猫舌ということ。

結愛

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再会

第95話

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氷の浮かんだグラスをローテーブルに置く。
鹿島のメッセージによれば、23時にLIMEのグループで通話しながら始めるらしい。
スマホの電源を取り出し、電源をつける。22時38分。
その下にグループLIMEの通知が来ていた。
通知をタップし、グループLIMEのトーク画面に飛ぶ。

「楽しみぃ~楽しみぃ~♫」
「楽しみぃ~楽しみぃ~♫」

鹿島のワクワク感満載のメッセージに姫冬ちゃんが被せていた。
既読は複数ついていたが、このノリに乗ろうとする者は姫冬ちゃん以外いないようだった。

「既読ついてんのに乗ってくんないねぇ?」
「ですねぇ~」

そのメッセージをクスッっと笑いながら見てトーク一覧に戻る。
今日一緒にゲームするメンバーのほとんどから個人LIMEが来ていた。
鹿島の名前をタップし、鹿島とのトーク画面に入る。

「さっき事前に森本さんといろいろ話して
実際にファンタジア フィナーレやってみたら一緒にできたから大丈夫!
あとそんときにフレンドになっといたから合流もスムーズなはず!」

さすがは鹿島。ゲーム関しては段取りが素晴らしい。

「さすが。ナイス」

そう送り、トーク一覧へ戻る。
音成さんからもLIMEが来ており「?」が浮かんだがタップしてトーク画面に入る。

「なんか緊張すんだけど?」

「知らんがな」
つい言葉が漏れた。

「匠に言え」

当たっているかわからないが、なんとなく音成さんの匠への気持ちを知っている僕は
ニヤニヤしながら音成さんに返信する。
トーク一覧に戻り、「デルフィン」と言う名前にいまいちピンと来なかったが
すぐにあぁ、森本さんか。と思い出し、名前をタップし、トーク画面を開く。

「今日はよろしくお願いしますね。ぜひサキちゃんのサポートを」

昨日の今日だから仕方ないが、まだ距離感のある森本さんのLIMEになぜか背筋が伸び

「はい。こちらこそよろしくお願いします。
まぁ、僕そんなこのゲームやり込んでたわけではないので…。
みんなで楽しめればと思ってます。」

と僕もかしこまった文章を送った。なぜかスマホに一度お辞儀をし、トーク一覧に戻った。
そしてなぜかもう一度お辞儀をして妃馬さんとのトーク画面に入る。
昨日、時間的には今日の寝落ちした後のトークがあり、今一度読んでしまう。

「すいません!寝落ちしてました!」
「おはようございますw寝てたみたいですねw」
「おはようございます。スマホ握ったまま寝てましたw」
「あぁ、なんか想像できますねw」
「やめてくださいw」
「ヨダレ垂らして寝てますねw」
「それはないw」
「それはないですねw」
「今日ですね!楽しみです!」
「ですね!僕も楽しみです!」
「ちょっとフィンちゃんと恋ちゃんとやったんですけど
めっちゃ可愛いキャラばっかりだし、世界?景色?もめっちゃ綺麗でした」
「でも大変じゃなかったでした?1人で進めないといけないとこ結構あったでしょ」
「フィンちゃんと恋ちゃんに手取り足取り教えてもらいました」
「お家でですか?」
「いえ、電話で教えてもらいました」
「よく電話で教えてもらっていけましたね?」
「最初のほうは割といけましたねw」
「ゲームセンスあるのでは!?Σ( °ω° )ビクッ」
「ないないww」

「ふふっ」
口角が上がり鼻から笑いの息が漏れる。返信を打ち込む。

「ゲームセンス見せていただきますw」

送信し、枕にスマホを置く。テレビに近づき
パスタイム スポット 4のコントローラーを手にベッドの上で胡座で座り
ローテーブルのリモコンに手を伸ばし
赤く丸い電源ボタンを押し、テレビの電源をつけ、入力切り替えをし
パスタイム スポット 4を操作し、ファンタジア フィナーレXIVを起動する。
街から始まり、テキトーにほっつき歩き、売っている装備を見たり
噴水の前で噴水を眺めたり、街を離れ
そこら辺の原っぱにいるレベルの低いモンスターを脳死で倒したりしていた。
するとテレビ画面の左上に鹿島からのメッセージが来た。

「怜ちゃんやってんの?グループ招待するから入ってー」
「グループに招待されました」

僕はホームボタンを押し、招待されたグループ入る。
「あ、怜ちゃん来た来たぁ~」
「お。噂の男来た」
鹿島の声と低くも高くも感じる女性の声がする。恐らく森本さんだろうと思った。
僕はパスタイム スポット 4の近くに置いたヘッドホンを手に取り
コントローラーに挿し、耳を覆い、マイクをオンにする。
「ども~」
「おいおい~」
鹿島のいつもの挨拶。
「あ、どうも。ちゃんと話すのは初めましてですよね。
森本デルフィンです。サキちゃんがお世話になっております」
声の温度は冷たくないものの、言葉的に距離感を感じ、なぜか背筋が伸びた。
「あ、どうも。初めまして?直接話すのに関しては初めましてですね。
改めて、暑ノ井怜夢です。こちらこそ妃馬さんにはお世話になってます」
「え、結婚の挨拶?」
鹿島が言葉を挟む。
「たしかに」
と森本さんが笑う。距離感を感じていた空気が森本さんの笑いで少し崩れた気がした。
「なに?2人は結構仲良くなった感じ?」
「めっちゃ仲良くなったよー!」
「ちょっとなに言ってるかわからない」
「お…ちょっと!」
今「おい!」って言おうとして留まったな。と思う。
「仲良くなってるようで」
「今デートしてたんよ」
「男2人でね」
「デート?男2人って?」
すると鹿島からファンタジア フィナーレXIVの招待が来る。
その招待で鹿島と森本さんと合流する。
「おー来た来た!」
もの凄く強そうで光の衣みたいなものや光の線があちらこちらから出ている装備
ただただゴツい装備の2人組が近寄ってくる。
「なに?レベチなんだが?」
キャラの頭上の名前を見る。「Kyoya」「Finn」
「あぁ!男2人ってそーゆーことね?」
森本さんのキャラは耳が尖ったエルフ耳のエルフ族で
腰までありそうな金髪の髪をポニーテールにしている
鼻筋がスッっと通って鼻が高く、二重だけどキリッっと細い目のイケメンの男だった。
「そーゆーことです。よろしくお願いします」
森本さんのキャラがゆっくりとお辞儀をする。
「あぁ、こちらこそよろしくお願いします」
エモートの欄から「お辞儀」を選択し、僕のキャラもお辞儀をする。
なぜか鹿島のキャラもお辞儀をする。
「なんで鹿島もお辞儀しとん」
「いや、流れ?」
「森本さんと初対面のときにしてんだろ」
「うん。した」
「ならええやん」
すると森本さんのキャラが踊り始める。
「なんか踊ってるわ」
鹿島がそう言いながら鹿島のキャラも踊り始めた。
無言の圧を感じ、エモートの欄から「ダンス1」を選び、僕も踊る。
3人のキャラがシンクロし踊る。
「なんだこれ」
数秒無言で踊りを見た後、つい声が漏れた。
「なんだこれ」
「なんなんこれ」
少し無言の時間の後、3人同時に笑い始めた。
「あーあ。おもろ」
「てか森本さんも結構やり込んでんすね」
「そうですね。ギルドに所属して知らん人と進めたりしてます」
「あ、今もやってんすか?」
「あぁ、すいません。ややこしい言い方でしたね。
今は全然やってないです。たまにやるくらい?」
「ほぉ~」
「森本さんマジすごいよ?オレとほぼ同じレベル」
「暗に自分をスゴいって言うなよ」
「たしかに」
森本さんが笑う。
「この装備だって集めんの大変だったでしょ?」
「あぁ、そうですね。同じモンスター20回以上はやったかな」
「ふぇ~。スゲェ~。しかもオレが敵いもしないレベルのモンスターでしょ?」
「そうね。この装備のモンスターってたしか…。レベル65くらい?」
「ジャスト。65ですね」
「65!?ヤバ」
「でも怜ちゃんも思ったより高いね」
自分の名前の隣の数字を見る。「Lv,29」
「どこが?チュートリアル終わって
チビチビやってたらこれくらい行くだろ」
「まぁたしかにね。とりあえずどうする?
まだ集合時間まで時間あるけど怜ちゃんレベル30にする?」
「いや、そんな簡単にいかんだろ」
「自分よりレベル高いモンスター倒せば経験値ガッポリじゃないですか?」
「それだ!怜ちゃんレベル35くらいのモンスターいる地区いくよー」
そう言うと鹿島が「ショコボ」と呼ばれる大きく綺麗な白のアヒルのような生物の背中に乗る。
「ついておいでー」
森本さんも無言でショコボに乗り、鹿島についていく。
僕もコマンドからショコボを呼び出し、2人の後をついていく。
そこら辺のボスではない雑魚モンスターも「雑魚」と呼べないほどにレベルが高くなっていた。
「え、みんなこんなとこで狩りしてんの?」
「そうだねぇ~怜ちゃんならあそこのモンスターの1回の攻撃で
体力半分以下には削られるだろうね」
笑って言う鹿島だが、こっちからしたら戦々恐々だ。
「懐かしいなぁ~ここ」
森本さんが呟く。
「なんか思い出でもあるんですか?」
「次のギルドの集まりまでにレベル上げとこうと思って
ほんの少しですよ?レベル2か3高いここの雑魚モンスター狩ろうと思って挑んだら
ボス戦並みに苦戦して、後でギルドの人に聞いたら
レベル上げで雑魚狩りするなら同レベルか
レベル1高いやつくらいのほうがいいよって言われました」
「あぁ…これから僕もそれを味わうんですね」
「怜ちゃんの場合、森本さんとはレベチよ」
「レベチですね」
「だろうね」
「あ、ついたわぁ~」
大きな洞窟の入り口につき、3人でパーティーを組み
レベルの一番下の僕がクエストを受注することになった。

「推奨レベルに達していません。クエストを開始しますか?」

その文言の下に赤文字で「推奨レベル35以上」と書いてあった。
「マジ?」
「マジ」
「そこらにいる中ボスで良くない?」
「中ボスでもいいんだけど、ワンチャンレベル上がんないから」
「たしかに。中ボスもレベル差あると経験値エグいくらい貰えるはずだけど
中ボスとボスだと貰える経験値に、これまたスゴい差ありますもんね」
「あぁ…そうなんだ」
「なんか嬉しいわぁ!ゲームの話できる人ができて!」
「私もです。今までは恋ちゃんが少しゲームの話できる子だったんですけど
ここまでのレベルの話できる人は初めてです」
「フゥー!最高ー!行こうぜ怜ちゃん!」
「てかさ、これみんなでやるのはダメなん?結構時間かかるでしょこれ」
鹿島と森本さんがクスクス笑い出す。
「大丈夫大丈夫。一旦クエスト開始押してごらん?」
僕は言われるがまま、ゲーム側の忠告を無視し、クエスト開始を押した。

ボスとの戦闘特有のカッコいいBGMが流れる。
「オレタンクだから、とりあえず攻撃をオレにするようにしとくわ」
鹿島がボスを挑発し、ボスが怒り状態になり、鹿島のほうを向く。
「私魔道士なので暑ノ井さんに防御魔法かけますね」
「ありがとうございます」
森本さんのキャラが僕のキャラのほうを向き、持っている杖を振るい
防御魔法をかけてくれる。
「これで仮に範囲攻撃きても、一撃死することはないから怜ちゃん攻撃してみ?」
僕のジョブは忍者で素早く双剣を振るい攻撃を繰り出す。
ボスの上に表示されている体力バーが1ミリほど減った。
「は?」
「まぁレベル差あるとこんなもんか」
「これは私も初めて見ました」
「なんか強くなったんだなぁ~って実感しますよねぇ~」
「わかります。人の役に立てるのも嬉しい」
「あぁ~わかる!」
2人が話している間、攻撃しまくる。
ボスの攻撃は全て鹿島に行くが森本さんの防御魔法もあるだろうが
鹿島のキャラの体力が全然体力が削られていないことに驚く。森本さんは防御魔法をかけたり
自身にも防御魔法なのだろうか、とにかくなにかしらの魔法をかけ続けている。
やっと20分の1ほどを削った。
「もうそろいいっすかね」
「いいんじゃないですか?」
「じゃ、森本さん見せたってください」
「私でいいんですか?鹿島さんいいんですか?」
「いっ…いいんですいいんです!」
「なんか歯切れ悪ぃな」
「うるさいな~怜ちゃん」
「じゃ、いきますね」
「お願いします」
頭の上に「?」が浮かんだが僕も
「お願いします」
と言うと森本さんのキャラの纏ったオーラが杖の先に集中し
ボスのいる地面から洞窟の天井まで、ボスを貫くように無数の雷が出てきた。
「うわっ…スゲェ…」
「キレー!」
ボスの上に表示された体力バーが5分の1になる。
「え…つよ…」
「まぁこんなもんですよね姉御」
「レベル的には鹿島さんが兄貴でしょ」
「そっかそっか」
笑う2人の強さに驚く。
「じゃ、小突きまーす」
タンクの鹿島が大剣でボスを斬りつける。するとボスの体力バーがゼロになり、ボスが倒れる。
ボスからアイテムがドロップし、奥に宝箱が現れる。
そして経験値が入り、レベルが30に上がる。
「おめーとー!」
「おめでとうございます」
「あ、どうもどうも。お2人のお陰です。ありがとうございます」
新しい技を取得した。
「レベル30。節目だから結構いい技貰ったんじゃない?」
「あぁ、そうだね。えぇ~と?ゲージが貯まる+敵の背後に回り
次のターン攻撃を繰り出すパーティーメンバーの攻撃を貫通攻撃にし
敵を貫通した攻撃を受け止め、1.5倍にして攻撃する。だって」
「あぁ~いいね!これはボイス繋ぎながら組んでるパーティー向けだな」
「ですね。「次のターン全員攻撃して」って言えば
全員の攻撃+自分以外の攻撃したパーティーメンバーの攻撃の
1.5倍の攻撃を繰り出せるんだから超火力ですよね」
「たしかに。これボイスなくて味方が攻撃しないターンにこの技出したら
オレゲージ貯めるだけのやつになりますもんね」
「ですね。ただ敵の後ろ回って帰ってくるだけのやつ」
「ただ目立つ役立たず」
「おい」
3人で笑う。
「あ、もう過ぎてんじゃん」
鹿島が言う。僕は枕の上に置いたスマホを手伸ばし、電源を入れる。23時3分。
妃馬さんからのLIMEの通知やグループLIMEの通知が目に入った。
「じゃあ、ボイス抜けますね」
「はーいよ。オレも抜けるから怜ちゃんも森本さんもLIMEでねー。よろしくー」
「はーい」
「あいよ」
僕はコントローラーからヘッドホンを抜く。そしてヘッドホンを元あった位置に戻し
スマホを手に取り、妃馬さんからの通知をタップし、妃馬さんとのトーク画面へ飛ぶ。

「ないって言ってるのに!」

そのメッセージの後に猫が腕を組んで
あからさまに怒っている様子のスタンプが送られていた。ニヤける。返信を打ち込む。

「すいませんすいませんw」

その後にフクロウが「てへぺろ」してるスタンプを送った。
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