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初めての日
第6話
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新郎新婦が再入場してくる。拍手で迎える。
「黒いドレス?」
「今流行ってるらしいよ。若い子の間で」
「へぇ~。オレらのばあちゃんだったら信じられないだろうな」
「あの子らのおじいちゃんおばあちゃんもあんま良くは思ってないだろ」
そのまま各テーブルの周りを練り歩く。拍手する。
その後祝辞が読まれ、その後今どきといえるビデオでの催し物。
まずは新郎、千葉くんが奥さんの小学校を訪れてそのときの友達や先生と話したり
中学校に訪れてそのときの友達や先生と話したり
高校に訪れてそのときの友達や先生と話したり
ネイリストを目指したときに入った専門学校に訪れてそのときの友達や先生と話したりして
会場は大いに盛り上がっていた。なんと次は千葉くんの奥さんが
千葉くんの小学校のときの友達と小学校の教室で
曲に乗せてダンスをしているビデオが流れた。
パッっと切り替わると今度は中学校のときの友達が中学校の教室でダンスを。
その次は高校のときの友達が高校の教室でダンスをしていた。
先生なんかも出てきて、そのときのクラスメイトは大いに沸いていた。
「オレが結婚するってなったら風天(ふうあ)に任せるわ」
「別にいいけど、地元の友達とかいないのかよ」
「全然高校の友達とか今でもLIMEしたりするけど、社会人って忙しいじゃん?
まあ、たまに会ってるやついるけど~…まあ、うん。
たまに会ってるそいつと風天(ふうあ)、うん、その2人に任せるかな」
「全然オレでいいならいいけど、予定は?」
「なっしん」
「でしょうね」
「そーゆー風天(ふうあ)は?」
「ん?予定?ないない。アメプロ一緒に楽しめる人が理想。
だからそうそう見つからんよねぇ~。本格的にマッチングアプリでもするかな」
「まあそれもあるけど、こーゆーの任せられる人いんのかよ」
「あ、そっち?いるよぉ~?」
「いるんだ?」
風天(ふうあ)も僕と同じ仲間だと、僕と同じく任せられる相手は僕だと思っていたから
なぜか少し心の中で落胆していた自分がいた。
「地元の友達?」
「いや?地元かぁ~…そういえば結婚するってなったら、こっち呼ばないといけないのか…。
来てくれるかな?」
「たしかに。でも東京出てきてる人も多いでしょ」
「まあね。大学を機に上京したやつは多いね。ま、オレもその1人だけど」
「両親、親族呼んで東京でホテル泊まってもらって。
てかまあ同級生で北海道いる子がいればその子もか」
「そう考えると地方出身って不便ね」
「北海道を地方って言うなよ。一応都会だろ」
「んん~…。んん~?」
「で、誰?その任せられる人って。大学?中学の友達とか?」
「海ー」
不覚にもキュンとしてしまった。嬉しかった。
「ふっ。同じかよ」
「オレはしゃーなくない?上京組なんだから。
海は東京出身のくせにオレにしか頼めないってヤバいよ?」
「うるせーよ」
そのビデオの後、うちの会社で撮ったビデオも流れた。
「あぁ~、これか。オレらも撮らされたやつ」
「はいはい」
軽快な音楽の中まずは受付の人や警備員さんが笑顔で映る。その後すぐ僕たちが出てきた。
前千葉くんのいた席。そこを囲むように風天(ふうあ)と僕が飲み物を飲んだり
まるでそこに千葉くんがいるように喋りながら、前千葉くんがいた席のパソコンをつける。
すると画面に風天(ふうあ)と僕からのメッセージ。
「千葉くん!おめでとう!
千葉くんの明るさでこれからも会社をそして家庭も明るくしておくれ!
泥好木(どろすき) 風天(ふうあ)」
「千葉くんおめでとう!子どもみたいな千葉くんに先を越されるとは…。
家庭のためにも身体を壊さないように。末長くお幸せに。
水貝井(みかい) 海(うみ)」
その後、女性の先輩の皆口さんと女性の後輩の落合も映像に映っていた。
その後、コーポレートマーケティングチームはそこで終わり
次は今、千葉くんが所属しているデジタルマーケティングチームへ。
「前から思ってたけデジタルってメガネ多いよな」
「多いね。目悪くなるんかね」
「それはオレらも同じじゃない?」
「まあ…たしかに?でもオレらよりじっくり見んじゃない?」
「そーなんかな。で、結婚式だからコンタクトの人が多いと」
「だと思うけど」
会社のビデオが終わり、サプライズで新郎の姉だったり
新婦の弟やおじいちゃんおばあちゃんだったりのビデオメッセージが流れた。
新郎の千葉くんもうるっとしていたし、新婦はボロボロ泣いていた。
僕も不覚にも涙が出そうになる。
「毎回このご家族のサプライズメッセージは…なんか…来るわ」
「わかる…。なんだろうね。今生の別とかでもないはずなのになんかグッっと来るよね」
「歳かな」
「わからん」
そのビデオメッセージの後、新郎新婦から両親への感謝の手紙の読み上げだったり
新郎新婦が生まれたときの体重のテディーベアが贈られたりしていた。
その後、両家の代表の方が挨拶とお礼の言葉を読み上げた。
「皆様、楽しい披露宴もいよいよフィナーレとなります。
新郎様より謝辞のお言葉を頂戴したいと思います」
すると千葉くんが立ち上がり、マイクのほうへ向かう。
「えぇ~。本日はお忙しい中
私たち2人のためにお集まりいただき、誠にありがとうございました。
スピーチを担当してくださった皆様、ビデオに出演してくださった皆様
ビデオを撮ってくれた君!ビデオを編集してくれた君!
そして私たちのわがままを聞いてくださった式場のスタッフの皆様
本当にありがとうございました!
私も華さんへサプライズでビデオを撮ったのですが
まさか華さんも私の母校を訪れていたとは…。
すごく驚いたし、懐かしくて、なんか泣きそうになりました。
これからもしかしたら、さまざまな壁にぶつかってしまうことがあるかもしれません。
そのときは2人力を合わせて乗り越えていきたいと思います。
これからもお互い支え合い、明るく楽しく、笑顔の絶えない家庭を築いていきたいと思います。
えぇ~。皆さん、本日は楽しんでいただけましたでしょうか?楽しんでいただけましたか?」
「楽しかったー!!」
クスクス笑いが起こる。
「良かったです。一応この後二次会があるので
二次会に参加される方はまたよろしくお願いいたします。
一旦ここで区切りとさせていただきます。
本日は私たちの式にご参加くださり、本当にありがとうございました!」
会場が大きな拍手で包まれる。
「ありがとうございました」
司会のスタッフの方の声が聞こえる。
「新郎新婦のご退場です。今一度大きな拍手でお送りください」
新郎新婦が立ち上がり、各テーブルの周りを回りながら退場していった。拍手で見送った。
「それではこれにて披露宴は終了となります。二次会がございますので
ご参加なされる方はスタッフの案内の下、会場へ足をお運びください。
皆様、本日は当式場へ足をお運びいただき、本当にありがとうございました。
お忘れ物のないようにお席をお立ちください。本日は本当にありがとうございました」
拍手が湧く。
「二次会行く?」
「海は?」
「まあ。時間あるし」
「海行くんなら行くかな」
「うっし。行くか」
「その前にタバコ行っていい?」
「お供します」
名前の書いてあるカードとお品書きを引き出物の紙袋に入れて席を立つ。
出口付近で千葉くんと奥さんが参列者を見送るために並んで立っていた。
1人1人に水を渡して挨拶をしている。
「海先輩!本日はありがとうございました!あ!風天(ふうあ)先輩も!
お2人ともありがとうございました!」
「いえいえ。子どもみたいな顔してた千葉くんが…なんか立派な顔んなったな」
「そうだな…。いや?顔はまだガキだぞ?」
「ちょっと風天(ふうあ)先輩ー」
3人で笑った。
「お2人とも二次会行くっすか?」
「うん。行こうって話になってる」
「うん。行く行く」
「じゃ引き続きよろしくお願いします」
「おう」
「おーらい」
「じゃ、マジでおめでとう」
「おめでとう!」
「ありがとうございます!」
「ひさしぶりに3人でやっとく?」
風天(ふうあ)が手でキツネを作る。
「お!懐かしい!いいっすよー!」
千葉くんも手でキツネを作る。
「やってたな。お前ら」
「ほら海も」
仕方なく僕も手でキツネを作る。
「Tooooo~」
「「Sweeeeet!」」
風天(ふうあ)と千葉くんが叫ぶ。僕は掛け声がわからず
ただただキツネの口部分を風天(ふうあ)と千葉くんのキツネの口部分に合わせる。
「じゃ、また後でー!」
「よろしくお願いします!」
奥さんのほうにも
「この度は本当におめでとうございます」
と頭を下げて会場を後にした。外に出て喫煙所へ行く。
「二次会の会場あそこか」
「そうねぇ~」
「あれ?今日は電子じゃないんだ?」
「ん?電子もあるけど?」
「あ、そうなん」
「ゆっくりできるときは紙なのだよ」
「ふぅ~ん。知らんけど」
「おぉ!海!いた!」
女性が近づいてくる。先輩の皆口さんだ。
「お、お疲れっす」
「お疲れ様でーす」
皆口さんの後ろには落合もいた。
「お、落合も。来てるとは聞いてた」
「リーダーからですよね?」
「そうそう」
「お?後ろにいるのは泥好木さんですか?」
「おぉ!泥好木も一緒にってまあそうか。一緒にいるわな。2人仲良いもんね」
「皆口さんお疲れ様っすー。あ、落合もおっす」
「おっすっす!」
「2人とも二次会行くの?」
「はい。行こうと思ってますよ」
「あ、そうなんだ」
「お2人は行くんすか?」
「行くよー。デジタルに同期もいるし」
「なるほど。じゃ、こいつがタバコ吸ってから行くんで」
「オッケー。また後でねぇ~」
「また後で!」
「うっす」
「うーっす」
皆口さんと落合に頭を下げ、手を振る。
風天(ふうあ)がタバコを吸い終えるまで他愛もない話をし、二次会の会場へ足を向けた。
二次会の会場へ入ると二次会に出席する人たちが記名していた。
「ご記名をお願いします」
と言われ記名する。
「水(みず)貝(かい)…」
みかいですと言いたかったが、別に漢字で探しているんだろうからと特に指摘はしなかった。
「はい。みずかい…様ですね」
あ、ボヤかした。
「では会費が7千円になります」
「おっ、はいぃ~」
あ、会費あったんだっけ?財布持ってきて良かったー。と思った。
しかし財布を開くとお札が8千円しかなくて少しヒヤッっとした。
「ない感じですか?」
隣で風天(ふうあ)の声が聞こえる。
「あのぉ~二次会へのご出席の連絡はされましたでしょうか?」
「あ、そんなのあったんすか」
「はい」
「あ、して…ないっすね。無理な感じっすか?」
「あ、いえいえ。大丈夫です。えぇ~っと。じゃあ会費が7千円になります」
「おぉ。はい。了…っ解っです」
そんな会話を聞きながらスタッフの方に7千円を手渡す。
「はい。ちょうど7千円ですね。こちらビンゴカードになります」
「あ、ありがとうございます」
ビンゴカードを受け取って隣で記名していた風天(ふうあ)と合流する。
「どしたん?」
「いや、名前なかったみたいで」
「あ、へぇ~。なんで?」
「なんか事前の参加のやつやってなかったみたい」
「あぁ、結婚式参加不参加のURL、LIMEで来て
その後にあった二次会のやつはやんなかったんだ?」
「うん。そもそも二次会の参加不参加のやつ来てない?」
「は?来てるはずだよ。お前今ここにおるやん」
「え?どゆこと?」
「結婚式の参加不参加の後の後にあったんだよ。同じURL先に」
「あ、え、マジか」
「そそ。ま、とりあえず飲み物貰おうぜ」
「ビールね」
「そ」
ドリンク係のスタッフさんの元へ行き、風天(ふうあ)とビールを頼んだ。
「もう飲む?」
「オレは二次会構わず飲んでたけど」
「じゃ、とりあえず乾杯」
「千葉くんおめでとう」
「おめでとうー」
カコンッっとグラスをあて、風天(ふうあ)と乾杯しビールを飲む。
「んんー…。タバコ吸てぇー」
「さっき吸ったろ」
「ビール飲むと欲しくなるんですよー」
「もうちょい我慢して」
しばらくすると
「二次会にご出席の皆様。大変お待たせいたしました。本日の主役、新郎新婦の入場です」
と司会の方のアナウンスが流れた。
「お。くる?」
「くるね」
ドアが開いて、千葉くんと奥さんが入ってきた。
披露宴でお色直しのときともまた違うドレスで入ってきた。拍手で迎える。
新郎新婦の特別席へ向かう。
「それでは新郎新婦もお席に着いたところで
二次会の乾杯の挨拶を新郎の千葉光(ひかる)様にお願いしたいと思います」
「はい。えぇ~、千葉光(ひかる)です」
「知ってまーす!」
会場にクスクスを笑いが起こる。
「二次会にお集まりいただいた皆様、本当にありがとうございます。
二次会は飲みに飲みまくって
さっき話せなかった人たちと交流して仲良くなってください!乾杯!」
「「乾ぱーい!!」」
風天(ふうあ)と僕ももうグラスの半分以下しかないビールで二度目の乾杯をした。
周りの知らない人たちとも一応乾杯をした。
「もう飲んじゃって次もらうか」
「うっし」
三度目、風天(ふうあ)とグラスをぶつけ合い、残りのビールを一気に飲み干した。
ドリンク係のスタッフさんの元へ行き、ビールのおかわりを貰った。
新郎新婦がそれぞれの高校時代の友達の元へ飲みに行っていて
その周りはめちゃくちゃ盛り上がっていた。
「海、なんか貰おうぜ。肉とかあるらしいし」
「行くか」
ビールをテーブルに置いて、小さいバイキングのようなところへ行った。
そこにはお肉だったりパンだったり、デザートにゼリーだったりケーキだったりがあった。
「んんー。ビール…あんま進まんな」
「繊細な味だから」
「それか」
「…あ…んん。うん。このちっこいホットドッグはうまい。ビール進む味してる」
「マジ?…おっ、…おぉ。なるほど。ほんとだ。いいね。こればっか食おう」
千葉くんが僕たちのところへ回ってきた。
「お疲れ様です!」
「おぉ!本日の主役じゃん!」
「おめでとー」
「ありがとうございます」
「先越されるとは」
「このやろー」
「あざっす。飲んでます?」
「飲んでる飲んでる」
「ビール…何杯目?」
「3?かな?」
「かな?」
「いってますね~」
「このホットドッグうまいよ。食べた?」
「まだっす。食っていいっすか?」
「食べな」
「いただきます。…おぉ!うまっ!ちょ腹減ったっすね」
「新郎はやっぱ体力使う?」
「まあ…そうっすね。今日だけとかじゃなくて、式決めてから終わるまでずっと体力いるっす」
「あぁ、いろいろ決めたりとか」
「そうっす」
「奥さんは大学の同級生?ではないのか。歳上だし」
「そうっすね。同じサークルでした。サークルの飲みで知り合って、付き合って
で華が大学中退して専門学校に入り直して、でネイリストになったって感じっすね」
「へぇ~。大学中退したんだ?」
「オレもビックリしたっすよ。辞めるって言うから、え、なに?どしたん?って。
したらネイリストになりたいから専門行くって」
「夢追ったんだ。奥さんカッケーな」
「たしかにカッケー」
「そうなんす。カッケーんす」
「惚気やがって」
「こんやろー」
千葉くんが照れる。
「あ!千葉ー!」
「千葉ー!」
皆口さんと落合も合流した。
「あぁ~!皆口さんに落合じゃん!元気?」
「元気元気。おめでとうございます」
「おめでとー!」
「ありがと!ありがとうございます!」
そこから千葉くんがいたときの仕事での思い出話をした。
その間、食事のおかわりだったり、飲み物のおかわりに行ったりした。
千葉くんが他のところへと回った行った。
「幸せの絶頂!って感じだったね」
「それな」
「それはそうでしょー。今が一番楽しい時期ですよ」
「いろいろと含みがあるっすね」
「やめてくださいよ。祝いの場で」
「お2人は皆口さんの結婚式行ったんですか?」
「行ったよ。2人で。な?」
「行った行った。新卒入社1年目」
「そっか落合はいってないんだ?」
「行ってないですね。何年前ですか」
「えぇ~っと?新卒入社1年目だから23。…5年前?6年?」
「私入社してないです。まだ大学生」
「わけぇ~」
「ほんと若いねぇ~」
「うらやまっ」
そんな話をしているとビンゴ大会が始まった。
1抜けの1位の人にはなんと草津の旅館の1泊2日のペアチケットが贈られるらしい。
次に抜けた2位の人にはnyAmaZonのギフトコード。
3から5位の人にはムーンバックスのプリペイドカードが贈られるらしい。
もちろん嬉しいのだけど、1位になったとしても、ペアチケット…。
行く人がいないし、もし1位になったらリアクションに困る。
さらに3から5位に贈られるムーンバックスのプリペイドカードも
ムーンバックス行かないしなぁ~と思った。
当たるとしても2位でお願いします。と心の中で願った。
しかしその願いを無視するようにどんどん穴が開いていく。
「海リーチはやっ!」
「え!水貝井(みかい)もうリーチなの!?」
「海先輩はやっ!」
「もうリーチの方いらっしゃいますか?」
司会の方の声が聞こえるが恥ずかしくて手を挙げずにいると
「はい!この人リーチです!」
と風天(ふうあ)が僕の腕を持ち上げる。
「あ、はい。リーチです」
と言ったのが恥ずかしいほど最後が埋まらない。
気づけば風天(ふうあ)も皆口さんもリーチになっていた。
「最後埋まらんね」
「な。もうトリプルリーチなのに」
「お次行きますよー?…三十…三番!」
「え…マジ?」
「え、いった?風天(ふうあ)いった?」
「いってしまったよ…」
「ビンゴ!」
つい言ってしまった。
「お!ビンゴの方!いらっしゃるようで」
風天(ふうあ)の背中を押す。
「マジ?」
「マジ」
「おめでとうございます~!」
「風天(ふうあ)先輩ー!やったっすね!」
「おぉ、ありがとう」
「見事一位の方には…こちら。草津の旅館1泊2日券をプレゼントさせていただきます!
おめでとうございます!」
草津のどこかの旅館の写真が貼られ「1泊2日券!」と書かれたそこそこ大きなパネルを貰って
みんなから拍手ももらっていた。大きなパネルを持ってこちらに来る風天(ふうあ)。
「なんか恥ずいわ」
「おめでとう!誰か一緒に行く人いるんすか!」
パネルで軽く殴られた。その後もビンゴは続くがリーチは増えるがビンゴにはならない。
唯一欲しいと思っていたnyAmaZonのギフトカードも誰かの手に渡り
いよいよムーンバックスのプリペイドカードしかなくなった。
正直当たっても困るなぁ~と思っていると
神様はほんと幸せなことで人が困る顔を見るのが好きらしく
見事ビンゴとなり、ムーンバックスのプリペイドカードが当たった。
落合も当たって喜んでいた。
「そのパネルどうすんの?」
「さあ?こーゆーの当たったことないからどうすりゃいいのかわからん」
「だよなー」
「これはね後々パネル回収されて、その代わりに引換券がもらえるのよ」
「おぉ。さすが皆口さん。主催者したことあるだけある」
「そうそう。結婚式終わったら2日くらい寝るから」
「そんな!?」
「ハイパー疲れるよ。まあ、あと安心もあって死んだように寝れる」
ビンゴが終わり、その後も千葉くんの奥さんが回ってきてくれて
挨拶をしたり、ビールをおかわりしたり割と楽しんだ。
「それでは皆様。楽しい時間はあっという間で
そろそろお開きの時間が近づいてまいりました。
本日の主役、新郎新婦がご退場なされます。大きな拍手でお送りください」
拍手する。千葉くんと奥さんが腕を組み、大回りして退場していった。
「それでは皆様。お忘れ物のないように。
本日は本当にありがとうございました。お気をつけてお帰りください」
飲みかけのビールを一気に飲み干し
「行くか」
「行きましょか」
と風天(ふうあ)と会場を後にした。
パネル引き換えるからと僕だけ一足先に外に出た。外はもう暗くなっていた。
「黒いドレス?」
「今流行ってるらしいよ。若い子の間で」
「へぇ~。オレらのばあちゃんだったら信じられないだろうな」
「あの子らのおじいちゃんおばあちゃんもあんま良くは思ってないだろ」
そのまま各テーブルの周りを練り歩く。拍手する。
その後祝辞が読まれ、その後今どきといえるビデオでの催し物。
まずは新郎、千葉くんが奥さんの小学校を訪れてそのときの友達や先生と話したり
中学校に訪れてそのときの友達や先生と話したり
高校に訪れてそのときの友達や先生と話したり
ネイリストを目指したときに入った専門学校に訪れてそのときの友達や先生と話したりして
会場は大いに盛り上がっていた。なんと次は千葉くんの奥さんが
千葉くんの小学校のときの友達と小学校の教室で
曲に乗せてダンスをしているビデオが流れた。
パッっと切り替わると今度は中学校のときの友達が中学校の教室でダンスを。
その次は高校のときの友達が高校の教室でダンスをしていた。
先生なんかも出てきて、そのときのクラスメイトは大いに沸いていた。
「オレが結婚するってなったら風天(ふうあ)に任せるわ」
「別にいいけど、地元の友達とかいないのかよ」
「全然高校の友達とか今でもLIMEしたりするけど、社会人って忙しいじゃん?
まあ、たまに会ってるやついるけど~…まあ、うん。
たまに会ってるそいつと風天(ふうあ)、うん、その2人に任せるかな」
「全然オレでいいならいいけど、予定は?」
「なっしん」
「でしょうね」
「そーゆー風天(ふうあ)は?」
「ん?予定?ないない。アメプロ一緒に楽しめる人が理想。
だからそうそう見つからんよねぇ~。本格的にマッチングアプリでもするかな」
「まあそれもあるけど、こーゆーの任せられる人いんのかよ」
「あ、そっち?いるよぉ~?」
「いるんだ?」
風天(ふうあ)も僕と同じ仲間だと、僕と同じく任せられる相手は僕だと思っていたから
なぜか少し心の中で落胆していた自分がいた。
「地元の友達?」
「いや?地元かぁ~…そういえば結婚するってなったら、こっち呼ばないといけないのか…。
来てくれるかな?」
「たしかに。でも東京出てきてる人も多いでしょ」
「まあね。大学を機に上京したやつは多いね。ま、オレもその1人だけど」
「両親、親族呼んで東京でホテル泊まってもらって。
てかまあ同級生で北海道いる子がいればその子もか」
「そう考えると地方出身って不便ね」
「北海道を地方って言うなよ。一応都会だろ」
「んん~…。んん~?」
「で、誰?その任せられる人って。大学?中学の友達とか?」
「海ー」
不覚にもキュンとしてしまった。嬉しかった。
「ふっ。同じかよ」
「オレはしゃーなくない?上京組なんだから。
海は東京出身のくせにオレにしか頼めないってヤバいよ?」
「うるせーよ」
そのビデオの後、うちの会社で撮ったビデオも流れた。
「あぁ~、これか。オレらも撮らされたやつ」
「はいはい」
軽快な音楽の中まずは受付の人や警備員さんが笑顔で映る。その後すぐ僕たちが出てきた。
前千葉くんのいた席。そこを囲むように風天(ふうあ)と僕が飲み物を飲んだり
まるでそこに千葉くんがいるように喋りながら、前千葉くんがいた席のパソコンをつける。
すると画面に風天(ふうあ)と僕からのメッセージ。
「千葉くん!おめでとう!
千葉くんの明るさでこれからも会社をそして家庭も明るくしておくれ!
泥好木(どろすき) 風天(ふうあ)」
「千葉くんおめでとう!子どもみたいな千葉くんに先を越されるとは…。
家庭のためにも身体を壊さないように。末長くお幸せに。
水貝井(みかい) 海(うみ)」
その後、女性の先輩の皆口さんと女性の後輩の落合も映像に映っていた。
その後、コーポレートマーケティングチームはそこで終わり
次は今、千葉くんが所属しているデジタルマーケティングチームへ。
「前から思ってたけデジタルってメガネ多いよな」
「多いね。目悪くなるんかね」
「それはオレらも同じじゃない?」
「まあ…たしかに?でもオレらよりじっくり見んじゃない?」
「そーなんかな。で、結婚式だからコンタクトの人が多いと」
「だと思うけど」
会社のビデオが終わり、サプライズで新郎の姉だったり
新婦の弟やおじいちゃんおばあちゃんだったりのビデオメッセージが流れた。
新郎の千葉くんもうるっとしていたし、新婦はボロボロ泣いていた。
僕も不覚にも涙が出そうになる。
「毎回このご家族のサプライズメッセージは…なんか…来るわ」
「わかる…。なんだろうね。今生の別とかでもないはずなのになんかグッっと来るよね」
「歳かな」
「わからん」
そのビデオメッセージの後、新郎新婦から両親への感謝の手紙の読み上げだったり
新郎新婦が生まれたときの体重のテディーベアが贈られたりしていた。
その後、両家の代表の方が挨拶とお礼の言葉を読み上げた。
「皆様、楽しい披露宴もいよいよフィナーレとなります。
新郎様より謝辞のお言葉を頂戴したいと思います」
すると千葉くんが立ち上がり、マイクのほうへ向かう。
「えぇ~。本日はお忙しい中
私たち2人のためにお集まりいただき、誠にありがとうございました。
スピーチを担当してくださった皆様、ビデオに出演してくださった皆様
ビデオを撮ってくれた君!ビデオを編集してくれた君!
そして私たちのわがままを聞いてくださった式場のスタッフの皆様
本当にありがとうございました!
私も華さんへサプライズでビデオを撮ったのですが
まさか華さんも私の母校を訪れていたとは…。
すごく驚いたし、懐かしくて、なんか泣きそうになりました。
これからもしかしたら、さまざまな壁にぶつかってしまうことがあるかもしれません。
そのときは2人力を合わせて乗り越えていきたいと思います。
これからもお互い支え合い、明るく楽しく、笑顔の絶えない家庭を築いていきたいと思います。
えぇ~。皆さん、本日は楽しんでいただけましたでしょうか?楽しんでいただけましたか?」
「楽しかったー!!」
クスクス笑いが起こる。
「良かったです。一応この後二次会があるので
二次会に参加される方はまたよろしくお願いいたします。
一旦ここで区切りとさせていただきます。
本日は私たちの式にご参加くださり、本当にありがとうございました!」
会場が大きな拍手で包まれる。
「ありがとうございました」
司会のスタッフの方の声が聞こえる。
「新郎新婦のご退場です。今一度大きな拍手でお送りください」
新郎新婦が立ち上がり、各テーブルの周りを回りながら退場していった。拍手で見送った。
「それではこれにて披露宴は終了となります。二次会がございますので
ご参加なされる方はスタッフの案内の下、会場へ足をお運びください。
皆様、本日は当式場へ足をお運びいただき、本当にありがとうございました。
お忘れ物のないようにお席をお立ちください。本日は本当にありがとうございました」
拍手が湧く。
「二次会行く?」
「海は?」
「まあ。時間あるし」
「海行くんなら行くかな」
「うっし。行くか」
「その前にタバコ行っていい?」
「お供します」
名前の書いてあるカードとお品書きを引き出物の紙袋に入れて席を立つ。
出口付近で千葉くんと奥さんが参列者を見送るために並んで立っていた。
1人1人に水を渡して挨拶をしている。
「海先輩!本日はありがとうございました!あ!風天(ふうあ)先輩も!
お2人ともありがとうございました!」
「いえいえ。子どもみたいな顔してた千葉くんが…なんか立派な顔んなったな」
「そうだな…。いや?顔はまだガキだぞ?」
「ちょっと風天(ふうあ)先輩ー」
3人で笑った。
「お2人とも二次会行くっすか?」
「うん。行こうって話になってる」
「うん。行く行く」
「じゃ引き続きよろしくお願いします」
「おう」
「おーらい」
「じゃ、マジでおめでとう」
「おめでとう!」
「ありがとうございます!」
「ひさしぶりに3人でやっとく?」
風天(ふうあ)が手でキツネを作る。
「お!懐かしい!いいっすよー!」
千葉くんも手でキツネを作る。
「やってたな。お前ら」
「ほら海も」
仕方なく僕も手でキツネを作る。
「Tooooo~」
「「Sweeeeet!」」
風天(ふうあ)と千葉くんが叫ぶ。僕は掛け声がわからず
ただただキツネの口部分を風天(ふうあ)と千葉くんのキツネの口部分に合わせる。
「じゃ、また後でー!」
「よろしくお願いします!」
奥さんのほうにも
「この度は本当におめでとうございます」
と頭を下げて会場を後にした。外に出て喫煙所へ行く。
「二次会の会場あそこか」
「そうねぇ~」
「あれ?今日は電子じゃないんだ?」
「ん?電子もあるけど?」
「あ、そうなん」
「ゆっくりできるときは紙なのだよ」
「ふぅ~ん。知らんけど」
「おぉ!海!いた!」
女性が近づいてくる。先輩の皆口さんだ。
「お、お疲れっす」
「お疲れ様でーす」
皆口さんの後ろには落合もいた。
「お、落合も。来てるとは聞いてた」
「リーダーからですよね?」
「そうそう」
「お?後ろにいるのは泥好木さんですか?」
「おぉ!泥好木も一緒にってまあそうか。一緒にいるわな。2人仲良いもんね」
「皆口さんお疲れ様っすー。あ、落合もおっす」
「おっすっす!」
「2人とも二次会行くの?」
「はい。行こうと思ってますよ」
「あ、そうなんだ」
「お2人は行くんすか?」
「行くよー。デジタルに同期もいるし」
「なるほど。じゃ、こいつがタバコ吸ってから行くんで」
「オッケー。また後でねぇ~」
「また後で!」
「うっす」
「うーっす」
皆口さんと落合に頭を下げ、手を振る。
風天(ふうあ)がタバコを吸い終えるまで他愛もない話をし、二次会の会場へ足を向けた。
二次会の会場へ入ると二次会に出席する人たちが記名していた。
「ご記名をお願いします」
と言われ記名する。
「水(みず)貝(かい)…」
みかいですと言いたかったが、別に漢字で探しているんだろうからと特に指摘はしなかった。
「はい。みずかい…様ですね」
あ、ボヤかした。
「では会費が7千円になります」
「おっ、はいぃ~」
あ、会費あったんだっけ?財布持ってきて良かったー。と思った。
しかし財布を開くとお札が8千円しかなくて少しヒヤッっとした。
「ない感じですか?」
隣で風天(ふうあ)の声が聞こえる。
「あのぉ~二次会へのご出席の連絡はされましたでしょうか?」
「あ、そんなのあったんすか」
「はい」
「あ、して…ないっすね。無理な感じっすか?」
「あ、いえいえ。大丈夫です。えぇ~っと。じゃあ会費が7千円になります」
「おぉ。はい。了…っ解っです」
そんな会話を聞きながらスタッフの方に7千円を手渡す。
「はい。ちょうど7千円ですね。こちらビンゴカードになります」
「あ、ありがとうございます」
ビンゴカードを受け取って隣で記名していた風天(ふうあ)と合流する。
「どしたん?」
「いや、名前なかったみたいで」
「あ、へぇ~。なんで?」
「なんか事前の参加のやつやってなかったみたい」
「あぁ、結婚式参加不参加のURL、LIMEで来て
その後にあった二次会のやつはやんなかったんだ?」
「うん。そもそも二次会の参加不参加のやつ来てない?」
「は?来てるはずだよ。お前今ここにおるやん」
「え?どゆこと?」
「結婚式の参加不参加の後の後にあったんだよ。同じURL先に」
「あ、え、マジか」
「そそ。ま、とりあえず飲み物貰おうぜ」
「ビールね」
「そ」
ドリンク係のスタッフさんの元へ行き、風天(ふうあ)とビールを頼んだ。
「もう飲む?」
「オレは二次会構わず飲んでたけど」
「じゃ、とりあえず乾杯」
「千葉くんおめでとう」
「おめでとうー」
カコンッっとグラスをあて、風天(ふうあ)と乾杯しビールを飲む。
「んんー…。タバコ吸てぇー」
「さっき吸ったろ」
「ビール飲むと欲しくなるんですよー」
「もうちょい我慢して」
しばらくすると
「二次会にご出席の皆様。大変お待たせいたしました。本日の主役、新郎新婦の入場です」
と司会の方のアナウンスが流れた。
「お。くる?」
「くるね」
ドアが開いて、千葉くんと奥さんが入ってきた。
披露宴でお色直しのときともまた違うドレスで入ってきた。拍手で迎える。
新郎新婦の特別席へ向かう。
「それでは新郎新婦もお席に着いたところで
二次会の乾杯の挨拶を新郎の千葉光(ひかる)様にお願いしたいと思います」
「はい。えぇ~、千葉光(ひかる)です」
「知ってまーす!」
会場にクスクスを笑いが起こる。
「二次会にお集まりいただいた皆様、本当にありがとうございます。
二次会は飲みに飲みまくって
さっき話せなかった人たちと交流して仲良くなってください!乾杯!」
「「乾ぱーい!!」」
風天(ふうあ)と僕ももうグラスの半分以下しかないビールで二度目の乾杯をした。
周りの知らない人たちとも一応乾杯をした。
「もう飲んじゃって次もらうか」
「うっし」
三度目、風天(ふうあ)とグラスをぶつけ合い、残りのビールを一気に飲み干した。
ドリンク係のスタッフさんの元へ行き、ビールのおかわりを貰った。
新郎新婦がそれぞれの高校時代の友達の元へ飲みに行っていて
その周りはめちゃくちゃ盛り上がっていた。
「海、なんか貰おうぜ。肉とかあるらしいし」
「行くか」
ビールをテーブルに置いて、小さいバイキングのようなところへ行った。
そこにはお肉だったりパンだったり、デザートにゼリーだったりケーキだったりがあった。
「んんー。ビール…あんま進まんな」
「繊細な味だから」
「それか」
「…あ…んん。うん。このちっこいホットドッグはうまい。ビール進む味してる」
「マジ?…おっ、…おぉ。なるほど。ほんとだ。いいね。こればっか食おう」
千葉くんが僕たちのところへ回ってきた。
「お疲れ様です!」
「おぉ!本日の主役じゃん!」
「おめでとー」
「ありがとうございます」
「先越されるとは」
「このやろー」
「あざっす。飲んでます?」
「飲んでる飲んでる」
「ビール…何杯目?」
「3?かな?」
「かな?」
「いってますね~」
「このホットドッグうまいよ。食べた?」
「まだっす。食っていいっすか?」
「食べな」
「いただきます。…おぉ!うまっ!ちょ腹減ったっすね」
「新郎はやっぱ体力使う?」
「まあ…そうっすね。今日だけとかじゃなくて、式決めてから終わるまでずっと体力いるっす」
「あぁ、いろいろ決めたりとか」
「そうっす」
「奥さんは大学の同級生?ではないのか。歳上だし」
「そうっすね。同じサークルでした。サークルの飲みで知り合って、付き合って
で華が大学中退して専門学校に入り直して、でネイリストになったって感じっすね」
「へぇ~。大学中退したんだ?」
「オレもビックリしたっすよ。辞めるって言うから、え、なに?どしたん?って。
したらネイリストになりたいから専門行くって」
「夢追ったんだ。奥さんカッケーな」
「たしかにカッケー」
「そうなんす。カッケーんす」
「惚気やがって」
「こんやろー」
千葉くんが照れる。
「あ!千葉ー!」
「千葉ー!」
皆口さんと落合も合流した。
「あぁ~!皆口さんに落合じゃん!元気?」
「元気元気。おめでとうございます」
「おめでとー!」
「ありがと!ありがとうございます!」
そこから千葉くんがいたときの仕事での思い出話をした。
その間、食事のおかわりだったり、飲み物のおかわりに行ったりした。
千葉くんが他のところへと回った行った。
「幸せの絶頂!って感じだったね」
「それな」
「それはそうでしょー。今が一番楽しい時期ですよ」
「いろいろと含みがあるっすね」
「やめてくださいよ。祝いの場で」
「お2人は皆口さんの結婚式行ったんですか?」
「行ったよ。2人で。な?」
「行った行った。新卒入社1年目」
「そっか落合はいってないんだ?」
「行ってないですね。何年前ですか」
「えぇ~っと?新卒入社1年目だから23。…5年前?6年?」
「私入社してないです。まだ大学生」
「わけぇ~」
「ほんと若いねぇ~」
「うらやまっ」
そんな話をしているとビンゴ大会が始まった。
1抜けの1位の人にはなんと草津の旅館の1泊2日のペアチケットが贈られるらしい。
次に抜けた2位の人にはnyAmaZonのギフトコード。
3から5位の人にはムーンバックスのプリペイドカードが贈られるらしい。
もちろん嬉しいのだけど、1位になったとしても、ペアチケット…。
行く人がいないし、もし1位になったらリアクションに困る。
さらに3から5位に贈られるムーンバックスのプリペイドカードも
ムーンバックス行かないしなぁ~と思った。
当たるとしても2位でお願いします。と心の中で願った。
しかしその願いを無視するようにどんどん穴が開いていく。
「海リーチはやっ!」
「え!水貝井(みかい)もうリーチなの!?」
「海先輩はやっ!」
「もうリーチの方いらっしゃいますか?」
司会の方の声が聞こえるが恥ずかしくて手を挙げずにいると
「はい!この人リーチです!」
と風天(ふうあ)が僕の腕を持ち上げる。
「あ、はい。リーチです」
と言ったのが恥ずかしいほど最後が埋まらない。
気づけば風天(ふうあ)も皆口さんもリーチになっていた。
「最後埋まらんね」
「な。もうトリプルリーチなのに」
「お次行きますよー?…三十…三番!」
「え…マジ?」
「え、いった?風天(ふうあ)いった?」
「いってしまったよ…」
「ビンゴ!」
つい言ってしまった。
「お!ビンゴの方!いらっしゃるようで」
風天(ふうあ)の背中を押す。
「マジ?」
「マジ」
「おめでとうございます~!」
「風天(ふうあ)先輩ー!やったっすね!」
「おぉ、ありがとう」
「見事一位の方には…こちら。草津の旅館1泊2日券をプレゼントさせていただきます!
おめでとうございます!」
草津のどこかの旅館の写真が貼られ「1泊2日券!」と書かれたそこそこ大きなパネルを貰って
みんなから拍手ももらっていた。大きなパネルを持ってこちらに来る風天(ふうあ)。
「なんか恥ずいわ」
「おめでとう!誰か一緒に行く人いるんすか!」
パネルで軽く殴られた。その後もビンゴは続くがリーチは増えるがビンゴにはならない。
唯一欲しいと思っていたnyAmaZonのギフトカードも誰かの手に渡り
いよいよムーンバックスのプリペイドカードしかなくなった。
正直当たっても困るなぁ~と思っていると
神様はほんと幸せなことで人が困る顔を見るのが好きらしく
見事ビンゴとなり、ムーンバックスのプリペイドカードが当たった。
落合も当たって喜んでいた。
「そのパネルどうすんの?」
「さあ?こーゆーの当たったことないからどうすりゃいいのかわからん」
「だよなー」
「これはね後々パネル回収されて、その代わりに引換券がもらえるのよ」
「おぉ。さすが皆口さん。主催者したことあるだけある」
「そうそう。結婚式終わったら2日くらい寝るから」
「そんな!?」
「ハイパー疲れるよ。まあ、あと安心もあって死んだように寝れる」
ビンゴが終わり、その後も千葉くんの奥さんが回ってきてくれて
挨拶をしたり、ビールをおかわりしたり割と楽しんだ。
「それでは皆様。楽しい時間はあっという間で
そろそろお開きの時間が近づいてまいりました。
本日の主役、新郎新婦がご退場なされます。大きな拍手でお送りください」
拍手する。千葉くんと奥さんが腕を組み、大回りして退場していった。
「それでは皆様。お忘れ物のないように。
本日は本当にありがとうございました。お気をつけてお帰りください」
飲みかけのビールを一気に飲み干し
「行くか」
「行きましょか」
と風天(ふうあ)と会場を後にした。
パネル引き換えるからと僕だけ一足先に外に出た。外はもう暗くなっていた。
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