める。
まずはあつまれせいぶつの森の日課をこなす。日課を終えて、スマホに手を伸ばす。
妃馬さんからの通知があり、太ももの上にスマホを持ってくる。メッセージを確認する。

「白ですからねw」
「偶然!大丈夫でした?」

そのメッセージの後に猫がオロオロしているスタンプが送られていた。
「大丈夫でした?」
思わず呟く。匠がチラッっとこちらを見たが何も言わずにサティスフィーを続けた。
なんのことだ?会話?そう考えながら通知をタップし、返信を打ち込む。

「まあ、たぶんこの大学に白髪は匠1人でしょうからねw」
「大丈夫…でした…よ?たぶん」

その後にフクロウが「たぶん」と言っているスタンプを送った。
その後サティスフィーをホーム画面にして、なにをやろうか迷った挙句
そもそもの選択肢が少なかったというのもあるがスプラタウンをやることに決めた。
スプラタウンを起動して、試合をするロビーに入る。
試合が始まり、終わる。両サイドに猫の右側が倒れ、左側の猫が旗を掲げる。勝った。
スマホをテーブルに取る。ホームボタンを押すと妃馬さんからの通知がある。

「でしょうねw他に見たことない」
「なんて言えばいいのかな…仲良く話せました?」

そのメッセージの後に猫が「?」を浮かべているスタンプが送られていた。
スマホの画面が暗くなる。スマホを太ももの上に移動させ、もう一度画面をつけ
妃馬さんからの通知をタップし、返信を打ち込む。

「うちの大学っていうか、他でも見たことないw」
「はい。割と砕けて話してくれました」

その後にフクロウが「GOOD!」と親指を立てているスタンプを送った。
トーク一覧に戻して、電源を切り、テーブルに伏せて置く。
太ももの上のサティスフィーでもう一度スプラタウンの試合をする。
その後も同じことの繰り返し。
試合を終え、スマホを取り、妃馬さんからのメッセージを読み返信する。

「たしかにwマンガキャラくらいですかねw」
「え!?ほんとですか!?良かったぁ~」
猫が「ほっ」っと胸を撫で下ろしているスタンプ。
「少年マンガとかの氷の攻撃するやつとかねw」
「ロールケーキ講義中に食べるから買いますとかw」
フクロウが驚いているスタンプ。
「いそういそうwあとはラブコメのお金持ち王子様とか」
「今まさに食べてますよwていうかみんなで食べてますw」
猫がケーキを食べているスタンプ。
「お金持ち王子様…まんま匠ですねw」
「マジっすかw僕も帰り買おうかなw」
フクロウが腕組みしながら考えているスタンプ。
「たしかにwでもイメージではクール系なんですよね」
「美味しいですよぉ~。私もひさびさに食べました」
猫が「うまい!」と言っているスタンプ。
「でも遠目から見れば匠もクール系だと思いますけど…」
「んでジャスミンティーでしょ?ちょっとしたお茶会ですよねw」
フクロウがティーカップを小指を立てて持っているスタンプ。
「でも話しちゃったからなぁ~…w」
「優雅にお茶会してますw私もレモンティー飲んでるしw」
猫が上品な表情で小指を立ててティーカップを持っているスタンプ。
「話しちゃったら印象違いますよね…w」
「ほんとだwレモンティー飲んでるwちなみに僕はストレートティーですw」
フクロウがティーカップを小指を立てて持っているスタンプ。
「ですねwクールっていうより
ぽやっとしてる感じ?w」
「ほんとだ!ストレートティーのほうが合ってるかもw」
猫が「ちょーだい」と言っているスタンプ。
「ぽやっとwやる気ない系男子ですからねw」
「レモンティーも合うんじゃ?」
フクロウが「あげる」と言っているスタンプ。

試合を終え、スマホを手に取り、画面をつける。
いつの間にか講義が終わる時間に近づいていた。
「匠、この後どっか行くん?」
太ももにスマホを移動させながら匠に聞く。
「いや。行かないけど」
匠もこちらを見ずに答える。
「あ、そうなん」
スマホの画面をつけ、妃馬さんからの通知をタップし
妃馬さんとのトーク画面へ飛び、メッセージを確認する。
「なんで?」
匠の質問に僕も匠に視線を移さず、妃馬さんからのメッセージを読みながら
「いや、この後どうすんかなって思っただけ」
と答える。

「そうなんですか?あと見た目だけで言ったら怜夢さんのほうがクール系キャラですよね!」
「レモンティーももちろん合いますけど、レモンの香りないほうが合いそうだなぁ~って」

そのメッセージの後に猫が「やったー!」と喜んでジャンプしているスタンプが送られていた。
「どうって…なに?」
「オレの方がクールキャラ?」
「は?」
「あ、いやごめん。なんでもないわ」
「ふぅ~ん。怜夢は?なんかあんの?」
妃馬さんに返信を打ち込みながら匠と会話をする。
「オレは~いつも通りかな」
「妃馬さんを家まで送ってから帰ると」
「なんで知ってん」
「音成から聞いた」
「あ~なる」
「下ネタやめて」
「違うから。てかやめてってか下ネタ大好きだろ」
「エロは世界を救うから」
「壮大な話だな」

「ですよw好きなこと以外やる気ない系男子ですよw僕ですか?」
「あぁ~。ただのクリームのロールケーキでしたっけ?」

その後にフクロウが「?」を浮かべているスタンプを送った。
「笑いは世界を平和にするから」
「なるほどな。そうそう。それについて聞きたかったんよ」
スマホの電源を切り、テーブルに伏せて置く。
「どれ?笑いが世界を救う話?それとも下ネタ?」
「いや、匠も音成を送ったりするのかなって」
「そーゆーことね」
「そーゆーこと」
「そうだね。送るよ」
「そうなると今日は4人か。もしくは5人か」
「森本さんもいるしね」
「でも森本さん送るやついねぇーからな」
空席に視線を送る。
「それな」
「それでは、今回の講義はここまでとします。お疲れ様でしたー」
いつの間にか講義終了時間付近になっており、少し早いが講義終了を講師の方が知らせた。
講義室内はざわつき始め、即座に講義室を出る人
ゆっくり帰る支度をする人、寝てる人、友達と談笑する人様々だ。
「今はなにしてんの?」
匠のサティスフィーを覗き込む。
「Strange My Life」
「おぉ!マジ?オレもやったよ」
「これ名作だよなぁ~。2もやった?」
「ふっ。3もやったぜ」
「マジか!今2なんだけどさ、いや…最高だね」
「変に続編じゃなくて、別ストーリー、別主人公って辺りがまた良いよな」
「わかる。今やってる2はさ、兄弟の話で
また年頃的に兄弟関係が難しい感じのを良い感じに取り込めてるよな」
「わかる。3もめっちゃおもろかったから2クリアしたらやってみ?」
「やるわ。ってかもう買ってあるんよね」
「さすがすぎる」
「一区切りとするか」
そう言って匠がサティスフィーの電源を切り、思い切り伸びをする。
「んんー!」
「じゃ、行くか?」
僕もサティスフィーの電源を切り、バッグにしまう。
一回スマホのホームボタンを押す。通知なし。
電源を切り、立ち上がり、スマホをポケットにしまう。匠もトートバッグを持ち、立ち上がる。
「行きますか」
2人で音成、妃馬さん、森本さんの元へ近づく。
「あ!怜夢さーん」
手を振る妃馬さん。この無邪気な感じに最初はドキドキしていたものの
今は…多少は慣れた。けどまだドキドキはしている。手を振り返す。
「おーとなしっ」
匠が「まー○のっ」のように声をかける。
「お、小野田くん」
どこか嬉しそうな音成。
「森本さん、ロールケーキはうまかったっすか?」
森本さんに声をかける。
「はい。どーぞ」
「?」と思うが森本さんがテーブルの上をスライドさせ、僕のほうに渡してくれたものを見る。
「え、いいですか?」
それはロールケーキだった。6個入りで2個残されていた。
「あ、オレも?」
と匠も驚く。
「はい。良かったらどうぞ」
「じゃあ、お言葉に甘えまして」
「甘えましょうか」
「じゃ、いただきまーす」
「いただきまっす」
匠と僕それぞれ手を伸ばし、口に運ぶ。
ふわふわの生地に甘く濃いけどしつこくないクリームが素晴らしくマッチしている。
「うん!うまいっす」
「うん。うまい。どこのこれ」
匠が包装を見る。
「あぁ~。へぇ~。こここんな美味いんだ?」
手に持っているココティー(心の紅茶の略称)のストレートティーのキャップを開け
口の中に注ぎ込む。ストレートティー上品な香りとロールケーキの甘さでかき消され
甘さは感じないが多少の苦味が口の中に残ったロールケーキの雰囲気を流す。
「一口」
匠が言う。
「ん」
匠にキャップを開けたままのストレートティーを渡す。
口をつけ、ストレートティーを流し込む。
「ん。さんきゅ」
「あいよ」
匠からペットボトルを受け取り、キャップを閉める。
「じゃ、帰りますーか?」
「帰りましょう」
そう妃馬さんが言い、音成、妃馬さん、森本さん、匠、僕の5人で講義室を出る。
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