騙され坊ちゃん嘘つき執事

結愛

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第3話

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「ごめん!遅れた!」
「全然!お!カッコいいね」
「シャレオツじゃん~鴨条院(おうじょういん)く~ん」
「ありがと」
心の中で波歌(なみか)に感謝する司。そんな司を遠くから見守る幸。
同じ電車の同じ車両に乗り、しっかりと尾行してきた。
「どこ行く?」
「決めてなかったね」
「あれは?ステ1(ステージ1の略称)」
「あぁ。行ったことない」
「オレも」
「じゃ、行ってみる?」
「入れるかな」
「そっか。ま、行ってみてじゃない?」
「値段も大丈夫かな」
「大丈夫でしょ。鴨条院(おうじょういん)くんなんて余裕でしょ。いくら持ってきた?」
「2万円」
「マジ?もっと持ってきてると思ってた」
「わかる」
「20万円入ってたんだけど、入りすぎだって幸く…執事が」
「20!?」
「これまた振り幅が」
助(たすけ)が驚き、遊(ゆう)が笑う。
「ま、大丈夫。オレ5万持ってきてるから」
「オレも3万だから大丈夫じゃないかな」
「3人で3万…高くて4万くらいじゃない?」
「1人1万円くらいか。なら大丈夫だ。でもその後残り少ないから不安だけど」
「こんなセリフ鴨条院家の人に吐くとは思わなかったけど
足りなかったらオレが出すから平気だよ」
「おぉ。遊(ゆう)カッコいい。オレももうちょっと持ってくればそのセリフ言えたのに」
「だから気にせず遊びましょう」
「法鹿(ほうじか)くん、遊雉(ゆうち)くんありがとう」
「よっしゃ!行きますか!お坊ちゃん」
「やめてよ」
3人で仲良く笑いながらステージ1を目指す。その後をコソコソ着いていく幸。
さすがに新学期シーズン。中学1年生や2年生、3年生や高校1年生や2年生、3年生
大学生などで賑わっている。見失わないように、でもバレないように着いていく。
通りの端にあるステージ1の前についた。
1階のクレーンゲームがある部分もお祭りかというほど大いに賑わっていた。
「ボウリング…ダーツ…ビリヤード。どうする?」
「オレはボウリング一択かな。ダーツもビリヤードも家(うち)にあるし」
「実はオレもなんだよね。ダーツもビリヤードも家にある」
さすがはお金持ち。
「鴨条院(おうじょういん)くんのとこにもあるだろうからボウリングでいいか」
「ボウリングでいいけど、家(うち)にはビリヤードもダーツもないよ」
「ないの!?」
「マジか。意外だわ」
エレベーターを待って、来たエレベーターに乗って3階のボタンを押す。
近くで話を聞いてボウリングをすると知った幸は階段で3階へ上がっていった。
「あれじゃん?鴨条院(おうじょういん)くん家(ち)和風だからないんじゃない?」
「なるほどね。そーゆーこと?」
「まあ、実家は和風だね」
「実家?今は違うの?」
「バカっ。お前、事情があるかもしんないだろ」
「あ、ごめん」
「違う違う。大丈夫大丈夫」
エレベーターが開いて下りる。下りてきた3人を静かに息を整えながら見る幸。
「別に事情はないんだけど、一人暮らししたくて今は一人暮らししてる」
「一人暮らし!?」
「マジ!?」
「マジ。ま、幸く…執事もいるから二人暮らしだけどね」
「すご」
3人はボウリングの受付へ行く。
「え。2ゲーム高校生1,200円!?」
「マジ!?安っ」
「ほんとだ。スゴいね」
ということで3人は2ゲームをプレイすることにした。
幸は3人の隣のレーンで2ゲーム1人でプレイすることにした。
4人ともそれぞれ靴を借りて、自分に合うボールを取った。
「さいしょはグー」
「「「じゃんけんぽんっ!」」」
順番を決めてボウリングをプレイする。
「いった?いったんじゃない?…あぁ~7本!」
「へーい!スペアよゆ~」
「ガターいっちゃった」
「お。鴨条院(おうじょういん)くんボウリング苦手か?」
「じゃあ、2ゲーム目でボウリングで勝った人の命令聞くってのは?今回のは練習ってことで」
「オレはいいよ?」
「いいよ。頑張れる」
その会話を聞きながら横のレーンで幸は
ストライク、ダブル、ターキー、フォースとストライクを連続していて周りから
「うまっ」
「てかカッコよくない?」
などと少し注目を浴びてしまいそうになって
横の3人にもバレてしまうかもしれないと明らかにわざとガターにボールを流した。
「よっし。次が勝負ね」
「おけー」
「いいよー?」
「じゃ、順番どうする?最下位だった鴨条院(おうじょういん)くん決めていいよ?」
「じゃあ…2番手で」
「おぉ~、安牌」
「じゃ、オレ1番行くわ」
とゲームが始まった。隣で幸は司に勝たせたいという思いから
エアガンで司のピンを倒そうとも考えたが、いろいろと考え、見守ることにした。
「第一投行きまーす」
助(たすけ)が投げる。6ピン。スペアを狙うが2ピンだけで、計8ピンだった。
「まま、いいんじゃないですかね」
司の番が来て、司がボウリングのボールを持つ。
「司、頑張れ」
隣のレーンで呟く幸。司が構える。ゆっくりと歩き出し、ボールを放つ。
ボールはまっすぐに先頭のピンに向かっていく。

よし!そのまま行け

司も幸も思う。カンッ!ピンが弾け飛ぶ。9本。
「おしいっ!」
つい声に出てしまう幸。咄嗟にスマホを耳にあてる。
幸の声に反応して、司も助も遊も幸のほうを見る。
「マジかぁ~。それはおしかったなぁ~。いやぁ~おしい!」
「なんだ。めっちゃタイミング良かったから
鴨条院(おうじょういん)くんのに言ったのかと思った」
「わかる」
司はどこか幸の声に似ていて首を傾げる。幸は幸でバレていないかヒヤヒヤしていた。
「9ピン!惜しかったねぇ~。スペアチャンスでっせ」
「いけるかなぁ~」
バレていないようでホッっとし、スマホを切ったフリをして、スマホをイジるフリをして

スペア!行け!

と見守る。司がボールを放る。
ボールはピンには向かわず、ゴトンとなにも倒さずに終点についた。
「ドンマイ~」
「スペア逃したぁ~」
「助が8ピン。鴨条院(おうじょういん)くんが9ピン。したらオレはストライクしかないわな」
遊がボールを肩に担いで、得意気な顔をする。投げる。3ピン。助、大爆笑。司も笑っていた。
隣のレーンの幸もつい吹き出す。スペアを狙うも4ピン。計7ピン。
「こっからだから」
「左様ですかー」
「腹立つわー」
そこから3人の勝負が始まった。勝負といえどストライクが出ると盛り上がった。結果
「鴨条院(おうじょういん)くんの勝ちー」
「マジかー。さすがっす」
幸も隣のレーンで頷きながら小さく拍手をしていた。
「では鴨条院(おうじょういん)様、なんなりとご命令を」
「1つですよ?」
「じゃあね…」
幸も司がなにを言うのか気になり、耳をそばだてる。
「友達になってください」
助も遊も幸も「…」だった。
「ダメ?」
「え。ダメもなにも、もう友達でしょ」
「うん」
「え、そうなの?」
「そうだと思うけど…ね?」
「うん」
「でも2人は名前で呼んでるけど僕のことは苗字だから」
「あぁ」
「なるほど」
「なるほど」
助も遊も幸も納得した。
「だから、僕のことも名前で呼んでよ」
助と遊は顔を見合わせて
「なんだーそんな命令でいいんですかー?司ー」
「司ー」
と笑顔で言った。司も司で名前で呼ばれて嬉しそうだった。
「そんなこといったら司もオレたちのこと名前呼び決定でっせぇ~?」
「たしかに。でっせぇ~?」
「わ、わかった」
助も遊も無言で「say my name」と言っていた。
「助くんに遊くん」
「No~no~no~。くんいらないねぇ~」
「たしかにいらないねぇ~」
「助…遊…」
助と遊は顔を見合わせ、ニヤッっと笑い
「「なんだい?司ー!」」
と司に抱きついた。司も助も遊も嬉しそうな顔をしていた。その嬉しそうな司を見て幸は

司…可愛いかよお前

と思っていた。司、助、遊の3人はその後も
思いの外安い料金で楽しめる施設を楽しみ尽くした。
「いやぁ~楽しかったね」
「スゴいね。この値段で楽しめるって」
「エグいよね」
「これからどうする?」
みんなスマホを見る。時刻は16時、午後4時を回ったところだ。
「難しい時間だね」
「映画…は無理か」
「厳しいんじゃない?」
「遊んだし、今度はゆっくりできるところでも」
「じゃあ猫カフェにでも行ってみる?天国らしいけど」
「そりゃ行くしかない」
「だね」
3人は猫カフェを目指した。もちろん幸もその後をついていった。
猫カフェについた一同は猫カフェを楽しんだ。カフェとしては少し高めだが
3人はお金持ちの家の子なのでそんなに高いとか感じず、なんなら安いと感じていた。
司も助も遊も猫にメロメロに、幸もメロメロになっていた。
「じゃ、そろそろお開きにしましょうか」
「だね。楽しかった~」
「また3人で遊びに行こうよ。まだ先だけど夏休みとか」
「先だね」
「先すぎるね」
「ま、とりあえず今日は解散かな」
「でもあれじゃない?同じ線じゃないの?電車」
みんな同じ電車ということでみんな同じ電車に乗り
最寄り駅は違ったので、電車の中で解散となった。
司も最寄り駅で降り、幸ももちろん司と同じ駅で降り
幸は司より早く帰らないといけないので、猛ダッシュで家に帰り、執事の服に着替えた。
着替え終えた瞬間、玄関の扉が開いた。
「ただいま~」
「おかえりなさいませ、お坊っちゃま」
司は幸を見てビックリする。
「幸くん、髪切ったの?しかも黒いし」
「え?」
幸が視線を上に向ける。自分の視界に黒い毛があることに気づく。
「あっ…」
服を着替えていてカツラを取ることを忘れていた。
「あぁ…いや、あの、金髪ロングが長かったもので
ひさしぶりに黒髪ショートにしたらどうなるか試してたんです」
と言いながらカツラを取る幸。
「汗すごいよ」
たらぁ~と垂れてくる汗。約6時間カツラを被っていたし、最後は家まで走った。
そのため汗をかきまくったのだろう。
「ほんとですね。すいません」
「シャワー浴びてきたら?」
お坊っちゃまのお食事が先でございます。と言おうともしたが
汗をかいたまま食事を作るのも…と思い
「ではお言葉に甘えさせていただきます」
「うん」
司は部屋へ着替えに、幸はお風呂場へシャワーを浴びに行った。
司、助、遊、3人が遊びに行っていた頃
「じゃ、ちょっと行ってくる。後でLIMEするからちゃんと見てよね」
「かしこまりました。気をつけていってらっしゃいませ」
と出掛ける美音を帆歌(ほか)。
帆歌(ほか)は急いで着替えて帽子を被り、メガネをかけて美音の後を追った。
美音はスマホの地図アプリを頼りに目的地を目指す。
「ここが本店なのね」
Les joues de Chestnut tombent(レ・ジューン・デ・チェストナッツ・タンブ)。
栗夢(くりむ)の家族が経営するスイーツ店である。
「デカッ。てか綺麗だな」
高級です。と言わんばかりの店構えに内装。
「どこが「小さいんですけどぉ~(栗夢(くりむ)の声真似のつもり)」よ」
「あ、狐園寺さん?」
「ん?あ」
そこにはクラスメイトで席の近い光(ひかり)がいた。
「てかそれ」
光(ひかり)の手にはこれまた高級そうな白い紙袋が。
「あぁ、これ。母が友達にあげなさいって」
「いやいやいや、それPavone Gioiello(パボーネ ジョイアッロ)じゃん」
「あ、知ってた?」
「知ってたもなにも。あの高い宝石店でしょ?」
「あの“高い”宝石店です」
「私の母もたまに行ってるわよ」
「それは…母も喜びます」
「え。まさか」
「そのまさかです。はい、これ。狐園寺(こうえんじ)さんに」
美音は紙袋を受け取る。
「え」
「ん」
「いいの?」
「母がって言ったじゃん」
「…じゃあ、お言葉に甘えて…。ありがとう」
「狐園寺(こうえんじ)さんも栗鼠喰(りすぐい)さんのお店に?」
「ま、まあね?」
「じゃ、お先にどおぞ?」
「え、えぇ。じゃあ」
2人でLes joues de Chestnut tombent
(レ・ジューン・デ・チェストナッツ・タンブ)に入った。
ガラスのショーケースの奥の複数名の店員さんの中に栗夢(くりむ)がいて
美音と光に気づいて、驚き、すぐに嬉しそうな顔で近づいてくる。
「狐園寺(こうえんじ)さん!宝孔雀(ホウクジャク)さん!
どうしたんですか!あ、いらっしゃいませ」
「た、たまたま近くを通りかかったものだから」
「嘘つけ」
ジッっと光を睨む美音。
「嬉しいです!あ、好きなケーキを選んでください!ご馳走しますので」
「じゃあお言葉に甘えて」
2人はそれぞれ好きなケーキを選んだ。
「良かったらうちで食べませんか?」
「そうしよっか」
「いいわよ?」
ということで3人はお店から少しだけ離れた栗夢(くりむ)の家にお邪魔することにした。
ヨーロッパ調の綺麗でおしゃれな一軒家。
「お邪魔しまーす」
「お邪魔します」
「母は会社にいるので誰もいませんが」
栗夢(くりむ)の後をついていく。
「ここが私の部屋です。どうぞ」
「お邪魔します」
「お邪魔しまーす」
「寛いでてください。あ、お2人とも紅茶は飲めますか?」
「飲めます」
「平気よ」
「じゃあ、持ってきますね」
部屋の中は明るく、綺麗だった。クロワッサンのクッションがベッドにあったり
クッキーのクッションがローテーブルの周りにあったり…
「食べ物多すぎない?」
「そうね…さすがだわ」
しばらくすると栗夢(くりむ)がおぼんにティーカップとティーポットを持って
部屋に戻ってきた。栗夢(くりむ)が紅茶を注ぐ。紅茶の良い香りが部屋に広がる。
「じゃ、いただきます」
「いただきます」
「どおぞぉ~」
嬉しそうな栗夢(くりむ)。美音と光(ひかり)は好きなケーキを食べる。
「んん!この味この味!美味しい!」
「!…たしかに。めちゃくちゃ美味しいわね」
「嬉しいです!」
紅茶をお供にケーキを食べる。優雅なティーブレイクである。
「ご馳走様でした」
「ご馳走様でした」
「ありがとうございました」
「いや、こちらこそだよ。ありがとうございました」
「…ありがとう」
ニコッっと笑う栗夢(くりむ)。
「あ、そうだ。これ」
光(ひかり)が紙袋を栗夢(くりむ)に差し出す。
「え、なんですか?」
「母が持ってきなさいって」
「開けていいですか?」
「どうぞ」
美音と栗夢(くりむ)が紙袋の中から小さな箱を取り出す。
指輪の入っていそうなケースが出てくる。
パカッっと開ける。するとそこには綺麗に輝く孔雀がいた。
「キレー!すごい綺麗ですね!」
「たしかに綺麗だけど…。めちゃくちゃ高そうね」
「たしかにですね」
美音と栗夢(くりむ)が紅茶を飲む光(ひかり)を見る。
「ん?」
2人の視線に気づく。
「値段?値段は知らない」
美音も栗夢(くりむ)も失礼だとは思ったが
後で検索してみようと思った。それを感じ取ったように
「あ、検索しても出てこないらしい。非売品だって言ってたから」
と光(ひかり)が言った。なおさら値段が気になるし、怖くなる2人。
しばらく3人で談笑して、夕方になったので
「じゃ、そろそろお暇します」
「そうね」
「そうですか。わかりました。じゃあ、帰りにもう1回お店寄っていきません?」
「ん?そのつもりだったけど」
「私もそのつもりだったけど」
3人で栗夢(くりむ)の家を後にして、またお店に行った。
「じゃ、ご家族の分、好きなケーキ選んでいってください」
「え」
「え?」
「ほらほら」
「いや、さすがに払うよ」
「そうよ」
「いやいや、これくらいは。ね」
「あ、栗夢(くりむ)」
と女性の声がする。
「お姉ちゃん」
栗夢(くりむ)の姉が来た。
「友達?」
「そお。お姉ちゃんは大学帰り?」
「そ」
「友達の家族にケーキあげてもいいよね?」
「ん?いいでしょ。ママもいいって言うよ」
「だよね」
「あ、栗夢(くりむ)の姉です。好きなケーキ好きなだけ持っていってください」
「あ、宝孔雀(ホウクジャク) 光(ひかり)です。すいません。ではいただきます」
「狐園寺(こうえんじ) 美音です。お言葉に甘えさせていただきます」
「どうぞ~」
美音は帆歌(ほか)にLIMEする。

美音「帆歌(ほか)好きなのショートケーキよね?
     今ケーキ屋さんにいるんだけど、ショートケーキがいい?それとも他のがいい?」
お店のURL
美音「他のがいいならお店のリストから選んで」

実はめちゃくちゃ近くにいる帆歌(ほか)。即座に返信をする。

帆歌「お心遣いありがとうございます。ショートケーキでお願いします」

栗夢(くりむ)の姉が栗夢(くりむ)に近寄り
「ねえねえ。狐園寺(こうえんじ)さんってあの狐園寺(こうえんじ)?」
と小声で聞く。
「うん。そうだと思う。本人に聞いてはないけど」
「やったじゃん。狐福(きつねぶく)泊まりたい放題じゃん」
「放題ではないでしょ」
美音と光(ひかり)がケーキを選んで、栗夢(くりむ)と栗夢(くりむ)姉がケーキを詰めて
「じゃ、妹と仲良くしてあげてください」
「じゃ、2人ともまた学校で!です!」
と美音と光(ひかり)に手を振る。
「ありがとうございました。こちらこそよろしくお願いします。じゃ、またねぇ~」
「こちらこそです。また学校で、ね」
2人も栗夢(くりむ)と栗夢(くりむ)姉に手を振って帰る。
「栗鼠喰(りすぐい)さんのとこのケーキあんなに美味しかったのね。
なんで教えてくれなかったの?」
「いや、知り合ったの最近じゃん」
「あ、そうか」
「狐園寺(こうえんじ)さんって天然?」
「てっ、天然じゃない」
光(ひかり)が笑う。
「これ、ありがとね」
「いえいえ。じゃ、また学校でね」
「うん」
2人が別れる。美音はルンルンで帰っていた。
帆歌(ほか)は帽子とメガネを取って美音(みお)に駆け寄る。
「お嬢様」
「うわっ!ビックリした!帆歌(ほか)。珍しい。普段着?」
「あ…」
帽子とメガネは取ったものの
普段着だったことを忘れていて必死に嘘を考え、嘘を吐こうとしたが
「すいません!実は今日お嬢様のこと尾けてました。お嬢様のことが心配で」
と隠せず本当のことを言った。しかし
「そんなわけないじゃない。帆歌(ほか)がいたらさすがに気づくわ」
と信じない美音。
「いえ、あの」
「これ!ま、お母様やお父様の分ももちろんあるけど
帆歌(ほか)と波歌(なみか)ちゃんの分も貰ってきたから早く帰って食べよ」
ニコッっと笑い
「はい!」
と頷きながら夕暮れの中2人で歩く。
シャワーを浴び終え、コンビニのカルボナーラをレンジで温め
お皿に盛り付けて、軽く黒胡椒を振る。
市販のサラダも小さなお皿に入れ、さらにドレッシングを小さな容器に入れる。
「わぁ~いつもながら美味しそぉ~」
いつものようにイスをひいて、司が座る瞬間にイスを少し押し入れる。
「ありがと」
「いえ。本日は最高級小麦を使用したパスタに
どれも最高級のものを使用したカルボナーラソースを作り、和えさせていただきました。
パスタはカルボナーラに適した1.8ミリを使用しております。
最後に香り高く、あまり辛くない黒胡椒を少し振らせていただきました。
そしてサラダです。どれも新鮮な野菜を使用しております。
ドレッシングは健康に気を遣ったノンオイルドレッシングです」
ノンオイルドレッシングなのだけは本当です。
「いつもいつも高級なのを。たまには一般的なのも食べさせてよね?」
「はい。努力します」
「でもありがと。いただきます」
お坊っちゃま。どれも一般的な価格のものばかりです。
「んん!美味しい!濃厚なカルボナーラソースに香り高い黒胡椒!最高!」
「恐縮です」
幸はなにも恐縮することはない。工場でコンビニのパスタを作っている方が一番恐縮している。
司が夜ご飯を食べ終え、食器を食洗機に入れる。
「今日はどうでした?」
「めちゃくちゃ楽しかったよ!」
「どこに行かれたんですか?」
「ステージ1?ボウリングしたり、クレーンゲームしたり、ダーツしたりいろいろしてきた」
幸はどれも見ている。
「おぉ。楽しそうですね」
ボウリングに関してはターキーを越えてフォースまで取っていたが。
「楽しかったよ!…あ!そうだ」
と司が部屋に戻ってリビングへ戻ってくる。
「はい。これ」
司が幸にグーを差し出す。幸は手を開いて司のグーの下に出す。
司がそっと幸の手に乗せて手を開く。
「これ、私に?」
「うん!今ね流行ってるらしいよ?」
それはヨダレを垂らしたキモ可愛いモンスター「ヨダレモンスター」
通称「ダレモン」のキーホルダーだった。
「あぁ、見たことあります。わざわざ私のために?」
「うん!金髪で涙ボクロが両目の下にあったから、あ!幸くんだ!って思って」
「わざわざ。嬉しいです。ありがとうございます」
と言いながらキーホルダーのチェーン部分の紙のタグを見る。
そこにはキャラクター名が書いてあった。
「お坊っちゃま?もしかしてこんな風に私の金髪を見てました?」
「え?なんのこと?」
司にキーホルダーの紙のタグを見せる。
「えぇ~?日本人の綺麗に見える金髪ってただ光が反射して痛みが目立ってないだけだから。
よく見たら傷みすぎてパサパサの金髪イエロー。…」
司が幸を見る。無言で「どうなんです?」と言っている表情の幸。
「違うよ?思ってないよ?」
と言いつつ幸の髪に視線を向ける司。
「あ」
「あ?あって言いました?てか今、髪見ましたよね?」
「見てない見てない?」
「嘘は良くないですよ?」
どの口が言うのか。
「思ってない思ってない」
「聞いてもないのにそのセリフが出るあたり。思ったってことですね?」
司が逃げる。幸が追いかける。
「幸くん!良くないよ?家の中走っちゃ」
「司だってそうだろ!待てこら」
2人は楽しそうに追いかけっこをした。
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