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お泊まり会
第100話
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駅近くのコンビニで飲み物を買う。僕はココティー(心の紅茶の略称)のストレートティー。
鹿島はエナジードリンク。匠はソラオーラを買い、改札からホームに入り、電車を待つ。
自分の髪からいつも使っているシャンプーやコンディショナーじゃない香りが
体からもいつも使っているボディーソープではない香りがする。
このいつものお風呂上がりと違う香りが自分の髪や体からする感じが
旅行感をさせ、なぜかドキドキとワクワクさせ、矛盾しているがどこか安心感を与えてくれた。
バリバリバリと新品特有音をさせ、ペットボトルの蓋を開ける。
ストレートティーを口に流し込む。
春の夜の香りをストレートティーの香りが上書きする。
しかし深呼吸をするとすぐに春の夜の香りが鼻を支配する。
「ヤバッ。もうすぐ9時じゃん」
と匠が言う。すると駅構内にアナウンスが流れ、すぐに電車のライトが見える。
「駅降りてダッシュな」
「え?」
「9時にお寿司頼んだから」
「え、ヤバ。間に合うかな?」
電車が風を引き連れ、ホームに入る。
扉が開き、降りてくる人を待ち、電車に乗り込む。すぐに扉が閉まり
慣性の法則で3人とも同じ方向に蹌踉めく。
「この中で一番足速い人」
「あぁ~誰?」
「オレではない」
「じゃあ、オレか怜ちゃん?」
「オレより鹿島のほうが速そう」
「まぁいいや。とりあえず改札出たらダッシュで家向かって」
「マジか」
「オッケー」
「で、まぁオレも一応走るけど、一番足速いのはオレではないと思うから
一番最初にオレん家ついた人、お寿司受け取って?」
「オッケーオッケー」
「お金は?」
「あぁそれは大丈夫」
「あ、そうなん?」
すぐに隣の駅につき、早足でホームから改札へ行き
改札から出た瞬間、徒競走のピストルが鳴ったように3人で匠の家に向かって走り出した。
「はぁ…はぁ…はぁ…」
割りかし運動は得意な学生だったはずだけど、最近運動という運動をしてないため
しばらく走ったら、ペースが下がり、早歩きくらいの速度で息を切らす。
振り返ると僕と同じように息を切らしながら
腰に手をつき、夜空を見上げながら歩く匠の姿が見えた。
鹿島が先に行っているはずだが僕も一応急いで匠の家に向かった。
匠の家の前につくと人が出入りするようの両開きの扉の前で
3段に重なった寿司桶を持ちながら息を切らしている鹿島がいた。
「はぁ…はぁ…はぁ…」
歩きながら息を整え、鹿島に近づく。
「はぁ…はぁ…おつかれ…」
「はぁ…ふぅ。おつかれ」
なぜか僕より疲れてなく見える鹿島。
「はぁ…足…はえぇし…体力あんのな…」
「あぁ…はぁ…まぁ…な?元サッカー部だし、弟とたまにサッカーしてる…から…か…な?」
「え…はぁ…ゲームじゃないん…」
「もちろん…ゲームもやるけど、あいつサッカー部だからさ…たまに練習付き合うんよ」
良いお兄ちゃんだな。と思いながら膝に手をつき、息を整える。
背後から足音が聞こえてくる。
「おぉ~…おつかれおつかれ…」
歩きながら近寄ってくる匠。
「怜夢ー」
手を挙げる匠。
「あいあい~」
「いくよ~」
僕も手を挙げる。匠が鍵を投げる。キャッチする。
真っ白の革のキーケースに鍵が5本入っていた。扉に合う鍵を探し、扉を開ける。
飛び石のように配置されたタイルの道を進み、今度は玄関の扉に合う鍵を探す。
鍵は2つついており、片方だけ鍵を差し、回す。
扉を開けようとすると開かない。もう1つの鍵にも鍵を差し、回す。開かない。
「あぁ、ごめんごめん。上しかかけてないから、もう1回下開ければ開くよ」
言われた通り、下の鍵穴に鍵を差し、回す。扉を引くと開いた。
「はぁ~、帰ってきたぁ~」
「ただいまぁ~」
「ただいま~」
靴を脱ぎ、各々洗面所で手洗いうがいを済ませる。
お風呂の洗面台で隣同士で手洗いうがいを済ませた鹿島が
「匠ちゃーん!」
と叫ぶ。
「なー?」
とリビングの方から匠の声が聞こえる。
「お風呂お湯入れていー?」
と鹿島が叫ぶ。
「いーよー。やり方わかるー?」
と匠の声。
「えぇ~っと?あぁうちと同じか」
と鹿島がお風呂場に入りボタンを押す。
「お湯はりを開始します」
AIのような女性の声と浴槽にお湯が注がれる音が響く。お風呂場から出てくる鹿島に
「なに?こっちのお風呂にも入りたかったん?」
と聞く。
「いや、走って汗かいたし、入りたいなぁ~って」
「あぁ、なるほど。じゃ、オレも入ろー」
「一緒に入る?」
「遠慮しとくわ」
「えー。なーんーでーよー」
そう言う鹿島とリビングに戻る。
とても4人がけとは思えない大きさのダイニングテーブルの上には
先程鹿島が持っていた寿司桶が3つ並べられていた。
「おーほー!うまそー!」
「飲み物選んでー」
「はーいよ!」
3人冷蔵庫の前で飲み物を決め、グラスに注ぎ、ダイニングテーブルに置き、イスに座る。
「いいんすか?」
「どーぞ」
鹿島が僕に視線を送る。僕は頷く。
「じゃ、いただきまーす!」
「いただきます」
「いただきます」
匠が容易してくれた醤油皿に匠の家の醤油を入れる。
付属の割り箸を割り、まずはマグロの赤身をいただく。
赤身に少し、シャリに少し醤油をつけ、口へ運ぶ。
トロとは違い、脂はないはずなのに口の中でトロけるように感じた。
「うぅぅ~まぁぁ~」
鹿島が横で目をキラキラさせながら感動していた。
僕も今まで食べたことないほど美味しいお寿司に感動していたため
鹿島のその言葉に反応せず心の中で「わかるぞ」と深く共感していた。
「あ、どっちかウニ食べて?」
匠が言う。
「え!?ウニ食べないの!?」
「オレ苦手なんよ。あとイクラもあげる」
「マジ!?怜ちゃんどっちがいい?」
「じゃあ、イクラ貰うわ。鹿島ウニっぽい」
「なにそれ」
と言いながら笑う鹿島。匠が僕と鹿島に寿司桶を近づけて
鹿島はウニを、僕はイクラをいただく。
「今は違うけど、いつも髪ツンツンだから」
「なーるほど」
貰ったイクラを口に運ぶ。弾力があるが、決して硬くはないイクラの粒。
1粒1粒が主役だがまとまりがあり、味が変に濃くも薄くもない。
シャリや海苔との相性を考えられたように
1つにまとまったときに本領発揮と言わんばかりに美味しさを爆発させる。
「うぅぅ~まぁぁ~」
隣でウニを食べた鹿島がまた感動していた。
「イクラもヤバいよ」
「マジか」
「そんな喜んで美味しい美味しい言ってくれたら大将も喜ぶよ」
「あ、匠ちゃんいつの間にかお団子にしてる」
匠を見ると鹿島の言う様に長い髪をお団子ヘアーにしていた。
「食べるとき邪魔だから」
そう言いながら、テレビに視線を向け、お寿司を食べる匠。
美味しいとは思っているのだろうが鹿島や僕と違い、感動していない辺り
こんな美味しいお寿司を食べ慣れているのだと改めて匠のお金持ち感を感じる。
「普段髪結んでないよね?なんで?」
たしかに。大学で見た匠も家以外での匠は大概髪を下ろしてした。
「あぁ~。単純の毛根が痛くなるから」
「痛くなる?」
「そそ。京弥もない?高校のときとか前髪結んで上げてたとき」
「しょっちゅうあったけど?」
「そんとき痛くならんかった?」
「あ~…はは。覚えてねぇや」
「とにかく毛根痛くなるのよ。だから極力下ろしてる」
「結ぶときは?ご飯食べるときくらい?」
「ご飯食べるとき、カッコつけるとき、絵描くとき
お風呂上がりで髪が少し湿ってるときかな?」
匠が指折り数える。
「カッコつけるときも結ぶのね」
「ファッションによってポニテとかお団子とかね」
「なるほどなぁ~」
納得してお寿司を食べる鹿島。僕も納得してお風呂を食べる。しばらくすると
「あぁ~そうだ。記念に写真撮ろうぜい!」
そう言い鹿島がスマホを取り出す。
「あ、森もっさんからだ。ルームツアー。あぁ」
そう呟く鹿島。
「じゃ、匠ちゃん、怜ちゃんこっち向いてー」
僕も匠も鹿島のスマホに顔を向ける。
「いきまっせー?」
僕は手に持っていた箸を顔に寄せる。カシャ。
「念のためもう1回」
カシャ。鹿島は写真を確認する。僕と匠はお寿司を食べる。
テレビの内容やテレビの内容から脱線してくだらない話をしていると
あっという間に寿司桶にはガリ以外なにもなくなった。
「「「ガリ食べる人ー」」」
3人ハモる。3人顔を見合わせて笑う。
「なに?怜ちゃんも食べないの?」
「鹿島と匠も食べないのかよ」
「オレは好き嫌いあるで有名じゃん」
「どこでだよ」
「まぁいいや。まとめたらお兄ちゃんが食べるかな」
3人でご馳走をし、キッチンに寿司桶を持っていく。
「匠ちゃん先お風呂入る?」
「ん?あぁ、いいいい。2人先入って」
「じゃあ、一緒に入ろっか」
「No」
「うぇ~。じゃあお先いただきまっせ?」
「「どぞー」」
鹿島は自分のリュックから部屋着と思われる服を持ち、お風呂場へ向かう。
匠はキッチンで3人の寿司桶に残ったガリをまとめて
小さいお皿に乗せ、ラップをかけて冷蔵庫にしまっていた。
僕は鹿島が服を取りにソファーに向かうときに一緒にソファーに行って
ソファーでくつろいでいた。スマホを取り出し、電源をつける。
妃馬さん、姫冬ちゃん、音成さん、森本さん
鹿島、匠、僕のグループに通知がたくさん来ていた。
通知をタップし、グループに飛ぶ。まず初めに鹿島が画像を送信していた。
先程撮ったお寿司を食べているときの鹿島と匠と僕の写真だった。
鹿島はピースを、僕は箸を顔に近づけ
匠はなんのポーズもとらず、ただカメラ目線だった。
「お寿司なう!美味しいなう!」
「うわ~お寿司美味しそうですね」
「鹿島くんが自慢してたのこれか」
「いけすかないやつのニャンスタみたい」
「いるいる!」
「てか、ここ家!?」
「小野田くん家の中初めて見た」
「小野田さんの家なんですか?めっちゃ広い」
「なおさらルームツアーが楽しみになった」
既読数的に妃馬さん、姫冬ちゃん、音成さん、森本さん、僕が既読をつけていて
鹿島と匠はまだ読んでいないらしい。と思っていると既読が1つ増える。
バッ!っと振り返る。匠は冷蔵庫を開けて、飲み物を選んでいるようで
スマホをいじっている様子はなかった。
あいつ風呂にスマホ持ち込んでんのか。
そう思い、キッチンの奥のお風呂場に続く廊下を見ていると
「うおぉー!」
とお風呂場から反響する鹿島の声が聞こえる。匠も廊下のほうを覗き
「なんかあったー?」
と聞く。すると
「お風呂でテレビ見れんの!?」
とまた鹿島の反響する大声。
「え?気づいてなかったんや」
と思わず呟く。
「あぁ!うん!リモコンはねー」
「おぉ!スゲェ!」
どうやら匠が教える前にリモコンを見つけたようだった。
匠はソラオーラを入れたグラスを持ち、ソファーに座る。
「悩んで結局ソラオーラね」
「オレは血液ソラオーラでできてるから」
「ワンチャンあり得そう」
その後も匠と他愛もない話やテレビの話をしていると
「匠ちゃーん!タオルどーすればいーかなー?ー」
とお風呂場から聞こえてくる。
「タオルラックあるでしょ?そこのタオル誰用とか別にないから使ってー」
「あーい!」
しばらくして
「ふぅ~最高ぉ~」
とブラウンのタオルを肩にかけ、先程まで着ていた服を抱えた
ほかほかの鹿島がソファーにやってくる。
「あ、オレも飲み物飲も」
と言い、ダイニングテーブルに置いていた鹿島の使っていたグラスを手にキッチンに行き
両開きの冷蔵庫を開き、悩む鹿島。
「匠先入る?」
「いや、怜夢いいよ」
「マジ?じゃ、お言葉に甘えるよ?」
「どーぞどーぞ」
僕はリュックから部屋着と下着のパンツを持ってお風呂場へ向かう。
「おー。いてらー」
キッチンで牛乳を注ぐ鹿島とすれ違う。お風呂場の扉を開いて閉める。
洗面台に部屋着と替えの下着のパンツを置き
ジーンズからスマホを取り出し、部屋着の上に置く。
広い脱衣所、洗面所で服を全部脱ぐ。ガラスの扉を開き、お風呂場に入る。
湯気と湿気に塗れながら、シャワーを浴びる。
そして浴槽のある1段上がった部位に上がり、浴槽に入る。めちゃくちゃ広い。とにかく広い。
浴槽以外が基本的に暗い色で統一されているためか、電気は点いているのに薄暗く感じる。
洗い場を左に、洗面所、脱衣所を背にした状態の浴槽正面の壁にあるテレビ。
薄暗く少し不気味に感じたのでテレビをつけようとリモコンを探す。
すぐ右の壁のスマホスタンドに置いてあった。
幸いまだ浴槽に手を入れておらず、あまり濡れていなかったので
そのままリモコンを手にテレビをつける。月曜10時からのドラマが始まっていた。
一瞬、あっヤベッ、見忘れてた。と思ったが
きっと母か妹が録画してくれているだろうと思い
コマーシャルまで見てからテレビを消し、脱衣所、洗面所に出る。
さっき匠の言っていたようにタオルラックには
鹿島が肩からかけていたタオルと同じタオルが複数積み重なり置いてあった。
一番上のタオルを手に取り、体を拭き
替えの下着のパンツを履き、部屋着を着て、部屋着のスウェットパンツにスマホを入れる。
僕も鹿島と同じように肩のタオルをかけ、脱いだ服を持ってお風呂場を後にする。
鹿島はエナジードリンク。匠はソラオーラを買い、改札からホームに入り、電車を待つ。
自分の髪からいつも使っているシャンプーやコンディショナーじゃない香りが
体からもいつも使っているボディーソープではない香りがする。
このいつものお風呂上がりと違う香りが自分の髪や体からする感じが
旅行感をさせ、なぜかドキドキとワクワクさせ、矛盾しているがどこか安心感を与えてくれた。
バリバリバリと新品特有音をさせ、ペットボトルの蓋を開ける。
ストレートティーを口に流し込む。
春の夜の香りをストレートティーの香りが上書きする。
しかし深呼吸をするとすぐに春の夜の香りが鼻を支配する。
「ヤバッ。もうすぐ9時じゃん」
と匠が言う。すると駅構内にアナウンスが流れ、すぐに電車のライトが見える。
「駅降りてダッシュな」
「え?」
「9時にお寿司頼んだから」
「え、ヤバ。間に合うかな?」
電車が風を引き連れ、ホームに入る。
扉が開き、降りてくる人を待ち、電車に乗り込む。すぐに扉が閉まり
慣性の法則で3人とも同じ方向に蹌踉めく。
「この中で一番足速い人」
「あぁ~誰?」
「オレではない」
「じゃあ、オレか怜ちゃん?」
「オレより鹿島のほうが速そう」
「まぁいいや。とりあえず改札出たらダッシュで家向かって」
「マジか」
「オッケー」
「で、まぁオレも一応走るけど、一番足速いのはオレではないと思うから
一番最初にオレん家ついた人、お寿司受け取って?」
「オッケーオッケー」
「お金は?」
「あぁそれは大丈夫」
「あ、そうなん?」
すぐに隣の駅につき、早足でホームから改札へ行き
改札から出た瞬間、徒競走のピストルが鳴ったように3人で匠の家に向かって走り出した。
「はぁ…はぁ…はぁ…」
割りかし運動は得意な学生だったはずだけど、最近運動という運動をしてないため
しばらく走ったら、ペースが下がり、早歩きくらいの速度で息を切らす。
振り返ると僕と同じように息を切らしながら
腰に手をつき、夜空を見上げながら歩く匠の姿が見えた。
鹿島が先に行っているはずだが僕も一応急いで匠の家に向かった。
匠の家の前につくと人が出入りするようの両開きの扉の前で
3段に重なった寿司桶を持ちながら息を切らしている鹿島がいた。
「はぁ…はぁ…はぁ…」
歩きながら息を整え、鹿島に近づく。
「はぁ…はぁ…おつかれ…」
「はぁ…ふぅ。おつかれ」
なぜか僕より疲れてなく見える鹿島。
「はぁ…足…はえぇし…体力あんのな…」
「あぁ…はぁ…まぁ…な?元サッカー部だし、弟とたまにサッカーしてる…から…か…な?」
「え…はぁ…ゲームじゃないん…」
「もちろん…ゲームもやるけど、あいつサッカー部だからさ…たまに練習付き合うんよ」
良いお兄ちゃんだな。と思いながら膝に手をつき、息を整える。
背後から足音が聞こえてくる。
「おぉ~…おつかれおつかれ…」
歩きながら近寄ってくる匠。
「怜夢ー」
手を挙げる匠。
「あいあい~」
「いくよ~」
僕も手を挙げる。匠が鍵を投げる。キャッチする。
真っ白の革のキーケースに鍵が5本入っていた。扉に合う鍵を探し、扉を開ける。
飛び石のように配置されたタイルの道を進み、今度は玄関の扉に合う鍵を探す。
鍵は2つついており、片方だけ鍵を差し、回す。
扉を開けようとすると開かない。もう1つの鍵にも鍵を差し、回す。開かない。
「あぁ、ごめんごめん。上しかかけてないから、もう1回下開ければ開くよ」
言われた通り、下の鍵穴に鍵を差し、回す。扉を引くと開いた。
「はぁ~、帰ってきたぁ~」
「ただいまぁ~」
「ただいま~」
靴を脱ぎ、各々洗面所で手洗いうがいを済ませる。
お風呂の洗面台で隣同士で手洗いうがいを済ませた鹿島が
「匠ちゃーん!」
と叫ぶ。
「なー?」
とリビングの方から匠の声が聞こえる。
「お風呂お湯入れていー?」
と鹿島が叫ぶ。
「いーよー。やり方わかるー?」
と匠の声。
「えぇ~っと?あぁうちと同じか」
と鹿島がお風呂場に入りボタンを押す。
「お湯はりを開始します」
AIのような女性の声と浴槽にお湯が注がれる音が響く。お風呂場から出てくる鹿島に
「なに?こっちのお風呂にも入りたかったん?」
と聞く。
「いや、走って汗かいたし、入りたいなぁ~って」
「あぁ、なるほど。じゃ、オレも入ろー」
「一緒に入る?」
「遠慮しとくわ」
「えー。なーんーでーよー」
そう言う鹿島とリビングに戻る。
とても4人がけとは思えない大きさのダイニングテーブルの上には
先程鹿島が持っていた寿司桶が3つ並べられていた。
「おーほー!うまそー!」
「飲み物選んでー」
「はーいよ!」
3人冷蔵庫の前で飲み物を決め、グラスに注ぎ、ダイニングテーブルに置き、イスに座る。
「いいんすか?」
「どーぞ」
鹿島が僕に視線を送る。僕は頷く。
「じゃ、いただきまーす!」
「いただきます」
「いただきます」
匠が容易してくれた醤油皿に匠の家の醤油を入れる。
付属の割り箸を割り、まずはマグロの赤身をいただく。
赤身に少し、シャリに少し醤油をつけ、口へ運ぶ。
トロとは違い、脂はないはずなのに口の中でトロけるように感じた。
「うぅぅ~まぁぁ~」
鹿島が横で目をキラキラさせながら感動していた。
僕も今まで食べたことないほど美味しいお寿司に感動していたため
鹿島のその言葉に反応せず心の中で「わかるぞ」と深く共感していた。
「あ、どっちかウニ食べて?」
匠が言う。
「え!?ウニ食べないの!?」
「オレ苦手なんよ。あとイクラもあげる」
「マジ!?怜ちゃんどっちがいい?」
「じゃあ、イクラ貰うわ。鹿島ウニっぽい」
「なにそれ」
と言いながら笑う鹿島。匠が僕と鹿島に寿司桶を近づけて
鹿島はウニを、僕はイクラをいただく。
「今は違うけど、いつも髪ツンツンだから」
「なーるほど」
貰ったイクラを口に運ぶ。弾力があるが、決して硬くはないイクラの粒。
1粒1粒が主役だがまとまりがあり、味が変に濃くも薄くもない。
シャリや海苔との相性を考えられたように
1つにまとまったときに本領発揮と言わんばかりに美味しさを爆発させる。
「うぅぅ~まぁぁ~」
隣でウニを食べた鹿島がまた感動していた。
「イクラもヤバいよ」
「マジか」
「そんな喜んで美味しい美味しい言ってくれたら大将も喜ぶよ」
「あ、匠ちゃんいつの間にかお団子にしてる」
匠を見ると鹿島の言う様に長い髪をお団子ヘアーにしていた。
「食べるとき邪魔だから」
そう言いながら、テレビに視線を向け、お寿司を食べる匠。
美味しいとは思っているのだろうが鹿島や僕と違い、感動していない辺り
こんな美味しいお寿司を食べ慣れているのだと改めて匠のお金持ち感を感じる。
「普段髪結んでないよね?なんで?」
たしかに。大学で見た匠も家以外での匠は大概髪を下ろしてした。
「あぁ~。単純の毛根が痛くなるから」
「痛くなる?」
「そそ。京弥もない?高校のときとか前髪結んで上げてたとき」
「しょっちゅうあったけど?」
「そんとき痛くならんかった?」
「あ~…はは。覚えてねぇや」
「とにかく毛根痛くなるのよ。だから極力下ろしてる」
「結ぶときは?ご飯食べるときくらい?」
「ご飯食べるとき、カッコつけるとき、絵描くとき
お風呂上がりで髪が少し湿ってるときかな?」
匠が指折り数える。
「カッコつけるときも結ぶのね」
「ファッションによってポニテとかお団子とかね」
「なるほどなぁ~」
納得してお寿司を食べる鹿島。僕も納得してお風呂を食べる。しばらくすると
「あぁ~そうだ。記念に写真撮ろうぜい!」
そう言い鹿島がスマホを取り出す。
「あ、森もっさんからだ。ルームツアー。あぁ」
そう呟く鹿島。
「じゃ、匠ちゃん、怜ちゃんこっち向いてー」
僕も匠も鹿島のスマホに顔を向ける。
「いきまっせー?」
僕は手に持っていた箸を顔に寄せる。カシャ。
「念のためもう1回」
カシャ。鹿島は写真を確認する。僕と匠はお寿司を食べる。
テレビの内容やテレビの内容から脱線してくだらない話をしていると
あっという間に寿司桶にはガリ以外なにもなくなった。
「「「ガリ食べる人ー」」」
3人ハモる。3人顔を見合わせて笑う。
「なに?怜ちゃんも食べないの?」
「鹿島と匠も食べないのかよ」
「オレは好き嫌いあるで有名じゃん」
「どこでだよ」
「まぁいいや。まとめたらお兄ちゃんが食べるかな」
3人でご馳走をし、キッチンに寿司桶を持っていく。
「匠ちゃん先お風呂入る?」
「ん?あぁ、いいいい。2人先入って」
「じゃあ、一緒に入ろっか」
「No」
「うぇ~。じゃあお先いただきまっせ?」
「「どぞー」」
鹿島は自分のリュックから部屋着と思われる服を持ち、お風呂場へ向かう。
匠はキッチンで3人の寿司桶に残ったガリをまとめて
小さいお皿に乗せ、ラップをかけて冷蔵庫にしまっていた。
僕は鹿島が服を取りにソファーに向かうときに一緒にソファーに行って
ソファーでくつろいでいた。スマホを取り出し、電源をつける。
妃馬さん、姫冬ちゃん、音成さん、森本さん
鹿島、匠、僕のグループに通知がたくさん来ていた。
通知をタップし、グループに飛ぶ。まず初めに鹿島が画像を送信していた。
先程撮ったお寿司を食べているときの鹿島と匠と僕の写真だった。
鹿島はピースを、僕は箸を顔に近づけ
匠はなんのポーズもとらず、ただカメラ目線だった。
「お寿司なう!美味しいなう!」
「うわ~お寿司美味しそうですね」
「鹿島くんが自慢してたのこれか」
「いけすかないやつのニャンスタみたい」
「いるいる!」
「てか、ここ家!?」
「小野田くん家の中初めて見た」
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「なおさらルームツアーが楽しみになった」
既読数的に妃馬さん、姫冬ちゃん、音成さん、森本さん、僕が既読をつけていて
鹿島と匠はまだ読んでいないらしい。と思っていると既読が1つ増える。
バッ!っと振り返る。匠は冷蔵庫を開けて、飲み物を選んでいるようで
スマホをいじっている様子はなかった。
あいつ風呂にスマホ持ち込んでんのか。
そう思い、キッチンの奥のお風呂場に続く廊下を見ていると
「うおぉー!」
とお風呂場から反響する鹿島の声が聞こえる。匠も廊下のほうを覗き
「なんかあったー?」
と聞く。すると
「お風呂でテレビ見れんの!?」
とまた鹿島の反響する大声。
「え?気づいてなかったんや」
と思わず呟く。
「あぁ!うん!リモコンはねー」
「おぉ!スゲェ!」
どうやら匠が教える前にリモコンを見つけたようだった。
匠はソラオーラを入れたグラスを持ち、ソファーに座る。
「悩んで結局ソラオーラね」
「オレは血液ソラオーラでできてるから」
「ワンチャンあり得そう」
その後も匠と他愛もない話やテレビの話をしていると
「匠ちゃーん!タオルどーすればいーかなー?ー」
とお風呂場から聞こえてくる。
「タオルラックあるでしょ?そこのタオル誰用とか別にないから使ってー」
「あーい!」
しばらくして
「ふぅ~最高ぉ~」
とブラウンのタオルを肩にかけ、先程まで着ていた服を抱えた
ほかほかの鹿島がソファーにやってくる。
「あ、オレも飲み物飲も」
と言い、ダイニングテーブルに置いていた鹿島の使っていたグラスを手にキッチンに行き
両開きの冷蔵庫を開き、悩む鹿島。
「匠先入る?」
「いや、怜夢いいよ」
「マジ?じゃ、お言葉に甘えるよ?」
「どーぞどーぞ」
僕はリュックから部屋着と下着のパンツを持ってお風呂場へ向かう。
「おー。いてらー」
キッチンで牛乳を注ぐ鹿島とすれ違う。お風呂場の扉を開いて閉める。
洗面台に部屋着と替えの下着のパンツを置き
ジーンズからスマホを取り出し、部屋着の上に置く。
広い脱衣所、洗面所で服を全部脱ぐ。ガラスの扉を開き、お風呂場に入る。
湯気と湿気に塗れながら、シャワーを浴びる。
そして浴槽のある1段上がった部位に上がり、浴槽に入る。めちゃくちゃ広い。とにかく広い。
浴槽以外が基本的に暗い色で統一されているためか、電気は点いているのに薄暗く感じる。
洗い場を左に、洗面所、脱衣所を背にした状態の浴槽正面の壁にあるテレビ。
薄暗く少し不気味に感じたのでテレビをつけようとリモコンを探す。
すぐ右の壁のスマホスタンドに置いてあった。
幸いまだ浴槽に手を入れておらず、あまり濡れていなかったので
そのままリモコンを手にテレビをつける。月曜10時からのドラマが始まっていた。
一瞬、あっヤベッ、見忘れてた。と思ったが
きっと母か妹が録画してくれているだろうと思い
コマーシャルまで見てからテレビを消し、脱衣所、洗面所に出る。
さっき匠の言っていたようにタオルラックには
鹿島が肩からかけていたタオルと同じタオルが複数積み重なり置いてあった。
一番上のタオルを手に取り、体を拭き
替えの下着のパンツを履き、部屋着を着て、部屋着のスウェットパンツにスマホを入れる。
僕も鹿島と同じように肩のタオルをかけ、脱いだ服を持ってお風呂場を後にする。
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「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
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