猫舌ということ。

結愛

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動き

第41話

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気づくと匠が百舌鳥の太鼓さんと一緒にいる。太鼓さんが僕に気づき
「おぉ!こっちこっち!」
と呼びかけてきた。僕は太鼓さんに近寄り周りを見渡す。
定食屋さんのような、居酒屋のようなところで
百舌鳥の太鼓さんと中学校の制服姿の匠が一緒にいる。
「あれ今日ノウさんは?」
太鼓さんの隣にノウさんがおらず、そう聞いてみると
「あぁ、あいつは今日他の仕事やねん」
と言いながらレモンサワーを飲んだ。
「匠はどうしたん?」
と匠に聞くと
「オレはこれから太鼓さんと芸能界をぶっ壊しに行く」
と物騒なことを口にする。一瞬「え?」と動揺したが
冷静に考えると「ぶっ壊す」=「物騒」というのもどうかと自分で思う。
「概念を壊す」という意味での「ぶっ壊す」かもしれない。そう思い
「なにしに行くの?」
と具体的なことを聞くと
「最近よ、マンガ原作頼りのクソドラマ、クソ映画ばっかでな。
原作が人気だから視聴率簡単に取れるとか
逆に原作がマイナーだけど話おもしろいから
ドラマ、映画にしてもヲタク以外原作がマンガだってこと知らないしいいかっていう
クソみたいな考えしてたりするんだろ。どうせ。
おもしろくなくてもいいからオリジナルで行こうという姿勢だけでも見せろよ。
ってポツッターでポツリしたら太鼓さんから電話が来て
太鼓さんがめっちゃ共感してくれて、んで今に至る」
太鼓さんってアニメ、マンガ好きだっけ?という疑問があったが話を続ける。
「うん?うん。すごいな。でなにしに行くの?」
「実写やっとるプロデューサーとかディレクターを集めて飲むんやって。なぁ?」
「はい」
「ぶっ壊す」とは一体?と思った。
「んでその安直な考えを己の主張でぶっ壊すんやな?」
「そうです」
物騒な意味じゃなくて良かった。そう思った。すると
「お待たせしましたぁ~、カシスオレンジですぅ~」
となにも頼んでないのに店員さんがカシスオレンジを僕の前に置いた。
匠が頼んでおいてくれたのかなぁ?そう思って
「ありがとうございます」
と店員さんを見るとその店員さんはノウさんだった。
「え?あれ?太鼓さん、ノウさんは今日別の仕事だって」
そう言って太鼓さんを見ると
「おぉ、そやで?今日はここでドラマの撮影しとんねん」
そう言いレモンサワーを飲み干し
「おぉノウよぉ、レモンサワーお願い」
「あいよぉ!」
そんなやり取りがなされて不思議と納得した。
「キサキちゃん!レモンサワーお願い!」
「はいよぉ!」
キサキちゃん?と思い厨房を見ると
妃馬さんが腰巻のエプロンをしてそこの居酒屋の店員さんをしていた。僕は思わず
「妃馬さん!なにしてんすか?」
と聞くと太鼓さんが
「なにしてんもなにも彼女がこのドラマのヒロインよ」
と言う。なぜか驚かず冷静に
「へぇ~」
と言った。匠は制服のポケットから
パスタイム スポット ポータブルとカセットケースを取り出しテーブルに置いた。
カセットケースから「戦士のくせに生意気だ」を取り出し
パスタイム スポット ポータブルに差し込み
ウィーンというディスクを読み込む機械音をさせ、ゲームをしていた。
そしてたまにテーブルに置かれた飲み物を飲んでいた。すると
「はいぃ~おまたせぇ~」
と言いノウさんがバケツほどの大きさのグラス並々に注がれたレモンサワーを持ってきた。
「おう!ありがとっ!ノウちゃん!」
「ええんよタイちゃん!」
仲良いなこのコンビ。そう思っていると
「はい!シーン52!よぉーい…はいっ!」
とどこからともなく聞こえてきてカチンコのカンッっという音が店内に響く。
キョロキョロ辺りを見回していると
「お兄ちゃん!」
と言いながら横開きの扉をガラガラガラという音を立て開き、僕の妹の夢香が店に入ってきた。
「夢香?どした?」
そう聞くと妹はただ
「お兄ちゃん」
と呼ぶだけだった。

急に視界がボヤけ
「お兄ちゃん」
と呼ぶ声のほうをボヤけた視界で見る。すると僕の部屋に妹の夢香がいた。
「おう」
声にならないような声で妹に反応する。
「やっと起きたぁー」
鼻から空気を吸い込みあくびをする。涙が溜まった目元を右手で拭う。
やっと視界が晴れ、寝転んでいる左側の窓から太陽光が差し、部屋が明るく朝だと気づく。
テレビとパスタイム スポット 4は自動で消えていたらしく部屋は静かだった。
朝らしく外から小鳥のさえずりが聞こえてきた。
「朝ご飯できたって」
妹はそれを知らせてにきたらしい。
「夢、今日も部活で遅くなんの?」
寝転がったまま妹のほうを向き聞く。
「うん。いやぁ~6月くらいまでは新入部員獲得したり、いろいろと大変なのよ。なんで?」
「いや、ただ聞いただけ」
「なにそれ」
そう言った後、続けて
「はやく下りてきなよー」
と言いながら僕の部屋を出ていった。
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