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初めての日
第3話
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目を開ける。ボヤァ~っとした視界。やけに眠い。体を起こし、上半身をストレッチする。
眠い目を擦りながら枕元のスマホを手に取る。そこで
あぁ、そういえば昨日、海綺ちゃんと飲みに行ったんだ
と思い出す。スマホの画面をつける。驚いた。10時38分。もう11時近かった。
ひさしぶりにこんなに寝た。なぜか少し嬉しかった。
ロックを解除すると海綺ちゃんとのLIMEのトーク画面が出てきた。
「あ、返信してない」
早急に海綺ちゃんへ返信を打ち込む。
「おはよう。昨日はごめんね。返信する前に寝ちゃったみたいで」
と送った。テレビをつけてテレビを見ながら歯を磨いて、洗面所へ行って顔を洗った。
袋麺を作って朝兼お昼ご飯を食べた。
時間があったので、パスタイム スポット 4でトップ オブ レジェンズをプレイした。
スマホを手に取る。画面をつけると海綺ちゃんから返信が来ていた。
「おはようございます!全然大丈夫です!ちなみに今週も金曜行きます?」
というメッセージだった。
「まあ」
と呟きながら返信を打ち込む。
「うん。行くよ」
とだけ打って送信した。別に行くところもないけど、なぜか少し外に出たくなり
ジーンズに履き替え、テキトーなTシャツに昨日の薄手のMA-1を羽織って外に出た。
本当に特に行くところも決めていなかったのでとりあえず近所を散歩することにした。
散歩にはうってつけの気温に天気。もうすぐ5月。気温も湿度も徐々に上がり始めている。
公園のベンチに座りスマホを出す。画面をつける。
「なるほどなるほど。私も行こうかな」
頭の中で計算する。
家賃は引き落とされてるはず。光熱費は今月は来ない。来月末に請求がきて…まあ大体…
「まあ全然支障はないか」
と呟き返信を打ち込む。
「一緒に飲もうか」
送信ボタンをタップする。ベンチから立ち上がり
スーパーに寄って夜ご飯の買い出しをして家に帰った。
パックのお米をお茶碗に盛り、レンジで温めた生姜焼きをパックのままテーブルに置き
カップの豚汁にお湯を入れた。ベッドを背もたれにして床に座る。
ローテーブルに置かれたカップの豚汁にお箸を入れかき混ぜる。
「いただきます」
1人で1人の部屋に呟く。カップの豚汁を啜る。うまい。
豚汁。豚汁。勝利にメニューに追加してもらおう。と思った。
生姜焼きも食べる。うん。うまい。生姜焼きもメニューに。ご飯も欲しいな。と思っていると
「うちは定食屋じゃないんですよぉ?」
と言っている勝利が容易に想像できた。
「ご馳走様でした」
と呟く。生姜焼きのパックと豚汁のカップはゴミ箱へ
お米を盛ったお茶碗は水で濯いで置いておいた。
日曜日、楽しみにしているドラマを見て、面白かったー。と思うのと同時に
あぁ、寝て起きたら仕事か。と憂鬱になりながら
テレビを消して部屋の灯りも消してベッドに寝転がる。
枕元のスマホを取り画面をつける。顔がブルーライトで照らされる。
「いえいえ」
という海綺ちゃんのLIMEのメッセージが表示される。
海綺ちゃんからの通知をタップし、海綺ちゃんとのトーク画面へ飛ぶ。
「一緒に飲もうか」
「はい!楽しみです!」
「じゃあ金曜まで仕事頑張ります」
「無理しない程度に頑張ってください」
「ありがとうね」
「いえいえ」
「いえいえ」で一区切りだし、ここで返信をするのもどうなんだ?とか思いながら
ここはスタンプだと「ありがとう」と打ち込み
猫が「ありがとう!」と言っているスタンプを送った。スマホの電源を落とす。
顔を照らしていたブルーライトも消え暗くなる。
また明日から仕事の1週間。でも違うのは金曜日。
いつもは1人で、まあ勝利と話しながらだけど、いつもは1人で飲んでいた。
しかし今度の金曜日は海綺ちゃんと飲むことになっている。ひょんな変化。
しかしそんな些細なことでも、いつもより仕事の嫌さが緩和されるような気がした。
目を瞑り、眠りにつく。口角が上がっている気がしたが気にせず
良い夢見れるかな?なんて思いながら眠った。
スマホけたたましいアラームに叩き起こされる。
鼻から息を吸い込み、ため息のように鼻から吐き出す。
憎たらしく、人間の朝の怠さも知らずにただ淡々と鳴っているスマホのアラームを止める。
「朝早っ」
前日11時近くまで寝ていたので、いつも通りの時間だがなぜか悪態をついてしまう。
テレビをつける。そこで初めて
「あ、今日振替休日じゃん」
と気づく。ということでテレビを消して二度寝した。昼に起きて
月曜日なのに仕事に行かなくてもいい日の優越感に浸っているとあっという間に夜。
ドラマを見ながら夜ご飯を食べていると休日なんてあっという間に終了。
今度こそ本当に明日から仕事。
またもスマホけたたましいアラームに叩き起こされる。
鼻から息を吸い込み、ため息のように鼻から吐き出す。
憎たらしく、人間の朝の怠さも知らずにただ淡々と鳴っているスマホのアラームを止める。
今度の金曜日は海綺ちゃんと飲むことになっている。ひょんな変化。
しかしそんな些細なことでも、いつもより仕事の嫌さが緩和されるような気がした。
なんてどこへやら。めちゃくちゃ嫌だ。朝の歯を磨くのも顔を洗うのすら嫌だ。
しかしどんなに嫌だろうがどんなに怠かろうが気づけばスーツをしっかり着て家を出て
電車に揺られ、会社の自分のデスクの椅子に座っている。
さあ仕事の開始。市場調査やら流行りやら
他社さんの同型商品でどういうものが好まれているのか
逆にどういうバリエーションがないのか、流行りを調べるという名目でたまにサボったりする。
そんな一週間を過ごす。と思っていたら、今週は振替休日で月曜日は休み
そして憲法記念日、みどりの日で木曜日も金曜日も休みだ。最高だ。
ということで水曜日の帰り際には
「お疲れ様っしたぁ~!」
となんとなく機嫌良く、嬉しさが滲み出た挨拶をして会社を出た。
そして帰り勝利の元へ寄ろうかとも思ったが
金曜行くし、まあいっかと思い、その日は直帰した。
夜ご飯という夜ご飯は食べず、明日から4連休だというのを噛み締めながら
おつまみを食べながらビールを飲み、テレビを眺めた。
ほろ酔いになり、そのままベッドへ寝転んで眠りについた。
スマホのアラーム無しで7時頃に目覚め
スマホをいじりながら8時の占いを見てから二度寝し
お昼に袋麺を食べて少し寛いでから買い物に出た。
切れかけていた缶ビールを箱で買うため自転車で向かった。
自転車なんて缶ビールを箱で買うとき以外使わない。確実に使い方を間違っている。
そう思いながら缶ビールを箱で、そして違う種類のビールも数本買い
その日の夜ご飯のおかずを買い、自転車の籠に積んで押して帰った。
冷蔵庫に買ってきたビールを押し込み
今飲みたいが冷やしたい思いが勝って、泣く泣く、渋々冷蔵庫の扉を閉める。
夕方はニュース番組しかやっていないが情報は入れておいて損はないとテレビをつけ眺める。
ニャンスタグラムやポツッターを流し見しながらテレビも流し見する。
もちろん両方とも情報は入ってこない。全然名前も知らない人のアカウントを
礼儀の知らないタメ口を使うギャルやもうお腹いっぱい、見るのに飽きたのタレント
明らかに調子に乗っている芸能人をこき下ろす投稿がおもしろく
フォローさせていただいている。
「おぉ~今日は毒付いてないのか」
毒付きの投稿だけではなく、頑張っているアーティストさん芸人さんの投稿も多い。
好きなのは毒付き投稿だったが「いいね」を押しておいた。
夕方のニュースはほんとにニュースが多く
たまに「熊の多い地域」とか「詰め放題」とかのコーナーがあるが
僕の求めている情報ではない。「流行り」などを知りたいのだ。
なので毎朝「めざめのテレビ」の「イマカラガール」のコーナーだけは欠かさず見ている。
あのコーナーは流行りの情報が入ってくるのでとてもいい。
「あの子可愛かったんだけど、あの後芸能界で見ないなぁ~。
個人的にあの子はねるって思ってたんだけどなぁ~。森野ドルフィンちゃん。
名前もめっちゃキャッチーだし」
前にイマカラガールのコーナーを見ていたとき
きっとハーフなのだろう、めちゃくちゃ顔立ちが良く、可愛さも綺麗さも兼ね備えており
きっと芸名だろうが「森野ドルフィン」という綺麗でキャッチーな名前。
売れるはず!なんて素人目に思っていたがやはり素人目だった。
イマカラガールを1年で卒業した後、ぱったりとテレビで見なくなった。
そんなことを考えていると19時になり、各チャンネルでバラエティー番組が始まる。
そろそろかなぁ~…と楽しみにワクワクして冷蔵庫を開く。缶ビールの側面を触る。
「うん。いける」
缶ビールを1缶取り出し、冷蔵庫を閉める。カペリプシュッ。プルタブを開ける。
グラスにもあけず、そのまま飲み口から飲む。
「んん~…まだちょっと温いか」
表面だけ冷えていて中身はまだあまり冷えていなかった。
仕方ないので少しだけ冷えたビールを飲む。バラエティー番組を笑いながら見てビールを飲む。
1缶飲み終えたところで冷蔵庫へ行き、中からパックのお米を取り出し、レンジで温める。
待っている間、新しい缶ビールのプルタブを開ける。飲む。
やはりビールは冷えていたほうがうまい。
ピーッピーッピーッ。ビニール蓋をビリビリを開く。
「あっ…つ」
熱々の湯気が手を襲う。半分蓋を開けてお茶碗半分入れ
もう半分開け、残りの半分をお茶碗に盛る。
こうすることでスプーンなどを使わずに済み、洗い物が1つでも減るのだ。
これが一人暮らし、簡単手抜き1人ご飯を続けているが故の小技だ。
ん?洗い物を減らすためならパックのまま食べればいいじゃないか?
それは言いっこなしだぜ?風情がないじゃないか。
4連休で変にテンションが上がり、誰かに心の中で「ノンノン」と指を振っていた。
ほぼ四角の板状のお米が2枚重なっている状態で少しばかり見た目は悪いが
それはお箸でほぐせばどうにかなる。
さらに冷蔵庫から今日の夜のおかず、鯖の味噌煮をレンジ温めている間に
もう1品、こんにゃくと蓮根のピリ辛炒めとお米を手にローテーブルへ向かう。
こんにゃくと蓮根のピリ辛炒めをつまみにビールを飲む。
仕事なし。ビール飲み放題。明日も仕事なし。
あぁ、こんな生活続きゃぁ~いーのに
そう思いながらビールを飲む。そんな甘い考えを消し去るように
ピーッピーッピーッっと電子レンジが目を覚まさせてくれる。
「はいはいはい」
立ち上がり、電子レンジへ向かう。
あったまった鯖の味噌煮と新しい缶ビールと共にローテーブルへ戻る。
鯖の味噌煮の濃い味を口に放り込む。このときお米よりビールを口に入れてしまう。
これがバカ。お米が泣いている。と思ってからお米を口に入れる。
そんな夜ご飯を食べてお皿を洗い、プラスチック容器はゴミ箱へ。
空き缶用のゴミ袋には空き缶が溜まってきていた。仕事のある平日は1本くらいしか飲まないし
缶以外のゴミもそんなに出ないのである程度溜まったら出すことにしている。
「そろそろ出さんとなぁ~」
少し残っていてまだ少し重い缶を咥えながら
空き缶を潰して、積み上がった空き缶の先輩の元へと見送る。
惰性で見ているドラマ見て、明日も休みなのが嬉しくて
調子に乗って夜から3時頃までnyAmaZonプライムで見たかった映画や
あなたへのおすすめやホーム画面に出ていた気になる映画をビール飲みながら見た。
普段3時頃まで起きていることがないためか、気づいたら寝落ちしていた。
なぜか嫌でもアラームなしで7時に起きてしまい
しかしさすがに眠すぎたので一瞬で二度寝した。昼頃に起きて袋麺を作って食べ
金曜日なのに仕事休みなんだぜぇ?と優越感に浸りたくて外に出た。
しかし僕が休みということは他の方も休みの方が多いのは必然なことで
お父さんお母さんの間に子どもがいて
絵に描いたような幸せな家族のように手を繋いで歩いていたりして
優越感に浸るどころか劣等感に押しつぶされそうになった。
両親が見守る中、子どもたちが遊ぶ公園のベンチに座る。スマホを取り出し、画面をつける。
「おはようございます!今日楽しみです!何時頃仕事終わりますか?」
と海綺ちゃんからLIMEが来ていた。
「今日仕事休みだから待ち合わせして一緒に行こうか」
と送った。無邪気な笑顔で友達と駆け回る子どもを見ていると
子どもだけの低い視点から見る世界を少し思い出し
あまりにも居た堪れなくなりそうだったので早急に帰った。
帰ってトップ オブ レジェンズをしよう…と思ったが
今のこの心境で負け続けたらコントローラーを投げてしまいそうだったので
nyAmaZonプライムでホラー映画を部屋のカーテンを閉め、ライトも全部消して見た。
ホラーは得意なほうではないので自分で再生したくせに「はやく終わってくれ」と思ったし
逆に時間があっという間に過ぎた気もした。
待ち合わせ時間が迫ってきたので髭を剃り、服を着替え、髪をセットして家を出る。
待ち合わせ場所の駅前につく。今回は前回と違い、海綺ちゃんの顔をしっかり覚えているので
まだいないということがわかった。しばらくすると
「すいません!お待たせしました!」
という声が聞こえ、そちらを見ると
ヘッドホンを外しながら小走りで駆け寄ってくる海綺ちゃんがいた。
僕もワイヤレスイヤホンを取り、ケースに入れる。
「おつかれ」
「お疲れ様です」
「じゃ、行こっか」
「はい!」
2人で歩いて「命頂幸(しょく)」へ行った。引き戸を開いて暖簾を潜り、中へ入る。
「いらっしゃいませー!おぉ!海に海綺ちゃん!どぞどぞ。カウンターでい?」
頷きながら席につく。祝日だからかいつもより賑わっていた。
「海は。今日はお休み?」
「そうそう」
「よかったねぇ~。とりあえず海はビールで」
「私もいつも通りレモンサワーをお願いします」
「オッケー!ちょい待っててねぇ~」
さすがに賑わっているだけあって今日の勝利は
ちゃんと仕事をしている感じがした。
「あい!ビールとレモンサワーとお通しと枝豆ね」
「ん。さんきゅ」
「ありがとうございます」
「今日は忙しそうだな」
「そうね。ま、息つく暇もない!ってほどじゃないけど
こうやって喋るのはいつもより少ないかも」
「ご新規さんとかいっぱいいそうだよね」
「いるいる。ここで胃袋掴んでリピーターになってもらわないと」
「すいませーん!」
「はい!ごめんちょっと行ってくる」
「いてらー。がんばれー」
「頑張ってください!」
勝利が忙しそうに声のほうへ行った。
「じゃ、乾杯」
「乾杯!」
「おつかれー」
「お疲れ様です!」
ビールを飲む。効く。効くくらいうまい。
ジョッキを眺めながら、いつも缶のまま飲んでるけど
ジョッキで飲んだほうがうまいのか?ジョッキ買おうかな?と思う。
「海さん、今日お仕事お休みだったんですね」
「うん。多くの人が今日休みじゃないかな。祝日だし」
「え!あ!そうなんですか!」
「そうだよー。えぇ~っと?昨日が憲法記念日で、今日が…みどりの日だっけ?」
「あぁ、そうだったんですね。全然気づかなかった。昨日も祝日だったんですね」
「そうだね」
「だから昨日通り過ぎる人、私服の方が多い気がしたのか」
「あ、そうなの?」
「はい。立ち止まってくれる人は
いつもとあんま変わらない…なんならいつもより少ない感じだったんですけど」
「へぇ~。多くなりそうなのに」
「海さん休日なにしてました?」
「なに…。んん~…ゲームやったり映画見たり?」
「たぶんそんな人が多いんですよ。お子さんいたらお子さんと遊んだり」
「あぁ~なるほどね。いつもは仕事だから通りかかって立ち止まるけど
家で過ごす人が多いから少ない。なるほど?」
「なのであまり稼げませんでした」
「いくらくらい稼げるもんなの?」
「少ない日はほんと500円とか。多い日は…最高でー…7000円?くらいかな」
「厳しいねぇ~」
「厳しいです。海さん、映画なに見たんですか?」
そこから僕が見た映画の話をした。
公開されて観に行けずにいた見たかった映画を見たこと、ホラー映画を見たことを話した。
「海さんホラー苦手なんですね」
「苦手苦手。幽霊怖いし、あとホラー映画のあの音で脅かすやつほんと苦手」
「意外です」
「そ?」
「はい。なんかホラー系もスーンってしてポップコーン食べてるイメージ」
「オレそんなクール系無感情キャラ?」
「でも想像すると可愛いですね」
「可愛いて。もうアラサーよ?認めたくはないけど」
「全然若く見えますよ!」
「いや、うん。まあ、ありがとうなんだけど。たぶん32歳でもそんな顔は変わらんと思うよ?」
「そー…なんですかね~」
「若い人はマジで若い。オレの先輩も若い人いるもん。
もう結婚もしてお子さんもいるのに全然そんな風に見えない」
「まあたしかにそうですね」
その後、ビールのおかわりとおつまみを頼んで
海ちゃんとホラー映画などについて少し話した。
「やっぱり映画のときはポップコーンですか?」
「ううん。テキトーな惣菜とビール」
「ビール好きですねぇ~」
「うん。最初はあれだったんだけど、社会人になるにあたって
ビール飲めて損なことはないだろってことで
飲みやすいビールを探して飲んでるうちになんか飲めるようになってたね」
「へぇ~。私は苦くて無理です」
「まあオレも最初苦くて無理だったけどね。
まあ今の時代なら飲めないなら無理に飲むことないよ。
今は会社の飲みもへーきで断れる時代だから」
「あぁパワハラとか」
「そうそう。あ、でもうちの会社は他の会社と違って
バカみたいに全部ハラスメントだー!って騒ぐ子もいないし
セクハラパワハラ上司もいないからすごいいい職場。
まあ他の部署に関しては知らないけどね」
「あぁ、ドラマとかニュースとかでいろんなハラスメント言ってますよね。
私ドラマで聞いてびっくりしたのが…ホワイトハラスメント?
なんか優しすぎて嫌だみたいな」
「あぁ聞いたことある。めんどくさいよね正直。気遣ったら遣ったでハラスメント。
遣わなかったら遣わなかったでハラスメント」
「たしかに。若い人もめんどくさいですね」
「若い人って」
思わず笑う。
「海綺ちゃんくらいの歳の子が新卒でくるんだよ」
「あ、そっか。大学卒業って22か」
「そうそう。だから若い人って」
「笑わないでくださいよー」
「ごめんごめん。充分若いのになぁ~って」
「でももう23ですよ」
「いや「まだ」ね」
「そうですかー?」
「だってこんな歳のオレだって先輩に言われるよ。「「まだ」28でしょ?」って」
「まあ海さん若いですし」
「んー。まあそーゆーことじゃないけど、ありがと」
新しいおつまみと海綺ちゃんのレモンサワーとビールのおかわりを頼んだ。
「海さんは一人暮らし?ですか?」
「うん。一人暮らし」
「じゃあご飯とか自炊ですか」
「そーうーね?まあ、自炊なんて呼べないけどね」
「なんか一人暮らしだと食事偏りそうですよね」
「そー…ね。まあ。うん。マジでテキトーに食べたいもの食べてるから、偏ってはいるかもね」
「ちゃんと野菜とか食べてます?」
「お母さんみたいなこと言うじゃん。
まあ、たまに、ほんとたまぁ~に「あ、そろそろ野菜食べないとヤバいかも」って不意に思って
サラダ爆買いしてめっちゃサラダ食べる期間はある」
「すごい偏ってる」
「たしかにね」
「お弁当作りましょうか?とか言えたらいいんですけど」
「びっくりしたぁ~。いいよ全然。お気持ちだけでありがたいです」
そんな会話をしているとあっという間に時間が過ぎ、1時を回ったので
「勝利ー!お会計お願い!」
と言った。そしてお会計を済ませ
ジョッキに残ったレモンサワーとビールがなくなるまで話して
「んじゃまたね」
「また来ます!」
と忙しそうな勝利に向かって言う。勝利は忙しい中こっちに来てくれて
「ごめんね。今日忙しくて」
「全然。忙しいのありがたいだろ」
「まあぁ~…ありがたい半分、嫌だなぁ~半分かな」
「また金曜来るから」
「オッケー!」
「私はー…どうかな」
「また海に奢ってもらいな」
「内緒話ならもっと聞こえないように言えよ」
「じゃまた2人とも、またねぇ~!気をつけて!」
「ん。ありがとぉ。美味しかったよ~」
「ありがとうございました!美味しかったです!また!」
と見送ってくれて、海綺ちゃんと僕も勝利に手を振る。
またコンビニに寄って、海綺ちゃんは心の紅茶のレモンティーを僕はカフェラテを手に取り
「海綺ちゃんココティーのレモンティー好きだねぇ~」
と言いながらレモンティーを海綺ちゃんの手から取って一緒にお会計をする。
「はい」
「毎回すいま…あ」
なにか気づいたような顔になり
「ありがとうございます」
と言い直した。覚えていてくれたことが嬉しくてつい口元が緩む。
「どういたしまして」
そして海綺ちゃんの家まで送った。
「じゃまたね」
「また金曜行…くんならLIMEしますね!」
「遠慮せずにおいで?」
「はい!ありがとうございます!今日もありがとうございました!」
「どういたしまして。じゃまたね」
「はい!また!」
と言って手を振ってわかれた。家に帰る。鍵を開け、扉を開ける。暗い玄関。ライトをつける。
靴を脱ぐ。リビングの電気をつけ、上着を脱いでハンガーにかけ、元あったところへ戻す。
玄関のライトを消し、洗面所で手洗いうがいを済ませる。
Tシャツを脱いで洗濯機へ放る。パンツを脱いで部屋着に着替える。
テレビをつけ、ベッドに寝転がる。スマホを取り出し、画面をつける。
「今日もありがとうございました!
毎回ココティーも奢ってもらっちゃってありがとうごㄜ"います(*ᴗ͈ˬᴗ͈)ꕤ*.゚
もしまた来週金曜行くってなったらまた一緒に飲んでください!ありがとうございました!」
海綺ちゃんからお礼のLIMEが来ていた。
通知をタップし、海綺ちゃんとのトーク画面へ飛んで返信を打ち込む。
「いえいえ。こちらこそありがとう。気にしないで。オレの酔い覚ましのついでだからね。
遠慮してるんなら全然いいからね。来たければおいで。
こんな年上と飲んでくれるの嬉しいからさw」
と打ち込んで、送信ボタンをタップした。
「あぁ~…あ」
大きなあくびが出る。海綺ちゃんと飲むのは初めてではない。2回目だ。
でもまだどこか緊張感があるのか、どこか疲れて、気づいたらスッっと眠りに落ちていた。
眠い目を擦りながら枕元のスマホを手に取る。そこで
あぁ、そういえば昨日、海綺ちゃんと飲みに行ったんだ
と思い出す。スマホの画面をつける。驚いた。10時38分。もう11時近かった。
ひさしぶりにこんなに寝た。なぜか少し嬉しかった。
ロックを解除すると海綺ちゃんとのLIMEのトーク画面が出てきた。
「あ、返信してない」
早急に海綺ちゃんへ返信を打ち込む。
「おはよう。昨日はごめんね。返信する前に寝ちゃったみたいで」
と送った。テレビをつけてテレビを見ながら歯を磨いて、洗面所へ行って顔を洗った。
袋麺を作って朝兼お昼ご飯を食べた。
時間があったので、パスタイム スポット 4でトップ オブ レジェンズをプレイした。
スマホを手に取る。画面をつけると海綺ちゃんから返信が来ていた。
「おはようございます!全然大丈夫です!ちなみに今週も金曜行きます?」
というメッセージだった。
「まあ」
と呟きながら返信を打ち込む。
「うん。行くよ」
とだけ打って送信した。別に行くところもないけど、なぜか少し外に出たくなり
ジーンズに履き替え、テキトーなTシャツに昨日の薄手のMA-1を羽織って外に出た。
本当に特に行くところも決めていなかったのでとりあえず近所を散歩することにした。
散歩にはうってつけの気温に天気。もうすぐ5月。気温も湿度も徐々に上がり始めている。
公園のベンチに座りスマホを出す。画面をつける。
「なるほどなるほど。私も行こうかな」
頭の中で計算する。
家賃は引き落とされてるはず。光熱費は今月は来ない。来月末に請求がきて…まあ大体…
「まあ全然支障はないか」
と呟き返信を打ち込む。
「一緒に飲もうか」
送信ボタンをタップする。ベンチから立ち上がり
スーパーに寄って夜ご飯の買い出しをして家に帰った。
パックのお米をお茶碗に盛り、レンジで温めた生姜焼きをパックのままテーブルに置き
カップの豚汁にお湯を入れた。ベッドを背もたれにして床に座る。
ローテーブルに置かれたカップの豚汁にお箸を入れかき混ぜる。
「いただきます」
1人で1人の部屋に呟く。カップの豚汁を啜る。うまい。
豚汁。豚汁。勝利にメニューに追加してもらおう。と思った。
生姜焼きも食べる。うん。うまい。生姜焼きもメニューに。ご飯も欲しいな。と思っていると
「うちは定食屋じゃないんですよぉ?」
と言っている勝利が容易に想像できた。
「ご馳走様でした」
と呟く。生姜焼きのパックと豚汁のカップはゴミ箱へ
お米を盛ったお茶碗は水で濯いで置いておいた。
日曜日、楽しみにしているドラマを見て、面白かったー。と思うのと同時に
あぁ、寝て起きたら仕事か。と憂鬱になりながら
テレビを消して部屋の灯りも消してベッドに寝転がる。
枕元のスマホを取り画面をつける。顔がブルーライトで照らされる。
「いえいえ」
という海綺ちゃんのLIMEのメッセージが表示される。
海綺ちゃんからの通知をタップし、海綺ちゃんとのトーク画面へ飛ぶ。
「一緒に飲もうか」
「はい!楽しみです!」
「じゃあ金曜まで仕事頑張ります」
「無理しない程度に頑張ってください」
「ありがとうね」
「いえいえ」
「いえいえ」で一区切りだし、ここで返信をするのもどうなんだ?とか思いながら
ここはスタンプだと「ありがとう」と打ち込み
猫が「ありがとう!」と言っているスタンプを送った。スマホの電源を落とす。
顔を照らしていたブルーライトも消え暗くなる。
また明日から仕事の1週間。でも違うのは金曜日。
いつもは1人で、まあ勝利と話しながらだけど、いつもは1人で飲んでいた。
しかし今度の金曜日は海綺ちゃんと飲むことになっている。ひょんな変化。
しかしそんな些細なことでも、いつもより仕事の嫌さが緩和されるような気がした。
目を瞑り、眠りにつく。口角が上がっている気がしたが気にせず
良い夢見れるかな?なんて思いながら眠った。
スマホけたたましいアラームに叩き起こされる。
鼻から息を吸い込み、ため息のように鼻から吐き出す。
憎たらしく、人間の朝の怠さも知らずにただ淡々と鳴っているスマホのアラームを止める。
「朝早っ」
前日11時近くまで寝ていたので、いつも通りの時間だがなぜか悪態をついてしまう。
テレビをつける。そこで初めて
「あ、今日振替休日じゃん」
と気づく。ということでテレビを消して二度寝した。昼に起きて
月曜日なのに仕事に行かなくてもいい日の優越感に浸っているとあっという間に夜。
ドラマを見ながら夜ご飯を食べていると休日なんてあっという間に終了。
今度こそ本当に明日から仕事。
またもスマホけたたましいアラームに叩き起こされる。
鼻から息を吸い込み、ため息のように鼻から吐き出す。
憎たらしく、人間の朝の怠さも知らずにただ淡々と鳴っているスマホのアラームを止める。
今度の金曜日は海綺ちゃんと飲むことになっている。ひょんな変化。
しかしそんな些細なことでも、いつもより仕事の嫌さが緩和されるような気がした。
なんてどこへやら。めちゃくちゃ嫌だ。朝の歯を磨くのも顔を洗うのすら嫌だ。
しかしどんなに嫌だろうがどんなに怠かろうが気づけばスーツをしっかり着て家を出て
電車に揺られ、会社の自分のデスクの椅子に座っている。
さあ仕事の開始。市場調査やら流行りやら
他社さんの同型商品でどういうものが好まれているのか
逆にどういうバリエーションがないのか、流行りを調べるという名目でたまにサボったりする。
そんな一週間を過ごす。と思っていたら、今週は振替休日で月曜日は休み
そして憲法記念日、みどりの日で木曜日も金曜日も休みだ。最高だ。
ということで水曜日の帰り際には
「お疲れ様っしたぁ~!」
となんとなく機嫌良く、嬉しさが滲み出た挨拶をして会社を出た。
そして帰り勝利の元へ寄ろうかとも思ったが
金曜行くし、まあいっかと思い、その日は直帰した。
夜ご飯という夜ご飯は食べず、明日から4連休だというのを噛み締めながら
おつまみを食べながらビールを飲み、テレビを眺めた。
ほろ酔いになり、そのままベッドへ寝転んで眠りについた。
スマホのアラーム無しで7時頃に目覚め
スマホをいじりながら8時の占いを見てから二度寝し
お昼に袋麺を食べて少し寛いでから買い物に出た。
切れかけていた缶ビールを箱で買うため自転車で向かった。
自転車なんて缶ビールを箱で買うとき以外使わない。確実に使い方を間違っている。
そう思いながら缶ビールを箱で、そして違う種類のビールも数本買い
その日の夜ご飯のおかずを買い、自転車の籠に積んで押して帰った。
冷蔵庫に買ってきたビールを押し込み
今飲みたいが冷やしたい思いが勝って、泣く泣く、渋々冷蔵庫の扉を閉める。
夕方はニュース番組しかやっていないが情報は入れておいて損はないとテレビをつけ眺める。
ニャンスタグラムやポツッターを流し見しながらテレビも流し見する。
もちろん両方とも情報は入ってこない。全然名前も知らない人のアカウントを
礼儀の知らないタメ口を使うギャルやもうお腹いっぱい、見るのに飽きたのタレント
明らかに調子に乗っている芸能人をこき下ろす投稿がおもしろく
フォローさせていただいている。
「おぉ~今日は毒付いてないのか」
毒付きの投稿だけではなく、頑張っているアーティストさん芸人さんの投稿も多い。
好きなのは毒付き投稿だったが「いいね」を押しておいた。
夕方のニュースはほんとにニュースが多く
たまに「熊の多い地域」とか「詰め放題」とかのコーナーがあるが
僕の求めている情報ではない。「流行り」などを知りたいのだ。
なので毎朝「めざめのテレビ」の「イマカラガール」のコーナーだけは欠かさず見ている。
あのコーナーは流行りの情報が入ってくるのでとてもいい。
「あの子可愛かったんだけど、あの後芸能界で見ないなぁ~。
個人的にあの子はねるって思ってたんだけどなぁ~。森野ドルフィンちゃん。
名前もめっちゃキャッチーだし」
前にイマカラガールのコーナーを見ていたとき
きっとハーフなのだろう、めちゃくちゃ顔立ちが良く、可愛さも綺麗さも兼ね備えており
きっと芸名だろうが「森野ドルフィン」という綺麗でキャッチーな名前。
売れるはず!なんて素人目に思っていたがやはり素人目だった。
イマカラガールを1年で卒業した後、ぱったりとテレビで見なくなった。
そんなことを考えていると19時になり、各チャンネルでバラエティー番組が始まる。
そろそろかなぁ~…と楽しみにワクワクして冷蔵庫を開く。缶ビールの側面を触る。
「うん。いける」
缶ビールを1缶取り出し、冷蔵庫を閉める。カペリプシュッ。プルタブを開ける。
グラスにもあけず、そのまま飲み口から飲む。
「んん~…まだちょっと温いか」
表面だけ冷えていて中身はまだあまり冷えていなかった。
仕方ないので少しだけ冷えたビールを飲む。バラエティー番組を笑いながら見てビールを飲む。
1缶飲み終えたところで冷蔵庫へ行き、中からパックのお米を取り出し、レンジで温める。
待っている間、新しい缶ビールのプルタブを開ける。飲む。
やはりビールは冷えていたほうがうまい。
ピーッピーッピーッ。ビニール蓋をビリビリを開く。
「あっ…つ」
熱々の湯気が手を襲う。半分蓋を開けてお茶碗半分入れ
もう半分開け、残りの半分をお茶碗に盛る。
こうすることでスプーンなどを使わずに済み、洗い物が1つでも減るのだ。
これが一人暮らし、簡単手抜き1人ご飯を続けているが故の小技だ。
ん?洗い物を減らすためならパックのまま食べればいいじゃないか?
それは言いっこなしだぜ?風情がないじゃないか。
4連休で変にテンションが上がり、誰かに心の中で「ノンノン」と指を振っていた。
ほぼ四角の板状のお米が2枚重なっている状態で少しばかり見た目は悪いが
それはお箸でほぐせばどうにかなる。
さらに冷蔵庫から今日の夜のおかず、鯖の味噌煮をレンジ温めている間に
もう1品、こんにゃくと蓮根のピリ辛炒めとお米を手にローテーブルへ向かう。
こんにゃくと蓮根のピリ辛炒めをつまみにビールを飲む。
仕事なし。ビール飲み放題。明日も仕事なし。
あぁ、こんな生活続きゃぁ~いーのに
そう思いながらビールを飲む。そんな甘い考えを消し去るように
ピーッピーッピーッっと電子レンジが目を覚まさせてくれる。
「はいはいはい」
立ち上がり、電子レンジへ向かう。
あったまった鯖の味噌煮と新しい缶ビールと共にローテーブルへ戻る。
鯖の味噌煮の濃い味を口に放り込む。このときお米よりビールを口に入れてしまう。
これがバカ。お米が泣いている。と思ってからお米を口に入れる。
そんな夜ご飯を食べてお皿を洗い、プラスチック容器はゴミ箱へ。
空き缶用のゴミ袋には空き缶が溜まってきていた。仕事のある平日は1本くらいしか飲まないし
缶以外のゴミもそんなに出ないのである程度溜まったら出すことにしている。
「そろそろ出さんとなぁ~」
少し残っていてまだ少し重い缶を咥えながら
空き缶を潰して、積み上がった空き缶の先輩の元へと見送る。
惰性で見ているドラマ見て、明日も休みなのが嬉しくて
調子に乗って夜から3時頃までnyAmaZonプライムで見たかった映画や
あなたへのおすすめやホーム画面に出ていた気になる映画をビール飲みながら見た。
普段3時頃まで起きていることがないためか、気づいたら寝落ちしていた。
なぜか嫌でもアラームなしで7時に起きてしまい
しかしさすがに眠すぎたので一瞬で二度寝した。昼頃に起きて袋麺を作って食べ
金曜日なのに仕事休みなんだぜぇ?と優越感に浸りたくて外に出た。
しかし僕が休みということは他の方も休みの方が多いのは必然なことで
お父さんお母さんの間に子どもがいて
絵に描いたような幸せな家族のように手を繋いで歩いていたりして
優越感に浸るどころか劣等感に押しつぶされそうになった。
両親が見守る中、子どもたちが遊ぶ公園のベンチに座る。スマホを取り出し、画面をつける。
「おはようございます!今日楽しみです!何時頃仕事終わりますか?」
と海綺ちゃんからLIMEが来ていた。
「今日仕事休みだから待ち合わせして一緒に行こうか」
と送った。無邪気な笑顔で友達と駆け回る子どもを見ていると
子どもだけの低い視点から見る世界を少し思い出し
あまりにも居た堪れなくなりそうだったので早急に帰った。
帰ってトップ オブ レジェンズをしよう…と思ったが
今のこの心境で負け続けたらコントローラーを投げてしまいそうだったので
nyAmaZonプライムでホラー映画を部屋のカーテンを閉め、ライトも全部消して見た。
ホラーは得意なほうではないので自分で再生したくせに「はやく終わってくれ」と思ったし
逆に時間があっという間に過ぎた気もした。
待ち合わせ時間が迫ってきたので髭を剃り、服を着替え、髪をセットして家を出る。
待ち合わせ場所の駅前につく。今回は前回と違い、海綺ちゃんの顔をしっかり覚えているので
まだいないということがわかった。しばらくすると
「すいません!お待たせしました!」
という声が聞こえ、そちらを見ると
ヘッドホンを外しながら小走りで駆け寄ってくる海綺ちゃんがいた。
僕もワイヤレスイヤホンを取り、ケースに入れる。
「おつかれ」
「お疲れ様です」
「じゃ、行こっか」
「はい!」
2人で歩いて「命頂幸(しょく)」へ行った。引き戸を開いて暖簾を潜り、中へ入る。
「いらっしゃいませー!おぉ!海に海綺ちゃん!どぞどぞ。カウンターでい?」
頷きながら席につく。祝日だからかいつもより賑わっていた。
「海は。今日はお休み?」
「そうそう」
「よかったねぇ~。とりあえず海はビールで」
「私もいつも通りレモンサワーをお願いします」
「オッケー!ちょい待っててねぇ~」
さすがに賑わっているだけあって今日の勝利は
ちゃんと仕事をしている感じがした。
「あい!ビールとレモンサワーとお通しと枝豆ね」
「ん。さんきゅ」
「ありがとうございます」
「今日は忙しそうだな」
「そうね。ま、息つく暇もない!ってほどじゃないけど
こうやって喋るのはいつもより少ないかも」
「ご新規さんとかいっぱいいそうだよね」
「いるいる。ここで胃袋掴んでリピーターになってもらわないと」
「すいませーん!」
「はい!ごめんちょっと行ってくる」
「いてらー。がんばれー」
「頑張ってください!」
勝利が忙しそうに声のほうへ行った。
「じゃ、乾杯」
「乾杯!」
「おつかれー」
「お疲れ様です!」
ビールを飲む。効く。効くくらいうまい。
ジョッキを眺めながら、いつも缶のまま飲んでるけど
ジョッキで飲んだほうがうまいのか?ジョッキ買おうかな?と思う。
「海さん、今日お仕事お休みだったんですね」
「うん。多くの人が今日休みじゃないかな。祝日だし」
「え!あ!そうなんですか!」
「そうだよー。えぇ~っと?昨日が憲法記念日で、今日が…みどりの日だっけ?」
「あぁ、そうだったんですね。全然気づかなかった。昨日も祝日だったんですね」
「そうだね」
「だから昨日通り過ぎる人、私服の方が多い気がしたのか」
「あ、そうなの?」
「はい。立ち止まってくれる人は
いつもとあんま変わらない…なんならいつもより少ない感じだったんですけど」
「へぇ~。多くなりそうなのに」
「海さん休日なにしてました?」
「なに…。んん~…ゲームやったり映画見たり?」
「たぶんそんな人が多いんですよ。お子さんいたらお子さんと遊んだり」
「あぁ~なるほどね。いつもは仕事だから通りかかって立ち止まるけど
家で過ごす人が多いから少ない。なるほど?」
「なのであまり稼げませんでした」
「いくらくらい稼げるもんなの?」
「少ない日はほんと500円とか。多い日は…最高でー…7000円?くらいかな」
「厳しいねぇ~」
「厳しいです。海さん、映画なに見たんですか?」
そこから僕が見た映画の話をした。
公開されて観に行けずにいた見たかった映画を見たこと、ホラー映画を見たことを話した。
「海さんホラー苦手なんですね」
「苦手苦手。幽霊怖いし、あとホラー映画のあの音で脅かすやつほんと苦手」
「意外です」
「そ?」
「はい。なんかホラー系もスーンってしてポップコーン食べてるイメージ」
「オレそんなクール系無感情キャラ?」
「でも想像すると可愛いですね」
「可愛いて。もうアラサーよ?認めたくはないけど」
「全然若く見えますよ!」
「いや、うん。まあ、ありがとうなんだけど。たぶん32歳でもそんな顔は変わらんと思うよ?」
「そー…なんですかね~」
「若い人はマジで若い。オレの先輩も若い人いるもん。
もう結婚もしてお子さんもいるのに全然そんな風に見えない」
「まあたしかにそうですね」
その後、ビールのおかわりとおつまみを頼んで
海ちゃんとホラー映画などについて少し話した。
「やっぱり映画のときはポップコーンですか?」
「ううん。テキトーな惣菜とビール」
「ビール好きですねぇ~」
「うん。最初はあれだったんだけど、社会人になるにあたって
ビール飲めて損なことはないだろってことで
飲みやすいビールを探して飲んでるうちになんか飲めるようになってたね」
「へぇ~。私は苦くて無理です」
「まあオレも最初苦くて無理だったけどね。
まあ今の時代なら飲めないなら無理に飲むことないよ。
今は会社の飲みもへーきで断れる時代だから」
「あぁパワハラとか」
「そうそう。あ、でもうちの会社は他の会社と違って
バカみたいに全部ハラスメントだー!って騒ぐ子もいないし
セクハラパワハラ上司もいないからすごいいい職場。
まあ他の部署に関しては知らないけどね」
「あぁ、ドラマとかニュースとかでいろんなハラスメント言ってますよね。
私ドラマで聞いてびっくりしたのが…ホワイトハラスメント?
なんか優しすぎて嫌だみたいな」
「あぁ聞いたことある。めんどくさいよね正直。気遣ったら遣ったでハラスメント。
遣わなかったら遣わなかったでハラスメント」
「たしかに。若い人もめんどくさいですね」
「若い人って」
思わず笑う。
「海綺ちゃんくらいの歳の子が新卒でくるんだよ」
「あ、そっか。大学卒業って22か」
「そうそう。だから若い人って」
「笑わないでくださいよー」
「ごめんごめん。充分若いのになぁ~って」
「でももう23ですよ」
「いや「まだ」ね」
「そうですかー?」
「だってこんな歳のオレだって先輩に言われるよ。「「まだ」28でしょ?」って」
「まあ海さん若いですし」
「んー。まあそーゆーことじゃないけど、ありがと」
新しいおつまみと海綺ちゃんのレモンサワーとビールのおかわりを頼んだ。
「海さんは一人暮らし?ですか?」
「うん。一人暮らし」
「じゃあご飯とか自炊ですか」
「そーうーね?まあ、自炊なんて呼べないけどね」
「なんか一人暮らしだと食事偏りそうですよね」
「そー…ね。まあ。うん。マジでテキトーに食べたいもの食べてるから、偏ってはいるかもね」
「ちゃんと野菜とか食べてます?」
「お母さんみたいなこと言うじゃん。
まあ、たまに、ほんとたまぁ~に「あ、そろそろ野菜食べないとヤバいかも」って不意に思って
サラダ爆買いしてめっちゃサラダ食べる期間はある」
「すごい偏ってる」
「たしかにね」
「お弁当作りましょうか?とか言えたらいいんですけど」
「びっくりしたぁ~。いいよ全然。お気持ちだけでありがたいです」
そんな会話をしているとあっという間に時間が過ぎ、1時を回ったので
「勝利ー!お会計お願い!」
と言った。そしてお会計を済ませ
ジョッキに残ったレモンサワーとビールがなくなるまで話して
「んじゃまたね」
「また来ます!」
と忙しそうな勝利に向かって言う。勝利は忙しい中こっちに来てくれて
「ごめんね。今日忙しくて」
「全然。忙しいのありがたいだろ」
「まあぁ~…ありがたい半分、嫌だなぁ~半分かな」
「また金曜来るから」
「オッケー!」
「私はー…どうかな」
「また海に奢ってもらいな」
「内緒話ならもっと聞こえないように言えよ」
「じゃまた2人とも、またねぇ~!気をつけて!」
「ん。ありがとぉ。美味しかったよ~」
「ありがとうございました!美味しかったです!また!」
と見送ってくれて、海綺ちゃんと僕も勝利に手を振る。
またコンビニに寄って、海綺ちゃんは心の紅茶のレモンティーを僕はカフェラテを手に取り
「海綺ちゃんココティーのレモンティー好きだねぇ~」
と言いながらレモンティーを海綺ちゃんの手から取って一緒にお会計をする。
「はい」
「毎回すいま…あ」
なにか気づいたような顔になり
「ありがとうございます」
と言い直した。覚えていてくれたことが嬉しくてつい口元が緩む。
「どういたしまして」
そして海綺ちゃんの家まで送った。
「じゃまたね」
「また金曜行…くんならLIMEしますね!」
「遠慮せずにおいで?」
「はい!ありがとうございます!今日もありがとうございました!」
「どういたしまして。じゃまたね」
「はい!また!」
と言って手を振ってわかれた。家に帰る。鍵を開け、扉を開ける。暗い玄関。ライトをつける。
靴を脱ぐ。リビングの電気をつけ、上着を脱いでハンガーにかけ、元あったところへ戻す。
玄関のライトを消し、洗面所で手洗いうがいを済ませる。
Tシャツを脱いで洗濯機へ放る。パンツを脱いで部屋着に着替える。
テレビをつけ、ベッドに寝転がる。スマホを取り出し、画面をつける。
「今日もありがとうございました!
毎回ココティーも奢ってもらっちゃってありがとうごㄜ"います(*ᴗ͈ˬᴗ͈)ꕤ*.゚
もしまた来週金曜行くってなったらまた一緒に飲んでください!ありがとうございました!」
海綺ちゃんからお礼のLIMEが来ていた。
通知をタップし、海綺ちゃんとのトーク画面へ飛んで返信を打ち込む。
「いえいえ。こちらこそありがとう。気にしないで。オレの酔い覚ましのついでだからね。
遠慮してるんなら全然いいからね。来たければおいで。
こんな年上と飲んでくれるの嬉しいからさw」
と打ち込んで、送信ボタンをタップした。
「あぁ~…あ」
大きなあくびが出る。海綺ちゃんと飲むのは初めてではない。2回目だ。
でもまだどこか緊張感があるのか、どこか疲れて、気づいたらスッっと眠りに落ちていた。
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