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本編

最終章{そして、年寄りに出会った}

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「ほうか、ご苦労さんやった。二人だけで行かせて、ほんまに申し訳ない。見つからんちゅうことは、もうksb地区にはおらんのかのぉ」

次の日、私たちはトイジョイさんの家へ行きksb地区で調べたことを話した。

「そんな落ち込むなって、といじぃ。」

「今頃になって、急にポルンフイクに会いたいなんて言い出したのが無理やった。もっと前からメールって奴を使って連絡を取っておけば、どこにいるかを知っとくべきじゃったな。」

椅子に座ってるトイジョイさんは、初めて家にきて威張っていたトイジョイさんとは違かった。

「ここまで調べられました。まだあきらめるのは早いかと思います。」

「おおきに、けど、こんなに二人に調べてもろて分からなんのやから、たぶんもうあかんじゃろ。もうええわ。ポルンフイクのこと探すの今日で終わりじゃ」

「といじぃ、やめちゃうんか?」

「探しても無意味な気がしてきた。ポルンフイクのやつksb地区にいないのかもしれないし、もう死んでるのかもしれん」

「ほんとに探さなくてよいのですか?」

「新聞にも出してもらったんやがどっからも情報がでてこへんのや。ポルンフイク探しはやめて、夏季休業の課題でもやってくれ。ご苦労さんやったな」

こういわれると、何も言うことがない。トイジョイさんは手伝い料として私たちに白い封筒を貰い、力なくトイジョイさんの家を出た。


「本当にこれでよいんですかね。」

「俺たちにできることはやったんだ。しょうがない。」

「そうですけども…」

最初は嫌がって始めたポルンフイク探し、しかし私も面白そうと思えたところであるし、ここまで調べられたのにここでやめてしまうのはとてももったいないのではと思ってしまう。

しかし、トイジョイさんにやめようと言われたしカルビュヂュもやめる気だ。仕方がない。


次の日から普通の夏季休業になった。
私は予習と好きな分野の研究に専念し、カルビュヂュはうちにきて課題を写しに来る。
トイジョイさんの家へはその後私たちはもう行かなくなった。

カルビュヂュが私の課題を写し終わった時だった。

「インフャット~、自由課題ってやってなくね?」

「あれ、そうでしったけ?」

「あぁ、でもまぁまだ夏期講習は長いし、気休めがてらに外で自由課題でも探さねぇか?」

「それならインターネットでも良くないですか?」

「たしかに、そうだけど。インフャット勉強詰め込みすぎだぜ。」

「カルビュヂュが遊びに行きたいだけではないでしょうか」

「まぁ、そうだけどさ…」

「でも、よいですよ。私行きたいところがあるので」

そうして私はカルビュヂュを連れて図書館へ行く。

意外なことにカルビュヂュは嫌がらず来てくれた。

「VPP?なんだそりゃ?」

「バーチャルパワープラントの略です。もし災害などで新聞を作るマザーコンピューターが動かなくなった時にこの技術が普及してれば電気が…」

「あぁストップ、ストップ。俺そういう難しいのマジで無理だから。」

「そうですか。残念です。」

「っでも、新聞のこと好きだよなぁ。インフャットって。」

「はい、ヴェヴェンべでの新聞売り上げは年々減っていき将来的には赤字になるともいわれています。」

「確かに、今じゃPCやらSHがあるからなぁ。わざわざ新聞なんて読まねぇや。」

「そうなのです。」

「好きなことに熱中できるインフャットはすげぇなぁ。でもなんで同じ本を6冊も借りてるんだ?」

「これは発行年月日が違うんですよ。この本は5年ごとに更新されてて同じ本なのに新たな情報が追加されているのです。」

「マジか。同じ本なのに違うってことあるのか。」

「そうですよ。同じ本なのに少し変更されてたり……。。あ。」

「どうしたインフャット」

「去年とか今年始めたものにいるかもしれません。」

「?何のことだ?」

「ポルンフイクのことですよ。二件目の武器商人の方が国が関わっていなければ最近起業したところ、たたんでしまったところは記述してないとおっしゃっていました。」

「つまりどういうことだ?」

「最近辞めてしまった、店を調べればもしかしたら見つかるかもしれませんね。」

「おぉ、面白れぇじゃねぇか。それ」

カルビュヂュの目が急に、輝き始めた。

ksb地区にもう一度行ってみよう。私はじっとしていられなくなってきた。
凄く積極的な自分に私は驚いた。

「わしも行く。わしもksb地区に連れてってくれ」

カルビュヂュが
ksb地区に行くなら、トイジョイさんにも話しとくべきだといい、トイジョイさんの家に寄った。

「といじぃ、流石にその体だときついかと思うぞ」

「大丈夫や。少し前からジョギングをまた始めたんや。」

「ほんとに大丈夫なのですか?無理はしない方が良いと思います。」

どうしても行くと言ってきかない。探すのはやめたと言いながら、やっぱり諦めていなかったのか。
私たちはトイジョイさんの熱意に負けて、三人でいくことにした。

39度。昼も太陽が熱の弾丸を放つ暑い日だった。

「最近辞めた、武器ショッピングかぁ。うーん、今年始めた、店ならあったなぁ。武器を販売していたか忘れたけど。M通りからちょっと入ったところだ。名前はポルットーノン店。」

私は、言われたことをスマホにメモる。

「たしか北ブロックの方だったかと思うよ。この通りを西に行って、車屋を右に入ったあたりだ。その辺で、もう一回聞くといいよ」

「ありがとうございました。」

私は何度もお礼を言った。
気持ちは焦るが、トイジョイさんがいるからゆっくり歩く。

車屋はすぐにわかり、そこを右に行った。両側をみながら歩いていく。
ポルットーノン店という看板があり、入ってみるとAI屋であった。

AIに尋ねてみると、知らないということだ。その店で、去年にやめた武器屋があるらしく一軒教えてもらった。

「次は、南のほうですね。トイジョイさん、大丈夫ですか?」

「少し休んでいった方がよさそうだぜ?」

私は歩き始めたがトイジョイさんが暑さのせいか、つらそうである、
私は早く南ブロックに行きたかったが、トイジョイさんについて小さな休憩所に入った。
エアコンがきいていてとても涼しい。

「何でもよいから、のみもん買ってきてくれや。」

トイジョイさんはつかれて飲み物も買えないのだろう。私たちに頼んでぐったりと座り込んだ。

「こんな暑いんだぜ。90代の爺さんにはこたえるよな。」

「そうですね。もう一軒だけ調べたら帰りましょう。」

飲み物を買って戻ってくると、休憩所にトイジョイさんが知らない男の人と話している。見た目から推測するに、幻妖の国アガチャルの方だろう。

知り合いだろうか。そんなことを思ってると、その男はいきなり右腕を槍に変形し、トイジョイさんを突き刺したのだ。

「といじぃ!」

慌てて、カルビュヂュが休憩所へ駆け込む。男はカルビュヂュを突き刺そうとしたが、前に貰ったCマグナムを男に目掛け発砲する。

「おじいさん!しっかりしてください!」

私も駆け寄ると、おじいさんは胸をおさえうずくまっている。荒い息をして、顔は真っ青だった。
抑えている胸を見ると、血は出ていない。おそらく幻影か何かの呪いを刻み込まれたのだろう。

そんなことを思ってると。
ぐらり。
おじいさんの体が横になって、地面へ倒れてしまった。
私は慌てて、おじいさんの体を起こそうとしたが重くて起こせない。

「俺、救急車呼ぶわ。」

科学の国ヴェヴェンべの医療じゃ厳しいかと思われます。魔法の国シャティールの病院か、幻妖の国アガチャルの病院へ緊急搬送依頼をお願いします。」

私は泣きそうな声を殺して、カルビュヂュに伝えた。

しっかりしておじいさん、死んじゃ嫌だよ…。

声には出さず、ハンカチで一生懸命おじいさんの顔や首を拭いた。

一秒一秒がとても長く感じる。

私の背後で、闇属性のテレポーターホールが展開される鈍い音が鳴った。

魔法の国シャティールの救命救急センターへ運ばれ、呪い解除の儀式と手当をうけた。

「おじいさん、ヘイトクライムにあったのね。それに加えて、暑さのせいで心臓が苦しくなったらしいわ。でもこっちに送ってくれてよかったわ。
儀式の方が終わればあとは回復を待つだけ。大丈夫よ。大丈夫。」

病室にあいてるベッドがあるので今夜はそこで一泊するらしい。

父親に電話した。しかし冷静でなかった私は、途中で病院の魔導士に代わってもらい、おじいさんの様子を説明してもらった。

「インフャット大変だったな。いま、魔導士さんに話を聞いてよくわかった。今からそっち行く。」

「え、来てくれるのですが?」

「当たり前だろ。病院にお金を払ったり、色々な用事があるからな」

「そうですか」

「インフャットは爺さんのそばにちゃんといてな」

「はい、もちろんです。」

病院と病棟の情報を伝え、電話を切る。
私も父親もまるで、うちのおじいさんが病院に入ったみたいにしている。

おじいさんは、赤の他人で、春までは全然知らない人であった。知り合って4か月くらいにしかならない。そして、はじめのうちのは感じが悪く、いやみなおじいさんで大嫌いだった。

でも、夏の初めからよく顔を合わせるようになって、この夏季休業はおじいさんに付き合っていた。そして今日は倒れたおじいさんに付き添って魔法の国シャティールにまで来てしまった。

「ま、良いです」

私は、心にノイズを流されながら二階の病棟へ戻った。
おじいさんは、生命属性の魔法陣を刻み込まれすやすやと眠っている。
今では顔色もよくなり、落ち着いた表情であった。

生命属性魔法陣保存カプセルの横で椅子に座る。
喉が渇いてきた。意識は病室に置きながら自販機に体を移動させた。

なんとなく、ほかの病室を覗きながら彷徨う。

「あ」

部屋の前で体と意識が合流した。

[ポルンフイク]

心臓も足も止まりそうになる。

その部屋の前で釘刺しになっているところに、魔導士が出てくる。

「すみません!」

私は追いかけて、声をかけてる。

「何か用?」

「4号KL室にいる人、ポルンフイクという人何歳くらいでしょうか?」

「90を過ぎた年よりよ。どうしてそんな質問を?」

「私、ポルンフイクって人を探してまして」

「そう…」

魔導士は何のことかわからない表情をしている。

「あなたは、この都市の学生かしら?」

「いいえ、科学の国ヴェヴェンべから来ました。」

「まぁ、そんな遠くからどうしてここでポルンフイクという人を探してるの?」

「知り合いのトイジョイというおじいさんが、ポルンフイクという人を探していて、私もお手伝いで探していました。その二人は昔、戦争一緒だったらしく…」

私は止まらないマシンガントークを話した。
武器屋で働いていることを知ったこと。昔の出来事を教えてもらったこと。黄ばんだ写真を見せたこと。
そしたら、その魔導士はポルンフイクの父であること。戦争をしていたこと。を教えてくれた。

「まぁ、前、父に見せてもらった写真と同じだわ!」

魔導士も少し興奮している。

「病室にいらっしゃい。父に会わせてあげるわ。」

「待ってください。その前におじいさんに知らせてきます。」

「おじいさんはどこにいるの?」

「この病院にいます。」

魔導士はびっくりしている。

「ちょっと待っててください。すぐに戻ってきますね。」

私はおじいさんの所へむかって走り出した。


今でもおじいさんの墓の前で私たちはこのストーリーをかなでている。
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