小町のひとりごと

夢酔藤山

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……萌える情熱(7)

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 例えば弥生の一日、高子という御方のもとから帰宅した在原業平さまは、こんな歌を詠んで、人を使い送り届けております。
 
  おきもせず寝もせで夜を明かしては
    春のものとてながめくらしつ

 このことを良く思わなかったのが、汚らわしき太政大臣藤原良房です。
 そもそもこの者が、ただの酔狂で、容姿端麗なる才女を養女にする筈がありません。高子という御方を利用して、邪な野望を企てていたのです。宮様の弟帝を擁立しただけでは厭き足らず、今度はその后に己の息の掛かる女を入内させようというのです。
 お解りでしょう?
 藤原高子という御方こそ、そのための政略の道具なのだということが。
 在原業平さまの想いも情熱も、己の欲望の前では取るに足らぬと嘯いている、そんなおぞましい化け物こそ、藤原良房なのです。しかもこのとき、既に宮様の弟帝は皇后を迎えておりました。藤原良房の実の弟・右大臣藤原良相殿の娘御・多美子さまです。この右大臣藤原良相殿のことは幼少の頃から知っております。祖父・小野篁と懇意であり、藤原一門にあって唯一清廉潔白なる人格者と聞いておりました。
 だからでしょうか。
 わたしは憤慨して止まないのです。
 だって、ひどい話ではありませんか。実の弟でさえ欲望を満たすためなら敵視し、あまつさえ姪にあたる多美子さまの失墜を願って飾り雛である養女を入内させようというのですから。
 無論、このことを在原業平さまが知る由ありません。
 知っていたら、如何に無粋を好まぬ御方とて、形振り構わず手を取ってどこぞの国へ逃げ去ったに違いありません。
 ああ、無情。
 やがて高子という御方は良房の御殿に寝食を強制され、在原業平さまとの接点を断ち切られてしまいました。
そうなると、いよいよ燃えるのが男と女なのですが、その情熱も、遂には叩き壊されてしまうのです。
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