猫舌ということ。

結愛

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動き

第57話

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静かに映画が始まった。ロナンの映画が始まり10分ほどが経ったとき
廊下からドタバタと騒がしい音が聞こえてきて振り返る。
そこにはタオルで髪を拭きながらキャミソールに
部屋着特有のショートパンツ姿の妹の姿があった。
咄嗟に目を逸らし、テレビで流れるロナンに目を向ける。
決して自分の妹をそんな目で見ているわけではないが
高校2年生と成長期真っ盛りのバスケ部女子高生の健康的な体が露出されていて
それをまじまじ見るのはさすがに抵抗があった。
「もう始まっちゃった!?」
妹の声が背後から聞こえる。
「始まって…」
スマホの電源を入れて時間を見る。
「12分くらい?」
「マジかぁ~お風呂パッって済ませたのに~」
「女子のパッは男にとって「あぁ~ゆっくり入ったわ~」って感じよ」
「マジで?そうなん!?」
「たぶん。まぁ母さんと夢香くらいしか知らないからなんとも言えないけど」
「実家だから女の子連れ込めないしねぇ~」
その言葉を無視し
「そういえば母さん入ってなかったっけ?」
と聞くと
「あぁ、うん。入ってた」
「一緒に入ったの?」
「うん」
「で、まだ母さんは入ってんの?」
「入ってるだろうね」
「長っ」
と言いロナンを見る。
目の前のロナンの音に集中するも背後の音も少しは気にしてしまうため
恐らく妹が冷凍庫を開けたことがわかった。
そしてビニールのカシャカシャという音が聞こえ
その後妹が言おうとする言葉も予想がついた。
「お兄ちゃんアイスいるー?」
やっぱりだ。言うと思った。
「お風呂出たらでいいわ。ありがと」
「んー」
冷凍庫を閉め、アイスの包装のビニールを破る音がし
お風呂上がりで水分が多くなったため先程よりペタペタと足音が大きく
その音が近づいてくるのがわかる。
「よんしょ」
と僕の左側の背もたれを跨ぐように妹がソファー族に仲間入りする。
僕は右側のソファーの角に体を預け寛ぎ
妹は左側のスツールともオットマンとも呼ばれるものに足を伸ばし
寝転んで2人でロナンを見る。チラッっと妹を見る。
妹の右手にはフルーツのいろんな味が入っているアイスのブドウ味を食べていた。
アイスに焦点を当てていたがアイスの背景もチラッっと目に入る。
アイスの奥の背景は妹の胸の谷間だった。
目玉が1回転するんじゃないかと思ってしまうくらい勢いよく目を逸らす。
ロナンが一度コマーシャルに入る。何気なくスマホの電源を入れる。
鹿島からのLIMEの通知が来ており、ロックを解除し鹿島とのトーク画面を開く。

「昨日飲んで帰ってアルコール入ったままゲーム実況撮ったろ!って思って
パソコン起動してパス4(パスタイム スポット 4)も起動して
録画しながらゲームして4時間くらいかな?取れ高気にしてたらめっちゃやっててさ。
んで気づけば酔いも覚めてきたからお風呂入って映画1本観たらもう朝でさw
そっから寝て起きたら2時ころで「あぁ今日講義あるわ」って思ったけど
「もう無理だなw」って思ってコンビニにご飯買いに行って
ご飯食べながら編集してって感じ?」

たしかに詳しいが…。「ふっ」っとつい笑ってしまった。

「今度はもっとベロベロで実況撮れよw」

と返す。スマホを太ももの右側のソファーの上に置く。
そしてコマーシャル明けのロナンを見る。少ししたら母がお風呂から上がった。
少し暗めのグレーのTシャツにグレーのスウェットパンツで出てきた。
そして妹と同じ動線を辿り、冷凍庫を開け、ビニール包装のカシャカシャ音を立て
「夢ー怜夢、アイスいるー?」
と聞いてくる。
「私今食べてるー」
「オレはお風呂出てからにするから。ありがとー」
と言うと
「はーい」
と言い背後から冷凍庫の閉まる音、ダイニングテーブルのイスと引く音が聞こえる。
恐らくいつも食事を摂る自分の席で僕たちと一緒にロナンを見ている母。
そんな3人でロナンを一緒に見ていた。僕はコマーシャルの度に鹿島への返信をしていた。
そして10時に近づいた頃コマーシャルに入り鹿島へ返信をしようと思い
スマホの電源をつけた。つい前のめりになる。
「どったの?」
左側から妹の声が聞こえた。きっと急に機敏に動いたから疑問に思ったのだろう。
「いや、別に」
と言いソファーの上で胡座をかく。
妹と母の手前冷静を装うが内心ワクワクで妃馬さんとのトーク画面を開く。

「すいません。お風呂入ってて返信遅くなりました」
「じゃあ今度は私。その次はまた怜夢さんお願いしますね!」
「私専属の執事かぁ~。うん。悪くないw」

そのメッセージの後に猫が親指を立てて「いいね!」してるスタンプが送られていた。
妃馬さんとのトーク画面を開くとき
メッセージを読んでいるとき、鼓動がずっと高鳴っていた。
そして「また次は」という妃馬さんのメッセージに
僕の心に住む心の住人は皆一様に「ひゃっほー」騒いでいた。
「また次」があるということ。最低でもあと2回は妃馬さんと出掛けられる。
顔のニヤつきを抑えるのが大変だった。

「いえいえ。ちょっと待ち遠しかっただけですw」
「ずっとそれの繰り返しですかねw」
「でしょ?なんでもお申し付けください。」

またフクロウが紳士のようにお辞儀しているスタンプを送った。
そこから11時前、ロナンの映画が終わるまで
コマーシャルになる度に妃馬さんと鹿島に返信をしていた。
もちろんロナンもおもしろく次の展開にワクワクハラハラしていたが
僕はコマーシャルでもワクワクしていた。
そんなワクワクとハラハラが途切れない1時間を過ごし
来週のロナンの予告も今公開されている最新のロナンの予告も見てソファーを立った。
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