本当の絶望を

夕浪沙那

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3章

17-1

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「王妃様は今何処に?」

「ローズ様の不在を確認した後、
アイカス神殿の近くにあるシエル庭園に向かいました」

「シエル庭園に?!」

一度、旧王宮に戻り、
見目を整えてもらった後、すぐさま、庭園に向かった。

「王妃様がいらっしゃることは誰も知らなかったのですか?」

「はい、
私たちだけでなく、デミアン邸の使用人たちも存じてなかったようです」

王妃様の訪問が急であったことは、明白だ。

本来、王妃様クラスの方が訪問する際は、
その方の威厳を保つため、盛大に迎える必要が出てくる。

準備する期間を設けるため、前もって訪問の旨を知らせておくのが通例だ。

「先ほど聞いた話によると、デミアン様から王妃様へ、お手紙を送ったそうです…」

「ただ、返事はなく、諦めていたところ
急に訪問されたようです」

「デミアン様が…」

まさか、デミアン様がそのようなことをするとは…
ときに予想外の行動にでる当たり、本当に独特な方だ。

シエル庭園…状況は決して悪くない。

王妃様の訪問は、私たちに希望を与えるのか、あるいは絶望を与えるのか…

前者であることを願う。

……

シエル庭園の近くは、大衆で埋め尽くされ、馬車が進めるような状況ではなかった。

貴族の動向に興味のないアンディークの民ですら、王妃様の訪問となればここまで足を運ぶ。

王妃という権威の力を、間近で見ることができたのは貴重な体験だ。

その名が力となる。

護衛と使用人たちに道を開けてもらい、
私はなんとか入口の近くまでたどり着くことができた。

「侯爵家令嬢のピアール・ローズです。
王妃様がいらしたと聞き、ご挨拶に参りました」

「お待ちしておりましたローズ様。
私、王妃様の侍女をしています、メルシダと申します」

「王妃様とデミアン様が中でお待ちですので、案内いたします」

「お願いします」

メルシダは、不思議そうに私を見ていたが、そんなことを気にしている余裕はなかった。

庭園の入口で後ろを振り返ると、
大衆の最前列にいたのは、四大名家の当主たちがいた。

よくよく見てみれば、庭園の周りには武装した騎士の他に、見覚えのある服装をした人たちまで警備に混ざっていた。

サレット、ガレットがいつも着ている服、
つまりパシー家が警備に参加しているということだ。

シエル庭園を見る当主たちの目は儚い目をしていた。

これ以上は見過ごせない。
王妃様がお帰りになったら、どんな関係なのかを聞かなければ。

………

シエル庭園は、私が自ら管理している場所であり、
そこらの庭園とは一線を画す。

奥に進むと、王妃様とデミアン様が待っていたように私を迎えてくれた。

デミアン様は、ホットした様子だった。

「王妃様の来訪されたとお聞きし、
挨拶に参りました、ピアール・ローズです」

「ローズ、久しぶりですね。
会いたかったです」

最後に王妃様にお会いした日は、たしかラビラの19歳の誕生日パーティーだった。

あの頃と今とでは、私は大きく変った。

けれど、
心を落ち着かせる優しい笑顔、王妃はあの頃のままだ。

「話は旧王宮に戻ってからするとして、
ローズ、貴方がこの庭園に再び輝きを与えてくれたのは事実?」

「はい、事実です。アンティークに来てから私が管理を始めました」

「そう…
パドリセンにいた頃から、庭園の管理は貴方の仕事でしたね」

「はい、
今になって気づきましたが、私は庭園の植物に水をあげたり、成長を見守る時間が好きなようです」

「その気持ちは、私にもわかります。
いいものを見せてもらいました、管理のいき通った素晴らしいな庭園です」

「ありがとうございます」

「この2つの花を庭園に入れるのは、珍しいですね」

王妃様は、2つの花を指さした。

薔薇とクローバー。

「そうですね…
この子たちには、少し特別思いがありまして…」

「そうなのですね」

「ただ、1つ気になることがあります…」

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