猫舌ということ。

結愛

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出会い

第16話

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外に出て鹿島が気がついた。
「怜ちゃん!」
いきなり大きな声で名前を呼ばれ、少しだけ心臓が飛び跳ねる。
「っくりしたぁ~」
そう言い鍵を持った右手を胸に当て、鹿島を見る。
「怜ちゃん!髪セットしてない!」
そう言い鹿島は自分の頭を指指す。
「あぁ、すっかり忘れてたな」
そう言いながら鍵を鍵穴に差し回す。
そして鞄に鍵をしまい駅までの道を歩き出す。
「どうするよぁ~」
少しふにゃふにゃしたような歩き方をしながら
少しふにゃふにゃした言い方でそう言ってきた。
「別にセットせんでもいいよ」
「えぇ~せっかく「カッコいい」まであと一歩なのにぃ~?」
相変わらず少しふにゃふにゃした歩き方で
少しふにゃふにゃした言い方で褒めてきた。
鹿島に褒められて内心少しニヤつく。でも顔には出さず、清ました顔をし
「ほらナチュラルスタイルってのもあるだろ」
自分でも思うほどサラサラの髪に手櫛を通しながら言う。
「ナチュラル系っていうか韓国系?」
そう僕を見ながら言う。すると鹿島が僕より一歩か二歩ほど前に出て
僕のほうを見ながら後ろ歩きで
「韓国系、ナチュラル系にするにしてもちょっとはセットしたいなぁ~」
「…しょうがない」
「お!どっかでセットする?する?」
ちょっとワクワクしているような鹿島に
「しょうがない。そういう運命だったんだ…。諦めよう」
と深刻な顔を作りそう告げる。
「諦める方向かーい」
そり返るようにした鹿島に笑いながらも
「危ない、危ないから」
と言い腕を引っ張り引き寄せる。少しふらつき鹿島が僕の右側に来る。
必然的に僕が車道側に来る。
先程は鹿島が僕の一歩二歩前で歩いていたが今度は前に鹿島の姿がない。
視線を感じ右後ろの鹿島のほうを見ると
案の定鹿島が僕に視線のレーザービームを飛ばしていた。少し戸惑い
「ん、ん?な、なに?」
とレーザービームを飛ばす鹿島に尋ねると
「いや怜ちゃんいっつもオレのことカッコいいカッコいい、モテるモテるってゆーけどさ?」
「いやそんな言ってない」
「いや言ってるよ」
「親友にいっつもカッコいいカッコいいって言ってたら気持ちわりぃだろ」
「ん~…。別にオレは気持ち良いけど?」
とおちゃらけて見える顔だが
どこか三割くらいは本気なんじゃないかと思う表情でそう言う。
「え…引くわぁ~」
と眉間に皺を寄せ「うわぁ~」という表情を鹿島に向ける。
「違う違う!本題からズレてるズレてる」
と肘を曲げ両手を前に出し、少し顔を下に向け首を振りながら言う。
「本題は!オレのこと散々ゆーけど、怜ちゃんもよっほどカッコいいじゃんって話!」
もう一度眉間に皺を寄せ今度は「は?」という表情向ける。
「なに言ってんの?」
「さっきのやつ」
「さっきのやつ?」
オウム返しする。
「これこれ」
そう言いながら鹿島は左手で自分自身の右腕を掴む。
そして誰かに引っ張られているような素振りを見せた。
それでようやく話の軸を理解した。
「あれか」
右手で右のこめかみ部分を掻く。
「あれがなに?」
「あれはモテ男…というか、カッコいいでしょ!」
とある塾の人気講師の流行ったポーズのようなポーズをとりながら
鹿島がまるで力説したかのように言う。
まぁ鹿島に褒められると相変わらず嬉しいし
振り返ると自分でもカッコいいと思った。しかし
「あんなので「はぁ~カッコいい~好きですぅ~」なんて
マンガとかアニメとかドラマの世界の話だよ。
実際やったところで「おぉっ…ありがと」くらいの
なんとも言い難い反応でジ エンドですよ」
そう軽く女の子の真似をするように高い声を出し状況説明をした。
「そうかなぁ~…」
いまいち納得できないような感じで引き下がる。
「鹿島ってカッコいいしモテそうなのに
女の子に関しては幻想的というか現実的な考え持ってないよな」
「あぁ~まぁゲームばっかだしな。
対人ゲームで疲れて息抜きでたまにギャルゲーやるからその影響かもな」
「ほんと寝ても覚めてもゲームよな。てかゲームの休憩でゲームって」
とスゴさと多少の呆れと鹿島っぽいなという気持ちで微笑みながらそう言った。
「まぁゲーマーなもんで」
スーパーヒーローのように両拳を腰にあて胸を張りながら自慢してくる。
「別に羨ましくねぇ」
そう言い2人で笑い合った。
「てかてかてか!さっき怜ちゃん、オレのこと「カッコいい」って言ったじゃん!」
まるでめちゃくちゃ難しいクイズの答えが誰より先にわかったかの如く捲し立ててきた。
「ん~…。ん?うぅ~ん…」
と本当はその会話を覚えているがワザとらしく考え込む仕草をし
「いや、思い出せないなぁ~」
と言うと
「え?おじいちゃんなん?」
「はい差別的発言~炎上炎上」
「え?いや、違う違う!違います!違いますよ!皆さん!」
とまるで周りを誰かに囲まれその周りの人に説明をするような仕草をする。
そんなバカなやり取りをしつつ、笑いながら歩いているといつの間にか駅についていた。
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