猫舌ということ。

結愛

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出会い

第26話

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そんなこんなでみんなで話して食べて飲んでをしているうちに
僕はホロ酔い気分になってきた。体が重いような軽いような
頭が重いようなふわふわするような、そんな矛盾が体に溢れる感覚になった。
右の鹿島を見ると鹿島もホロ酔いなのか
目がとろ~んとしているようないつもより目が潤んでいるように感じた。
妃馬さんの頬も少しピンクががって見えた。
もちろん未成年である姫冬ちゃんと俊くんは酔っ払ってはいないが
空気に呑まれているのかテンションはアルコールを入れた人と大差なかった。
どれくらい時間が経ったのだろうか。尿意を感じトイレに向かう。
小便器に向かい淡い青の漆喰の壁を見つめて用を足す。
ジーンズを元に戻し、小便器から離れると水が流れる音がした。
ふと個室の方を見る。ただ大きい方をしているのか
飲みすぎて戻しているのか、1番手前の個室だけ閉まっていた。
僕は鏡の前に向かう。
まるで高級ホテルのトイレにあるような縦長の楕円の鏡に自分が写る。
鹿島のことを言えたもんじゃなかった。
僕の目もいつもより重くとろけそうな目をしていた。
僕は白い洗面器についている銀色のレバーを上げ水を出した。まずは手を洗う。
そのあと水を両手で受け止め、両手で作った器に水を溜める。
両手で作った器に溜まった水に顔をつける。少しは目が覚めた気がした。
そこで気がついた。ハンドタオルを鞄に入れたままだと。
軽く周りを見渡すと手を拭く用のキッチンペーパーくらいの強度の紙が
恐らくティッシュボックスであろうものからティッシュのように顔を覗かせていた。
僕はその紙を2枚立て続けに取り手を拭く。
そして足下に置いてあった黒の円錐形のゴミ箱に放る。
さらにまた2枚取り今度は顔を拭く。
化粧水を塗るときのようにパンパンと顔に紙を当て、顔から流れる水滴を拭き取る。
少し硬い紙が心地悪い。直に紙は水分を含み柔らかくなっていった。
まだ少し顔の湿度は高かったが僕は紙を丸めてゴミ箱へ球を放った。
僕は洗面器に少しだけ腰をかけ鏡を背に入口の方向に体を向ける。
右ポケットからスマホを取り出し、電源をつける。
ロック画面に表示された時刻は9時17分。
これまたなんとも言えぬ時間だった。
「いつの間にこんな経ってたの!?」って程でもないし
「まだこんな時間か」という時間でもない。
まぁいいかと画面を上にスワイプしロックを解除する。
ロックを解除するとLIMEのトークの一覧の画面が出る。
1番上にはLIMEのスタンプの宣伝のメッセージが届いていた。
その下に母その下に鹿島のとのトークがあり、鹿島の下に匠のトークがあった。
トークの横に3という数字が表示されている。

そろそろ返すか

と思いサークルの飲み会の最中、その居酒屋のトイレで返信をすることにした。
匠のトークをタップする。すると親友に送るかね?と思うような長文が表示された。
これは偏見になるがまるでメンヘラの女の子が
別れを切り出された彼氏に送ったメッセージのようで
返す気どころか読む気すらも削がれそうになる。
3という数字からして、この長文が3つか?と思うとさらに読む気が削がれそうになった。
僕は一度画面から目を逸らし斜め上を見て深呼吸をし
もう一度画面と向き合うことにした。意を決して読み始める。

どれくらい経っただろうと思い画面の右上に表示された時刻を見ると
読み始めて5分が経っていた。

長かったぁ~

と目を見開き、ホロ酔いながらに読んだ自分を褒めたくなった。
するとトイレに1人先輩が入ってきた。
「おおっ」
と言われたので
「お疲れ様です」
と返した。先輩は小便器のほうへ向かい用を足しているようだった。すると
「おぉーい!大丈~夫かぁ~!?」
と投げかけていた。すると先程から閉まっていた入口に一番近い個室から
唸り声のような呻き声のような声が聞こえた。
やはり酔っ払って気持ち悪くなっていたらしい。

2時間くらいでここまで酔うってバカみたいなペースで飲んだのかなぁ?
それとも単にお酒弱いのかな?

少し個室のほうを振り返り、そんなことを心の中で思った。
用を足し終わった先輩はその個室をノックし
「マジで大丈夫かぁ!?」
と投げかけた。すると中から
「うぅ~ん…。ちょっと落ち着いた」
「鍵開けて?」

ガチャ

鍵が開いた。
「もう吐くのは平気?」
「おん」
「眠いなら席戻って席で寝ろ?な?」
と言い肩を組みながら出て行った。

優しい先輩だな

と思ったのと同時に

あの先輩手洗ってない

とも思った。トイレを出ていく先輩2人の背中を目で追い
背中が見えなくなって視線をスマホに戻した。匠の長文をまとめると

このマンガ、作画が綺麗!そして大前提でこの作品も大好きだし
マンガ自体すべて大好きという上で聞いてほしい。
この作品はハーレムでオレはそもそもハーレムものが好きじゃない。好きだけど。
なぜならたとえば主人公が6人の女の子から好かれてるとしたら
最終的に1人に絞ったとき残り5人は傷ついて終わる。
曖昧な返事、曖昧な態度を取ってこんな可愛い子たちの大切な数年
数ヶ月を奪っておいて最終的に傷つけて終わるなんて。と思ってしまうから。
そしてもう1作品。この作品も大前提として大好きという上で聞いてほしいけど
そもそもこんなギャルはいない。非現実的。
こういう現世界での日常系作品にオレが求めているのは現実逃避2、3割で
残り7、8割は「こんな物語がオレのいるこの世界のどこかで起こっているのかも」っていう
期待なのよ。わかる?
現世界での日常系であるが故に読んでる途中で「?」とか
非現実的な部分が出たときに冷めるのよ。
現実逃避8割とかしたいときは異世界ものや能力系、バトル系を読むからね?
あと、ストーリー構成にも言いたいことがある。
良い話を描くとき、描きたいときに1話目とか
いやそもそもストーリー通して全体的にエロ要素はいらない。不要も不要。
なぜなら後々良い話になってきたころに
序盤やストーリー通して全体的に散りばめられたその「安易なエロ要素」が足を引っ張るから。
そもそも良い話を前提に描くとしたらエロはいらない。
でも逆にエロメインにするなら、今までがあまりにもバカバカしかったから
ちょっとの良い話が振り幅が大きいから、めちゃくちゃ良い話に感じる。

と言った話をもっと丁寧にもっと事細かく書いていた。そして最後に

まぁ異世界とか能力系とかバトル系はこれからも根強く人気だろうけど
これからオレたちヲタクに人気が出るのは1人の男に対し1人女の子。つまり純愛系だ。
日常系というか現世界の作品でこれからも根強く人気だろうなと思うのは
良い話とかスポ根とかギャグ、コメディーとかかな?
あと単純にエロメインの作品はこれからも人気だろうね。
でもね!恋愛系に関してはこれからの時代、純愛ものが圧倒的に人気になる!

と断言していた。まぁいろいろ言いたかった。
「オレはそもそも2次元に詳しくない」とか
「なんで「「オ」タク」じゃなくて「「ヲ」タク」なの?」とかそんなことを言いたかった。
そしてなにより「そんなこと言うならお前が描けよ」と言おうとしたけど

描いてるんだよなぁ~

と思った。

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